【韓国市場の“今”】「日本は重要な市場」「JRPGの魅力を」…『クルセイダークエスト』など韓国ゲームの開発陣が語る今後のカルチャライズ


 
群雄割拠の時代に突入した韓国モバイルゲームアプリ市場の現状と、2015年の見通しに迫る特集記事「韓国ゲームアプリ市場の“今”」(全4回)。現在同国は、スマートフォンの普及率が80%を突破するほどのモバイル強国であり、その優れた利用環境に基づき、ユーザーがモバイルゲームをプレイする時間も増加の一途を辿るなど、韓国ゲームアプリ市場は大幅な成長を続けている。

そして、数多ある韓国ゲーム企業のなかでも、ひときわ異彩を放っているのがNHN Entertainmentだ。『LINE POP』や3DアクションRPG『The Soul』などの多彩なアプリポートフォリオの体制に加え、日本の人気タイトルや大ヒットパズルゲーム『ポコパン』のパブリッシングも担うほか、エイチーム<3662>との合弁会社の設立など話題に事欠かない企業である。

本稿では、韓国NHN Entertainmentのゲームアプリ『THE SOUL』と『クルセイダークエスト』の開発陣にインタビューを実施。両作品ともクオリティの高いゲーム性ではあるが、その開発舞台裏には「日本に対する意識」が秘められていたのだ。

 

■『The Soul』開発陣…「日本ユーザーは的確な意見を言う」



NHN Entertainment PM
Yoo Seungjoo(ユ・スンジュ)氏 (写真左)
 
mSeed<開発会社> PD
Park Jaehoon(パク・ジェフン)氏 (写真右)

はじめに、2014年12月19日にリリースしたスマートフォン向け3DアクションRPG『The Soul』の開発陣に話を訊いた。本作は、三国英雄の霊魂との戦闘を通して強烈で豪快なアクションを体験できる3DアクションRPG。最大の特長は「魂カード」システムで、戦闘を通して収集する三国英雄の霊魂には固有のスキルが設定されており、プレイヤーは収集した霊魂を組み合わせ、自分だけの戦略的なプレイが楽しめる。

NHN Entertainmentは、アジアのなかでも日本を重要市場として捉えており、韓国で2014年12月10日にリリースした翌週には、早々に日本でローンチするなどのスピード感を見せた。「大規模なマーケティングは行っていないが、日本のユーザーからの口コミやマーケットの評価が非常に良い」とパク氏。
 
 
日本で実施した事前登録では、完全新規タイトル及び海外製にも関わらず3万人以上を突破。ユ氏は当時のことを「日本のユーザーは三国志に感心があるだけではなく、同時に公開したPVを通して華麗なアクションを気に入ってくれた様子」と振り返った。

もちろんゲーム内で特別こだわった点も「アクション」とのことだ。「日本の『真・三國無双』(コーエーテクモ)の影響も受けました。韓国・日本・中国を重要市場としていましたが、どの国もゲームに精通したユーザーばかりで、ハイクオリティな表現が求められます。そのためにも、アクション性を徹底して昇華させる必要がありました」とこだわりを明かしてくれた。
 

また、日本のユーザーからの意見で実装されたコンテンツがいくつかあるとのこと。韓国はもちろん、「日本のユーザーからの意見も積極的に反映しています」と、ギルドシステムと回避システムのふたつを日本ユーザーからの意見としてゲームに反映。本作はグローバルワンビルドのため、そのまま韓国版にも反映されている。

日本で展開する際は、コミュニティサービス「Lobi」の導入や攻略wikiページの開設など、独自の施策も行った。加えて、日本のアプリは定期的にイベントを実施することも考慮し、イベントの数を増やすなどしている。「日本のユーザーの声にもきちんと耳を傾けて、またゲームに満足してもらえるよう力を入れています」とコメント。日本のユーザーから寄せられる意見について、もう少し詳しく聞いたところ「日本のユーザーから寄せられる意見は、それこそ無鉄砲な言い方ではなく、すごく的確かつ丁寧に伝えてくれます(笑)」と言葉を添えた。

最後に両氏は、改めて「日本は重要な市場」であることを語ってくれた。市場規模はもとより、ゲームに精通したユーザーの多さ、そしてファンタジーや三国志などの世界観の題材・IPに関して理解のある国として、日本はゲーム開発者が成功を見るひとつの指標となっているようだ。
 

■『The Soul』
 
 

■『クルセイダークエスト』開発陣…「JRPGの魅力を意識」「日本で認められるように」


 
NHN Entertainment Camp Leader 
Kim Sooyoung(キム・スヨン)氏 (写真左)
 
Load Complete<開発会社> CEO and Co-founder
Bae Jeonghyun(ベ・ジョンヒョン)氏 (写真中央)
 
NHN Entertainment PM
Jung Joongjae(ジョン・ジュンジェ)氏 (写真右)

続いて、美麗なドット絵のなかで、華麗なエフェクトと爽快感が味わえるスマートフォン向けアクションRPG『Crusaders Quest(クルセイダークエスト)』の開発陣に話を訊いた。本作は、画面下に並んでいるブロックをタップすることでスキルを発動させ、迫り来る敵たちを倒していくアクションRPG。

