【ハッカドール×SGIコラボVol.02】音楽Pの村上貴志氏インタビュー「楽曲の基礎は昨年夏にできていた」「ユニットとしていつかは興行やアルバムも…」
オタク向けスマホニュースアプリ『ハッカドール』が昨年8月のリリース以来、快進撃を続けている。ユーザー数を順調に増やすとともに、2015年8月にはなんと1億PVを突破したのだ。さらに驚くべきことにニュースアプリであるにもかかわらず、10月より『ハッカドール THE あにめ~しょん』としてテレビアニメの放送も始まった。
Social Game Infoでは、関係者インタビューを通じてニュースアプリをアニメ化するという前代未聞の試みに迫る。第2回目となる今回は、エイベックス・ピクチャーズで音楽プロデュースを手掛ける村上貴志氏(写真左)に作品内で使われる楽曲についてインタビューを行った。記者はアニメの音楽制作には詳しくないのだが、初歩的なところから丁寧に教えていだいた。今回、『ハッカドール』プロデューサーの岩朝暁彦氏(写真右)にもご参加いただいた。
■アニメ主題歌は昨年夏に制作した「First Heart Beat」がベースに
―――:よろしくお願い致します。まず、作品への関わり方を教えていただけますか?
村上氏:アニメーションのプロデュースを行っていますが、『ハッカドール』では主に音楽プロデューサーとして関わっています。オープニング主題歌「Touch Tap Baby」やエンディング「Happy Days Refrain」、挿入歌などの楽曲の制作、作品につけるBGM(劇伴)の制作を担当しています。
―――:『ハッカドール』はアニメから関わるようになったのですか?
村上氏:いえ。私と『ハッカドール』の関わりからお話しますと、プロデューサーの岩朝さんと一緒に、昨年夏、アプリのプロモーションビデオに入れる主題歌「First Heart Beat」を作る仕事をやらせていただいたことが始まりです。ニュースアプリですので、デジタルな要素を強調しつつ、PVやキャラクター、映像の雰囲気に合わせた音楽を作りました。
岩朝さんを中心とするハッカドールチームが楽曲に具体的なイメージを持っており、非常に仕事がしやすかったのを覚えています。テーマや盛り上げどころ、こういう音を使ってほしいなどの要望が具体的にあり、楽曲をスムーズに作ることができました。
マンガや本を原作とするアニメ化する際、原作の先生から「こうしてほしい」という要望を受けることはあまりなかったのですが、実は要望があったほうが作品に合う音楽がつくりやすいんです。岩朝さんは、プロデューサーですが、原作者という立ち位置でもあり、とても助かりました。
当時は、アニメ化など考えてもいませんでしたが、基礎となるところは、昨年の夏コミの「First Heart Beat」を作ったときにできたと思います。今回、アニメの音楽をつくるにあたって、そこがあったのがすごくよかったですね。
岩朝氏:そこですが、げそいくお監督の影響が強かったと思います。監督から、映像やキャラクターがこういう感じにしたいから、こういう楽曲が必要だというお考えを聞いていました。音楽に関する知識は僕も十分ではないので、チームにいる音楽に詳しいメンバーに教えてもらいながら、げそ監督のお考えをニュアンスも含めてうまく解釈して村上さんにお伝えできた…といっていいんでしょうか?
―――:なるほど。昨年制作した「First Heart Beat」とは楽曲としては異なりますが、ベースは変わらないわけですね。
村上氏:はい。楽曲としては違うところがありますが、『ハッカドール』の魂やテイストといった部分は引き継ぎつつ、アニメの主題歌らしい楽曲に仕上げるように心がけました。PVとアニメのオープニングは作り方は全く違いますから。
■アプリ発のアニメだが、制作はスムーズに進行
―――:初歩的な質問なんですが、アニメの主題歌とPV用の音楽ってそんなに違うものなんですか?
村上氏:はい。PVは、どちらかというと、作品のテイストや世界観に合わせて作りますので、BGMとしても聞きやすい音楽が好まれます。つまり、映像に合わせて作ります。アニメの主題歌のほうが少し複雑で、難しい仕事になります。
オープニングは、アニメの看板です。派手さやアニメの世界観などを考慮する必要があります。アニメが出来上がっているところから歌詞を作っていきますので、歌詞に世界観を込めていく必要があります。また、楽曲への要望も多いので、それをいかに消化するかも重要になります。
―――:主題歌を作るときは、アニメが出来上がってから作るのですか?
