ヤフー<4689>は10月25日、2014年3月期第2四半期(4~9月)の連結決算を発表し、都内で記者会見と決算説明会を開催した。ゲーム関連事業が含まれる「マーケティングソリューション事業・パーソナルサービス部門」の7~9月の売上高は、前年同期比2倍、4~6月期比5.2%増の30億8600万円だった。同部門はYahoo!モバゲーやグリーとの業務提携といったゲーム事業と、動画サイト「GyaO!」事業などが含まれており、売り上げの半分以上がゲームという。Yahoo!モバゲーや「SDガンダムオペレーションズ」の売り上げが増えたという。
もっとも決算説明会ではゲーム事業に関する質問は出ず、参加者の関心はもっぱら、「無料化」を打ち出したEC(イーコマース)事業の先行きについてだった。記者会見と決算説明会に臨んだ宮坂学社長もEC事業の先行きについて、時間を多く割いた。説明会ではEC分野でなぜ楽天と差がついてしまったのか、という質問が出たが、経営陣は丁寧かつ明快に回答していたのが印象的だった。
ヤフー全体の7~9月の連結売上高は957億円と、前年同期比で21.5%、4~6月比で3.7%増えた。営業利益は492億円と前年同期比で13.7%、4~6月比で1.2%増えた。広告事業や有料会員収入が順調に成長した。ヤフーや主要提携サイトのコンテンツページに広告を配信するクリック課金型広告「Yahoo!ディスプレイアドネットワーク(YDN)」の売上高が大きく伸びた。
2014年3月期通期の業績見通しも明らかにした。売上高が3871億円と前期比13%増だが、営業利益は1930億円と4%増と1ケタ増にとどまる見通し。下半期だけだと6%の営業減益となる見込みだ。出店料無料化戦略に伴い、販促費などの費用を増やすため。新戦略のための費用は下半期で総額20億~30億円、2015年3月期通期でも40億~60億円を想定しているとのこと。この下半期の減益は、EC出店無料化という「革命」に向けた「決意のあらわれ」(宮坂社長)という。
7~9月のモバイル広告売上高は、スマートフォン(スマホ)向け(一部タブレット含む)が前年同期比45億円増の101億円、フィーチャーフォン向けが同5億円減の3億円だった。フィーチャーフォン向けは金額が小さくなったことから、「歴史の区切り」(宮坂社長)として、今後、売上高の公開を取りやめるという。
なお、デバイスごとの広告収益に対する質問について、宮坂社長は「7~9月のPC(パソコン)向けは、スポンサードサーチ(検索連動型広告)が増収だったが、サーチの数自体は減っていて、RPS(検索行動一回当たりの収益)でカバーして増収だった。PCのRPSを大きく上げていくというのは限界があるので、今後、PCはスローダウンするのではないか。一方、スマホはサーチ数については高い伸びを今後も示すと思う。いまはまだ、絶対的な母数でいえば、PCの方が大きい」と回答した。
無料化で店舗数が増えてくるなか、上位の店舗だけが儲かり、非稼働店舗も増えるのではないかという質問も出た。宮坂社長は「ロングテールの左側、つまりどこでも売っているものは、パワーゲームになる可能性があるが、すべてがパワーゲームになるとは思っていない。この店にしかないという商品が膨大に増えれば楽しい。めったに売れないものも含めてあるのが、(ショッピングモールとして)良いと思う」と話した。
「無料化」とはいえ、店舗向けのクレジットカード決済手数料は、決済金額の3.24%を徴収している。記者会見で宮坂社長は、「手数料はもう下に張り付いている状況。できれば、もっと下げたい。下がれば下がるほど、ネットショッピングをやりたいという人は増える。 ただ、原価としてカード会社に支払う分もある。そこ(決済手数料)からから入る利益についてはあまり考えていない。あくまで広告事業をやりたい」と話した。参考までに、サイバーエージェントが出資を発表したネットショップ無料開設サービスのBASEは、クレジットカード決済で決済代行会社への手数料3.6%とほかに40円が必要となる(関連記事)。
ヤフーのショッピングカンパニー責任者である小澤隆生執行役員も、説明会でEC革命に向けた戦略・戦術を解説した。ヤフー検索と連動した商品ランキングを出したり、商品に関する質問が多い「Yahoo!知恵袋」との連携を進めたりと、「導線を引きなおす」方針だ。これら導線の収益化については「当初は無料。ランキングみたいなものは最後まで有料化すべきではないと思っている。知恵袋への掲載などは将来的に広告枠としての販売の可能性はある」と説明した。
