任天堂<7974>は1月30日、 第3四半期の決算説明会にあわせて経営方針の説明会を開催した。説明会で岩田聡社長の発言内容が任天堂公式サイトに掲載されているので、スマートデバイス(スマートフォンやタブレット)に向けた事業展開などを中心に抜粋・編集した。ポイントは「任天堂がこれまで制作してきたソフトを単純にスマートデバイスに供給するわけではない」「任天堂のプラットフォームに誘導するためにスマートデバイスを活用する」「プラットフォームの定義をハードから、ニンテンドーネットワークIDを元にしたアカウント単位に変える」というものだ。また、今後の経営方針については「自社IPの積極活用」のほか「QOL向上」「ノン・ウェアラブル」「健康」をキーワードして挙げた。
「これまで任天堂のハードだけで構成されていた任天堂のプラットフォームに、スマートデバイスをどのように組み入れるのか、ということも大きなポイント」として説明している。
これまでのプラットフォームの定義では、「任天堂のハードを持っていない限り、ユーザーと任天堂のつながりがつくれない」という制約があったが、現在は、スマートデバイスをどのように活用していくかが非常に重要だと考えているという。ただ、「任天堂のこれまでつくってきたソフトを、単純にスマートデバイスにも供給する」という意味ではないと強調。「スマートデバイスを通じてユーザーとのつながりをつくり、そのつながりを通じて任天堂プラットフォームの娯楽の魅力を伝え、任天堂プラットフォームに参加してもらうきっかけをつくる」という目的で、スマートデバイスを積極的に活用していく方針であるという。
岩田社長は「任天堂は、自社コンテンツをスマートデバイスに供給すべき」という意見を、この数年、多くの方からいただくようになったと話した。「スマートデバイスのアプリとして任天堂のゲームソフトを移植すれば、ビジネスが拡大するはずだ」との意見に対して、「ハード・ソフト一体型のビジネスという任天堂の強みを活かせない場では、任天堂の目標とする規模のビジネスを中長期にわたって持続させることは困難ではないかと」と任天堂は認識しているという。
任天堂は、スマートデバイスで直接ビジネスを展開するアプローチではなく、スマートデバイスでユーザーとのより強いつながりをつくることによって、自社プラットフォームのビジネスを拡大するアプローチを優先する考えだという。ユーザーの関心を、スマートデバイスでのアプリなどを通じて、任天堂のハードなどに向けるという戦略だ。
自社のゲーム資産をそのまま移植というアプローチを採ることは一切想定していないが、(スマートデバイスでのつながりを)開発するチームには、ゲームをつくることも、自社のキャラクターを使うことも禁じていないとのこと。ただ、このことをもって「マリオをスマートデバイスに供給」と報道されると、完全にミスリードだとも指摘。スマートデバイス上のアプリとして、何らかのサービスを、今年中に開始したいという。
例えばとして挙げるのが「ソフトをダウンロード購入するための環境」。今後on device(ゲーム機上で実現するサービス)側で改善するよりも、off device(ゲーム機以外のPCやスマートデバイス)側で改善することを、より積極的に行うべきではないかと考えているという。
それの前段階として目指すのが「プラットフォームの再定義」。ユーザーとのつながりをニンテンドーネットワークID(NNID)で一元管理していくことで、「プラットフォームがハードに縛られず仮想化される」ことを目指す。プラットフォームの定義をデバイス単位から、NNIDを元にしたアカウント単位に変えることだ。
「プラットフォームの再定義」を実現し、ゲーム専用機のハード・ソフトの売り方も変えていきたいという。例えば、年に1タイトルだけゲームソフトを遊ぶユーザーも、年に5タイトル、10タイトルと遊ぶユーザーも、ソフト1タイトルの価格は同じなのが当たり前だったが、アカウント単位で、特定の条件を満たすユーザーを対象にソフト価格を柔軟にすることができれば、「遊べば遊ぶほどソフトが安く楽しめる」というようなことが実現できる。この特定の条件というのは、例えば、友達同士で誘いあって一緒にゲームを始めるというようなことも含めることもできる。
また、任天堂が持っている豊富なキャラクターIPの活用に関しても、今後はより積極的に活用していく方針だ。
任天堂が「豊富なキャラクターIPを持っている」と言われるようになった背景には、どちらかというとキャラクターの価値の毀損のリスクも大きいIPライセンスビジネスに対して消極的で、自社の厳選したソフトを中心に登場させることでじっくり育ててきたことが、運良く実を結んでいる、という側面があると指摘。だが、今後は、これまでとは方針を変えていく。
