Wright Flyer Studiosが、5月26日、都内ライブハウスにて開催した、『消滅都市』リリース2周年記念イベント「2周年ありがとう生放送 ~シンガー、声優さんも出演スペシャル~」。
本イベントでは、「2周年ありがとう生放送」と題して、『消滅都市』に関わる作曲家やシンガー、声優、開発陣らが出演して「消滅都市LIVE!!」や「消滅都市キャストトーク」、「消滅都市プロダクトトーク」を展開。
本稿では、その中より、リサーチャー役の中恵光城さん、ソウマ・ツキ役の朝井彩加さん、ヘッドハンター役の福田賢二さん、ギーク役の西村太佑さんら4人の『消滅都市』声優陣が登壇した「消滅都市キャストトーク」の様子をお届けしていく。
▲左から順に、中恵光城さん(リサーチャー役)、朝井彩加さん(ソウマ・ツキ役)、福田賢二さん(ヘッドハンター役)、西村太佑さん(ギーク役)。
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■豪華生アフレコでは一人二役をこなす朝井さんにプロの技を見た!
「消滅都市キャストトーク」では、MCのザブングルさん、中恵光城さん(リサーチャー役)、朝井彩加さん(ソウマ・ツキ役)、福田賢二さん(ヘッドハンター役)、西村太佑さん(ギーク役)らが登壇。出されたお題に沿って話を展開するテーマトークを行った。
▲MCを務めたザブングルさん。
「最近、消滅してしまったことはありますか?」とのお題では、コーヒーが好きだという朝井さんが「コーヒーミルを買って一週間もしないうちに消滅(壊して)させてしまいました」という話を披露。また、西村さんは「最近、パチンコで3万円が消滅しました」とのコメントで会場の笑いを誘った。
続く、「実際にタマシイの力を借りるなら、どんなタマシイが良いですか?」との設問には、中恵さんが「人の名前と顔を中々覚えられないので、早覚えの達人のタマシイが欲しい」と回答。先ほど、財布を消滅させたとお酒での失敗談を展開した福田さんは、それでもビールが好きだということで「ビールバーのマスターのタマシイに美味しいビールをついで欲しい」と願望を語った。
その後、『消滅都市』ディレクターである下田翔大氏が本イベントのために書き下ろしたというオリジナル台本をもとに、登壇した声優陣による豪華生アフレコ短編ドラマ「Birthday」を披露。
【短編ドラマ「Birthday」書き起こし】
ソウマ「黒コートたちが、ヘッドハンターたちの事務所を盗聴することに成功したという知らせを聞いて、僕は組織の拠点へ向かった。無駄な戦いは避けたかった。奴らの動きを知ることができれば、先回りをすることができる。姉ちゃんがロストに向かうのを諦めてくれれば、どんな方法でも良かったのだ。でも、スピーカーから聞こえてきた声は予想に反して楽しげだった」
ヘッドハンター「だが、奴らはロストに向かってる途中だろ? そんなことに現を抜かしている暇があるのか?」
リサーチャー「何言ってるのよ。こういう状況だからこそ、息抜きが大切なんじゃない」
ギーク「でも、何をしたらいいのかさっぱり分からないよ」
リサーチャー「ふふっ。そんなに構える必要はないわ。こういうのって、気持ちが大事なんだから」
ソウマ「一体なんの相談をしているんだろう。話の内容はさっぱり分からなかったけれど、戦いと全く関係のない話題であることだけは分かった」
ギーク「じゃあさ、みんなで歌を歌うっていうのはどう?」
ヘッドハンター「おい、それはちょっと勘弁してくれ。歌なんて、姪にせがまれて以来、歌ったことがない」
リサーチャー「うーん、やっぱり何かプレゼントを届けるのが良いんじゃないかしら?」
ギーク「あぁ! そういえば! ネットオークションでプレミア価格が付いているアイリたんの写真集が落札できそうなんだ! あれをプレゼントするのはどうかな?」
