エイチーム<3662>は12月12日、2014年7月期の第1四半期(8~10月、1Q)連結決算を発表し、都内で決算説明会を開催した。全体の売上高は前四半期(5~7月)に比べて3%増えたが、営業利益は新作ゲームの広告費用などが重荷となり、71%減の1億円強にとどまった。「エンターテインメント(ゲーム)事業」の売上高は減少しており、新作がゲーム事業の成長を再加速させているとは言い難い。説明会に臨んだ林高生社長は「売上と利益は今が底と見ている」「今後は広告費などが減るので、新作ゲームの『レギオンウォー』がしっかり利益に寄与してくる」といい、収益改善の道筋を示した。なお、新作のリリースについては「第2四半期に特に大きなタイトルの予定はない」という。
説明会に参加したアナリストからは、12月6日に発表した韓国のNHNエンターテインメントとの提携に関する質問が相次いだ。ゲーム市場において「LINE」や「Kakao Talk」(以下カカオ)といったメッセンジャー向けアプリゲームの人気が高まっている点を、提携の背景として説明した。(以下、断りが無ければ、かぎ括弧内は林社長の発言)
林社長は8~10月の「エンターテインメント事業」について、「大ヒットタイトルを作れなかった点が最大の反省点」と振り返った。第1四半期の利益が減少した一番の要因は、『ダークサマナー』の世界観を引き継ぐ3DダンジョンRPG『ダークラビリンス』(6月配信開始)や全世界リアルタイムギルドバトルRPG『レギオンウォー』(8月にiOS版、10月にAndroid版を配信開始)といった「新作のリリースで外注費が増加したこと」と説明。この2作品の売上が想定していたほど伸びないなか、外注費が重荷となった。(写真は説明会での林社長)
これまで林社長は「8~10月は『レギオンウォー』のプロモーション費用で利益はほぼゼロになりそうだ」と伝えてきた。だが、『レギオンウォー』の広告効果が想定ほど良くないため、広告費を絞った結果、8~10月に約1億円の利益が出たという。
前年同期比ではエンターテインメント事業の営業利益は8割近く減少した。「前年同期は『ダークサマナー』と『AKB48ステージファイター(以下AKB)』の売上が一番伸びた時。この第1四半期は『ダークサマナー』の売上がピーク時の半分くらいに減っている」(林社長)という。一方、新作の『レギオンウォー』と『ダービーインパクト』の売上と利益が下支えとなった。
新作のうち『レギオンウォー』は「狙っていた“ホームラン級”ではないが、11月以降、累計100万ダウンロードを突破し、月商1億円規模に成長している」という。一方の『ダークラビリンス』の売上は低調で「厳しい状況」だ。
▲『レギオンウォー』
▲『ダークラビリンス』
ブラウザ系ゲームの落ち込みはきついのか、との質問に対しては、取締役エンターテインメント事業本部長である中内之公氏が回答。「『AKB』はそういう感じでもない。『ダークサマナー』も底を入れたかなという状況で安定している」としつつ、「前年同期比と前四半期比の両方で明らかに落ちているのが利益率の高い公式サイト。『エターナルゾーン』『ミリオンバーサス』などだ」と説明した。
林社長は、この第1四半期でもっとも苦戦していたのが「引越し侍」と話す。競争激化で、広告費を中心に顧客獲得コストが増加しているという。「引越し価格ガイド」というサイトが、被リンク数が多いことなどを理由にグーグルからペナルティを受け、SEO(検索エンジン最適化)が低下したことも逆風だった。ここ何ヶ月間かリンクをはずしてもらう作業を実施し、すでにペナルティは解除されているとのこと。
合弁会社の詳細については、中内取締役が説明した。中内氏によると「合弁会社ではNHNがパブリッシングや海外ローカライズ、エイチームは開発を担う」「NHNのアドバイスをもらいながらアプリを作っていく」「人員などの詳細はまだ決めていないが、開発にかかる人件費などのコストはエイチーム側、パブリッシングコストはNHN側が請け負う」とのこと。メッセンジャー向けのアプリの開発費は「これまでのネイティブとさほど変わらないが、カジュアル色の強いものに取り組んでいこうと考えているため、若干圧縮するのかなと考えている」という。
合弁会社でつくったゲームはLINE、カカオ向けのみの配信となるのか、という質問には「基本的にメッセンジャー向けだが、作ったアプリは合弁会社の資産となる。出資している両社がメッセンジャー以外への展開が有効だと考えれば可能」(中内氏)と回答した。
