4月8日に行われたGamebankの事業説明会およびタイトル発表会の終了後、パネルディスカッション「国内モバイルマーケットにおける、コアゲームアプリの潮流と展望」が行われた。
モデレーターはKADOKAWA ファミ通App編集長 目黒 輔氏、パネラーにはスクウェア・エニックス 安藤 武博氏、Aiming 椎葉 忠志氏、NHN PlayArtの馬場 一明氏、そしてGameBank 椎野 真光氏が登壇した。本稿ではその模様をお届けしよう。スケジュールの都合で予定していた時間よりも早いペースで話が進んだため、多少唐突な部分もあるかと思うが、ほぼ会話内容を収録させていただいている。
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■コアゲームとは何?
安藤氏 GameBank設立おめでとうございます。この名前には懐かしさを感じたんですけれども…。孫(正義氏)さんと(ビル・)ゲイツさんの(1995年8月設立)…この名前のパテントってあったんですか?
椎野氏 GameBankの名前自体は、ソフトバンクさんがお持ちだったものを今はお借りしているんですね。譲渡をお願いしたんですがダメっていわれまして(一同笑)。ちょっと内緒話なんですが(笑)。
――さて、コアゲームという定義について、みなさんはどう考えられているのかをお伺いします。
椎葉氏 よく話をしているんですが、基本的にあいまいで、僕らの中ではゲームのモチベーションで定義していますね。一番コアな人はどんな人かというと、PlayStation 4を買って、毎月家庭用ゲームがどんなものが出るかを楽しみにしていて、それを何千円も出して買う人ですね。ゲームを趣味としていて、ゲームを探すようなモチベーションの高い人という。その対極が、ゲームを探していない、「みんながやっているから」、「TVCMで見たから」という人も多くて、主体的にゲームを探すわけではなく、暇つぶしにやっているというか。
安藤氏 最近、Steamでゲームを遊んでいる人たちのエリート意識って高くないですか? 『ファイナルファンタジーXVI』をプレイしているときにボイスチャットで「何遊んでるの?」と聞くと、「これ以外だとSteamで遊んでる」と。で、「スマホゲームやるの?」と聞くと「やるはずないやろ、なめてんのか?」と言われたりして。そういう傾向が年々強くなってきていて。
馬場氏 ちょっとかっこいいですよね。
安藤氏 なんだか、「俺たちSteamでゲームダウンロードして遊んでいるんだぜ」みたいな、あそこにコアゲーマーがいるんだな、と感じるところがあるんですね。
椎野氏 年末のセールでたくさんゲームを買い揃えているけれども、絶対プレイしきれない、みたいな人もいますよね。うちの会社にも。
――安藤さんはもともと、スマホゲームにおいてコアなところに突っ込んでいった人じゃないですか?
安藤氏 『ケイオスリングス』のことですね。
――あの時代、スマホゲームの市場が立ち上がったころでしたが、当時「いける!」って思ってたんですか?
安藤氏 「いける!」って思っていたのは作っていた自分たちだけでしたね。経営サイドには「やめとけ」って言われました。結局応援してくれたんですが、反対意見もあって…『ケイオスリングス』って1作目は5千万円ぐらいで作ったんですよ。今考えると安いですが、当時はガラケーのタイトルの影響もあって、「携帯電話のゲームに5千万、はあ?」みたいな時代で「(予算を)かけすぎちゃうか?」って思っていたんですが、スペックを見るとPSPやDSぐらいのタイトルが動くから、「じゃ、作ろうかな」みたいな感じで作ったので、マーケットがあるかどうかは見切り発車で、暗闇に向かってジャンプするみたいなもので(一同笑)。結果、よく売れたな、ぐらいの感じだったので。戦略的なことというよりは、「早めにやっておけば人と違う景色が見えるかな」という感じですね。
――結果的に市場がある、という感触がつかめた?
