モブキャスト決算説明会 藪社長「経営資源をサッカーゲームに注力」…ゲーム版W杯を計画 「負けず嫌い男性」向けにプラットフォームを改良

モブキャスト<3664>は2月7日、2013年12月期通期の連結決算を発表し、都内で決算説明会を開催した。第4四半期(4Q、2013年10~12月)の売上高は前四半期(7~9月)比3%減の12.72億円、営業損益は3.01億の赤字と、四半期として上場以来最大の赤字幅となった。新規ゲーム開発が遅れる中、長期固定の広告費用が負担となった。

説明会で藪考樹社長は組織体制の変更を実施し、コストと進捗の管理を徹底する方針を説明。今期(2014年)の戦略として「サッカーゲーム分野への経営資源の集中」と「負けず嫌いの男性ユーザー向けプラットフォームの構築」の2点を掲げた。サッカーゲームの世界展開を進め、今年のサッカーワールドカップ(W杯)に合わせてオンラインサッカーゲームの世界大会を開催する計画という。また「大型IP(知的財産)」を獲得したことも明らかにした。(以下、かぎ括弧内は藪社長の発言)


■上場2年目に通期で営業赤字転落、今後は開発・コストの管理を徹底


2013年12月期通期の業績は、昨年11月に下方修正した後の計画値よりも売上・利益ともに上振れしたものの、売上高は前の期に比べて5%増の51.79億円にとどまり、4.45億円の営業赤字(前の期は11.27億円の黒字)に転落した。原因となった新作ゲームのリリース遅れについては、組織変更で対応する。

具体的には「企画段階からリリース後の運営イメージをKPI(業績評価仕様)に落とし込んで議論する」「プロトタイプの段階で追加投資の有無の判断をする」「mobcastプラットフォームと連動したサービスが全て盛り込まれているかどうか、広告をかけるべきかどうか」といった審査項目を、新設した経営企画室がチェックする。広告費も経営企画室がコントロールしていくという。


■『チェインイレブン』は好調、『ドラゴンスピン』は懸念材料

4Qにリリースしたタイトルを振り返り「3Q(7~9月)からの遅れを考慮しても、リリースは予定以上のペースで進んだ」と話した。なかでもgumiとの共同開発タイトルである『チェインイレブン ワールドクランサッカー』が好調という。
 
 
※0.5は1タイトルがGoogle Playのみの配信

一方、スマートフォン向け野球ゲーム『激闘!ぼくらのプロ野球!』(ぼくプロ)はプロ野球開幕に向けてKPIの改善中という。また『ドラゴンスピン』は「懸念材料」と話していた。『ドラゴンスピン』は現在、Androidのみの配信だが、課金を年末でいったんストップしており、大幅改善を実施する予定という。

レーシングゲーム『モバイルグランプリ』は、モブキャストが使用権を購入したWizcorp社のゲーム開発エンジン「MAGE」を使った初タイトルだが「予想できなかった不具合が発生」したという。ただ、バランス調整は年末に終わり、現在は当初予定していたKPIで運営しているとのこと。韓国のバスケットボールゲームも立ち上がりが遅れているという。

4Qはパートナーゲーム(サードパーティタイトル)の数が順調に増加。1月の業績は、自社ゲームが前月と同水準、パートナーゲームが前月比で増加するなど「足もとは順調」と話していた。
会場からはパートナータイトルの月商の状況について質問が出た。公表資料から概算すると1タイトル当たりの平均で月商100万円程度ではないか、という質問には「パートナータイトルは良いか悪いかがはっきりしていて、2極化している。月にその(100万円)10倍規模のタイトルもあれば、ほぼ売り上げがないようなものもある」 と答えた。また、「良い結果が出ているパートナーとはタイトル数を増やす話を進めている」と明かした。
 

■今期は保守的予想、課金利用者は「四半期では増加」


今期の業績予想は保守的に出したという。売上高は前期比2%増、営業利益は1億円の黒字に転換する計画だ。採算がとれる売上水準については、「昨年4Q(10~12月)の売上(13億円)がたてば営業利益が出る計画となっている」と答えた。
 

課金者数の推移については「四半期ベースでは、ユニークの課金利用者数は全体で増えている。古いタイトルである『モバプロ』『モバダビ』は若干減っている。『モバサカ』が増えている。外製ゲームのリリースも課金利用者増に寄与した」とのことだ。
 