なお、林社長は「いまはLINE、カカオ向けの企画を数本進めている」と明かし、「ホームラン級のヒット作を出し、海外にも積極的に出していこう、という期待を寄せている」と述べた。もちろん、エイチーム本体はApp StoreやGoogle Play向けにも注力していく方針だ。また『ダークラビリンス』の海外展開と合弁会社は関わりがないという。
中内氏が、タイトル別のコスト削減方針を説明した。コスト削減は広告費と外注費の圧縮を中心に実施していくという。
新作の『レギオンウォー』と『ダークラビリンス』のリリース時にかかった広告費は今後、抑制できる。『レギオンウォー』は「リリース時のプロモーションは一定の成果があり、収益は安定的に推移している。外注費などは売上規模にあったコスト構造に調整し、広告は費用が回収できるものだけ実施していく」(中内氏)という。同タイトルは利益を維持しながら、再成長の機会を探っていく方針だ。
▲販管費率が70%台で推移するなか、売上原価率が23%まで上昇
一方、『ダークラビリンス』は日本では非常に苦しく、運用コストは削減していく方針。広告は採算がとれる範囲で実施しつつ「海外展開を模索していく」(中内氏)とのこと。売上が低迷している『ダークサマナー』のコストも削減方向だ。
人件費は新規のアプリ開発に充てていくというが、今後の新作アプリの投入スケジュールについて、中内氏は「本格的には第3、4四半期(2014年2~7月)」と述べるにとどめ、詳細は語らなかった。
■関連リンク
・エイチーム決算説明会資料
説明会に参加したアナリストからは、12月6日に発表した韓国のNHNエンターテインメントとの提携に関する質問が相次いだ。ゲーム市場において「LINE」や「Kakao Talk」(以下カカオ)といったメッセンジャー向けアプリゲームの人気が高まっている点を、提携の背景として説明した。(以下、断りが無ければ、かぎ括弧内は林社長の発言)
■8~10月は「大ヒットタイトルを作れなかった」
林社長は8~10月の「エンターテインメント事業」について、「大ヒットタイトルを作れなかった点が最大の反省点」と振り返った。第1四半期の利益が減少した一番の要因は、『ダークサマナー』の世界観を引き継ぐ3DダンジョンRPG『ダークラビリンス』(6月配信開始)や全世界リアルタイムギルドバトルRPG『レギオンウォー』(8月にiOS版、10月にAndroid版を配信開始)といった「新作のリリースで外注費が増加したこと」と説明。この2作品の売上が想定していたほど伸びないなか、外注費が重荷となった。(写真は説明会での林社長)
これまで林社長は「8~10月は『レギオンウォー』のプロモーション費用で利益はほぼゼロになりそうだ」と伝えてきた。だが、『レギオンウォー』の広告効果が想定ほど良くないため、広告費を絞った結果、8~10月に約1億円の利益が出たという。
前年同期比ではエンターテインメント事業の営業利益は8割近く減少した。「前年同期は『ダークサマナー』と『AKB48ステージファイター(以下AKB)』の売上が一番伸びた時。この第1四半期は『ダークサマナー』の売上がピーク時の半分くらいに減っている」(林社長)という。一方、新作の『レギオンウォー』と『ダービーインパクト』の売上と利益が下支えとなった。
■『ダービーインパクト』『レギオンウォー』は月商1億円、一方「公式サイトが厳しい」
タイトル別でみると、好調組は競馬シミュレーションゲーム『ダービーインパクト』と『麻雀 雷神 -Rising-』だ。『ダービーインパクト』は「月商1億円規模に成長している」という。『麻雀雷神』は「北斗の拳」モードを搭載し、ソーシャルゲーム的な要素を取り入れたところ、売上が月次で数千万円規模に伸びたという。時計や視力ケアなどの無料ツールアプリ『zero app』シリーズも月商1000万円を超える規模に成長しているとのこと。新作のうち『レギオンウォー』は「狙っていた“ホームラン級”ではないが、11月以降、累計100万ダウンロードを突破し、月商1億円規模に成長している」という。一方の『ダークラビリンス』の売上は低調で「厳しい状況」だ。
▲『レギオンウォー』
▲『ダークラビリンス』
■ライフスタイルサポート事業は堅調、「引越し侍」は苦戦