村上氏:ほとんどは絵としてのアニメではなく、脚本としてのアニメがでてきた段階で作ることが多いですね。主題歌は大事なものですので、作品がどういう方向に向かっているのか、脚本の中身を気にせずに作ることはあまり少ないですね。作品の世界観を含めて話し合って、主題歌の方向性を決めていきます。
『ハッカドール』もその例に倣って作りました。作家さんが劇伴と主題歌が違いますので、同時に行いませんでしたが、げそ監督、岩朝さん、プロデュースチームと脚本読みを行いながら、楽曲の方向性を決めていきました。
―――:ニュースアプリ発のアニメということですが、これまでの作品との違いや難しかったところはありますか?
村上氏:動いているハッカドールがプロモーションビデオでしか見えなかったことくらいでしょうか。それ以外は特に変わるところはありませんでした。コメディテイストの作品ということがわかっていましたし、げそ監督や岩朝さんとの打ち合わせで楽曲の方向性が明確でしたので、難しいところはありませんでした。
スムーズだったのは、昨年来の取り組みで基礎ができていたことに加えて、打ち合わせに参加したメンバーがほぼ同年代だったことが大きいですね。主題歌に関して、「この楽曲のこの音がいい」などと具体例を交えて話し合ったのですが、具体例に出す楽曲のイメージが共有できていました。
世代が違うと、聞いている音楽も違うので、「なにそれ、知らない」となってイメージが共有しづらいことが多く、方向性を定めるにも時間がかかります。もちろん、喧々諤々としたディスカッションもありましたが、お話したように波長が合っていましたので、盛り上がりつつ方向性も見つけやすかったと思います。
―――:こういう曲がいいとイメージが共有できるのは重要ですよね。ゲーム開発でも企画者がこのゲームやアニメのこういう演出がいいとイメージを伝えても、デザイナーと世代が違うとイメージできなくてロスが発生すると聞きます。
■OP・ED主題歌は会心の出来
村上氏:インタビューの掲載時には放送されているでしょうが、2話では、「キャベツ検定」という挿入歌が入ります。監督の鼻歌をベースに作曲し、作詞も監督自らが行いました。歌詞には、いろいろな意味が込められており、とてもダークな曲になっています。キャストさんもどういうことを歌っているのか、わかりづらいみたいでした。かといって、こちらからも説明しづらくて(笑)
―――:え! 挿入歌まであるのですか。楽曲はどのくらいつくられたんですか?
村上氏:オープニング主題歌のほかに、エンディングは4種類あります。3人全員で歌っているもの、1号、2号、3号のキャラクターソングです。挿入歌でいうと、「キャベツ検定」を含めて結構作っています。ショートアニメでここまで作る作品はなかなかないでしょうね。僕らとしては多く楽曲を作りたいので、依頼があれば「ぜひ」ということでやらせてもらっています。
―――:起用した作曲家と作詞家さんはどういったお考えで選定されたんですか。
村上氏:作曲は、「First Heart Beat」と同じく、RAMMの2人にお願いしました。デジタル系の打ち込み系を得意としていますし、僕らと年代も近いため、こちらのイメージするアプリのデジタルな雰囲気を感じさせる楽曲ができると考えました。結果、とてもいいメロディをつくっていただけたと思います。
作詞に関しては、畑亜貴さんにお願いしました。『ハッカドール』のハチャメチャ感や勢いのある詞を書けるのは、畑さんしかいないと思いました。脚本を読んで内容を把握していましたので、この判断への迷いはありませんでした。
岩朝氏:できた歌詞を見てびっくりしませんでしたか?
