人気アプリ『セブンナイツ』の日本版はいかにして成功したのか そこには開発会社の地道で徹底したローカライズ・カルチャライズ努力があった
Googleは、4月20日、モバイルサービス・コンテンツ提供事業者向けのイベント「Google for Mobile | Game Bootcamp」を開催した。
イベントでは、ゲームデベロッパーを対象に、先日サンフランシスコで行われた「GDC (Game Developers Conference)」内でGoogleが発表した内容を改めて説明。このほか、Google Cloud Platform、Google AdWords、AdMob、Google Playのそれぞれの製品から、ゲームビジネスを更に発展させていくための役立つ実践的ノウハウが講演された。
当日は、『セブンナイツ』や『マーベル・フューチャーファイト』『レイヴン』『LINE ゲットリッチ』など、数々のモバイルゲームを世界中でヒットさせているNetmarble Gamesが登壇。「グローバル市場で成功するためにやるべきこと」をテーマに、Netmarble Games VP of MaketingのDuke Donghyun Kim氏が講演を行った。
■グローバル売上が50%を占める…韓国を代表するゲーム企業
▲Duke Donghyun Kim氏
Netmarble Gamesと言えば、『セブンナイツ』や『マーベル・フューチャーファイト』『レイヴン』『LINE ゲットリッチ』など、数々のモバイルゲームを世界中でヒットさせている韓国のゲーム企業だ。日本市場では、新作アプリ『セブンナイツ』がトップセールス上位にランクインするなど、話題を呼んでいる。
2000年に設立した同社は、PCオンラインゲームパブリッシング事業やゲームポータルサイトの運営など、様々な事業を展開してきた。しかし、PCオンラインゲーム事業も下火となり、2013年にはモバイルゲーム事業に軸足をずらし、その後は『Everybody ChaChaCha』や『Monster Taming』『Let's get Rich』など多数のヒット作を生み出した。そのほかSGNに出資し、『マーベル・フューチャーファイト』や『ディズニーマジカルダイス』といったグローバル大型IPのタイトルを担当するまでに成長。
▲Netmarble Gamesの沿革。日本市場で最近リリースされた『セブンナイツ』は、すでに韓国では2年前にリリースされている。
▲Netmarble Gamesの売上高。飛躍した2016年…と同時に、グローバルの売上高が半分を占めている。
▲2015年の売上高を、他の韓国ゲーム企業と比較したグラフ。
▲主要スタジオは出資先の米・SGNを含め4つ。
▲以前App Annieが発表した「2015年世界トップ52パブリッシャー(52 The Top Publishers of 2015)」では、8位にランクイン(関連記事)。韓国ゲーム企業ではトップの順位となる。
▲同社タイトルのMAU(月間アクティブユーザー数)は約3,600万人。主要国はアジアだが、北米も徐々に数字を増やしているという。2週間前にリリースした『EvilBane: Rise of Ravens』もDAU(1日のアクティブユーザー数)が5万を超えるなど幸先のいいスタートを切っているとのこと。
▲また、同社のグローバル展開では、1ビルドではなく各国ごとにローカライズ・カルチャライズを経てリリースしているようだ。「大きな市場は別タイトルと考えて管理すべき」とKim氏。UIやゲームバランス、イベントスケジュールも各国ユーザーのニーズに合わせて各々変更している。まさに今回のテーマとなる施策を指す。
▲ディズニーやマーベルなどグローバルの大型IPタイトルも保有。さらに、年末にはディズニータイトルをもう1本控えているとのこと。
▲現在は日本の『ストーンエイジ』をはじめ、大人気MMORPGのモバイルゲームタイトルも開発中という。『リネージュ』や『TERA』『ブレイド&ソウル』など日本でも名の知れたタイトルが挙がっている。
さて、Netmarble Gamesの会社説明はここまでにして、直近の同社と言えば、日本市場における『セブンナイツ』の大ヒットが記憶に新しい。日本市場攻略に関して、同社は果たしてどのような施策を打って出たのか。そこには、意外にも地道で徹底したローカライズ・カルチャライズ努力があった。
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■徹底した日本独自の内容 具体的にどのように変更したのか
『セブンナイツ』は、 高品質のグラフィックスで展開するリアルタイムターン制バトルが特徴で、チームに合わせて適切な陣形を選択し、多数のユニークなキャラクターを集め強化させるなど、 無限の戦略要素が魅力のスマホ向けRPG。 キャラクターボイスには、浪川 大輔さん、佐藤利奈さん、三木 眞一郎さんなど豪華声優陣が参加しており、7つの領地をめぐる冒険ストーリーを、より一層盛り上げている。
日本で成功するために、前述している通り同社は異なるビルド、コンセプト、UI(ユーザーインターフェイス)、ゲームバランス、イベントなどを用意。たとえば、グローバル版ではボイスが全て英語に対して、日本版のみ国内の人気声優陣を起用したり、国内のゲームタイトルとコラボを行ったりと、独自のゲーム展開を採用している。
では、具体的にどのように変更しているのか。ここからは画像と共に細かく見ていこう。
▲こちらはグローバル版のホーム画面のUI。コンテンツが多い印象だが、一回で移動できる利点はある。
▲一方で日本版のホーム画面のUIはすっきり。一部コンテンツは他の箇所に収納されて、1クッション画面遷移を挟む形だが、「日本人はコンシューマゲームに慣れており、見栄えのいいものを採用している」と見やすさを重視して現在の形となった。
▲キャラクターメニュー。
▲ガチャ画面。「グローバルではガチャの結果のみにしか関心がない。一方で日本人は、ガチャを利用するまでの過程にも楽しさを見出している。そのため、利用するまでの画面や演出にもこだわるようにした」とコメント。
▲細かいところだが、重要度の高い「フォント」について。「非常に気を使ったところ。日本の人気タイトルなどを参考に、『セブンナイツ』では人気タイトルを見て、モリサワ フォントに決定した」とのこと。
▲ボイスは日本の人気声優陣を起用。
▲コスチュームも日本独自のデザインが採用されている。
▲日本独自の展開として、アークシステムワークスが開発した格闘ゲーム『ブレイブルー』とのコラボを実施。現在は『ギルティギア』とのコラボも進めているという。
ストーリーの展開に関しては、「あまり韓国では物語に関心が持たれない」と語るKim氏。日本では、ストーリーに重きを置いているゲームが多数存在し、かつKim氏は「様々なモード(コンテンツ)を用意する必要がある」と分析。また、同社が日本向けにローカライズ・カルチャライズを徹底するとは逆に、「日本のデベロッパーさんも海外に進出する際は、同じように徹底した修正・改良が必要」と言葉を添えた。
最後に韓国ゲームアプリ市場の現状について語ってくれた。
▲世界第4位の市場規模を誇る韓国は、その多くの売上はGoogle Playが占めている。
▲一時はカカオトーク関連のゲームが市場を席巻していたが、現在は落ち着いてきた模様。「バイラル効果を見込むならカカオトークは最適なオプション。しかし、LTVや長期的な収益化を望むなら独自で展開するのもいい」とコメント。
▲韓国のランキング上位は、その多くがコアなアクションRPG。
(取材・文:原 孝則)
■『セブンナイツ(Seven Knights)』
会社情報
- 会社名
- Netmarble(ネットマーブル)