また、ストーリー上で救った女神は仲間としてサポートしてくれるのだが、回復タイプや攻撃タイプなど、5人の女神が持つスキルを適切に活用していくのも攻略の鍵となる。この5人の女神には、きちんと“ツンデレ”や“おとなしめ”など、それぞれにキャラクター属性が決められているほか、女神との会話劇なども収録されているのも特徴。
 

かねてからドット絵や女神とのコミュニケーションなど、「日本ユーザーに合ったタイトル」と韓国国内でも取り沙汰されていた本作だが、それもそのはず、『クルセイダークエスト』の開発会社・Load Complete CEOのジョンヒョン氏は大の日本ゲーム好きなのである。「『ペルソナ4』が好きで、『鉄拳』もプレイしています(笑)。なかでも『ペルソナ』シリーズのような物語やキャラクターを意識したゲーム作りは参考にさせていただきました」とコメント。

ドット絵から漂うレトロ風のゲームデザインについては「昔ゲームを遊んでいた人にも親しみがあるよう、現在のデザインになりました。ですが、実際に遊んでみると、コンソールユーザーも納得できる奥深いゲーム性となっています」と、懐かしい雰囲気でユーザーが遊びやすいよう間口を広げながらも、きちんとしたやり応えのあるゲーム性であることを語ってくれた。
 

▲ドット絵だけど、決して縮こまらず豪快な演出が光る


また、前述しているように物語に関しても並々ならぬこだわりを持っているようだ。「物語はゲームシステムと上手く連動することを意識しました。たとえば、本作は複数の女神を救うお話ですが、彼女たちを救うことで“女神スキル“という強力なスキルを活用できます」と、プレイヤーの成長にも繋がる物語の動機付けも徹底しているという。女神たちとの会話(エピソード)も、プレイヤーにとってはコレクション意欲が増すようだ。

韓国版では、現在女神は6人存在。それぞれツンデレやクールなど、明確な個性を立てているのが特徴的である。女神スキルも各女神の世界観に併せているという。加えて、韓国版のリリース当初はボイスは導入されていないが、日本版ではわざわざ豪華声優陣を起用したようだ。
 

▲『クルセイダークエスト』に登場する女神たち


開発陣は、日本のスマホゲーム市場を調べることにも余念がない。「当初から日本でも認められるように準備を進めてきました。たとえば日本のヒット作である『モンスターストライク』や『モンスターハンター』に代表される協力プレイは、コミュニティ活性化に繋がる非常に重要なコンテンツです。そのため、本作にもレイドボスを実装して、ほかのプレイヤーたちと共闘(あるいはPvP)できるようシステムに取り入れました」とのことだ。
 
しかし、本作は面白いことに北米市場からの評価が高い作品でもある。韓国版の数週間後にリリースされた北米版は、配信開始当時「ユーザー数が韓国よりも多い状況でした」と語った。ユーザー数を伸ばせたのは、まず北米のアプリストアでフィーチャー(おすすめ)されたことが最も大きい。当然ゲーム本編の面白さもあるのだが、もうひとつヒット要因に繋がったのは、NHN側の徹底したローカライズが影響しているようだ。

「物語のテキストを単純に英語翻訳するのではなくて、英語が公用語の各国の人たちが違和感ないような言い回しに、すべて書き直しました。ちなみにテキストは、北米支社にいる専門のローカライズライターが行っています。全体的にテキストのクオリティは高いと自負しています」と力強い言葉を述べてくれた。

このほか、ヒット要因として前述した「子供のときに遊んだRPGの雰囲気」が関係していると説明。たしかに、それで言うとエイリムの『ブレイブ フロンティア』は、北米でヒットした数少ないスマホ向けJRPGである。「子供の頃から慣れている感覚をスマホに落とし込み、“やってみたい”と思えるようなゲームに仕上げています」。
 

ちなみに、開発期間は1年半ほどでプロットは6ヵ月とのことだ。「最初はただ走るアクションゲームを作ろうと思ったのですが、難易度があまりにも高かったんですよ。そこからアクションパズル要素を加えて、現在の形になりました」と説明。なかでも開発中は、ユーザーの目線にも注意をはらったという。

というのも基本的に本作では、画面下のパズル部分を操作することになるのだが、あまりにもパズル部分を難解にしてしまうと、目線が下に集中してしまい、上画面でキャラクターたちの戦っている状況に目が行かなくなってしまうということだ。「当初はパズルを5つ揃える必要がありましたが、これを3つまでに減らして、上下の画面をバランス良く見られるようにしました」と、細かいながらも重要な仕様変更に至ったことを明かしてくれた。

最後に日本市場における意気込みとして、「これまで配信した国では、“ゲーム好きのためのゲーム”として多くの方に高い評価をいただきました。日本でもIPコラボのチャンスもあるのかなと思っています。それこそ『ペルソナ』もいいかもしれませんね(笑)。可愛いキャラクターがたくさんいるので、女性ユーザーにも訴求できるかと思います」と語ってくれた。

『クルセイダークエスト』は、日本で2015年6月中に配信予定。現在、事前登録も受付中だ。


■『クルセイダークエスト』

iOS版(予約トップ10)

Android版(予約トップ10)

事前登録サイト


 
(取材・文:編集部 原孝則)



■「韓国ゲームアプリ市場の“今”」
 




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会社名
NHN
設立
2013年8月
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