ECで楽天と差がついたのはなぜか、という質問に対しても、経営陣は丁寧に回答した。宮坂社長は「選ばれた店舗しか出店できず、商品数が増えなかったことが、大きな差となった」と話した。
かつて楽天にも在籍していた小澤執行役員は「メディアに注力した企業(ヤフー)と、ECに注力した企業(楽天)という、ミッションとリソースの割き方の差。先ほど話した通り、正直、5倍にせざるを得ないほど(ヤフーは)エンジニアの数が少なかった。これでは機能の追加・キャッチアップはできなかっただろうと思う。先ほど話した検索や知恵袋からの導線は、10年前にやっていても良かったような話だ。今までできなかったのは、反省すべきというよりは、優先度の問題。ヤフーは広告を第一にやってきたなかで、イーコマースは社内での優先度が多少低かったのかなと思う。人的面、導線面、開発スピードなど競合に比べて劣っていた。多くの顧客がいるところでショッピングモールを開設すれば成功するはず、という甘えが多少あったのかなと思った」指摘。「きっちりリソースを割き、導線をひきましょうというのが、これから考えているところ」と話した。
今後の戦略は、「まずは品ぞろえ」(宮坂社長)という。小澤執行役員は「品ぞろえは縦と横で展開。横は品種。あそこには何でもあるぞ、という意識を買い手につくる。これまで競合含めてインターネットで買えなかったものも網羅したい。たとえば、これまでの1年契約では出品できなかった、1次産業や農家を想定している。収穫があった時期だけ農産物を売りたい、2カ月間だけ売りたいというニーズが、EC革命で出てくる。縦は、価格を含めた同じ商品のバリュエーション。新品から中古まで出品が広がることは、買い手からすれば魅力的」と話していた。
■関連サイト
・決算説明会資料
もっとも決算説明会ではゲーム事業に関する質問は出ず、参加者の関心はもっぱら、「無料化」を打ち出したEC(イーコマース)事業の先行きについてだった。記者会見と決算説明会に臨んだ宮坂学社長もEC事業の先行きについて、時間を多く割いた。説明会ではEC分野でなぜ楽天と差がついてしまったのか、という質問が出たが、経営陣は丁寧かつ明快に回答していたのが印象的だった。
▲記者会見で質問に回答する宮坂社長
■広告と有料会員収入好調、10月以降は「無料化」で減益に
ヤフー全体の7~9月の連結売上高は957億円と、前年同期比で21.5%、4~6月比で3.7%増えた。営業利益は492億円と前年同期比で13.7%、4~6月比で1.2%増えた。広告事業や有料会員収入が順調に成長した。ヤフーや主要提携サイトのコンテンツページに広告を配信するクリック課金型広告「Yahoo!ディスプレイアドネットワーク(YDN)」の売上高が大きく伸びた。2014年3月期通期の業績見通しも明らかにした。売上高が3871億円と前期比13%増だが、営業利益は1930億円と4%増と1ケタ増にとどまる見通し。下半期だけだと6%の営業減益となる見込みだ。出店料無料化戦略に伴い、販促費などの費用を増やすため。新戦略のための費用は下半期で総額20億~30億円、2015年3月期通期でも40億~60億円を想定しているとのこと。この下半期の減益は、EC出店無料化という「革命」に向けた「決意のあらわれ」(宮坂社長)という。
■「歴史の区切り」フィーチャーフォン向け広告売上高の公表終了
7~9月のモバイル広告売上高は、スマートフォン(スマホ)向け(一部タブレット含む)が前年同期比45億円増の101億円、フィーチャーフォン向けが同5億円減の3億円だった。フィーチャーフォン向けは金額が小さくなったことから、「歴史の区切り」(宮坂社長)として、今後、売上高の公開を取りやめるという。なお、デバイスごとの広告収益に対する質問について、宮坂社長は「7~9月のPC(パソコン)向けは、スポンサードサーチ(検索連動型広告)が増収だったが、サーチの数自体は減っていて、RPS(検索行動一回当たりの収益)でカバーして増収だった。PCのRPSを大きく上げていくというのは限界があるので、今後、PCはスローダウンするのではないか。一方、スマホはサーチ数については高い伸びを今後も示すと思う。いまはまだ、絶対的な母数でいえば、PCの方が大きい」と回答した。