安藤氏 市場があって、1,500円で前売りで、しばらく楽しめる、今までのコンソールの(ビジネスモデルの)いいところを使ってできるわーって思っていたら、椎野さんの『Kingdom Conquest』にやられたんですよ(笑)。すごいクオリティのものが基本無料で出てきて、あっという間にプレミアムダウンロードコンテンツの時代が終わったという点では、その後似たようなゲームが出てきたじゃないですか…その点においては結構罪があると思うんですよ。
椎野氏 (苦笑いしながら)僕としても、安藤さんがおっしゃったみたいな、前職のセガの時代、億単位のゲームの企画を通したんですけれども…
安藤氏 『キンコン』はすごいですよね。よくあんなゲームが成功したなと。
椎野氏 あの時代、2009年とかだと思うんですけれども、あの時代は1本2千万ぐらいで作っていたじゃないですか。それを「いやいや、(他と)同じことをやっていたらダメですよ」と言ってすごく会社に怒られて…やるまえに怒られて、やりながら怒られて。
馬場氏 しかも北米に先にリリースされてましたよね。
椎野氏 当時は「北米で売るんだ」って言ってましたね。で、椎葉さんに激笑いされました。
椎葉氏 『Kingdom Conquest』に関わっていましたけれども、「あ、これ無理だ」って思ってましたね(一同爆笑)。
安藤氏 今振り返るとすごくいびつなゲームですよね。よく着地したなと。
椎葉氏 構想時代からあまり成り立っているとは思っていなかったので、ゲーム内容に口を出さないようにしました。
椎野氏 椎葉さんにコンサルに入っていただいたんですけれども、およそ60分間の打ち合わせの中で、開発に関するコンサルの話は5分ぐらいで、あとは世間話(笑)。
椎葉氏 そんなことないけど(笑)。
安藤氏 あんなに風呂敷広げたプロジェクトって、だいたいポシャるでしょ? 村ゲーの要素もあれば、あれもこれもって…だいたいポシャると思うんですけれども、なんでうまくいったのかなって。どんな人がプレイしてたんですか?
椎野氏 正味な話、『ブラウザ三国志』をプレイしていた方が流れてきていたんですね。アンケートとかとってみたんですが、「モバイルで『ブラ三』ができるなんて」みたいなご意見がすごくありましたね。日本においては、ブラウザゲームのユーザーがすごく多かったのと、海外で相当遊ばれたというのが実は多くて。日本のアカウントを取った海外の方が相当遊ばれていたみたいですね。チャット履歴とか見ると、日本語なんて全然ない。
安藤氏 アジアに展開するとき、それがすごくネックで、椎野さんに当時、「中国はリージョンを絶対分けたほうがいい」ってアドバイスされましたね。分けてみた結果、『ミリオンアーサー』は成功させられたんで。
椎野氏 おめでとうございます。
――『キンコン』の成功を見て、椎葉さんがAimingを立ち上げられたとどこかで見ましたが?
椎葉氏 僕らも共通しているのは「他の人がやらないことをやるしかない」ということ。安藤さんもそうだったように、スマートフォンでリッチなゲームが作れるようになったので、その流れは加速していくから、結局MMORPGが来るでしょと。MMORPGってクリックするだけでもできるし、だったらタブレットでもできるだろうと。将来的にMMORPGを志向できるようになったときに当てましょう、と言って作ったのがAiming。で、同じように投資いただいた方以外には「誰と戦っているんだ?」状態で、「Aimingは何を目指しているんだ?」というような雰囲気でしたね。
安藤氏 で、作っているチームだけは「これ当たるよね」って思っていた?
