【Sp!cemartゲームアプリ調査隊】運営7周年を迎えた長期運営タイトル『にゃんこ大戦争』…長く愛される理由をゲーム“内外”の施策から分析


スマートフォンゲームの日々の運用とその効果をリサーチし、ゲーム関連企業へマーケティングデータを提供するSp!cemart(スパイスマート)。ゲームアプリの運用情報をいつでもウォッチできる「Sp!cemartカレンダー」や、毎月発行しているレポートを提供している。
 

なかでもカレンダーは、セールスランキング上位のモバイルオンラインゲームのゲームシステム・運用施策をダッシュボード形式のWEBツールとして提供。ゲーム内プロモーション施策の効果測定やセールスランキングと運用効果の相関関係を時系列で分析できる。
 
本連載記事ではSp!cemart協力のもと、カレンダー機能を用いた、ランキング上位タイトルの直近のゲーム内施策を分析。今回はポノスの長期運営タイトル『にゃんこ大戦争7周年施策をピックアップする。

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(以下、Sp!cemartゲームアプリ調査隊より) 
 

■長期運営タイトルが直面する課題

 
 
■『にゃんこ大戦争』
提供:ポノス
リリース日:2012年11月15日

 
“キモカワイイ”にゃんこたちが戦うスマートフォン向けタワーディフェンスゲーム『にゃんこ大戦争』は、気付けばリリースから7周年を迎えました。現在、アプリストアのセールスランキングでは長期運営タイトルが軒を連ねていますが、思えば本作はランキング上位のなかでも『パズル&ドラゴンズ』に次ぐ運営の長さを誇ります。
 
本来、長期運営タイトルともなると、ランキングで垂直立ち上がりを見せるのは難しい、あるいはTOP100圏内を凪の状態で運営を続けていくのが精一杯かと思います。というのも、長期運営タイトルには下記のような課題に直面してくるからです。
 
■ ゲーム内容が時代と乖離し、古臭いイメージに
新規と既存ユーザーによる広がるレベル差
■ 内容の複雑化、進むインフレ化、新規獲得が困難

 
上記で挙げたのはほんの一部ですが、長期運営タイトルはコアな既存ユーザーに支えられているがゆえ、なかなか新規獲得の取り組みにも舵を切ることができません。
 
一方で周年のタイミングでは、既存ユーザーに向けた日頃の感謝(エンゲージメント向上施策)をはじめ、大規模プロモーションを展開する節目のときで、新規獲得及び休眠復帰が見込めるなど、各社さまざまな取り組みを打ち出しています。
 
実際に『にゃんこ大戦争』では、7周年施策が功を奏してか、App Storeのセールスランキング(ゲームカテゴリー)で6位にランクインしました。
 
これまでも順風満帆だった本作ですが、実は運営3~5年目は凪の状態が続いており、特段目立った取り組みも見受けられませんでした。
 
ひとつのターニングポイントとして挙げられるのは、昨年の6周年施策について。6周年では、4年振りにTVCMを放映したことをはじめ、休眠ユーザー復帰を意識した施策も打ち出していました。
 
下記はSp!cemartカレンダーを用いて抽出した、6周年のタイミングで実施していたカムバック施策の抜粋です。

 
本作では2018年11月23日~12月5日まで、6周年企画の一環として2つのカムバック施策を実施していました。ここでは、一例として「カムバック人数が一定数に達するごとに全員に報酬を配布する」という施策を紹介していきます。
 
同様の施策は5周年時にも実施されていましたが、6周年時は2段階目・3段階目の目標数が倍になっていました。5周年時は2週間足らずという短い期間で最大目標が達成されてしまったため、6周年時はハードルをより高くしたものと思われます。最終的には最大目標の258,600人が見事達成され、それ相応の休眠復帰を促すことに成功しました。
 
 

▲6周年で行われたカムバックキャンペーン
 
一方TVCMでは、「そろそろ、仕掛けるかにゃ。」というキャッチコピーを設けて、4年振りのTVCMをうかがわせる満を持したクリエイティブを展開。
 
ちなみに、本作は2019年10月時点で全世界ダウンロード数が4700万を突破しており、長期運営タイトルゆえに認知度も高く、興味を持つ潜在ユーザー、かつて遊んだことのある休眠ユーザーが多いことも特徴的です。
 
だからこそクリエイティブでは、有名人を起用せず、あえてにゃんこ(キャラクター)押しで仕上げるなどのこだわりがうかがい知れました。
 

▲6周年で放映されたTVCMクリエイティブ
 

▲7周年でも同様ににゃんこ押しのTVCMクリエイティブに
 
ここからは、『にゃんこ大戦争』のマネタイズのおさらいをはじめ、直近におけるランキング推移と7周年施策について、「Sp!cemartカレンダー」で覗いてみましょう。

 

