【インタビュー】重要なのはコミュニケーションと細かな気づき…ソーシャルゲームのプロデューサーを募集するバンダイナムコゲームスの橋本氏に聞く
現在バンダイナムコゲームスは、ソーシャルゲームやスマートフォンゲームアプリのプロデューサーを募集している。同社は自社IPならびに他社IPをソーシャルゲームやスマートフォンゲームアプリに活用して事業を拡大している。
今回「ワンピース」などの他社版権作品を開発している部署「第2事業本部 第2プロダクション」にてアシスタントマネージャーを務めている橋本邦雄氏に、ゲーム開発の現状から求めているスタッフの人物像まで、さまざまな話を聞いてきた。
同社が展開する数多くのタイトルの中でも、核といえるキャラクターコンテンツに携われるとあって、興味のある人もいるのではないだろうか。そんな人にはぜひ読み進めてもらいたい。
■バンダイナムコゲームス
■原作が持つ“魅力”をゲームで再現
――:本日はよろしくお願いします。まず、橋本さんがどのような業務を行っているのか、改めてお聞かせください。
バンダイナムコゲームスには、第1と第2事業本部が存在しており、私は主にキャラクターコンテンツの作品を担当する第2事業本部に所属しています。さらにその下には第1から第3までのプロダクションがあり、私は第2プロダクションの所属です。ここは、週刊少年ジャンプを原作としたコンテンツを扱っている部署になります。その中で私は、ソーシャルゲーム、 スマートフォンゲームアプリ のプロデュースを しています。
運営中のタイトルとしては、『ワンピース グランドコレクション』『ワンピース アドベンチャーログ』といったソーシャルゲームや『ワンピース トレジャークルーズ』のようなスマートフォンゲームアプリがあります。 また、先日発表した『ドラゴンボールZ ドッカンバトル』(関連記事)の開発も進めています。
――:プロダクションが細かく分かれているというお話ですが、プロダクションごとで横のつながりというのはあるのでしょうか?
弊社では週刊少年ジャンプ作品以外にも、「機動戦士ガンダム」や「仮面ライダー」などの作品を制作しており、すべてプロダクションが違います が、担当者間での情報共有は積極的に行っています。
――:橋本さんが携わるタイトルでは、『ワンピース グランドコレクション』が代表作になるかと思いますが、こちらを立ち上げるきっかけについて教えてください。
実は私は途中からの参加で、立ち上げ時には関わっていないのですが、家庭用ゲームとはまた違った「ワンピース」のファン層に向けてのゲームを提供したいと考えた事と、市場としてそこに潜在ユーザーが多くいると確信したことがきっかけとなっています。
――:そのような作品を実際に作るとき、どのような点にこだわっているのでしょうか。
原作の持っているキャラクターの魅力であったり、バトルシーンや名場面といった、押さえておかなければいけない部分をゲーム内で再現することを心がけています。『ワンピース グランドコレクション』でいうとキャラクターをフィギュアという形で再現しているのですが、 「ワンピース」の名場面もフィギュアとして再現するよう心掛けています。
また、キャラクターを全面に押し出した作品の場合、ゲームファンだけでなくゲームに詳しくないライトユーザーの方も何かのきっかけでプレイするケースがあります。そういった方でも楽しめるように、ゲーム内のユーザー導線に 気をつけています。
――:アイディアが重要となると、開発現場でのコミュニケーションも大切になってきますね。
一度出来上がったゲームに対しても、開発現場から「納得がいかない」と、さらなるクオリティアップを求める声が出ることもあります。グラフィックについても制作している最中は良いと思っていても、実際に動かしてみると「もっと良くなるのでは」という声をこちらから出すことはもちろん、開発現場からも挙がってくる。こうした中で全体の良し悪しが決まるので、コミュニケーションは大切ですね。
――:現場にはやはり「ワンピース」ファンの方が多いのでしょうか。
多いですね。机の上に「ワンピース」グッズを並べているスタッフも結構います。ただ、好きなだけではなく「そのキャラクターが何故人気なのか?」「どこがファンに響いているのか」を冷静に判断・分析するよう心掛けていますね。
――:アプリがリリースされた際、こだわった点はユーザーにどういった形で受け入れられましたか。
リリースする前、 キャラクターがどれくらい人気なのかは原作の時点でわかっていますが、それでも「ここまで受けるのか」と驚くことも多いですね。もちろん上手くいくことばかりではないですが。売り上げやユーザーさんの反応は日毎にダイレクトで届いてくるので、それを見ることはとても勉強になります。
――:社内からの反響と、ユーザーからの反響が違うケースもあるのでしょうか。
微妙に違うことはありますね。社内ではいけると思ったものが、実際に配信してみるとなかなか伸びないケースもときにはあります。そういったときは、何が問題だったのかを細かく見ながら次回への改善につなげていきます。
――:開発は外部のデベロッパーに依頼していると思いますが、別会社とのやりとりで意識する点はありますか。
我々の部署は自社開発のラインを持っているわけではないので 、パートナーとなる会社さんと共同で開発を行います。その中で、パートナーを尊重しなければいけないところ、例えばクリエイティビティの部分は尊重しつつ、お互いに対等な立場で言い合える環境を作ることですね。目標とするゴールは一緒ですので、最適な策を練ることは常に意識しなくてはいけません。
また、その会社さんが何を得意としているのか、そしてその得意とする分野が、弊社が得意とするキャラクターマーチャンダイジングの部分 とマッチするかも外部のデベロッパーと組むうえ では重要です。会社さんが持つノウハウなどを見つつ、どこに依頼するかを決めています。