日韓のユーザーに差はあるか、という質問には「同じエンジンとカード使っていることもあり、ほとんど同じKPI」と述べた。
 

■今期の戦略は「サッカー」と「負けず嫌い男性」


今期はプラットフォームのオープン化をさらに進めていくほか、韓国でのサッカーゲーム投入や提携したブースターメディア社経由でのゲーム配信などで海外展開を推進。さらに「負けず嫌いの男性ユーザー」向けにプラットフォームを改良していく方針だ。「前期に仕込んだものを、サッカーと、負けず嫌い男性向けプラットフォーム構築の、2点に注ぎ込む」とのこと。

海外展開では、サッカーゲーム中心の戦略を進める。『モバサカ』で実施した日韓戦が好評な結果だったといい、「韓国でのサッカーゲームをさらに追加し、知名度を高めていく」「韓国サッカーゲームでナンバーワンのモバイルプラットフォームを目指す」とのこと。

加えて、視点をワールドカップ(W杯)に据え、新規サッカーゲームを投入。W杯に合わせて、サッカーゲームの世界大会「mobcast GLOBAL CUP」を開く計画だ。韓国以外では、今春からブースターメディア経由で欧州各国に『モバサカ』の海外向けブラウザ版『League 11』を配信していくという。

 

■PF改良:ネイティブに対応、「ライバルグラフ」など競争要素追加


モブキャストがユーザー志向を分析した結果、負けず嫌いの男性が重要なユーザーであることが分かったという。今後、この「負けず嫌いの男性」に心地よいプラットフォーム(PF)を構築し、マーケティングを実施していく方針だ。「勝負資産」「ライバルグラフ」といった要素を加え、競うことが楽しめるようなプラットフォームを目指す。
 

さらに、現在主力のブラウザゲームだけでなく、ネイティブアプリに対応可能なクロスプラットフォームを構築する。上半期に準備し、今年下半期には自社のネイティブアプリを改良後のプラットフォームに投下する予定だ。ほかにも世界で対戦できる機能を整備。ゲームをまたいだ攻略情報によるコミュニケーションや、ネイティブとブラウザの間のコミュニケーションを可能にする基盤も構築する。
 

 
プラットフォームの改良計画の詳細は3月12日に発表する予定だ。
 

■サッカーに資源集中:世界で6タイトル展開、ゲームのW杯を計画


サッカーゲームについては、6タイトルを世界25か国で展開。『モバサカ』とその海外版を中心に、25カ国でモバイルインターネット上のサッカー世界大会を開催する。W杯のある上半期に「(通期で計画している)広告宣伝費全体の6~7割を集中投下」して、売上成長を目指す。

すでに日韓で配信している内製ブラウザゲーム『モバサカ』の海外向けネイティブアプリ版『All Star Eleven』を4月に投入、また『モバサカ』の海外向けブラウザ版『League 11』もブースターメディア経由で4月に欧州に投入する予定だ。

昨年12月に国内でリリースした『チェインイレブン』については、ネイティブ版を2Q以降に全世界で投入する。

また、アクロディアが提供している『サッカー日本代表ヒーローズ』についても、韓国版『サッカー韓国代表ヒーローズ』を4月に投入する予定。同タイトルで日韓戦を開催する計画だ。CWS Brainsの『100万人の超WORLDサッカー!』でもW杯と連動した企画を開催する。
 

積極的な海外展開方針について、会場からはコスト面を心配する声が出た。「売り上げ予想の10%ほどをマーケティングコストとして考えている。初動を見ながらコストを考えていく」とのこと。広告宣伝費も「売上高の見通し対比で10%ほどの広告宣伝費を考えている」と述べた。
 

■大型IPを獲得、サードパーティも上期5タイトル


なお、サッカーゲーム以外にも、『モバサカ』で使われているゲームエンジン「MSGE」を世界対戦可能に改良し、そのエンジンを使って2タイトルを下期に配信する予定だ。

加えて、MSGEを評価したパートナーと共同で大型IPタイトルもリリースする予定。サードパーティも上期に5タイトルをリリースする計画だ。



■関連リンク
決算説明会資料


 
株式会社モブキャストホールディングス
https://mobcast.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社モブキャストホールディングス
設立
2004年3月
代表者
代表取締役CEO 藪 考樹
決算期
12月
直近業績
売上高33億7100万円、営業損益4億2800万円の赤字、経常損益4億3600万円の赤字、最終損益3億8000万円の赤字(2023年12月期)
上場区分
東証グロース
証券コード
3664
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