【スマホゲーム批評Vol.03】野球ゲームの勢力図を塗り替えたKONAMI『実況パワフルプロ野球』の魅力に迫る



第3回目となる週刊スマホゲーム批評では、コナミデジタルエンタテインメントの新作『実況パワフルプロ野球』を取り上げたい。実はリリース後、休み前などは何度となく徹夜で遊ぶほどハマったタイトルだ。ごくごく個人的な話だが、ここまではまったのは、『パズル&ドラゴンズ』以来ではないかと思う。アプリ市場の野球ジャンルに与えた影響も非常に大きく、今回、取り上げておきたい。

本作は、KONAMIの人気野球ゲームの定番『実況パワフルプロ野球』シリーズにある選手育成モード「サクセスモード」を初めてスマホゲームに搭載した新作ゲームとなっている。昨年12月のアプリのリリース後、わずか1ヵ月で300万ダウンロードを突破するなど急激にユーザー数を伸ばしただけでなく、アプリストアの売上ランキングでもまたたく間に上位に定着し、ヒットタイトルの仲間入りを果たした。

『ワールドサッカーコレクションS』と『プロ野球ドリームナインSUPERSTARS』に続く、KONAMIのスポーツ系ネイティブアプリの3本目の柱となった。ネイティブアプリの展開に関して、他の大手ゲーム会社に比べて出遅れていた感があったが、巻き返しが着実に進んでいる印象だ。そして野球ゲームとサッカーゲームのジャンルでトップに立ち、スポーツ系のゲームでの強さを見せつける形となっている。

 





出所:AppAnnie


さて、ゲームのプレイサイクルは、非常にシンプルだが、奥が深く遊びごたえは十分だ。「サクセスモード」でオリジナル選手を育成したら、自分の野球チームに組み込んで編成して、「スタジアムモード」で他のプレイヤーと対戦して順位を競い合う、という流れとなる。ゲーム内で最も遊ぶことになるのは「サクセスモード」だろう。

「サクセスモード」は、パワプロシリーズではおなじみの育成シミュレーションゲーム。様々な練習や試合への出場、遊び、デートなどをこなして、主人公の能力をあげていく基本要素はシリーズ作品と同じだ。本作では、スマートフォンで遊ぶことを考慮しているのか、高校3年間ではなく、高校2年の8月から翌年の夏の甲子園までが対象期間となる。夏の甲子園が終了し、ドラフト会議で指名されると育成完了となり、自分のチームで使うことができる。

選手の育成は、打者であれば、打撃練習や筋力トレーニング、走塁練習、遠距離キャッチボール、守備練習、メンタルトレーニングで鍛えていく。キャラクターは無尽蔵に鍛えられるわけではなく、適宜、「体力」を回復させなくてはならない。体力が少ない状態で練習を行うと、怪我してしまう可能性が高くなるのだ。時として休憩や遊び、そして怪我する確率が0%のメンタルトレーニングを行なって体力を回復させることが攻略の近道となる。

 

 

【投手(左)と野手(右)では練習メニューが異なっている。体力(黄色の枠内)は練習すると減少し、減ったまま練習すると怪我しやすくなる。また一緒に練習する選手(イベントキャラ、赤枠)が多いと練習の効果が上がる】



「練習」が終わったら、獲得した経験値を各種の能力に振り分けることで初めて能力がアップする。弾道やミート力、パワー、走力、守備力など基本能力だけでなく、アベレージヒッター、パワーヒッター、広角打法、バントブロック、いぶし銀など特殊能力を上げることができる。野手だったら、守備重視にするか、打撃重視にするか、すべて平均的に優れた選手にするかなど、自由度の高い育成が可能になる。投手もコントロールや変化球、スピード重視など好きなタイプに育てることができる。

 

 

【投手(左)と野手(右)の能力表。基本能力も大きく異なっている。練習で獲得した経験値を割り振っていく。変化球や特殊能力に振ることも可能だ】



キャラクターの育成にあたって、シナリオに入る前に設定した「イベントキャラ」も重要だ。イベントキャラは、選手のパラメーターアップに大きな影響を及ぼすイベントを発生させるもので、能力の高いキャラクターをセットしておくことで、より有利なイベントが発生しやすくなる。イベントキャラは、強化素材や他のイベントキャラとの合成を通じて成長させることができる。またイベントキャラの評価が高まると、特殊能力が習得しやすくなるコツを教えてくれたり、監督の場合、レギュラーとして出場できるようになる。