■『にゃんこ大戦争』のゲーム内外の施策を調査

 
『にゃんこ大戦争』のマネタイズについておさらいしておきましょう。本作のマネタイズは、主に有償アイテムのネコカンの販売です。ネコカンはガチャや特定アイテムの購入などに使用します。ネコカンのラインナップは以下の通り。
 
【ネコカンのラインナップ】
・ネコカン30個(120円)
・ネコカン100個<7個お得>(370円)
・ネコカン200個<17個お得>(730円)
・ネコカン340個<35個お得>(1,220円)
・ネコカン690個<80個お得>(2,440円)
・ネコカン1080個<225個お得>(3,420円)
・ネコカン1860個<485個お得>(5,500円)
・ネコカン3900個<1400個お得>(10,000円)

 
ガチャでは、バトルに参加できるユニットが手に入り、1回でネコカン150個(600円相当)、10連で1500個(6,000円相当)必要です。ユニットは強力かつレアリティが定められており、期間限定ガチャで新しいユニットが登場するたびに、ランキングも上昇することを鑑みると、やはり本作における収益の大半はガチャが占めていることが考えられます。
 
他方、経験値を用いたユニットの育成も本作では重要度が高いため、ネコカンを経験値に変換したり、ステージを有利に進めるための特定アイテムを購入したりと、さまざまな場面で有償アイテムが使用されます。
 
『にゃんこ大戦争』【調査期間:2019年11月18日~12月8日】


 
Sp!cemartカレンダーでは、7周年施策の開始前から現在までのランキング推移として、2019年11月18日(月)~12月8日(日)を抜粋しました。
 
ランキング推移は、7周年施策が奏功しているのか、無料・セールス共に高い順位を記録しているのが分かります。ここではカレンダー上のデータと照らし合わせながら、“7周年のタイミングにどのような施策を展開していたのか”にフォーカスをあてていきます。
 
【7周年の主なゲーム“内”施策(一部抜粋)】
■ 11月15日に7周年のテイザーサイトを公開
■ ログインスタンプキャンペーン(11月15日~12月26日10:59まで)
■ ネコカン777個以上が必ず当たる「にゃんこスロット」第1弾(11月22日~12月1日23:59まで)
■ ネコカン777個以上が必ず当たる「にゃんこスロット」第2弾(12月2日~12月12日23:59まで)
■ レアガチャイベント「超選抜祭」(11月22日~11月26日10:59まで)
■ 7周年記念ガチャ「ミラクルセレクション」(12月2日~12月5日10:59まで)
■ 7周年記念ミッション(11月22日~12月26日23:59まで)
■ 「バースデープレゼント!」ステージ(11月22日~12月26日23:59まで)
■ 「東京スカイツリー」「ジェットスター」との初コラボ(12月2日~12月26日10:59まで)

 
7周年のゲーム内施策を抜粋しましたが、このほかにもさまざまな期間限定イベントを展開していました。例年よりも増して施策が多いのはもとより、大々的にTVCMを放映していることから、新規及び休眠復帰ユーザーの定着に結びつく施策が多いのも特徴です。
 
なかでも目玉は、ネコカン777個以上が必ず当たる「にゃんこスロット」でしょう。最低でもネコカンが777個(3,108円相当)手に入るだけあって、ユーザーに対する訴求度も高いです。
 
 
そのほか「日本編」第1章をクリアすることでプラチナチケットを1枚ゲットできる7周年記念ミッションや、ステージクリアでネコカン20個を必ずゲットできる特別ステージ「バースデープレゼント!」など、有償アイテムと強力なユニットが手に入る施策を多数展開していました。
 
こうしたゲーム内施策は、新規ユーザーの定着はもとより、休眠ユーザーの復帰を促す施策としても効果が高いです。
 
というのも、上記の報酬内容の価値を理解できる方は、一度本作を遊んだことのあるユーザーです。上記のゲーム内施策は、新規ユーザーにとっては報酬内容の価値の高さが理解できない(または遊び始めてから理解する)ですが、休眠ユーザーが復帰するうえでの判断材料として寄与していくことでしょう。
 
では、流入面にも影響するゲーム外施策では、どのようなことを展開していたいのでしょうか。
 
【7周年の主なゲーム“外”施策(一部抜粋)】
■ 7周年のタイミングで放映したTVCM
■ 777名以上に当たる「ついった版にゃんこスロット」(11月26日~12月5日まで)
■ 全国7か所のショッピングモールで参加無料イベント「にゃんこ大縁日」
■ コロコロコミック1月号購入で「にゃんペンケース」プレゼント
■ そのほか7周年を記念したグッズや書籍が続々発売

 
主な流入面では、TVCM放映とTwitterプレゼントキャンペーン「ついった版にゃんこスロット」でしょう。なかでも後者は、豪華賞品が777名以上に当たるキャンペーンです。
 
第1弾では、世界にたったひとつだけのオリジナル小判「純金製ネコに小判」を1名に、「7周年特製QUOカード:777円分」を777名にプレゼント。そして第2弾では、ドバイ7つ星ホテルへの旅(ペア旅行券)1名に、7種の特製にゃんこ七味を777名に。期間中、一日一回参加することができるほか、キャンペーンは第三弾まで予定しているという。
 