椎葉氏 それは難しくて、「この時代が来る」って思っているんだけれども、面白くなるかはまた別で。必死に作っていたらなんとかなった、という感じですね。
安藤氏 みんな薄氷を踏む思いだったんですね(一同笑)。
椎葉氏 確信があってゲームが当たるとかないから。
安藤氏 本当に。ずっと続かないし。
――そして『キンコン』の次の年に『パズル&ドラゴンズ』が出ました。スマホに最適化した、間口は広いけれども奥が深いゲームが出てきた。
安藤氏 登録が3千万人を超えたら、どうなるんですかね? コンソールゲームにもありえなかった桁じゃないですか。『妖怪ウォッチ』が昨日600万本(関連記事)って話でしたが、無料とはいえ5倍。「600万本といえどもコアなのではないか?」と昨日の発表を見てましたが。
――ここで安藤さんは『ミリオンアーサー』を出されたじゃないですか。あれはコアゲームと思って作られたんですか?
安藤氏 はい。僕はずっと20年近く、老若男女に向けたゲームを創れないと思っていて、それがどんどんとがっていって、GREEで18歳禁止のゲームを作ったんですけれども。『ミリオンアーサー』もまさにそうなんですが、フリーミアム(モデルのゲーム)って、Social Game Infoさんの連載で書かせていただいたんですけれども、デイリーで2万人、熱狂的なお客さんがいれば、売り上げでいうと億ぐらいはいただけるな、というのがあったので、100万本前売りで売らないと成立しないパッケージと違って、そういった意味では「テーマのコア化」はいけるな、と思っていて。
老若男女よりは少ないけれども、『ミリオンアーサー』はライトノベルだとか厨ニ萌え、みたいなアニメ好きな人、熱狂的な人は捉えられるだろうな、というところは『ケイオスリングス』のときよりは戦略的にやったところはありますけれどもね。でもちょっとだけですよ? 担当しているプロデューサーがライトノベルが超好きだったということがありますが。
――逆に馬場さんは間口の広いゲームを作るという感じがしますけれども…?
馬場氏 そうですか? それはイメージですね(一同笑)。でもまあ、見た目は間口が広そう感と、あとはコア化というよりは、僕はプレイ時間やプレイ頻度が多いタイトルはすべてコアゲームなのかもしれないな、と思っていますけれども。
椎葉氏 ハマったユーザーはみんなコアですよ。
安藤氏 ゲーム自体がコアですよ。市場規模を考えると、めっちゃコアな産業ですもん。セブン-イレブン1社と日本のゲームマーケットが一緒って、『インベスターZ』ってマンガに書いてありましたもん。
――次の2013年に『剣と魔法のログレス』が出て、ここからオンラインゲームの文法から攻めてきたタイトルが出てきましたが、当時は「これ、コアすぎないか?」って思ったんですけれども…?
椎葉氏 僕らは、『ログレス』の前に、もっとコアなゲーム…『ブラウザ三国志』から『ロード・オブ・ナイツ』を出してきていたんですが、安藤さんは「デイリーで2万人で一億」という話をされていましたが、僕らのタイトルではたぶん、1万のアクティブユーザーで1億いっちゃうんですよ。そういうゲームを作っていたので、うちのゲームではほとんどが5千万ぐらいの売り上げがあるんですね。そういうゲームを支えてくれるユーザーはデイリーで1万人ぐらいですね。そういうゲームだったからなんとかなっていったというのはありますね。そういう感覚でいうと、『ログレス』はすごく間口が広いゲームで、当時は今のような数字になると思っていませんでしたが、「なんとかなるだろう」という雰囲気はありました。
――実際にスタートしてみてどうでした?
椎葉氏 スタートした月は、今の売り上げの100分の1ぐらいでした。
安藤氏 じわじわ来た感じなんですね。(ゲーム内の)友達のネットワークが出来上がるまでの時間(が売り上げの向上と連動している)という感じですよね。「ゲームには飽きるけれども、友達には飽きない」って名言だと思います。
椎葉氏 10年ぐらい言ってます。
――ブレイクしたきっかけって何だったんですか?