スマートフォンアプリゲームはリリースしてからの運営が本番なので、運営のための追加イベントや追加キャラクターの開発も並行して行います。 原作でどんなエピソードやキャラクターが人気なのか、今の市場ではどういったイベントやシステムがスマートフォンゲームアプリユーザーに受け入れられているのかも加味しながら開発を行います。
――:最近ではスマートフォン向けのアプリでも開発期間が長くなってきているという話を聞きます。御社では、1つのアプリにどのくらいの期間を割いているのですか。
最近は1年から1年半はかかるものが増えていますね。スマートフォンアプリも本格的な作品が多くなっています。また、 弊社ではアプリが出来上がったらすぐにリリースするわけではなく、第三者による レビューという形でのクオリティチェックを複数回行った上でリリースをするようにしています。
――:それでは、開発が終わりゲームの運営に移ったときに、気をつけていることはありますか。
スマートフォンアプリはリリースしてからが本番なので、毎日データをチェックしつつ、細かな改修を即時に行うように心がけています。イベントは毎週切り換わるようにしており、全く同じイベントは行わないようにしています。また、随時イベントスキームの改修を行い、コンテンツの鮮度を保つようにしています。
――:週ごとで違ったイベントを行うというのも、実際には大変なことではないのでしょうか。
1ヵ月単位で見たとき、ユーザーのゲームプレイの流れを予測できる点も多く、私たちはそれを元にイベントを作ります。ですが、毎月私たちの想定通りに進むかというと難しいです。その差分をどこまで把握して、安定的に運営するかがポイントですね。
――:今後も新作を発表していくと思いますが、これまでの経験をどのように活かしていきたいと考えていますか。
私たちの仕事は毎日データを見て改修を繰り返すという、一見地味な作業がメインになってきます。こういったトライ&エラーを粘り強く続け、何が良くて、何が良くなかったのかを細かく気づく事が重要ですね。
■パートナーとのコミュニケーションを取れることが大切
――:運営チーム内では、どのような方が活躍されているのですか。
年齢層としては30代が多く、元ゲームセンターの店長や、アーケードの基板を開発していたプログラマー出身の者もいます。ゲームセンターで店長というと、ゲーム制作とは関わりのないように感じますが、店舗の運営の経験はソーシャルゲームの運営にも活かせているみたいです。
――:ゲーム開発に限定せず、さまざまな経験を持つ人が集まっているのですね。
たまたまそういったメンバーがうちの部署では多いのですが、基本、さまざまな業務の変化に柔軟に対応できないと仕事になりませんからね。
――:制作環境を見たときに、バンダイナムコゲームスならではの特徴というのはあるのでしょうか。
バンダイナムコグループとして考えると、ゲームを発売している部署もあれば、ホビーや映像を展開している部署もあり、外に出すハブが非常に多いです。ここは他のゲームメーカと大きく違うところですね。また、私自身中途でバンダイナムコゲームスに入ったのですが、他社と比べ、プロデューサーによる裁量の範囲が大きいと感じています。責任は重大ですが、そのぶんやりがいも大きいと思います。
▼バンダイナムコゲームスの社屋
――:今後の目標や課題はどこにあると感じていますか。
「ワンピース」や「ドラゴンボール」は国内のみならず海外でも人気のあるコンテンツなので、今後はグローバルに展開していきたいですね。
――:実際に海外で展開することになったときも、第2プロダクションは直接関わってくるのでしょうか。
はい。関係各社との連携を取りながらですが、基本直接関わっていくことになります。海外に直接行くことも増えていきますね。
――:人員を増やしていきたいというお話でしたが、現在のプロダクションの規模はどれくらいになっているのですか。
プロダクション全体で見ると多くなりますが、私のチームに限定すると6人になります。この人数だと1人が複数のタイトルを掛け持つことになり、さらに配信後の運営もあるため掛け持ちがどんどん増えていく状態です。コンシューマタイトルですと、発売までいけば一旦は区切りがつくものの、スマートフォンアプリの場合はリリースしてからが本番です。だからこそ、人員を強化する必要があると感じています。
――:どのような人物像を求めていますか。
基本的に我々の仕事は関係各社様との協力の上で成り立っています。そのため、さまざまなパートナーとのコミュニケーションを取れることが最優先です。
そして日々の変化が激しいので、それに対応できる柔軟性があると望ましいかと思います。次に始まる仕事を前に、どんな準備をしておくかを考え、自分から積極的に動けるとなおいいです。業務経験があることが大前提ですが。
――:それでは最後に、読者の方へのメッセージがあればお願いします。
今後も 多くのスマートフォンゲームアプリ をリリースする予定です。国内だけでなく世界へ向けた展開も考えておりますので、バンダイナムコゲームスのスマートフォンゲームアプリの展開にご期待 ください。
――:ありがとうございました。
■バンダイナムコゲームス
■関連サイト
「バンダイナムコゲームス」企業サイト
会社情報
- 会社名
- 株式会社バンダイナムコエンターテインメント
- 設立
- 1955年6月
- 代表者
- 代表取締役社長 宇田川 南欧
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高2896億5700万円、営業利益442億3600万円、経常利益489億5100万円、最終利益352億5600万円(2023年3月期)