カヤックの人気シリーズの最新作『ぼくらの甲子園!ポケット』がヒットの兆しを見せている。根強いシリーズファンがいる証拠だろうか、配信2週間で50万DL達成(関連記事)したことに加えて、売上ランキングでも安定した推移を見せている(App Storeで最高45位)。さらに柳沢慎吾さんを起用したテレビCMも話題に(関連記事)。
そこで本稿では、カヤックから『ぼくらの甲子園!ポケット』の開発者に、人気シリーズの最新作に込めた新たなコンセプトをはじめ、丁寧かつ親切にデザインされたUIや世界観設定など、こだわり抜かれたゲーム性の裏側を訊いてきた。
■『ぼくらの甲子園!ポケット』とは
本作は、カヤックの看板タイトル『ぼくらの甲子園!』シリーズの最新作。プレイヤーは高校球児となり、同じチームのメンバーと切磋琢磨しながら甲子園出場、そして優勝を目指していく。練習はサイコロを振って進んでいくすごろくを採用している。マスの種類は多種多様で、ミニゲームを通してグッズ購入に利用できるコインの入手や、プレイヤー能力のアップ、また野球道具の強化ができる。また、フレンド一緒に練習すれば効率よく強くなれる。
プレイヤーは、熱血坊主からクールなイケメン、さらにシリーズ初の女子野球部員まで、個性豊かなキャラクターの中から、自分にピッタリな部員の選択が可能。グローブやバット、スパイクはもちろん、帽子やユニフォームも自分好みにカスタマイズして、お気に入りのスタイルで試合に臨める。そして、困ったときに助けてくれるマネージャーのあかね、試合で使う道具を強化をしてくれる大工の源さんや掛布じいさん、保健室の先生など、学校や街、試合外に登場するキャラクターたちも魅力的。
根幹となる試合は、毎日8:00、12:00、18:00、22:00に実施。リアルタイムで試合に参加してチームワークを発揮。作戦会議では、チームメイトの体力が回復するエールを飛ばしたり、スタンプを送ったりして試合を盛り上げよう。また、試合の途中経過を見て、ここぞというときにスキルを発動すると試合の展開が大きく変化。スキルを発動するとスタミナを消費するので慎重に使おう。
■4年も続く人気シリーズを大胆に進化! 洗練されたUI・世界観作りにも注目
面白法人カヤック
『ぼくらの甲子園!ポケット』プロデューサー
清 真一朗氏(写真中央)
クリエイティブディレクター
嶋田 俊宏氏(写真右)
ディレクター
栫井 琴絵氏(写真左)
――:本日はよろしくお願いします。はじめに本シリーズについて詳しく教えてください。恐らくソーシャル野球ゲームのなかでは、比較的長いタイトルかと思いますが。
清氏:はい。『ぼくらの甲子園!』シリーズは、もともと「Mobage」さんで展開したのがはじまりです。2010年8月にスタートしたので、もうかれこれ4年ぐらい運用しているタイトルです。その後、続編となる『ぼくらの甲子園!熱闘編』をリリースして、側ネイティブとしてアプリ版でも展開しました。
そして今回の『ぼくらの甲子園!ポケット』は、フルネイティブアプリとして開発したタイトルになります。現在は全シリーズ合わせて400万ダウンロードを達成しています。ガラケーが主流のときから続いている長いタイトルになり、最新作を待つユーザーさんも非常に多いことから、弊社としてもかなり力を入れているタイトルです。
――:最新作『ぼくらの甲子園!ポケット』ですが、具体的にどこが進化していったのでしょう。
嶋田氏:中身としてはライトになりました。これまでのシリーズは、ボールを打ち続けるなど野球のミニゲームがメインでしたが、今回はそこを若干軽くするために、誰でも操作が分かりやすいように「すごろく形式」を採用しました。
栫井氏:キャラクターも以前はリアルな8等身でしたが、なるべくユーザーさんに親しんでもらうために等身を落とした可愛いキャラクターにしています。今作では、主人公も何種類か選べるようになっていますが、野球をあまりやったことのない女性ユーザーさんにも遊んでもらえるために、女の子のキャラクターも選べるにようになっています。
――:なるほど。そういえば従来のシリーズからアバター要素も強いですよね。
栫井氏:「Mobage」さんで展開しているタイトルでは、専用のアバターがありましたが、今回はフルネイティブ版のため、キャラクターを数種類用意して、帽子、靴、バットで装飾できるようにしました。ゲーム内では、チームみんなで同じユニフォームを着たり、装飾をつけたりといった遊び方ができるようになり、チームごとの個性が出るようになっています。
――:そして、マイページ。とにもかくにも賑やかしく面白いですよね。
▲『ぼくらの甲子園!ポケット』のマイページ
嶋田氏:ありがとうございます。マイページはとてもこだわりました。従来のソーシャルゲームによくあるリスト表示のような無機質なUIにはせずに、すべてイラストを乗せてグラフィカルに施しました。
ひとつひとつのボタンも犬であったり、アナウンスであったりするほか、タップするとそれに付随した音が出るのも特徴となっています。はたから見ればただのメニュー画面も学校の風景として描き起こしています。また、UIに併せてグラウンド、練習場、街というふうに横の繋がりの位置関係を意識しています。
――:位置関係ですか……?