椎葉氏 いや、地道に集客を続けていったんですけれども、ハマってくれたお客さんがやめなかったので、積みあがったんですね。ランキングのグラフとか見てもらっても、ずっと止まらずに伸び続けているのは、ハマった方がやめないから。広告も他社より撒いてませんし、長く遊んでくださっている方が多いので、ゲーム性のおかげかなと思っています。
――PCとスマホのユーザーは全然違いますか?
椎葉氏 そうですね。今おそらく『ログレス』を遊んでくださっている方は、人生で初めてMMORPGにハマっちゃった方。PCではおそらく遊んでらっしゃらないんじゃないかと思いますね。
安藤氏 MMOとすら気づいていない方も多いかもしれませんね。
椎葉氏 気づいたらみんなと遊べるRPGだったと。「これがMMORPGっていうんだ」という方が大半なんじゃないかなと。
安藤氏 これめっちゃ革命だと思うんですよ。
――プレイスタイルも違うんですか?
椎葉氏 プレイスタイルは、私たち側がスマートフォンに合ったスタイルにしておかないと当たらないから…変えてますね。そういう意味では違っちゃってますね。PCのオンラインゲームなら1日数時間遊ぶことを前提に作りますが、スマートフォン向けには5分、10分で遊べるような設計にしないといけませんので。いわゆる繰り返し遊べるようなゲームですね。
――各国のデータを比較すると、MMOとかMOBAって市場で見ると日本が圧倒的に低いんですね。
椎野氏 普通に考えると、日本市場は『モンスト』と『パズドラ』が強すぎるという…。この2タイトルを抜いてみると、MMOとかMOBAは実は結構大きいシェアになっているかなと。
安藤氏 今後これは変わるかもしれないし、変わらないかもしれない。次行きましょう。
■アジア勢の進出で、日本市場は変わるのか?
――海外勢のアジアマーケットへ進出してきますが、日本市場はどう変わりますか?
馬場氏 韓国は市場の規模が圧倒的に日本より小さいので、韓国企業は日本のマーケットで成功することを目指していくんじゃないですか? 日本から韓国に行くというのは、日本で当たったタイトルの延長で、推したいかそうでないか、ローカライズをしたいかしたくないか、ですよ。
――『ミリオンアーサー』は韓国でもヒットしましたよね?
安藤氏 1位を取りましたよ。
――そうなるとどうなるんですか?
安藤氏 次は中国で売れると。台湾でも(一同笑)。
――そのきっかけは?
安藤氏 一番最初に動いたからです。もう同じようにはいかないと思っています。それは、MMORPGのとき、エニックス(当時)に『クロスゲート』を中国で成功させた時も、アジア、中国本土自体にMMORPGという概念がなかったから、振り返ってみると、国産で唯一東アジア圏に進出していました。逆はいっぱいありましたけれども。まあ、一番早かったから、ということにつきます。
――今、アジアを攻めるならどこですか?
安藤氏 今は難しいですね。なぜかというと今、中国も台湾も韓国も開発者が皆優秀だから。だから一緒に組むんでしょ?
椎野氏 そうですね。日本ってコンシューマ文化が圧倒的に強いので、オンラインで遊んでいる人は、韓国や中国と比べると全然少ないんですね。それを考えると、オンラインゲームを遊んでいた層が開発者になっているので、開発者の数とか質とか、圧倒的に上だったりしますよね。
――椎葉さんは各国にスタジオを作られていますが、手ごたえはどうですか?
椎葉氏 日本で成功したタイトルがアジアに出ていくと成功していないように、簡単ではないし、それぞれの国の市場がすごく伸びている=開発者のレベルなので、中国では一説には1万3千社のスマホゲームの開発会社があって、全世界の倍以上と言われています。その中のトーナメントの勝者が中国の1位になって、それが海外に出てくるというのは、やっぱり良質なゲームが増えてますよ。今まだ世に出ていない裏で作られている。うちでいうとTencentと協業していますが、そうしたところでチラッと見せてもらうゲームとかは、ちょっと規模も見た目も良すぎてビビるな、というものがあります。
今、ゲーム開発力という意味では、スマホの世界は差がなくて、私たちはまず日本で成功することができて、そこで稼げて…韓国だと市場の限界の問題があって、日本という大きな市場で勝ってからいける、というのは、有利な面もありますけれども、やっぱり海外進出は相当大変で。血を吐きながらやっていけるかどうか、というのは感覚としてありますね。
――そんな中、椎野さんはどう戦っていくんですか?
