グリー<3632>は11月13日、2014年6月期第1四半期(1Q、7~9月)の連結決算を発表し、都内で記者向けの決算説明会を開いた。国内フィーチャーフォン向けゲームの課金収入の減少が続き、売上高は353億円と4~6月に比べて17億円(4.6%)減った。一方、コスト削減を進め、営業利益は同20億円(25.6%)増の98億円と増益を達成し、最終黒字を確保した(関連記事)。
説明会に臨んだ田中良和社長は「希望退職を転換点とし、会社を再成長させることが自分の責務」と述べ、4Q(2014年4~6月)に売上高の増加を目指すと述べた。業績鈍化の原因は内製ゲームにあるとして「好調なサードパーティのように定期的にヒット作を出していく」「(スマホなど)デバイス対応が一巡したので新作開発に経営資源を振り向ける」などと、業績回復に向けて新作投入の意欲やスケジュールを示したが、具体的な作品の画面やデザインなどは提示されなかった。海外事業の単月黒字化を年内に達成できそうなことや、新成長分野として広告事業への期待も述べた。(以下、かぎ括弧内は断りが無ければ田中社長の発言。図表内の赤線・矢印はソーシャルゲームインフォが加筆した)
7~9月は、ゲームタイトル関連資産の減損や希望退職関連など特別損失を52億円計上したものの、コスト削減の効果で最終損益は24億円の黒字を確保した。広告宣伝費などを含めた固定費は前四半期から19億円(12%)削減しており、前四半期の決算発表時に示した目標である「1年後までに10%」を前倒しで達成した。
この四半期の売上高は353億円と前四半期から減少したが、「売上高はほぼ想定通り」(秋山仁・執行役員常務兼管理統括本部長)とのこと。スマートフォン向けの売り上げは順調に伸び、ネイティブゲームも海外で伸びたが、国内フィーチャーフォン向けの落ち込みを補いきれなかった格好だ。売上高の内訳はゲームを中心とする有料課金収入が328億円、広告が25億円。コイン(仮想通貨)消費額の構成比率はフィーチャーフォン向けウェブゲーム(ブラウザゲーム)が35%、スマホ向けブラウザゲームが40%、ネイティブゲームが25%で、「海外のコイン消費が全体に占める比率は15%弱、売上高に占める比率で20%弱くらい」(秋山氏)という。
スマホ向けのコイン消費(7~9月)は全体で前年比1.5倍、うちブラウザゲームは1.2倍、ネイティブゲームは2.8倍と、それぞれ伸びている。「スマホのウェブゲーム(ブラウザゲーム)は着実に伸びているので、この市場をきちんと確保していく」という。
ネイティブは「海外は拡大しているが、国内はテコ入れが必要」とのこと。海外のコイン消費はほぼネイティブ。「断続的にネイティブタイトルをリリースしており、月1億~3億円級のタイトルは何本か出ている」という。米国事業は、昨年10~12月(2013年6月期2Q)に開発タイトルの見直しなどを進め、運営・運用部分に注力するという体制改善を進めてから、コイン消費が増加基調。一方、国内はカードバトルの新作をリリースしているが、足踏み状態といい、「カードバトルではないタイトルをリリースして、育てていく」方針だ。
ネイティブの伸びが鈍化しているように見える、との質問に対しては、海外と国内の状況別に回答した。「海外はゲームデザインの劇的な変化が起きているわけでなく、イベントなど開発の進捗度合いの影響であり、大勢に影響があるものではないと考えている。今後も継続的に伸びていくと思う」「一方、国内はゲームデザインの変化が進んでいる。我々が作っていたカードバトルゲームが昔ほど多くの方に受け入れられる状況ではない。次のゲームデザインに移る必要があるが、タイムリーに出せていない」という。
サードパーティのブラウザゲームは、スマホ部分を抜き出すとコイン消費が伸びている。なぜサードパーティは好調なのか。田中社長は「定期的にヒット作を出していることが最大の要因。内製ゲームはこの点ができていない」と指摘、「逆に言えば、サードパーティのように我々も良い新作をリリースしていくことが、今後の戦略」と述べた。なお、先に決算を発表したディー・エヌ・エー<2432>の守安功社長は「(10~12月のコイン消費は)サードパーティのほうが内製に比べて減少の割合が大きくなりそ う」と発言している(関連記事)。グリーのサードパーティについても、足もとの状況はどうかという質問が出たが、 「右肩上がりではないが、新規タイトルや既存タイトルの盛り返しで、今は落ち込みトレンドではない」(秋山氏)と語った。
なぜ、内製ブラウザゲームで、これまで新しいヒット作出てこなかったのか。田中社長はその理由を「この2、3年を振り返ってみると、我々は(スマホなど) デバイス対応を進めてきた。既存タイトルのデバイス対応に主眼を置いていたため、新タイトルの制作が手薄になっていた」と分析。「デバイス対応もひと通り終わったので新作に経営資源を投入する」と述べた。