嶋田氏:はい。というのも、最初チュートリアルでは主人公が寝坊して学校に向かって左から右へと走っていきます。そうしてグラウンドに到着して、今度は転々と右に行くように練習場、街へとチュートリアルが続いていきます。このように細かいところですが、位置関係をとても大事にしています。
――:なるほど。面白いのでUIについてもう少し聞かせてください。下のグローバルメニューが「グラウンド」「練習(場)」「街」の3つというのも珍しいですよね。
清氏:じつは最初は5つぐらいありました。メインコンテンツの「試合」くらいはメニューに入れるべきだと思いますが、やはり「試合」を行うには「街」に行かないとできませんよね(笑)。
――:たしかに(笑)。
清氏:ということもあり、あくまでも演出面に重きを置いてUIを考えました。結果として、ソーシャルゲームに飽きたユーザーさんが「お、このゲームは何か違うぞ」と思えるグラフィックの仕掛けを取り入れています。その反面、本当にこれで良いのかと怖い部分もありますが(笑)。
――:いえいえ(笑)。なかなか骨の折れる作業だと思いますが、それが見事奏功して世界観の雰囲気が増幅しているようにも思えます。
嶋田氏:はじめは従来のソーシャルゲームのUIになぞって組み込んでみたのですが、そこを上手いこと壊して今回のUIへと繋げていきました。なるべくグラフィックでユーザーの気持ちを掴めるように意識したこともあって、より賑やかでグラフィカルな演出を施しました。これでユーザーさんに高校生活を思い出してもらえれば良いかなと思います。
――:それと同じくして、アニメーションも豊かですよね。よく動きます。
嶋田氏:当初は試合のアニメーションはありませんでしたが、やはり動きがないと味気なくて、演出にバリエーションを持たせるために頑張りました。恐らく今あるソーシャル野球ゲームのなかでは、一番動いているほうだと思います。
――:他プレイヤーと展開する「試合」についてもお聞かせください。
清氏:「試合」は毎日8:00、12:00、18:00、22:00の計4回行います。従来シリーズでは、試合の時間になるとすぐに結果が出てくる形でしたが、今作ではギルドバトルのような団体感が出るように演出面にもこだわりました。
たとえば、試合中、3回が終わるとユーザーがコマンド入力できるようにしています。そのコマンド入力時には、スキルを発動したり、他プレイヤーにエールを送ったり、仲間と会話できたりと様々なアクションが行えます。
仲間同士で「ここでスキル使おう」など、相談しながら試合の駆け引きを楽しめるようになっています。また、今作からベンチ専用のスキルもあるため、スタメンに選ばれなくても活躍の場があるのも特徴です。
――:「試合」を展開していくと、最終的に「甲子園大会」にたどり着くという形でしょうか。
清氏:だいたい2週間ほど「試合」で戦ってもらい、各ブロックの上位が期間中の最終日に「甲子園大会」に出場できるという流れですね。そのため、仲間たちと切磋琢磨して「試合」で何度も勝利したチームこそが、「甲子園大会」に出場できるようになっています。
――:そこはリアリティがありますね。長く続くシリーズではありますが、そもそも何故「甲子園」(高校野球)をチョイスしたのでしょうか。とまあ、“プロ野球選手の起用はコスト面で難しい”という話が前提にあるかと思いますが、それでも何か「甲子園」を選んだ理由があるかと思います。
清氏:そうですね。プロ野球と高校野球は、明確に同じスポーツではありますが、やはり雰囲気がまるで違いますし、そこで展開されるドラマも異なります。高校野球には高校野球なりの熱さ、泥臭さ、不器用さが備わっていて、そういうドラマ性が昨今のソーシャルコミュニティに合うのかなと思い選定した形になります。
嶋田氏:それから弊社はマンガ好きのスタッフが多いこともあり、「友情・努力・勝利」の要素を備える高校野球にすごいシンパシーを感じました。実際にゲームを開発する際も例に漏れず野球マンガを徹底的に読みましたね。
――:シリーズのユーザー層はどういう感じでしょうか。
清氏:30代以上の男性が大半です。従来のシリーズでは、おもに定期的に開催される月2回のイベントを遊んでいただいています。
――:今回のシリーズ最新作ではフルネイティブとなりましたが、訴求していくユーザー層などは具体的にありますか。
清氏:やはり新規ユーザーさんの開拓です。もちろんこれまでのユーザーさんにも引き続き楽しんでいただくのが前提としてありますが、今後のシリーズの成長を考えていけば、老若男女問わず新規ユーザーさんにも楽しんでもらえるような施策を展開していきたいと思います。
――:今後はシリーズが統合していくことはあるのでしょうか。
清氏:現時点では、従来のシリーズも変わらず継続して運営していきます。というのも、このシリーズを遊びたいがために、まだガラケーを契約している方もいらっしゃいます。もちろん時代の流れもありますが、出来る限り、そうした方々を大切にしていきたいです。
――:分かりました。それでは最後に今後の運営目標を教えてください。
清氏:これまでのシリーズが3~4年と長く運営を続けていることもあり、最新作『ぼくらの甲子園!ポケット』も長く愛されるタイトルにしていきます。従来シリーズでは、たくさんのマンガキャラともコラボ展開してきたので、今作でもキャラ同士の対戦などを実現したいと思っています。
――:本日はありがとうございました。
■『ぼくらの甲子園!ポケット』
Copyright © KAYAC Inc. All Rights Reserved.
会社情報
- 会社名
- 株式会社カヤック
- 設立
- 2005年1月
- 代表者
- 代表取締役CEO 柳澤 大輔/代表取締役CTO 貝畑 政徳/代表取締役CBO 久場 智喜
- 決算期
- 12月
- 直近業績
- 売上高174億6700万円、営業利益10億2100万円、経常利益10億3800万円、最終利益5億1100万円(2023年12月期)
- 上場区分
- 東証グロース
- 証券コード
- 3904