これまでライセンスしないと決めていたデジタル分野におけるライセンスなども、「Win-Win」でやっていけるものについては、例外とせずに柔軟に対応していくという。任天堂キャラクターを、より多くの人の目に触れるようにしていくことを目指す。
任天堂がこれからの10年で挑戦することは、「人々のQOLを楽しく向上させるプラットフォームビジネス」と位置付ける。QOL向上による新規領域の最初のステップとして考えているのは、「健康」というテーマ。QOL向上プラットフォームという新たな娯楽事業の定義には「学習」や「生活」などさまざまな可能性があるが、最初のステップとして「健康」をテーマにする、ということだ。
単に健康をテーマにするだけではなく、新たなブルーオーシャン(競争の少ない市場)で展開したいと考えだ。今年の1月のCESでは、「ウェアラブル(身につける)」の提案が花盛りだったが、任天堂は「娯楽は他と違うからこそ価値がある」と考えている会社だと指摘。いま大激戦のモバイル分野や、これから大激戦になることが予想されるウェアラブルの分野に後から任天堂が乗り込んでいくのは任天堂のやり方ではないといい、新たなブルーオーシャン分野、つまりモバイルやウェアラブルではなく「ノン・ウェアラブル」を特徴とする新領域で、ハード・ソフト一体型プラットフォームビジネスを実現する方針だ。
任天堂が健康というキーワードを使うと、どうしても『Wii Fit』が連想されるが、「テーマについてはこれまで当社のゲーム機では扱ったことのないものを考えている」という。事業領域とするのは、未病のみなさんに、いかに健康をモニタリングし、適切なご提案ができるか、というものになるとのこと。
2014年中には、具体的にどんな特徴があるのか、ノン・ウェアラブルとはどういうものなのか、など事業内容の詳細に関する発表を予定している。この事業は2015年4月から始まる2016年3月期に事業を開始する予定で、翌年度から業績に寄与させて成長軌道に乗せることを目指す。
■関連リンク
・経営方針説明会/第3四半期決算説明会:社長説明
■「スマートデバイスを通じてユーザーとのつながりをつくる」
「これまで任天堂のハードだけで構成されていた任天堂のプラットフォームに、スマートデバイスをどのように組み入れるのか、ということも大きなポイント」として説明している。
これまでのプラットフォームの定義では、「任天堂のハードを持っていない限り、ユーザーと任天堂のつながりがつくれない」という制約があったが、現在は、スマートデバイスをどのように活用していくかが非常に重要だと考えているという。ただ、「任天堂のこれまでつくってきたソフトを、単純にスマートデバイスにも供給する」という意味ではないと強調。「スマートデバイスを通じてユーザーとのつながりをつくり、そのつながりを通じて任天堂プラットフォームの娯楽の魅力を伝え、任天堂プラットフォームに参加してもらうきっかけをつくる」という目的で、スマートデバイスを積極的に活用していく方針であるという。
■「マリオをスマートデバイスに供給」と報道されると、完全にミスリード
岩田社長は「任天堂は、自社コンテンツをスマートデバイスに供給すべき」という意見を、この数年、多くの方からいただくようになったと話した。「スマートデバイスのアプリとして任天堂のゲームソフトを移植すれば、ビジネスが拡大するはずだ」との意見に対して、「ハード・ソフト一体型のビジネスという任天堂の強みを活かせない場では、任天堂の目標とする規模のビジネスを中長期にわたって持続させることは困難ではないかと」と任天堂は認識しているという。
任天堂は、スマートデバイスで直接ビジネスを展開するアプローチではなく、スマートデバイスでユーザーとのより強いつながりをつくることによって、自社プラットフォームのビジネスを拡大するアプローチを優先する考えだという。ユーザーの関心を、スマートデバイスでのアプリなどを通じて、任天堂のハードなどに向けるという戦略だ。
自社のゲーム資産をそのまま移植というアプローチを採ることは一切想定していないが、(スマートデバイスでのつながりを)開発するチームには、ゲームをつくることも、自社のキャラクターを使うことも禁じていないとのこと。ただ、このことをもって「マリオをスマートデバイスに供給」と報道されると、完全にミスリードだとも指摘。スマートデバイス上のアプリとして、何らかのサービスを、今年中に開始したいという。
■アカウントで料金コントロール
また、これまでゲーム機上で実現してきたサービスの中で、スマートデバイスで実現したほうが使い勝手やユーザー体験を改善できるサービスについては、重点をスマートデバイスに移していくという。例えばとして挙げるのが「ソフトをダウンロード購入するための環境」。今後on device(ゲーム機上で実現するサービス)側で改善するよりも、off device(ゲーム機以外のPCやスマートデバイス)側で改善することを、より積極的に行うべきではないかと考えているという。