椎野氏 我々はそんな中、パブリッシング力を高めていこうかなと思っていて…。一朝一夕に開発力というのは作ることができないので、日本で作ったコンテンツを海外に持っていきたい、という気持ちはすごくありますが、まずは、しっかりとゲームを届けられる環境をGameBankとヤフーが連動しながら作っていって、良質なコンテンツを預かりできるように、ライセンスをお請けするような事業をやっていきたいなと考えています。
――海外のタイトルを見て、「レベルが高いな」という実感はありますか?
椎野氏 高いんです。高いんですけれども、PCからの文脈なんですよ。なので、常時接続型の遊び方で作られているので、結構カルチャライズしなければならないな、みたいなところはありますね。あとは使うボタンがめっちゃ多いとか。それもスマホに最適化しなければならないな、と思ってはいるんですけれども…。椎葉さんはどう思われます?
椎葉氏 そうですね。僕らはもともとゲームオンで韓国のタイトルを輸入してサービスするということをやってきましたけれども、正直カルチャライズしないです。「そもそも日本で当たるものを持ってこい」というのが僕らのポリシーで、そこは椎野さんと違いますね。椎野さんは生粋のゲーム開発者。僕らは元々ゲームを作っていましたけれども、パブリッシャーの仕事が長いこともあって、海外のタイトルって開発者みなさん忙しいから、「やれ」って言ってもなかなかやれないこともありますよね。僕らは、僕らの目利きで、そもそも「まんまで来ても日本で当たるものを取っていこう」、その中で先ほど安藤さんがおっしゃられていた話、1万人のユーザーでいくら売り上げられるんですか? という、やっぱりコアユーザー向けのタイトルを持ってくることになりますね。
――安藤さんと馬場さんは海外タイトルを持ってくることへの興味はありますか?
安藤氏 僕はないんですけれど、スクエニはシャンダ(ゲームズ:Shanda Games)と組んでいるから、シャンダから輸入するというのは多分あると思うんです。興味がないと言いましたが、MMORPGでなぜラグナロク(オンライン)をプレイしたかというと、抜群にとっつきやすくて可愛かったからというだけで。韓国製だから遊んだというわけじゃないんですよね。今、ネトゲーやMMORPGが珍しくない時代に、「どうやったらそそるか」みたいなほうが大事で、そうこうしている間に、うちの会社でいえば、『FF XI』や『FF XIV』がスマホで遊べるようになるわけですよ。そうしたら、日本のお客さんはそちらを選ぶ人もいる。そういう時に、MMORPGを遊ぼう、というときに、どこの国産まれ、というよりは、「私はここがそそるからやってみたいな」という感じのものがあれば、輸入してみたいと思うけれども、レッドストーンの時代と比べるといけないと思うんですが、そんなスムーズにいかないですよね?
椎葉氏 どうでしょうね…スマホでは可能性があると思うんですけれどね。カルチャライズか日本に向いているものを入れるのか、そこは選ばないといけないと思うんですよね。
安藤氏 最近、中国の人たちは日本を徹底的に研究して、スマホでゲームを出して当てたりしてるじゃないですか? そそる方向にどんどん行ってるから…そういう感じで、どこの会社のどの大型タイトルを持ってくる、というよりは、どっちかというとそういう(そそる)感じが大事かな、と思うんですけれどね。
■2015年注目のタイトルは?
――2015年、注目のタイトルやジャンルは何ですか?