「問題」と表現する内製の新作タイトルでヒットを断続的に出していくため、開発体制を変更し、経営資源を振り向けていく。とりわけ「1本あたりの収益性が重要。最低(月商)1億円、ウェブゲーム(ブラウザゲーム)であれば3億~5億円の規模を狙えるものに絞り込んで作っていくことを計画している」という。ネイティブでは「少人数でプロトタイプを作り、その中から良い作品をリリースするような生産プロセスを整えていく」と述べた。「2Q(10~12月)で反転攻勢に向けた施策の種をまく。新規タイトルを継続的にリリースするための開発体制を整える」と意気込んだ。
会場からは、希望退職や大阪スタジオの閉鎖が開発に影響を与えないか、という質問が相次いだ。大阪スタジオの閉鎖については「開発ラインを増やすことが単純に成功の確率と比例しない。少数タイトルに絞り込んで良い作品にする方が、成長の確率を高める」と回答した。希望退職については「対象は間接・管理部門が中心で、ゲーム開発部門ではないため、直接的なものはあまりない」としつつ、「社内には当然ショックに思っている人も多いと思うので、ケアしていくことも自分の仕事だ」と答えた。なお、希望退職を実施したこと自体については「厳粛に受け止めたい。やるべきことを進めていくことが重要。これを転換点として、会社を再成長させることが自分の責務だ」との考えを示した。
秋山氏が業績のガイダンス(指針)を具体的に説明した。「2Qの売上高は、10%まではいかないが、1ケタ後半の落ち込みを1Q対比で想定している。営業利益は売上高が落ちる分とほぼ同額の減少を想定している」とのこと。
なお、2Qはゲームタイトル資産の減損を想定していない。「3四半期続けて特別損失を計上してきた。戦略変更などに伴いゲームタイトル関連資産の特別損失を計上するのは、これでいったん区切りがついたかなと考えている」という。減損の詳細に関して、「ゲームタイトルの関連資産は過去3四半期で130億円ほどの減損を実施し、残り34億円というところまで減った。7月から会計ルールを変更し、海外については全て即時費用化する。国内はウェブ(ブラウザ)のみ資産化するが2年で償却する方針としたので、今後、どんどんタイトル資産が積みあがることはない見込みだ。四半期に10億円程度の積み上がりに収まるかなと考えており、大きな特損は出にくくなるとみている」と説明した。(右写真は説明会での秋山氏)
3Q(2014年1~3月)以降について、秋山氏は「内製の新作タイトル投入は3Qからで、売上高に響いてくるのは4Qから。売上高の回復を伴って利益が戻ってくるのが4Qとみている」と話した。なお、コスト削減は前回決算時に目標とした「(13年4~6月の固定費から)10%程度」を達成したため、目標値を「15%」に上積みして、一層進めていく方針。「売上高の反転を待ちながら、コストコントロールを着々と進めていく」という。なお、今後の人件費は「自然減以外に、大幅に水準を変えるということは考えていない」とのこと。
説明会に臨んだ田中良和社長は「希望退職を転換点とし、会社を再成長させることが自分の責務」と述べ、4Q(2014年4~6月)に売上高の増加を目指すと述べた。業績鈍化の原因は内製ゲームにあるとして「好調なサードパーティのように定期的にヒット作を出していく」「(スマホなど)デバイス対応が一巡したので新作開発に経営資源を振り向ける」などと、業績回復に向けて新作投入の意欲やスケジュールを示したが、具体的な作品の画面やデザインなどは提示されなかった。海外事業の単月黒字化を年内に達成できそうなことや、新成長分野として広告事業への期待も述べた。(以下、かぎ括弧内は断りが無ければ田中社長の発言。図表内の赤線・矢印はソーシャルゲームインフォが加筆した)
▲説明会の田中社長
■フィーチャーフォン向け落ち込み減収、コスト削減は進む 海外売上高比率は「20%弱」に成長
7~9月は、ゲームタイトル関連資産の減損や希望退職関連など特別損失を52億円計上したものの、コスト削減の効果で最終損益は24億円の黒字を確保した。広告宣伝費などを含めた固定費は前四半期から19億円(12%)削減しており、前四半期の決算発表時に示した目標である「1年後までに10%」を前倒しで達成した。この四半期の売上高は353億円と前四半期から減少したが、「売上高はほぼ想定通り」(秋山仁・執行役員常務兼管理統括本部長)とのこと。スマートフォン向けの売り上げは順調に伸び、ネイティブゲームも海外で伸びたが、国内フィーチャーフォン向けの落ち込みを補いきれなかった格好だ。売上高の内訳はゲームを中心とする有料課金収入が328億円、広告が25億円。コイン(仮想通貨)消費額の構成比率はフィーチャーフォン向けウェブゲーム(ブラウザゲーム)が35%、スマホ向けブラウザゲームが40%、ネイティブゲームが25%で、「海外のコイン消費が全体に占める比率は15%弱、売上高に占める比率で20%弱くらい」(秋山氏)という。