それの前段階として目指すのが「プラットフォームの再定義」。ユーザーとのつながりをニンテンドーネットワークID(NNID)で一元管理していくことで、「プラットフォームがハードに縛られず仮想化される」ことを目指す。プラットフォームの定義をデバイス単位から、NNIDを元にしたアカウント単位に変えることだ。
「プラットフォームの再定義」を実現し、ゲーム専用機のハード・ソフトの売り方も変えていきたいという。例えば、年に1タイトルだけゲームソフトを遊ぶユーザーも、年に5タイトル、10タイトルと遊ぶユーザーも、ソフト1タイトルの価格は同じなのが当たり前だったが、アカウント単位で、特定の条件を満たすユーザーを対象にソフト価格を柔軟にすることができれば、「遊べば遊ぶほどソフトが安く楽しめる」というようなことが実現できる。この特定の条件というのは、例えば、友達同士で誘いあって一緒にゲームを始めるというようなことも含めることもできる。
■IPの積極活用
また、任天堂が持っている豊富なキャラクターIPの活用に関しても、今後はより積極的に活用していく方針だ。任天堂が「豊富なキャラクターIPを持っている」と言われるようになった背景には、どちらかというとキャラクターの価値の毀損のリスクも大きいIPライセンスビジネスに対して消極的で、自社の厳選したソフトを中心に登場させることでじっくり育ててきたことが、運良く実を結んでいる、という側面があると指摘。だが、今後は、これまでとは方針を変えていく。
これまでライセンスしないと決めていたデジタル分野におけるライセンスなども、「Win-Win」でやっていけるものについては、例外とせずに柔軟に対応していくという。任天堂キャラクターを、より多くの人の目に触れるようにしていくことを目指す。
■「ノン・ウェアラブル」と「健康」
「任天堂の伝統的な事業とは異質な話」として、「ノン・ウェアラブル(身につける必要が無い)」「健康」をテーマにした事業を始めることを明らかにした。もちろん、「任天堂が、ビデオゲーム専用機プラットフォームを経営の中核とする意志は、全く揺らいでいない」と留保しつつだ。任天堂がこれからの10年で挑戦することは、「人々のQOLを楽しく向上させるプラットフォームビジネス」と位置付ける。QOL向上による新規領域の最初のステップとして考えているのは、「健康」というテーマ。QOL向上プラットフォームという新たな娯楽事業の定義には「学習」や「生活」などさまざまな可能性があるが、最初のステップとして「健康」をテーマにする、ということだ。
単に健康をテーマにするだけではなく、新たなブルーオーシャン(競争の少ない市場)で展開したいと考えだ。今年の1月のCESでは、「ウェアラブル(身につける)」の提案が花盛りだったが、任天堂は「娯楽は他と違うからこそ価値がある」と考えている会社だと指摘。いま大激戦のモバイル分野や、これから大激戦になることが予想されるウェアラブルの分野に後から任天堂が乗り込んでいくのは任天堂のやり方ではないといい、新たなブルーオーシャン分野、つまりモバイルやウェアラブルではなく「ノン・ウェアラブル」を特徴とする新領域で、ハード・ソフト一体型プラットフォームビジネスを実現する方針だ。
任天堂が健康というキーワードを使うと、どうしても『Wii Fit』が連想されるが、「テーマについてはこれまで当社のゲーム機では扱ったことのないものを考えている」という。事業領域とするのは、未病のみなさんに、いかに健康をモニタリングし、適切なご提案ができるか、というものになるとのこと。
2014年中には、具体的にどんな特徴があるのか、ノン・ウェアラブルとはどういうものなのか、など事業内容の詳細に関する発表を予定している。この事業は2015年4月から始まる2016年3月期に事業を開始する予定で、翌年度から業績に寄与させて成長軌道に乗せることを目指す。
■関連リンク
・経営方針説明会/第3四半期決算説明会:社長説明
会社情報
- 会社名
- 任天堂株式会社
- 設立
- 1947年11月
- 代表者
- 代表取締役社長 古川 俊太郎/代表取締役 フェロー 宮本 茂
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高1兆6718億6500万円、営業利益5289億4100万円、経常利益6804億9700万円、最終利益4906億0200万円(2024年3月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 7974