椎野氏 いろいろ話をしていると、相当気合の入ったでっかいタイトルをドーンドーンドーンと出していく時代になると思っているんですよ。戦艦大和の大砲をドーンドーンと撃つ、みたいな時代になっちゃいましたね、というのがちょっと切ないですね。
――オンラインRPGが多そうだなという風みたいなものを感じますね。
安藤氏 お客さんはジャンルでタイトルを選ばないから。ジャンルみたいなものって後付けなんですよ。お客さんって「やりたい」って思ったら、一見似てるタイトルでも…たとえば昨日(4月7日)のレベルファイブさんの発表会でNHN PlayArtさんと組んで出される『妖怪ウォッチ ぷにぷに』って、誤解を恐れずに言えば『ツムツム』みたいでしょ? でも、「『ツムツム』と一緒だから遊ばない」ということにはならないんですよ。「ミッキーがジバニャンになってくれたらそれでいいわ」という方もいるから、あれはあれでいいと俺は思うんですよね。
ジャンルやゲームシステムって、別の捉えられ方をしているから、ジバニャンが来たら(流行ったら)、『妖怪ウォッチ』が好きなお子さんの親御さんたちはそそるから、それは来るとか、そんな感じになると思うし。そういった動きに注目していて、結果その中のジャンルの内訳でいうと、パズルが何本で、ネトゲが何本で、共闘するものが何本で…という感じかなと。あっさり言っちゃうとそう思っています。
――馬場さんには一応お断りを…。
馬場氏 今の時間だけ僕はここにいなかったんで。(一同笑)
安藤氏 どのジャンルが来る? という話でいうと、今、マルチプレイとか言われてるじゃないですか? ジャンルでいうと、俺は対戦が来ると思っていて…うちの会社はゲーセンも運営しているし、タイトルも作っているんですが、ゲーセンの大会って劇的に盛り上がるんですよね。ジャンルで攻めていくのであれば、e-Sportsの正式種目に採用されるような志をもって、「『League of Legend』や『World of Warcraft』みたいなポジションを取りにいくぞ」みたいなことになると、あまり時代に左右されずに、競技になっていくあたりを狙っていければ、対戦というジャンルは熱いな、と思っているんですけれども。みなさんは対戦についてはどう思っているんですか?
椎葉氏 私は野球を30年ぐらいやっているんですけれども、同じメンバーと同じルールでやっても同じ結果にならないというところが対戦のいいところで、繰り返し遊べて…うちのゲームのほとんどに対戦要素が入っていて、それが長く遊べる秘訣にもなっているんですが、対戦だけで成り立たせようとすると、ものすごいアクティブユーザーが必要になっちゃうんですよね。競技性が高くなると、お金で強さが変わってはいけない、ということになっちゃうので、e-Sportsが日本に入ってきて一番しんどいところかもしれない。アーケードはやっぱりお金がかかる、という前提でできるので、アーケード初の日本のe-Sportsは日本で結構考えられる。
僕自身もスマートフォンで対戦型で世界的ヒットになるゲームは出てくるだろうといつも考えているんですけれども、日本という市場で考えると、対戦で遊ぶ人は、『ツムツム』にしろ、『モンスト』にしろ、ユーザーが少なくなってしまって、先ほどの1万ないし2万アクティブユーザーで1億円という数字にはならないんですよね。その部分をビジネス的にどうするか、というところが対戦というジャンルでしんどい。やるんだったら世界的にヒットして、世界全体でこだわらなくても遊べる対戦型のゲームっていうものにはすごい可能性があると思うんですけれども、これは逆に、僕らが日本にいるからやりづらいジャンルになっちゃっていると思うんですよね。
――対戦というとタイムアタック、というのが日本のゲームのイメージがありますね。
椎葉氏 タイムアタックというと、直接殴り合わないということなんですけれども、競技性のあるスポーツルールであれば、日本人も対戦は好きですよね。そこは問題がないんですけれども、e-Sportsでいうと、世界的には日本で参加している人たちより年齢層が低くて、10代が中心で。10代は日本では任天堂さんのゲームを遊んでいて、ネットでつながるゲームは中心になっていないから、海外と日本でe-Sportsが流行る一番大きな差があるんですよね。ここは、スマホのタイトルであれば、スマホは若い人もみんな持っているので可能性はあるんですが、日本で考えた場合稼げない可能性が高い。このジレンマをどうするかというところが大きいですね。
――馬場さんはどうお考えですか?
