コーエーテクモホールディングス<3635>は10月29日、都内で第2四半期(4~9月期)の決算説明会を開いた。10月25日に発表した第2四半期決算はコーエーとテクモの経営統合以来、売上高、利益ともに過去最高になるなど好調な内容だった(関連記事)。7~9月期のオンライン・モバイルゲーム事業も4~6月期比で増収増益と好調に推移しており、説明会に臨んだ襟川陽一社長は「アジア向けが素晴らしい成果を上げていて驚いている」と語った。もっとも業界について「現在は戦国時代」と表現し、社内で競争意識を持たせながら、ネイティブアプリの開発に注力する方針を示した。新規IP(知的財産)のハンティングアクションゲーム『討鬼伝』を展開していく方針も明らかにした。(以下、断りが無ければかぎ括弧内は襟川社長の発言)
▲説明会の襟川社長
■オンライン・モバイル部門、中国での『のぶニャがの野望』人気に驚き
オンライン・モバイルゲーム事業の7~9月は売上高が16億2300万円と4~6月から16%増え、営業利益も2億5900万円と同32%増と好調だった。「Yahoo!Mobage」で『AKB48の野望』が好調だったほか、「アジアへの移植ブラウザゲームが花開いている」という。特に「中国で『のぶニャがの野望 』が素晴らしい成果を上げていてびっくりしている。どういうわけか受けている」と驚きを漏らしながら説明した。「アジア地区のソーシャルゲームは大きく伸びていく」との考えも示した。一方、『LINEでろーん』について「具体的な数字は控えるが、全体的な傾向として課金率は非常に少なくて1%未満。通常のソーシャルゲームで高いものは15%~20%というのがあるが、比較的低い。ただ、非常に大きな可能性があるタイトルなので、新しいゲームシステムを追加しながら、ユーザーに提供していきたい」と話していた。また、全体的にフィーチャーフォン向けが下降気味、スマートフォン向けが上昇気味と話していた。
PS3/Xbox360の『DEAD OR ALIVE 5 Ultimate』の課金状況に関する質問に対しては、「ダウンロード(コンテンツ)課金の状況は計画とほぼ同じ感じで推移している。アメリカ、欧州でもこれから伸びていくのかなと期待している」と述べた。
■ネイティブアプリ「戦国時代」、家庭用ゲームとの垣根も「消えてきた」
ネイティブアプリの開発体制に関する質問には、「現在、2つの部門で取り組んでいる。ひとつは、パッケージソフトを手掛けるソフトウェア事業部。新規の人員を投入したわけではなく、これまで家庭用ゲームを作っていたプログラマや企画担当者がつくっている。もちろん、ソーシャルゲームなどを制作してきたオンライン・モバイル部門でも作っている」と回答した。ネイティブアプリの市場について「現在は戦国時代だと考えている。ひとつのゲームジャンルや形態にとらわれることなく、社内の関係部門がそれぞれ、ネイティブアプリに参入し、社内で競争すべき。その中から抜きん出たものが現れれば、それに合わせて組織を変えていく」と述べた。家庭用ゲームでもオンラインやフリートゥープレイの仕組みが増えており、家庭用ゲームとモバイルゲームの「垣根が消えてきている」とも語った。
■『討鬼伝』のシリーズ化に意欲、他社の狩りゲーを参考例に
今期業績のけん引役である、PSVita/PSP向けハンティングアクションゲーム『討鬼伝』は、新しいIPにも関わらず、47万本を売り上げた。「『討鬼伝』はシリーズ化するのか」という会場内からの質問に、「来期、再来期もいろいろなタイトル、ジャンル展開を含めて、多方面に伸ばしていきたい」と述べた。「ゲーム部分については狩りゲーと呼ばれている作品が参考例。(人気作の販売動向をみると)市場としても450万本まで育った。現場のプロジェクトチームは勉強している。やり方を踏襲しつつ、今の時代に合った形で展開していこうと考えている」という。『討鬼伝』成功の秘訣は何か、という質問に対して「既存タイトルを超えるものをつくろうという考えがあった。すでに450万人というユーザー層がいるところ(ハンティングアクションゲーム)を狙った。最初に出した体験版は厳しい意見を浴びたが、お客様の声に耳を傾けて体験版を2回、3回と改善するたびに評価を得ていった」と話していた。
■円安で海外人件費が上昇、営業外収益は増加
説明会に参加したアナリストからは、費用削減の進展を評価する声も上がった。CFO(最高財務責任者)である浅野健二郎専務執行役員は「無駄な外注を徹底的に削り、開発効率が上がってきている」と指摘しつつ、人件費については「今期通期で108億円と前期の約102億円から増える見込みだ。人員が増えている。また海外の開発拠点に350人ほどいるが、人件費の上昇カーブが日本よりも大きく、さらに円安で円換算の人件費が上がっている」という。もっとも、開発力の維持などを考慮し、「必要以上に人員を見直すことはない」と話した。なお、円安による株式相場の上昇で、同社の有価証券売却益が増加し、評価損も縮小。営業外収益が約28億円と大きく伸びた。▲浅野CFO
■PS4の性能に期待感
スマートフォンやタブレット向けのゲームエンジンの開発状況を聞かれると、「開発はすべて終わっている。テクモもガストも自社のゲームエンジンを使っている。稼ぎ頭の『無双系』に向いたエンジンで、FPSのような繊細な描画には向いていないため、様々なタイプに合うような変更作業をしている」と述べた。また、Wii Uなど次世代機のCPU能力が低いとの見方はあるか、という質問に対しては「技術者の習熟度合が深まってくれば、すごいものが出てくる。FPSもPS3の初期に比べれば格段に進化しており、最近はまるで映画のようだ。Wii Uは発売から1年で、まだまだこれから。PS4はかなり高性能だ。『真・三國無双7猛将伝』で対応しているが、遠くのほうまで描画できるなど、描画性能が高い。CPUの能力が非常に上がっていると思う」と回答した。
■ゲームとアニメのコラボ、ターゲットは20代
説明会では、新規・既存含めた複数タイトルで、ゲームとアニメの同時展開を進める方針も示した。ターゲットの年齢層を低くしていくのか、という質問には、「現在取り組んでいるタイトルは中学生は対象にしていない。10代後半から20、30代、特に20代を中心に対象にしたゲームだ」と語った。▲コーエーテクモは収益性・配当性向の上昇を目指す
会社情報
- 会社名
- 株式会社コーエーテクモゲームス
- 設立
- 1978年7月
- 代表者
- 代表取締役会長(CEO) 襟川 陽一/代表取締役社長(COO) 鯉沼 久史
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高681億700万円、経常利益341億6600万円、最終利益268億5200万円(2023年3月期)
- 上場区分
- 非上場