「非常にポジティブな内容だった」(熊谷経営企画室長) ネクソン第1四半期は一時費用考慮で"増収増益"に 中国『アラド戦記』の健全さ確認

ネクソン<3659>は、5月12日、第1四半期(2016年1~3月期)の連結決算(IFRS)を発表し、売上収益574億円(前年同期比10.6%増)、営業利益37億円(同83.3%減)、最終損益60億円の赤字(前年同期188億円の黒字)となった。子会社でモバイルゲーム会社gloopsののれんなどの減損損失243億円が発生したことが営業減益の要因だった。さらに為替レートが円高となった影響で、外貨建てのキャッシュや売掛金で損失が発生し、最終損益が赤字に転落した。

【関連記事】
ネクソン、第1四半期は60億円の最終赤字に転落…本業好調で10%増収達成もgloopsなどの減損損失と為替差損で
ネクソン、子会社gloopsなどの減損損失として243億円の損失を計上


今回、同社経営企画室長の熊谷峻平氏(写真)が当サイトの取材に応じ、「非常にポジティブな内容だった。翌日以降の株価を見てもわかるように、市場関係者からもそのように受け止められたのではないか。」と振り返った(以降、「」内の発言は、熊谷氏によるものとなる)。数字だけをみると営業減益であり、最終損益に至ってはなんと赤字転落だ。一見すると非常に厳しい決算のように見えるのだが、なぜ自ら好調と評価し、そして市場関係者も高く評価しているのだろうか。

その背景として、屋台骨ともいえる、主力オンラインゲーム『アラド戦記』が絶好調だったことがあげられる。ネクソンにとっての『アラド戦記』は、いわばミクシィにとっての『モンスターストライク』、そして、ガンホー・オンライン・エンターテイメント<3765>にとっての『パズル&ドラゴンズ』に匹敵する存在であるが、中国でのサービス開始から8年目に入っても引き続き事業としての健全さを維持していると受け止められたようだ。実際、売上収益は、当初の見通しでは489億円~525億円であったが、フタを開けてみると予想レンジを50~85億円上回る574億円で着地した。
 

けん引役となった中国語版『アラド戦記』については、旧正月に合わせて実施したアップデートを実施したところ、ユーザーからは好評で、MAU(月次アクティブユーザー数)は前年同期比でほぼ横ばいで、課金ユーザー数が大きく増加したとのことだった。セールなどオーバーマネタイズは行わず、「自然体の運営」にするように心がけたそうだ。仮にgloopsの減損がなかったとすると、営業利益は263億円となり、予想レンジの186~222億円を大きく上回ることになる。今回の減損はあくまで一時的な費用であり、本業自体は好調と評価されているという。
 

また、韓国事業も引き続き好調で、売上収益は前年同期比10%増の225億円だった。PCオンラインゲームの売上収益が前年同期比で若干減っているものの、成長著しいモバイルについては前年同期比で約2倍の68億円に大きく伸びた。オンラインRPG『HIT』と、歴史ストラテジーゲーム『DomiNations(ドミネーションズ)』、MMORPG『Legion of Heroes』など、モバイルゲームの主力タイトルが大きく成長したとのこと。ちなみに、モバイルゲームは、前四半期比ではマイナスだが、これは前四半期に大規模プロモーションによる売上増があった反動といえるもので、「危険な落ち方ではない」とのこと。
 

心配なのは日本だ。モバイル、PCともに下落トレンドが続いており、前年同期比で22%減の45億円だった。こうした下落トレンドは、gloopsが新作ゲーム『ラプラスリンク』のリリースを延期したことが象徴的だが、「新作のリリースがないため」の一言に尽きる。新作については、下期(2016年7月)以降、月1本のペースでリリースするなど、本格的に攻勢に転じる考え。「ネクソングループとして、月1回のペースでクオリティの高いゲームを出していきたい」。韓国で大ヒットしているモバイルゲームの日本展開も視野にいれているそうだ。第2四半期までは仕込みの時期となる。
 

このほか、欧米市場については、北米が28%増の21億円、欧州およびその他の地域が90%増の23億円と大きく成長した。目立った新作タイトルは出なかったものの、下期以降に向けて新作をいくつか仕込んでいるという。
 



 
■第2四半期は減収・増益見通しに 『アラド戦記』の償却完了と広告宣伝費の抑制

続く第2四半期(4~6月期)の業績(会計基準ベース)では、売上収益374億円~402億円(前年同期比12%減~6%減)、営業利益114億円~138億円(同2%増~23%増)、最終利益103億円~123億円(同21%減~5%減)と減収・営業増益を見込む。
 

減収となる要因だが、ネクソンでは韓国ウォンや中国元に対する円高が進むとし、売上収益の減少を見込んでいるという。他方、増益となる要因については、大型タイトルのローンチを予定していないため、広告宣伝費が抑えられること、『アラド戦記』のIPに係る償却が昨年8月に完了したことによる減価償却費の減少(25億円)、円高に伴う売上原価と販管費の抑制効果などをあげた。
 


 
▲パイプライン。『サドンアタック2』や『攻殻機動隊 S.A.C.- First Assault Online』、『LawBreakers』、『Titanfall』、『メイプルストーリー2』などPCオンラインゲームを用意しているほか、モバイルゲームでは、『HIT』や『アラド戦記モバイル』、『野生の地:Durango』、『ファイナルファンタジー XIモバイル』、『LEGOモバイル』などの開発を進めているとのこと。引き続きゲーム開発会社とのパートナーシップ戦略を推進していくとのこと。


 
(編集部 木村英彦)
株式会社ネクソン
http://www.nexon.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社ネクソン
設立
2002年12月
代表者
代表取締役社長 イ・ジョンホン(李 政憲)/代表取締役CFO 植村 士朗
決算期
12月
直近業績
売上収益4233億5600万円、営業利益1347億4500万円、最終利益706億0900万円(2023年12月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3659
企業データを見る