グリー<3632>は、4月28日、2015年6月期の第3四半期(14年7月~15年3月期)の決算を発表するとともに、東京都内で決算説明会を開催した。発表した1~3月期の連結は、売上高219億円(前四半期比[QonQ]21.3%減)、営業利益49億円(同1.8%増)、経常利益49億円(同20.7%減)、最終利益16億円(前四半期は76億円の赤字)となり、久々のQonQでの営業増益となった。フルネイティブアプリのヒットタイトルが出てきたうえ、開発体制も整うなど、数字以外の部分での明るさも見えてきた。
ウェブゲームを中心に売り上げが減少したものの、広告宣伝費などのコストコントロールを強化したことが奏功した。23億円の費用削減を行った。経常利益は、前四半期に計上された為替差益がこの四半期には計上されなかったため。また、最終損益は黒字に転換したが、前四半期に計上したポケラボとOpenFeinの減損損失184億円がこの四半期には計上されなかったことによる。
■大幅な減収もコスト削減で増益に
決算説明会に臨んだ田中良和社長(写真)は「収益力を確保しながら中長期的な投資を進めた」「ネイティブシフトは、国内600名・20開発ラインに拡充しほぼ完了した。今後はヒットタイトルを創出し、収益獲得フェーズに順次移行したい」と述べた。『消滅都市』は、マスプロモーションを通じて継続的に成長しており、子会社ポケラボとセガゲームスが共同開発した『ポイッとヒーロー』も好調な出足となっている。
売上高は、同21.3%減の219億円と大幅な減収なった。ゲームの「コイン消費」は10.0%減の313億コインと落ち込んだことが主な要因だ。ブラウザゲームだけでなく、ネイティブゲームのコイン消費も落ち込みがみられた。『消滅都市』が継続的に成長したほか、ブラウザゲームでも好調なタイトルが生まれたものの、ブラウザ・ネイティブともに既存タイトルの落ち込みがカバーできなかった。
営業利益は、同1.8%増の49億円と久々の増益となったが、前述のとおり、大幅なコスト削減によるものだ。取締役執行役員常務の秋山仁氏は、マスプロモーションを抑制するなど、広告宣伝費を11億円削減したことに加え、外注費や、前の四半期に計上されたタイトルに関連する減損損失がこの四半期には計上されなかったことが主な要因と説明した。この結果、営業利益率は20%台に回復した。
■『消滅都市』の売上規模はQonQで1.4倍に拡大
冒頭に田中社長がネイティブシフトがほぼ完了したとコメントしたが、開発体制はどのようになったのか。ネイティブゲームの開発人員は、期首の300名からこの四半期末で600名体制となったほか、開発ラインも期首の10ラインから20ラインに倍増した。開発人員については有期雇用や業務委託なども含めると700人弱になるとのこと。今後、タイトルのヒット状況に応じて増やす可能性もあるが、おおむね完了したという。
続いて、注力中のタイトル『消滅都市』は、引き続き成長した。アプリストアの売上ランキングでも上位に入ることが珍しくなくなったが、第3四半期の売り上げはQonQで1.4倍に伸びたという。また、ARPDAU(アクティブユーザー1日当たりの平均利用額)も1.7倍に伸びた。2月に実施したテレビCMや新章の追加、他のIPとのコラボ施策が奏功したという。第4四半期でもテレビCMを実施し、引き続き成長を図る。
新作については、子会社ポケラボとセガゲームス『ポイッとヒーロー』がサービス開始1週間で40万ダウンロードを突破し、App Storeの売上ランキングでもTOP50入りを果たすなど順調な立ち上がりとなった。
また、LINEとグリーの合弁会社であるEpic Voyage『LNEタワーライジング』も第4四半期中にリリースする予定。すでに事前登録を開始しており、他のプレイヤーと交流可能な要素を加えたダンジョンRPGになるという。開発は、Wright Flyer Studiosが行う。
ポケラボの『クロスサマナー』の海外市場展開も推進する。英語圏や欧州圏、韓国で5月末にリリースし、中華圏でも6月初旬に提供する予定。また『NARUTO』は、中国市場向けの開発も行っており、この夏にリリースする計画だ。
ブラウザゲームについては、有力IPとのコラボで『探検ドリランド』やアバターが好調だったことや、gloops『スカイロック』が第3四半期のコイン消費が3.1倍に伸び、月商億超えとなったこと、『ミリオンアーサー エクスタシス』が順調な立ち上がりであることが示された。
『War of Nations』の欧州市場展開も強化する。アメリカのスタジオで対応しており、ドイツ語、スペイン語、イタリア語、トルコ語、フランス語、ロシア語でリリースする予定。米国のApp StoreとGoogle Playの売上ランキングでも上位に入っている本作だが、今後、欧州言語にきめ細かく対応することで「上積みを狙う」。
■第4四半期の見通し…『ポイッとヒーロー』の広告宣伝費は積み増す可能性も
第4四半期(15年4~6月期)は、売上高220億円(前四半期比変わらず)、営業利益40億円(同18.3%減)、経常利益40億円(同18.3%減)、最終利益35億円(同105.9%増)を見込む。
ブラウザゲームを中心に引き続き売り上げが低下する見通し。また広告宣伝費は『消滅都市』でプロモーションを行うが、おおむね第3四半期並みとなる予定。『ポイッとヒーロー』が好調な出足だが、広告宣伝費を積み増す考えはあるのかと聞いたところ、「状況に応じて機動的に増やす可能性はあるものの、現段階の予算には入っていない」(広報担当者)とのことだった。
なお、15年6月通期は、売上高935億円(前期比25.6%減)、営業利益200億円(同42.9%減)、経常利益240億円(同33.4%減)、最終利益10億円(同94.2%減)を見込む。
(編集部 木村英彦)
会社情報
- 会社名
- グリー株式会社
- 設立
- 2004年12月
- 代表者
- 代表取締役会長兼社長 田中 良和
- 決算期
- 6月
- 直近業績
- 売上高613億900万円、営業利益59億8100万円、経常利益71億2300万円、最終利益46億3000万円(2024年6月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 3632