カヤック<3904>は、第2四半期累計(1~6月期)の決算を発表するとともに、東京都内で決算説明会を開催した。発表した決算は、売上高16億1000万円(前年同期比45.7%増)、営業利益2億0800万円(前年同期5000万円の赤字)、経常利益2億0500万円(同5300万円の赤字)、最終利益1億2900万円(同3200万円の赤字)と大幅な増収・黒字転換に成功した。
また、第2四半期(4~6月期)の決算をみると、売上高が前四半期比で0.7%減の8億0200万円、営業利益が8.1%増の1億0800万円、経常利益が8.5%増の1億0600万円、最終利益が6.9%増の6700万円となり、微減収・増益となった。カヤックのフットサルチームのユニフォームを着て決算説明会に臨んだ柳澤大輔CEO(写真)は、「期初に下期偏重の業績になると発表したが、ここまでは計画どおり」と順調に進捗していることを強調した。通期計画に対する進ちょく率も良好で、上振れする可能性も十分ありそうだ。
■広告宣伝費などの抑制でQonQで増益に
まず、売上高は、前四半期比で0.7%減の8億0200万円とほぼ横ばいとなった。第2四半期に落ち込む傾向のあるクライアントワークの売上が下がったものの、『ぼくらの甲子園!ポケット』を中心とするソーシャルゲームと、スマートフォンゲームコミュニティサービス「Lobi」の伸びでカバーし、前四半期並みの着地となった。
また、営業利益は、同8.1%増の8億0200万円だった。人件費や外注費などが増加したものの、広告宣伝費やその他費用を圧縮し、営業利益は前四半期に比べてプラスとなった。広告宣伝費の抑制については、新作リリースがなかったことが主な要因で、第3四半期以降、増やしていくとのことだった。
▲貸借対照表。大きな変動はないが、借入金の返済が進んだため、固定負債が減少した。
続いて、各サービスの状況を見ていこう。
■季節要因によりクライアントワークは減収
クライアントワークの売上高は、同11.7%減の2億4100万円だった。いわゆるプロモーションなどのキャンペーンの企画を請け負う、いわゆる受託型のビジネスが中心となっている。企業のキャンペーンが第3~4四半期に(7~12月)に集中する一方、第2四半期(4~6月期)は減少する傾向にあるため、この四半期は売上が下がったという。
なお、収益の中心は受託型だが、最近では新規事業や新製品の共同開発案件も増えているという。例えば、サカワとの共同事業であるハイブリッド黒板アプリ「Kocri」は、電子黒板サービスで、あらかじめ用意しておいた教材をスマートフォンに入れておけば、黒板上に教材を投影して授業に利用することができる。他の先生との教材の共有などもできるとのこと。
柳澤氏は、「電子黒板サービスの導入は、教員の業務負担を軽減することが目的だ。したがって、電子黒板を利用することが負担になってはならない。実際に教員に使ってもらえるサービスを開発するため、黒板メーカーの老舗であるサカワと一緒にやらせてもらうことになった。教室にも足を運び、1年半かけて開発した」と述べた。料金形態は、1人あたり年間6000円で提供するという。
またカヤックは、エンジニアやディレクター、デザイナーが90%を占めており、営業部隊が非常に少ない。そこでPR会社大手のベクトルに続き、イベント会社のTOWと業務提携した。オンラインで"バズる"イベントを請け負った際、リアルイベントを企画して話題を喚起するといったことが多いためだ。提携の効果もあり、引き合いは順調に増えているとのこと。
■ソーシャルゲームは『ぼくらの甲子園!ポケット』が堅調
ソーシャルゲームの売上高は、同2.9%増の4億6200万円だった。特に新作タイトルのリリースはなかったが、『ぼくらの甲子園!ポケット』を中心に堅調に推移しているという。売り上げのほとんどはネイティブアプリとなっており、ブラウザゲームはソーシャルゲーム全体の3%程度を占めるにすぎない状況となっている。
決算発表と同日、新作アプリ『ポケットフットボーラー』をリリースした。プレイヤーが監督としてではなく、1人のサッカー選手となり、他のプレイヤーとともにクラブチームを結成し、作戦会議をしながら試合に挑む点が特徴だ。日本マーケットから展開し、世界配信も行う計画だ。
会場からは海外でのリリースの時期について質問があり、柳沢氏は「いつとはいえないが、かなり早いタイミングで出せるのでは」と回答し、早期リリースとなることを示唆した。国や言語によってサーバーは分けるのではなく、同一サーバーで運営するようだ。世界中のプレイヤーと一緒にチームを組んだり、競いあったりできるという。
『ポケットフットボーラー』の広告宣伝の方針に関しても質問も出た。柳澤氏は「『ぼくらの甲子園!ポケット』はシリーズタイトルを4年運営してきた実績やユーザーがいるので、早い段階でテレビCMを打った(編集部注:リリースの翌月)。今回は、いきなりテレビCMを打つことはない。ただ、ある程度のユーザー規模がないとチームが組めないし、対戦もできないので、初期からある程度の広告は出したい」と述べた。
■Lobiは集客をメインとした売上高は1億円到達が間近に
スマートフォンゲームコミュニティ「Lobi」の売上高は同22.1%増の8600万円となり、四半期売上高で1億円到達が視野に入ってきた。
「Lobi」とは、チャットやゲーム動画の録画・投稿などが行えるスマートフォンゲームコミュニティサービス。同社によると、公開コミュニティ数が33.3%増の16万、SDK累計導入アプリ数が10.1%増の650アプリと伸び、国内最大級のサービスに成長した(ユーザー数は非開示)。同社関係者によると、「動画関連サービスの導入以降、導入アプリとユーザー数が増えた」とのことだった。
柳澤氏は「上期はユーザー数を増やすことに力を入れてきた。ここまでは計画どおり」と述べ、下期以降、マネタイズに徐々に力を入れていくことを明かした。「Lobi」の収益源は、広告収入と、ユーザーからの課金収入となるが、現在は広告収入がほとんどだという。今後、課金収入を伸ばしていく方針だが、月額課金やスタンプ課金などその方法はこれから考えていくとのこと。
▲3本の事業の柱が相乗効果を生む。今回、新しいのは、ゲーム音楽の交響楽団「JAGMO」がジョインしたことだろう。ゲーム音楽のコンサートというリアルなコンテンツにお金を払ってもらうビジネスを展開する。「Lobi」から送客を行っていく。第3四半期以降に業績にも寄与してくる見通しだ。
■通期の業績予想は据え置き
2015年12月期通期の予想については、従来予想から変更なく、売上高37億0500万円(前期比27.9%増)、営業利益3億7000万円(同86.6%増)、経常利益3億6900万円(同2.0倍)、当期純利益2億3600万円(同99.8%増)の見込み。
通期計画に対する進ちょく率は、売上高が43.4%だが、営業利益が56.4%、経常利益が55.5%、当期純利益が54.6%と50%を超えている。『ポケットフットボーラー』やLobiなどの売り上げが下期に伸びると想定しているという。
(編集部 木村英彦)
会社情報
- 会社名
- 株式会社カヤック
- 設立
- 2005年1月
- 代表者
- 代表取締役CEO 柳澤 大輔/代表取締役CTO 貝畑 政徳/代表取締役CBO 久場 智喜
- 決算期
- 12月
- 直近業績
- 売上高174億6700万円、営業利益10億2100万円、経常利益10億3800万円、最終利益5億1100万円(2023年12月期)
- 上場区分
- 東証グロース
- 証券コード
- 3904