引越し比較サイト「引越し侍」、車査定・車買取サイト「ナビクル」、ブライダルサイト「すぐ婚navi」などを手掛ける「ライフスタイルサポート事業」の売上高は、前年同期比31%増の12.28億円、利益が25%増の1.35億円と堅調に成長している。ただ、前四半期比では売上高が15%増にもかかわらず、利益が25%減った。林社長は、この第1四半期でもっとも苦戦していたのが「引越し侍」と話す。競争激化で、広告費を中心に顧客獲得コストが増加しているという。「引越し価格ガイド」というサイトが、被リンク数が多いことなどを理由にグーグルからペナルティを受け、SEO(検索エンジン最適化)が低下したことも逆風だった。ここ何ヶ月間かリンクをはずしてもらう作業を実施し、すでにペナルティは解除されているとのこと。
■NHNエンターテインメントとの提携①「開発はエイチーム、パブリッシングはNHN」
林社長はNHNエンターテインメントとの提携のきっかけについて、「自社タイトルの韓国展開を模索する中でお会いした」と明かした。「NHN側が1年半くらい前から我々のゲーム開発力に注目していたようで、初めて会ったときから友好的だった。メッセンジャー向けのアプリが重要になるという展望を語ったところ、向こうから合弁の提案があった」という。また、「NHNエンターテインメントによるエイチーム株の保有を受け入れた理由は、より強い関係を築きたいと思ったから」と話した。■NHNエンターテインメントとの提携②「利益率は低下」「LINE、カカオ向け企画が数本進行中」
メッセンジャー向けアプリのビジネスモデルについても中内氏が説明。「通常のネイティブアプリ同様、グーグルやアップルへの決済手数料がかかるほか、メッセンジャーに支払う手数料も発生するため利益率は下がる」という。LINEの親会社の韓国NAVERと資本関係があるNHNエンターテインメントと組めばLINE向けアプリの手数料が安くなるのか、という質問には「そういった話はしていない。まだ企画段階で、話が出てくるとすれば今後だと思う。それを見越して提携したわけではない」と答えた。合弁会社でつくったゲームはLINE、カカオ向けのみの配信となるのか、という質問には「基本的にメッセンジャー向けだが、作ったアプリは合弁会社の資産となる。出資している両社がメッセンジャー以外への展開が有効だと考えれば可能」(中内氏)と回答した。
なお、林社長は「いまはLINE、カカオ向けの企画を数本進めている」と明かし、「ホームラン級のヒット作を出し、海外にも積極的に出していこう、という期待を寄せている」と述べた。もちろん、エイチーム本体はApp StoreやGoogle Play向けにも注力していく方針だ。また『ダークラビリンス』の海外展開と合弁会社は関わりがないという。
■コスト削減で利益計画の達成目指す
エイチームの中間期(2013年8月~2014年1月)の経常益見通しは約5億円。残り3か月で4億円の利益が出せるのか、という質問については「『ダークラビリンス』などの外注費を圧縮し始めているので、エンターテインメント事業としては月次で1億円強の利益が出てくる見通し」(林社長)と答えた。中内氏が、タイトル別のコスト削減方針を説明した。コスト削減は広告費と外注費の圧縮を中心に実施していくという。
新作の『レギオンウォー』と『ダークラビリンス』のリリース時にかかった広告費は今後、抑制できる。『レギオンウォー』は「リリース時のプロモーションは一定の成果があり、収益は安定的に推移している。外注費などは売上規模にあったコスト構造に調整し、広告は費用が回収できるものだけ実施していく」(中内氏)という。同タイトルは利益を維持しながら、再成長の機会を探っていく方針だ。
▲販管費率が70%台で推移するなか、売上原価率が23%まで上昇
一方、『ダークラビリンス』は日本では非常に苦しく、運用コストは削減していく方針。広告は採算がとれる範囲で実施しつつ「海外展開を模索していく」(中内氏)とのこと。売上が低迷している『ダークサマナー』のコストも削減方向だ。
人件費は新規のアプリ開発に充てていくというが、今後の新作アプリの投入スケジュールについて、中内氏は「本格的には第3、4四半期(2014年2~7月)」と述べるにとどめ、詳細は語らなかった。
■関連リンク
・エイチーム決算説明会資料
会社情報
- 会社名
- 株式会社エイチーム
- 設立
- 2000年2月
- 代表者
- 代表取締役社長 林 高生
- 決算期
- 7月
- 直近業績
- 売上高239億1700万円、営業利益5億6200万円、経常利益6億900万円、最終利益9億5300万円(2024年7月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 3662