■EC革命に向けて「エンジニアを5倍」、カード決済手数料「もっと下げたい」
宮坂社長は「ショッピングはコミュニケーション。ネット上ではコミュニケーションはフリーである」と話し、EC無料化という「革命」に向けた説明に熱を入れた。無料化によって質の悪い出店者が増えるリスクはないか、という記者の質問には「物事には光もあれば影もある。オークション事業で長年、その点に直面してきた。人の目によるパトロールなど、(悪質な出品者を排除する)ノウハウを持っているので、そこを生かしていきたい」と回答した。説明会の参加者から、EC革命に向けて人員を増やさなければならないのではと聞かれた際には、「この夏からエンジニアを5倍ほどに増員した」と答えた。無料化で店舗数が増えてくるなか、上位の店舗だけが儲かり、非稼働店舗も増えるのではないかという質問も出た。宮坂社長は「ロングテールの左側、つまりどこでも売っているものは、パワーゲームになる可能性があるが、すべてがパワーゲームになるとは思っていない。この店にしかないという商品が膨大に増えれば楽しい。めったに売れないものも含めてあるのが、(ショッピングモールとして)良いと思う」と話した。
「無料化」とはいえ、店舗向けのクレジットカード決済手数料は、決済金額の3.24%を徴収している。記者会見で宮坂社長は、「手数料はもう下に張り付いている状況。できれば、もっと下げたい。下がれば下がるほど、ネットショッピングをやりたいという人は増える。 ただ、原価としてカード会社に支払う分もある。そこ(決済手数料)からから入る利益についてはあまり考えていない。あくまで広告事業をやりたい」と話した。参考までに、サイバーエージェントが出資を発表したネットショップ無料開設サービスのBASEは、クレジットカード決済で決済代行会社への手数料3.6%とほかに40円が必要となる(関連記事)。
ヤフーのショッピングカンパニー責任者である小澤隆生執行役員も、説明会でEC革命に向けた戦略・戦術を解説した。ヤフー検索と連動した商品ランキングを出したり、商品に関する質問が多い「Yahoo!知恵袋」との連携を進めたりと、「導線を引きなおす」方針だ。これら導線の収益化については「当初は無料。ランキングみたいなものは最後まで有料化すべきではないと思っている。知恵袋への掲載などは将来的に広告枠としての販売の可能性はある」と説明した。
■なぜECで楽天と差がついたのか
ECで楽天と差がついたのはなぜか、という質問に対しても、経営陣は丁寧に回答した。宮坂社長は「選ばれた店舗しか出店できず、商品数が増えなかったことが、大きな差となった」と話した。かつて楽天にも在籍していた小澤執行役員は「メディアに注力した企業(ヤフー)と、ECに注力した企業(楽天)という、ミッションとリソースの割き方の差。先ほど話した通り、正直、5倍にせざるを得ないほど(ヤフーは)エンジニアの数が少なかった。これでは機能の追加・キャッチアップはできなかっただろうと思う。先ほど話した検索や知恵袋からの導線は、10年前にやっていても良かったような話だ。今までできなかったのは、反省すべきというよりは、優先度の問題。ヤフーは広告を第一にやってきたなかで、イーコマースは社内での優先度が多少低かったのかなと思う。人的面、導線面、開発スピードなど競合に比べて劣っていた。多くの顧客がいるところでショッピングモールを開設すれば成功するはず、という甘えが多少あったのかなと思った」指摘。「きっちりリソースを割き、導線をひきましょうというのが、これから考えているところ」と話した。
今後の戦略は、「まずは品ぞろえ」(宮坂社長)という。小澤執行役員は「品ぞろえは縦と横で展開。横は品種。あそこには何でもあるぞ、という意識を買い手につくる。これまで競合含めてインターネットで買えなかったものも網羅したい。たとえば、これまでの1年契約では出品できなかった、1次産業や農家を想定している。収穫があった時期だけ農産物を売りたい、2カ月間だけ売りたいというニーズが、EC革命で出てくる。縦は、価格を含めた同じ商品のバリュエーション。新品から中古まで出品が広がることは、買い手からすれば魅力的」と話していた。
■関連サイト
・決算説明会資料
会社情報
- 会社名
- ヤフー株式会社
- 設立
- 2019年10月
- 代表者
- 代表取締役社長 小澤 隆生
- 決算期
- 3月