【NDC16】『Monument Valley』の制作者・Daniel Gray氏から学ぶ、「仮想世界」を生み出す意義と「現実逃避」の必要性

 
ネクソン<3659>の連結子会社であるネクソンコリアが、4月26日～4月28日の期間、ネクソンコリアのオフィスおよび近隣施設にて、開催している韓国最大規模のゲーム開発者の祭典「Nexon Developers Conference 16（NDC16）」。
 
今年で10周年を迎えるNDCは、世界中からゲーム開発者が集いゲーム開発に関するノウハウや経験の共有を目的に、2007年より開催されているカンファレンスだ。
 
NDC16では、「Diversity（多様性）」をテーマに、ゲーム業界の新たな可能性と今後の方向性を追求。モバイルゲームでは、『HIT』や『野生の地：Durango』など、ネクソンのゲームの事例を通じてゲーム開発および運用経験を共有するセッションが実施されるほか、『Monument Valley』を手掛けたustwo gamesのDaniel Gray氏など、海外の著名なゲーム開発会社を招待し、グローバル市場で競うための知識やノウハウを共有するセッションを開催している。
 
本稿では、ustwo games スタジオリーダーのDaniel Gray氏が登壇した講演「【Monument Valley】仮想世界と現実逃避：仮想現実の未来を探る」をレポートしていく。
 

■ひとつの選択肢としての「仮想現実」

   
まずDaniel氏は、現実逃避について、娯楽やファンタジーに入り込むことで癒しを感じる、他の世界に入り込もうとする現象だと語った。さらに、10～15年前、誰もがゲームを媒介にスクリーンに入り込みたいという妄想を抱き、没頭した経験があるであろうことを述べた。
 
 
▲当時、11歳だったDaniel氏が初めて没頭したゲームは『ファイナルファンタジーVII』だという話も。登場キャラの感情に共感し、まるでその世界が実在しているかのような感覚に陥ったことで夢中になったという。
 
続いて、『Monument Valley』と現実逃避の関連性を示すべく、本作の紹介映像が放映された。本作は、騙し絵のような独創的な建物を舞台にしたパズルアドベンチャーだ。建物の細部を動かすことで隠された道を探しながら、沈黙の姫・アイダをゴールまで導いていく。
 

 
また、『Monument Valley』は、非日常を感じられることを目的に作られてきたという。脱出できる空間に、日常とはかけ離れたビジュアルや音声を用意することで、僅か3分間でも別の世界に移ったような気にさせられるのだと。
 
さらに、話のテーマはVRへ。Daniel氏曰く、VRは、ヘッドセットを被ることで視覚や聴覚など感覚が遮断される点がより現実逃避に繋がるという話だ。現実世界と同じものをVRで作ることは難しいが、想像力と経験が融合することで、VR世界に対する信頼感が生まれるという。ここで、『Monument Valley』のクリエイターが制作したVRゲーム『LANDS END』が紹介された。
 
【『LANDS END』紹介動画】

 
 
 
▲作中にほかのキャラが登場しないため、孤立感のある仕上がりになっている。そこには、自分がどこにいるのかを忘れさせてくれるようなゲームにしたいという想いがあったようだ。
 
Daniel氏は、「現実逃避」という言葉にはネガティブなニュアンスが含まれているように思えるが、前向きな側面もあると主張する。その理由として、自身が過去、長期入院していた際に外に出られず辛い想いをしたという実体験を交えながら、VRや現実逃避の必要性を語った。
 
最後にDaniel氏は、現実が辛いとき、ほかの人生を送ってみるチャンスとしてVRが活用できると述べ講演の締めとした。
 
 
 
▲他の人を守りながら自分を成長させたり、宇宙空間に行ったり、バットマンになってみたり、かつて開催できなかった自分の誕生日パーティを開いてみたり。まだまだ技術が必要な部分もあることを前置きしつつ、今後のVRの可能性を示した。
 

 
   
 
   

公式サイト（韓国語）