村上氏:そうですね。予想をはるか上回る歌詞をつくっていただくことが多いですが、今回もびっくりしました。作詞家のクリエイティビティは僕らのそれをはるか上をいきます。歌詞だけをみると、ピンと来ないフレーズや単語もときにありますが、曲に乗せたとき、ものすごく良いフレーズになるんです。つまり、音に乗せることを計算したうえで言葉を選択されているんですね。畑さんは本当に天才だと思います。畑さん以外では今回の楽曲と世界観を表すのは難しかったでしょう。
―――:楽曲は会心の出来だと。
村上氏:はい。どの作品もそうなんですが、出来上がった作品には本当に自信があります。アニメの主題歌ですから、作品に合っているといっていただけると嬉しいですね。
―――:注目してもらいたいポイントを教えて下さい。
村上氏:アニメと楽曲がセットになったオープニングとエンディングはぜひ見ていただきたいですね。オープニングは、女の子がポップでかわいらしく動いており、非常にいい仕上がりです。エンディングは4種類あって、アニメーションは、どれもMMDのキャラクターが非常によく動いています。いずれも少し短い尺ですが、その分、密度の濃い内容となっています。
岩朝氏:エンディングは、僕らが予想する以上にクオリティで作っていただいて、驚いています。アニメ制作を担当したトリガーさんには、非常に凝ったカメラワークを入れていただきました。
村上氏:V編(ビデオ編集)でみて僕も驚きました。できあがったオープニングやエンディングをみていると、頑張ったかいがあったと思います。正直、諦めそうになった局面もあったんですが、諦めなくて良かったです。『ハッカドール』はショートアニメなのにギリギリの戦い方をしていますよね(笑) ですが、仕事をしていてとても楽しいです。
【オープニング場面カット】
【エンディング場面カット】
【エンディング場面カット】
■アルバム…ゆくゆくは単独ライブなど興行も
―――:3人の歌についてはいかがでしょうか。
村上氏:「First Heart Beat」の時はアニメの話もありませんでしたので、PVではアフレコの延長線上でレコーディングをしたように思います。今回、「Touch Tap Baby」は、キャラクターソングなのでキャラクターに寄り添って、キャラクター感の濃いものになっています。楽曲としては、「歌い上げる」というよりも、ノリや楽しさ、キャラ感を出したほうが良いと考えてレコーディングとミックスをさせていただきました。その意味で、両方を聴き比べていただくと、キャラ感が全く違うことに気づかれるかと思います。
―――:最後に、村上さんの個人的な希望としてユニットとしてのハッカドールにこうなってほしい、というイメージはありますか?
村上氏:まず、作品にはこれからも続いて欲しいです。そのうえで、このユニットがいろいろな方面で活躍していけたら良いなと思っています。ミュージックビデオも収録しますが、1号、2号、3号の役者さんは、歌とダンスのスキルが高いので、ダンス重視で格好良く、そしてかわいいものにしたいですね。そして、ライブなどでも活躍できるようにしたいと思っています。
ゆくゆくはもっと楽曲を増やして、アルバムも出して、ワンマンライブといった興行もできたら、とも思っています。最近では、作品を飛び出してユニット活動をするキャラクターソングユニットもありますので、ありえなくもないと考えています。
(ハッカドールを演じる3人。左から高木美佑さん、奥野香耶さん、山下七海さん)
―――:ミュージックビデオも作るんですか。てっきりボイスドラマやコメンタリー、ノンクレジットエンディングなどにするかと思っていました。
村上氏:エイベックスから出す楽曲ですので、音楽やダンスには絶対に妥協したくありません。ダンスも複雑な振りをいれていますが、彼女たちならば1日あれば覚えてしまいます。そして、声優としての彼女たちを好きな方もいらっしゃるので、そういった方々にもアピールできたらと思っています。
―――:OP主題歌とED主題歌のCDはそれぞれ11月25日発売ですね。楽しみにしています。
岩朝氏:木村さん、ぜひ20枚くらい買ってください。
―――:まあ、それについてはおいおい…。今日はありがとうございました。
(編集部 木村英彦)
■放送情報
【放送情報】
TOKYO MX USAT枠 10月2日(金)23:00~
BS11 USAT枠 10月4日(日)25:00~
AT-X 10月4日(日)23:15~23:25
【配信情報】
niconico 10/4(日) 25:30~ http://ch.nicovideo.jp/hackadoll
GYAO/GYAOストア 10/5(月)13:30~ http://gyao.yahoo.co.jp/
U-NEXT/アニメ放題
マイシアターDD 10/6(火)13:30~
ビデオマーケット 10/6(火)13:30~
バンダイチャンネル 10/7(水)13:30~ http://www.b-ch.com/contents/feat_newtitle/
dアニメストア 10/22(水)12:00~ https://anime.dmkt-sp.jp/animestore/CF/shinban-2015-fall
■関連サイト
©DeNA/ハッカドール THE あにめ~しょん 製作委員会
©DeNA Co.,Ltd.
会社情報
- 会社名
- 株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)
- 設立
- 1999年3月
- 代表者
- 代表取締役会長 南場 智子/代表取締役社長兼CEO 岡村 信悟
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上収益1367億3300万円、営業損益282億7000万円の赤字、税引前損益281億3000万円の赤字、最終損益286億8200万円の赤字(2024年3月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 2432
会社情報
- 会社名
- エイベックス・ピクチャーズ株式会社
- 設立
- 2014年4月
- 代表者
- 代表取締役社長 寺島 ヨシキ/代表取締役副社長 勝股 英夫
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 非公開
- 上場区分
- 未上場