馬場氏 僕もゲームの仕組みに関しては、確かに対戦が面白いゲームって、たとえば麻雀とかオセロとか、パラメーターに影響されないゲーム性を突き詰める、というところを目指してしまうので、確かに収益につなげにくいと思うんですけれども。日本って、対戦が好きな人は、勝っても負けても、勝つための戦略を考えるところ…たとえば、野球でいえば、スタメンだけ見て試合展開を想像するのは面白いじゃないですか。そういう人が対戦を楽しめると思うんですけれども…日本の最近の教育って、小学校とかの運動会って、最後無理やり引き分けにしたりするじゃないですか? そういうことだと、多分対戦の面白さってわからないんじゃないかなと思って。本当にゲームが好きな人って、対戦好きだと思うんですけれども、結構やりにくいのかなと思っています。
――日本からも対戦ゲームの第一人者的タイトルが出てほしいと思いますよね。
安藤氏 出ますよ。ヒントをいうと、ゲームセンターのゲームを作っている連中は作れますよ。ゲーセンのネックって、わざわざお店に行かないと遊べないところじゃないですか。アーケードゲームを作っているチームは、ずっと対戦コンテンツを作ってお客さんを喜ばせてきているので、彼らなら作れますからね。うちの会社のアーケードの部隊が『ドラゴンクエストモンスターズ スーパーライト』を作ってますからね…昨日はレベルファイブさんがすっとライバル会社として参戦表明してきましたが、加えて、ゲームセンターのタイトルを作っている会社…国内で5社ぐらいですが、その連中は対戦コンテンツを作れますよね。セガでいうと『チェインクロニクル』の松永(純氏)さんってずっとアーケード向けのゲームを作ってらした方ですからね。そういう動きっていうのは絶対加速していくので…ライバルがどんどん増えてくる、全部スマホが飲み込んじゃう、って思いますね。
――最後、「GameBankに期待すること」で〆たいと思います。
安藤氏 ちょっとその前に言っておきたいんですが、今日呼ばれた僕ら3人とも、GameBankと仕事するって決まってないんですよ(一同笑)。予定もないですから。僕ら、椎野さんが好きで来ているだけですから(笑)。
椎野氏 僕から一言言わせていただくと、お呼びしたお三方は、ご自分で新しい時代を作れる環境や力のある人だと思っていますと。安藤さんもそうですし、椎葉さんも1つ行きましたので、次の新しい時代を見せてくれると思いますし…。馬場さんもですね、新しいものを作るって、こういう風にやらなきゃだめだよな、ってことで、今日はもう、お三方のご意見をうかがえるのをすごく楽しみにしていたので、ということを前提に…。
安藤氏 そんなね、改めて褒められると…GameBankを応援してますから。
椎葉氏 スマートフォンのゲーム市場って、今一つ目の段階を終わったところかなと。ここから市場を変えていく人が必要だと思っているんですよね。Aimingに関しては、変わらずコアの方向でやっていくんですが、Gamebankさんがヤフーの力を使ってどうされるのかにすごく期待しています。
馬場氏 ITの会社じゃなくて、本当にクリエイティブな会社として成功してほしいですね。そうやって言ったほうが多分かっこいいんじゃないかなと。そっちのほうが人気も出るし、転職したくなるんじゃないかなと思って…堅苦しい資料とかじゃなくて、物の方で勝負していって、最後までやってもらいたいなと思っています。
――ありがとうございました。
会社情報
- 会社名
- GameBank株式会社
- 設立
- 2015年1月