【CEDEC2014】モバイルゲームにおけるドリコムの社内基盤開発と“実録”。開発の簡略化と効率化、そして知見の集約を担う役割として

2014年9月2日~4日に、パシフィコ横浜(神奈川県)で国内最大のゲーム開発者向けカンファレンス「コンピュータ・エンターテインメント・デベロッパーズ・カンファレンス 2014」(以下、CEDEC 2014)が開催。

最終日(9月4日)では、ドリコムの「モバイルゲームにおける社内基盤開発と“実録”」について講演が実施された。同社は、ネイティブアプリ開発における知見を集約するために、社内開発基盤の構築に取り組んでいる。これまでの開発経験を基に、ミドルウェア層を中心にモバイルゲームならではの開発ノウハウを、事例に交えて導入効果も含めた”実録”を紹介してくれた。

 

■開発の簡略化と効率化、そして知見の集約を担う役割として


ドリコムは、『フルボッコヒーローズ』や『ファンタジスタドール ガールズロワイヤル』などのソーシャルゲーム事業をはじめ、新作アプリを事前に予約できる事前登録メディア「フライングガチャ」といった、多種多様な事業を展開している企業。グラフィックやネットワーク、サウンド、データなど、プラットフォームを含めた様々な問題を経験した同社は、現在社内開発基盤の構築に取り組んでいる。
 
今回登壇したのは、ドリコムのソーシャルゲーム事業本部 開発部 マネージャー・川上知成氏、アーキテクトの木元将輝氏、市川毅明氏の3名。はじめに木本氏より、社内開発基盤「Bisque(ビスク)」の導入経緯について説明があった。「Bisque(ビスク)」は、特殊な技術や多様なプラットフォーム対応が求められるモバイルゲームの開発に対し、開発の簡略化と効率化、さらに知見の集約を担う役割として、今から2年前に開発がスタートしたとのこと。

また、同社のウェブ×ネイティブを併せたハイブリッドアプリ『神縛のレインオブドラゴン』の開発において、各々のプラットフォームに対し、2ラインの開発が必要になることを考え、コストやクオリティの面で様々な問題を鑑みて、クロスプラットフォーム開発も視野に入れたという。

そもそも同社が掲げる社内開発基盤は、何よりも前述したiOS/Androidのクロスプラットフォーム開発が可能であることを挙げた。加えて、各プラットフォームに対して独自の実装と修正が行えること、社内のエンジニアに対する学習コストを低く抑えられることも必要であることを続けた。また、『神縛のレインオブドラゴン』の開発経験上、ロード時間とレスポンスも当然考慮する必要があったという。
 

以上のことを実現するにあたり、既存のゲームエンジンを開発ツール「Cocos2d-x」を採用した。同ツールを採用した経緯は、大きくクロスプラットフォーム開発と独自の実装・修正が可能であること。さらに同社では、「Cocos2d-x」の開発実績があったため、エンジニアに対する学習コストも低く抑えられたことが理由のようだ。
 


続いて市川氏より基盤機能開発と事例について解説。基盤機能の開発経緯としては、「Cocos2d-x」の下回りのパフォーマンスが芳しくなかったこと、さらにOSSライセンス周りの問題、同社アプリで必要とされる独特の機能が多くカバーする必要があったため、全て内製にしたという。

事例紹介では、サウンドエンジンについて解説。下部のスライド通り、下回りの実装は最適なAPIを選択できるようになっている。「アプリ開発者にプラットフォームを意識させずに最適なものを作ってもらうため」と市川氏。さらに「コードで#ifdef(プラットフォーム)を書かせないことを絶対条件として実装している」と、開発の簡略化を意識した基盤作りにしたことも述べた。
 

 
現在「Bisque(ビスク)」は、スマートフォン版、PC版、データセンター(サーバー)版が存在。さらに現段階で独自に実装したものは、スレッド、I/O、低レベルソケット、高レベルネットワークアーカイブ、難読化アルゴリズム、サウンドエンジン(バックエンドはOpenAL、OpenSL、Xudio2)、GPS、ジャイロなどのスマホ特有機能の抽象化と多岐にわたるとのことだ。

講演の最後には、川上氏が「Bisque(ビスク)」の名前に込めた想いを話してくれた。「どんな良いお皿でも美味しい料理が乗らなければお客様に召し上がっていただけません。つまりは面白いゲームを作れて、そこで始めて評価されるものです。今後も美味しい料理が作れるように、魅力的な技術を取り入れつつ、弊社独自の技術を組み合わせて、より柔軟で強固な基盤開発を実施していきます」。
 

 
株式会社ドリコム
http://www.drecom.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社ドリコム
設立
2001年11月
代表者
代表取締役社長 内藤 裕紀
決算期
3月
直近業績
売上高97億7900万円、営業利益9億300万円、経常利益7億9300万円、最終利益1億400万円(2024年3月期)
上場区分
東証グロース
証券コード
3793
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