■スマホのコイン消費は成長 ブラウザはサードパーティ、ネイティブは海外が好調
グリーのコイン消費の総量は減っているが、スマホユーザーのコイン消費は成長している。「スマホ向けのブラウザゲームはパートナー(サードパーティ)タイトルが好調で、ネイティブは海外が順調に拡大している」ためだ。スマホユーザーのコイン消費の構成比率は65%まで伸びた。田中社長は「スマホ向けの伸びでフィーチャーフォン向けの落ち込みをいつか補い切れる」との期待を述べた。スマホ向けのコイン消費(7~9月)は全体で前年比1.5倍、うちブラウザゲームは1.2倍、ネイティブゲームは2.8倍と、それぞれ伸びている。「スマホのウェブゲーム(ブラウザゲーム)は着実に伸びているので、この市場をきちんと確保していく」という。
▼スマホのコイン消費動向:ネイティブをけん引役にスマホユーザーのコイン消費は成長している
■国内ネイティブは要テコ入れ 「カードバトルゲームが昔ほど受け入れられない」
ネイティブは「海外は拡大しているが、国内はテコ入れが必要」とのこと。海外のコイン消費はほぼネイティブ。「断続的にネイティブタイトルをリリースしており、月1億~3億円級のタイトルは何本か出ている」という。米国事業は、昨年10~12月(2013年6月期2Q)に開発タイトルの見直しなどを進め、運営・運用部分に注力するという体制改善を進めてから、コイン消費が増加基調。一方、国内はカードバトルの新作をリリースしているが、足踏み状態といい、「カードバトルではないタイトルをリリースして、育てていく」方針だ。ネイティブの伸びが鈍化しているように見える、との質問に対しては、海外と国内の状況別に回答した。「海外はゲームデザインの劇的な変化が起きているわけでなく、イベントなど開発の進捗度合いの影響であり、大勢に影響があるものではないと考えている。今後も継続的に伸びていくと思う」「一方、国内はゲームデザインの変化が進んでいる。我々が作っていたカードバトルゲームが昔ほど多くの方に受け入れられる状況ではない。次のゲームデザインに移る必要があるが、タイムリーに出せていない」という。
■ブラウザゲーム:「問題は内製タイトル」、サードパーティは「落ち込み基調ではない」
ネイティブを除いたブラウザゲーム全体の動向について説明する場面もあった。ブラウザゲーム分野では、サードパーティはスマホ向けの伸びでフィーチャーフォン向けの減少を補いながら「ほぼ横ばいの状況」と善戦。ブラウザゲーム分野のコイン消費について「今起こっていることは、ウェブゲーム(ブラウザゲーム)対ネイティブゲームという構図ではなく、内製・協業タイトルの落ち込み」と指摘した。▼ブラウザゲームのコイン消費動向:サードパーティが横ばいと善戦、内製・協業の減少がきつい
サードパーティのブラウザゲームは、スマホ部分を抜き出すとコイン消費が伸びている。なぜサードパーティは好調なのか。田中社長は「定期的にヒット作を出していることが最大の要因。内製ゲームはこの点ができていない」と指摘、「逆に言えば、サードパーティのように我々も良い新作をリリースしていくことが、今後の戦略」と述べた。なお、先に決算を発表したディー・エヌ・エー<2432>の守安功社長は「(10~12月のコイン消費は)サードパーティのほうが内製に比べて減少の割合が大きくなりそ う」と発言している(関連記事)。グリーのサードパーティについても、足もとの状況はどうかという質問が出たが、 「右肩上がりではないが、新規タイトルや既存タイトルの盛り返しで、今は落ち込みトレンドではない」(秋山氏)と語った。
■内製ブラウザでヒットが出ない理由は「既存タイトルのデバイス対応に主眼」
なぜ、内製ブラウザゲームで、これまで新しいヒット作出てこなかったのか。田中社長はその理由を「この2、3年を振り返ってみると、我々は(スマホなど) デバイス対応を進めてきた。既存タイトルのデバイス対応に主眼を置いていたため、新タイトルの制作が手薄になっていた」と分析。「デバイス対応もひと通り終わったので新作に経営資源を投入する」と述べた。■今期は新作40本程度を投入予定、開発体制も変更 希望退職の影響「直接的なものはない」