 
参加方法は『にゃんこ大戦争』の公式Twitterをフォローし、キャンペーン告知の入ったツイートをリツイートすることで、当選者にDMでメッセージが届く仕組み。1弾の該当ツイートは、最終的に3.6万件のリツイートにも及び、7周年の拡散につながりました。
 
TVCM放映の流入が最もインパクトを与えたかと思いますが、無料ダウンロードランキングは直近で8位まで急浮上するなど、ゲーム外施策も相応の成果を見せています。
 
以上のように、『にゃんこ大戦争』は長期運営タイトルでありながら、ゲーム内外の取り組みにより、売上・流入共に高い記録を叩き出しました。
 
 

■次の10年に向けたブランディング

 
『にゃんこ大戦争』は、シンプルなタワーディフェンスゲームです。長期運営タイトルにもなると、ユーザーの飽和状態の打開策として、マルチプレイを導入したり、大きな刷新をはかるためにゲーム仕様を改修したりと、さまざまな取り組みが講じられます。
 
しかし、本作は昔ながらのゲーム性を尊重し、期間限定イベントやコラボ、そしてバラエティに富んだマーチャンダイジング施策で人気を継続しています。
 
マーケティング施策においても、TVCMが有名人を起用した大々的なものではなく、あくまでもマスコットキャラクターのにゃんこを中心に打ち出したクリエイティブは、一見、保守的に見えても実はとてつもないチャレンジ精神であることがうかがえます。また、その人気は子供たちへのアプローチでも感じることができます。
 
実は『にゃんこ大戦争』は、コンシューマ版を任天堂ハードで販売しています。ダウンロード専用ソフトではありますが、ニンテンドー3DS版はストア内のランキングで1位を継続しているほか、Switch版でも同様につねに上位にランクインしており、スマートフォンを持たない子供たちにもしっかりとコンテンツを届けていることができています。
 
また、さまざまなグッズ展開や漫画を「コロコロコミック」で連載しているほか、前述したショッピングモールの参加無料イベント「にゃんこ大縁日」は、まさにファミリー層に訴求した取り組みだったのではないでしょうか。
 
 
ゲーム自体の面白さやゲーム内施策はもちろんですが、『にゃんこ大戦争』は奇をてらっているようで、実は芯をぶらさないブランディングが人気を継続している秘訣かもしれません。
 
スマホゲームは一度ヒットすると、簡単に止めるわけにはいけません。そういう意味では、ヒットのあとに必ず直面する長期運営タイトルならではの課題を、『にゃんこ大戦争』はブランディング施策を通して、ここ数年で解決の糸口を見つけたようにも思えます。現在行っている施策は、次の10年後を見据えた取り組みとしても寄与していきそうです。
 
 
「Sp!cemartカレンダー」では、各ゲームのイベント情報をランキング推移と共に閲覧できます。自社はもとより、競合他社の施策一覧を取りまとめた分析などにもご活用できます。ぜひ、ご興味がある方はお問い合わせページからご連絡ください。

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■執筆 <株式会社スパイスマート>
スマートフォンゲーム内運用に関する調査・分析を行うリサーチ事業とコンサルティング事業を展開しており、「Sp!cemart」というサービス名称で各種ソリューションを提供。

コーポレートサイト:http://corp.spicemart.jp/
Sp!cemart 商品に関する問合せ:info@spicemart.jp
 

■Sp!cemartゲームアプリ調査隊 バックナンバー

Vol.1 〜待望のシリーズ最新作『マリオカート ツアー』、リリースから直近1ヵ月の運営施策を探る〜

Vol.2 〜新作リズムゲーム『欅坂46・日向坂46 UNI'S ON AIR』、リリースから直近1ヵ月の運営施策を探る〜

Vol.3 〜初週で全世界1億DLを記録した『Call of Duty®: Mobile』、リリースから直近1ヵ月の運営施策を探る〜

Vol.4 〜Riot Games大特集。新作『Team Fight Tactics』の概要から『LoL』の直近プロモ・e-Sports施策まで〜

Vol.5 流入から定着まで繋げた7つの施策…大ヒット中の『FFBE 幻影戦争』、事前登録からリリース直後の施策を総まとめ

Vol.6 事前プロモ(ほぼ)なし…突如配信された『ワールドフリッパー』ヒットの背景。リリース前後の施策を分析


 

 
ポノス株式会社
http://www.ponos.co.jp/pc/

会社情報

会社名
ポノス株式会社
設立
1990年12月
代表者
辻子禮子、辻子依旦
決算期
11月
上場区分
非上場
企業データを見る
株式会社スパイスマート
http://corp.spicemart.jp/

会社情報

会社名
株式会社スパイスマート
設立
2015年7月
代表者
代表取締役 久保 真澄
企業データを見る