2万6000人の雇用を生み出した沖縄県のIT産業振興策…コールセンターから始まりソフト開発・コンテンツ制作企業が多数進出


沖縄県では、県内におけるこれまでIT産業の振興に取り組んできたが、現状はどうなっているのだろうか。沖縄で開催中の「NEXT CREATORS FORUM」の一環として、11月22日、沖縄IT産業基盤関連施設視察ツアーが行われ、商工労働部情報産業振興課の眞喜志氏(写真)がIT津梁パーク内でこれまでの取り組みを紹介した。

沖縄は観光に続く新しい産業としてIT産業の振興に取り組み始めたのは、1998年だった。をメインの産業としてきたが、モノづくりの育成には立ち遅れていた。沖縄マルチメディアアイランド構想に基づき、最初はコールセンターの誘致から開始し、コンテンツ制作やソフトウェア開発の誘致にも力を入れている。

その結果、2015年1月現在には合計350社が立地し、約2万6000人の新規雇用を生み出すに至った。2004年の実績との比較で、企業数では2.7倍、雇用者数はほぼ倍増となった。内訳を見ると、誘致企業の事業内容も、ソフトウェアが2.9倍の113社に伸びたほか、コンテンツ制作業も4.7倍の52社となり、振興策が着実に成果を上げたことがわかる。
 

沖縄県では、国内企業の誘致がメインだったが、現在では、アジアとのビジネスをつないでいく場所にするための転換を目指しているという。数値目標としては、2021年には沖縄県内の総生産額は5800億円(2011年は3500億円)、440社の誘致、そして5万5000人の雇用者数の実現を掲げているとのこと。

なぜ大きな成果を上げたのか。眞喜志氏は、その理由として

(1)沖縄では若年者の失業率が高いが、それは裏返せば就業意欲の高い若い者が雇用しやすい状況にあるなど豊富な労働力があること。
(2)IT特区や金融経済活性化特区などの税制優遇が受けられる産業集積地の整備が進んでいること
(3)リスク分散の拠点としての注目されていること
(4)リゾート地で働くことがストレスの緩和や創造性の発揮などにメリットがあること

などをあげた。

今後はシンガポールに並ぶアジアのIT企業の中心地となるべく、インフラ面の取り組みとしては、公設民営型の「沖縄情報通信センター」の整備、そして、沖縄本島にあるデータセンターを結びつけて「沖縄クラウドネットワーク」を構築するクラウド基盤の構築を行う。さらにそれを国際海底光ケーブルで首都圏と沖縄、沖縄と香港・シンガポールを結び、大容量で低価格・低遅延の環境づくりを進めているそうだ。
 


他方、ソフトウェア面では以下の取り組みを行っているという。

(1)SDN(Software-Defined Network)とクラウドの融合で国際研究機関の誘致
(2)他産業連携環境のクラウド環境の整備促進事業
(3)IoTが議論される中、生活機器セキュリティ基盤の研究開発・検証できる企業の誘致
(4)新情報通信費の低減化支援(一定以上の雇用があれば通信費を一部補助する)

このほか、人材育成については、

(1)IT産業の啓発や学校などへの出前講座の実施
(2)受託開発を行う際、スキル的に受注が難しいとなったとき、発注元が講師を派遣して技術講習を行い、その講座費の7割を負担する。
(3)Uターン・Iターン技術者確保の支援事業
(4)アジアIT人材交流促進事業
(5)沖縄デジタルコンテンツ産業人材基盤構築事業

 


といった政策を行っているとのこと。

最後に、これまでの取り組みでアジアとの人材交流が深まってきたが、これをさらにすすめるため、行政としてIT企業のアジアでのビジネス展開を支援するとともに、長期的に考えて戦略を練るIT産業戦略センターを沖縄につくり、沖縄をIT企業が活躍する場所となることを目指したい、と述べた。アジア有数の海洋リゾート地そして、国際的な物流拠点として注目される沖縄県だが、IT分野に関しても日本とアジアをつなぐ「ビジネスハブ」ともいえる存在を目指すと語り、講演を終えた。


 
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沖縄県商工労働部情報産業振興課

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