ちなみに、イベントキャラには女性キャラも存在する。女性キャラからの評価が上がり、付き合うことできると、より経験値が獲得できるようだ。記者のプレイした範囲では残念ながら、このモードの存在は確認できなかった。いずれ見たいものと思っている。

 

 
 



もう一つ重要な要素は、ゲーム中に発生する他の高校との試合だ。ここで活躍することで、試合後に各パラメーターの経験値が獲得できる。試合は、育成選手の登場するシーンだけ操作することもできるし、重要なシーンのバッティングもしくはピッチングを操作することもできる。自分で操作したほうが勝率が上がるように思われる。甲子園では勝ち上がると能力アップの機会が増えるため、できるかぎり自分で操作したほうがいいのではないか。

 



バッティング、ピッチングともに自分で操作することができ、スマートフォンならではの野ゲームに仕上がっている。バッティングに関してはフリックで、ピッチングもフリックとタップ(タイミングゲージ)だけで遊ぶことができる。変化球の再現度はすばらしく、ストレートの後に投げられたカーブでタイミングをずらされることが何度となくあった。また、ピッチングでもどうやって相手を崩すか、配球を考えるのは楽しい。

 

 
 



このように奥深く、楽しいゲームに仕上がっている「サクセスモード」だが、不満をあげておくとすれば、レビュー欄にもあるように、アプリが落ちてしまった時などに遊んでいたデータが消えてしまったり、試合結果が負けになったりすることだろう。甲子園では勝ち進むかどうかが育ち方に大きな差が出てくる。思わしくない結果が出た時にアプリを終了してやり直すという、一種の”リセット”への対応策を見られるが、落ちる直前に戻るなどの対策がほしいところだ。

また、ピッチングの時、画面上でタッチする場所を間違えると、ストライクゾーンの隅を突くことが難しいといった操作上の不満もある。ストライクゾーンの隅に投げたいのに、そこにカーソルを移動させようとすると画面の外に出てしまうため、選択できなくなるのだ。コースをセットしてももう一度設定し直すことができば…と感じた。この点は、初めから画面の真ん中をタッチするように気をつければいいだけの話なのだが、よくやってしまうミスだった。

なお、「サクセスモード」の最後にある「ドラフト」で指名されると、晴れてプロ野球選手となり、自分のチームで使うことができる。「サクセスモード」のシナリオは、「パワフル高校」のみだが、近日中に「瞬鋭高校」も追加される予定とのこと。サクセスモードは、選手育成を繰り返していくと、どうしても同じような”作業”の繰り返しに感じられるだろう。遊びこんだ人にとっては、追加シナリオは非常に新鮮なものに映るのではないか。

 

 

【自分で育てた選手をチームに入れていくのはそれだけで楽しい。選手枠全てを埋めるだけでも十分楽しめる】



「スタジアムモード」では、育成した選手でチームを編成していく。「パワプロ~号」ばかりだったチームが自分で手塩にかけて育てた選手で埋まっていくのは嬉しい。チームの編成が完了したら、「試合」に出場して、リーグ戦で他のプレイヤーのチームと戦っていく。試合の形式は「サクセスモード」で行われた試合と同じで、通常は自動で試合が進行するが、重要な場面のみ自分で操作する。1試合は数分で終了するため、移動中や待ち合わせなどちょっとしたスキマ時間に楽しめる。
 
リーグ戦は、レベル制が採用されており、リーグLVは1から5まで階層が用意されている。リーグ戦を勝ち抜き、週間ランキングで上位に入ると上のリーグに昇格することができる。ランキングは、実際のプロ野球のような勝率などではなく、いかにいいプレイをしたかというスコアで競うようになっている。つまり、良いプレイをしなければ、いくら勝利してもポイントが手に入らないわけだ。

 

 



KONAMIの”本気”が垣間見える本作だが、野球がシーズンオフであることを考えると、現在の人気ぶりであってもまだまだ初動段階にすぎないのかもしれない。高校野球やプロ野球など本格的な野球シーズンが始まった時、本作への注目度がますます高まるとともに、ゲームのさらなる盛り上がりが期待されるところである。

(編集部 木村英彦)




■『実況パワフルプロ野球』

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阪神甲子園球場公認
ゲーム内に再現された球場内看板は、原則として2014年のデータを基に制作しています
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株式会社コナミデジタルエンタテインメント
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会社情報

会社名
株式会社コナミデジタルエンタテインメント
設立
2006年3月
代表者
代表取締役会長 東尾 公彦/代表取締役社長 早川 英樹
決算期
3月
直近業績
売上高1940億1100万円、営業利益336億4700万円、経常利益348億9300万円、最終利益278億2800万円(2023年3月期)
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