今期の新規タイトルのリリース状況と、今後の計画は以下の通り。ブラウザゲームでは、サードパーティの新作リリースは計画通り進行しており、下半期には「ここ最近伸びているグラニさんのタイトルなどが出てくる」と期待を漏らした。一方、内製は、品質追求のため、上半期(7~12月)を予定していた3タイトルのリリースを来年以降に遅らせる。ネイティブでは、国内・海外ともにリリースは計画通り進んでいる。合計で今期に41本程度の新作が投入される計画だ。下半期に3本リリースする予定の海外は「成功タイトルの横展開が機能している。『Knights & Dragons』のAndroid版や多言語版で成長を狙える」と話した。国内ネイティブは下半期に5本リリースする予定だが「カードバトル以外を伸ばす」と強調した。「問題」と表現する内製の新作タイトルでヒットを断続的に出していくため、開発体制を変更し、経営資源を振り向けていく。とりわけ「1本あたりの収益性が重要。最低(月商)1億円、ウェブゲーム(ブラウザゲーム)であれば3億~5億円の規模を狙えるものに絞り込んで作っていくことを計画している」という。ネイティブでは「少人数でプロトタイプを作り、その中から良い作品をリリースするような生産プロセスを整えていく」と述べた。「2Q(10~12月)で反転攻勢に向けた施策の種をまく。新規タイトルを継続的にリリースするための開発体制を整える」と意気込んだ。
会場からは、希望退職や大阪スタジオの閉鎖が開発に影響を与えないか、という質問が相次いだ。大阪スタジオの閉鎖については「開発ラインを増やすことが単純に成功の確率と比例しない。少数タイトルに絞り込んで良い作品にする方が、成長の確率を高める」と回答した。希望退職については「対象は間接・管理部門が中心で、ゲーム開発部門ではないため、直接的なものはあまりない」としつつ、「社内には当然ショックに思っている人も多いと思うので、ケアしていくことも自分の仕事だ」と答えた。なお、希望退職を実施したこと自体については「厳粛に受け止めたい。やるべきことを進めていくことが重要。これを転換点として、会社を再成長させることが自分の責務だ」との考えを示した。
■2Qは1割弱の減収減益、「4Qに売上反転」目指す 海外の単月黒字化も年内達成見込み
今後の見通しについて、田中社長は「事業の再構築を進めながら、トップライン(売上高)を伸ばすことが最重要。新作タイトルの開発を進め、4Qでの売り上げ反転を目指す」と述べた。また、ネイティブ分野で成長している「海外事業の単月黒字化は年内に達成する見込みで順調に進んでいる」と、先行きへの自信を伝えた。秋山氏が業績のガイダンス(指針)を具体的に説明した。「2Qの売上高は、10%まではいかないが、1ケタ後半の落ち込みを1Q対比で想定している。営業利益は売上高が落ちる分とほぼ同額の減少を想定している」とのこと。
なお、2Qはゲームタイトル資産の減損を想定していない。「3四半期続けて特別損失を計上してきた。戦略変更などに伴いゲームタイトル関連資産の特別損失を計上するのは、これでいったん区切りがついたかなと考えている」という。減損の詳細に関して、「ゲームタイトルの関連資産は過去3四半期で130億円ほどの減損を実施し、残り34億円というところまで減った。7月から会計ルールを変更し、海外については全て即時費用化する。国内はウェブ(ブラウザ)のみ資産化するが2年で償却する方針としたので、今後、どんどんタイトル資産が積みあがることはない見込みだ。四半期に10億円程度の積み上がりに収まるかなと考えており、大きな特損は出にくくなるとみている」と説明した。(右写真は説明会での秋山氏)
3Q(2014年1~3月)以降について、秋山氏は「内製の新作タイトル投入は3Qからで、売上高に響いてくるのは4Qから。売上高の回復を伴って利益が戻ってくるのが4Qとみている」と話した。なお、コスト削減は前回決算時に目標とした「(13年4~6月の固定費から)10%程度」を達成したため、目標値を「15%」に上積みして、一層進めていく方針。「売上高の反転を待ちながら、コストコントロールを着々と進めていく」という。なお、今後の人件費は「自然減以外に、大幅に水準を変えるということは考えていない」とのこと。
■広告事業:Glossomは「グリー以外の出稿比率も高まっている」
社内の広告事業を集約してGlossomを設立した。田中社長は「グリーからの広告出稿が多いといわれるが、グリー以外の比率も高まってきている」といい、今後の成長に対する期待を述べた。■関連リンク
・決算説明会資料
・決算説明会資料
会社情報
- 会社名
- グリー株式会社
- 設立
- 2004年12月
- 代表者
- 代表取締役会長兼社長 田中 良和
- 決算期
- 6月
- 直近業績
- 売上高613億900万円、営業利益59億8100万円、経常利益71億2300万円、最終利益46億3000万円(2024年6月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 3632