ヘッドハンター「おいおい、プレゼントっていうのは、相手の喜ぶものをあげるのが普通だろ」
ギーク「もー、ヘッドハンターも文句ばっかり言ってないで、何かアイディアを考えてよ」
ヘッドハンター「そうだな。やっぱり、現金をあげるのが1番良いんじゃないか」
リサーチャー「はぁ……。二人とも、女心が全然分かってないんだから」
ソウマ「こんな奴らと本気で戦っていたのかと思うと腹が立った。組織は、日々計画を遂行することを1番に考えている。タイヨウが推進している研究の進捗や、組織の勢力拡大、資金繰りについて、常に綿密な計画を立てて実行をし続けている。でも、姉ちゃんたちは違うんだ。そう思ったら、なんだか凄く胸がムカムカした」
リサーチャー「二人とも、もっとユキの気持ちになって考えられないの?」
ヘッドハンター「だが、あいつにプレゼントを受け取るような心の余裕があるだろうか」
ギーク「そうだよねぇ。ここのところ敵も強くて、戦いも大変そうだし」
リサーチャー「違うわ。大変なときだからこそ、息抜きが大切なのよ。女の子はね、新しい服を着たり、普段付けないアクセサリーを付けたり、髪の色をちょっと変えたりすることで気分が明るくなるものなの。どうせ辛い戦いには変わりないんだし、ちょっとくらい息抜きがあってもいいでしょ」
ギーク「そうか! そうだよね! 僕も古いアイパッツを新しいアイパッツProに買い替えると、毎日がちょっとだけ楽しくなったりするし」
ヘッドハンター「そんなもんかねぇ」
リサーチャー「えぇ。だから、ユキの誕生日には何かをプレゼントしてあげたいのよ。そして、みんなで祝ってあげられたらいいなって思ってるの」
ソウマ「スピーカーからの声を聞いて、彼らが何の相談をしていたのかに気付く。そうか。そういえば、もうすぐ姉ちゃんの誕生日がやってくる。ロストの前、父さんと3人で暮らしていたとき、姉ちゃんの誕生日をお祝いしたことを思い出した。父さんは、相変わらず帰ってくるのが遅くて、姉ちゃんは、少し、悲しそうだった。そんな姉ちゃんのことを励ましたくて、僕は、ひとりでケーキを買いに行った。駅前にケーキ屋さんがあることを憶えていたから、小銭を握りしめて、姉ちゃんに見つからないように家を抜け出した。外は小雨が降っていた。ちょっとくらいなら大丈夫かなと思って、僕は傘を差さずに走ってケーキ屋さんに向かったんだけど、ショートケーキを買って外に出ると、雨は急にドシャ降りになった。ケーキを濡らすわけにはいかなったし、でも、傘を買うお金も残ってなくて、僕は、軒先で途方に暮れてしまった。あの後、僕はどうしたんだっけ……。スピーカーからの楽しげな声を聞きながら、それがどうしても思い出せなかった」
リサーチャー「ねぇ、髪留めなんてどうかしら?」
ヘッドハンター「かんざしのことか? おぉ! それだったら、俺の芸者コレクションが」
リサーチャー「そういうのじゃなくて、もっと普通の可愛いヘアピンをプレゼントするのはどう?」
ギーク「それ名案だよ! タクヤの運転は乱暴だから、きっと髪の毛が乱れちゃうと思うし」
リサーチャー「うん、それに、小さいものなら戦いの邪魔にもならないでしょ」
ヘッドハンター「なるほどな。それなら、知り合いの業者をあたってみることにしよう。幾分貸しのあるセンスの良いバイヤーが何人かいたはずだ。時間はないが、多少の無理は聞いてくれるだろう」
ギーク「流石ヘッドハンターだね」
リサーチャー「たまには役に立つじゃない」
ヘッドハンター「おいおい、たまにっていうのは余計じゃないか」
ソウマ「姉ちゃんが羨ましかった。こんなにも考えてくれる仲間がいる、姉ちゃんのことが。どうして僕と姉ちゃんはこんなにも違うんだろう。そう思うと、なんだか胸が締め付けられるような気持ちになった」
ツキ「どうしたの? なんだかイライラしているみたいじゃない?」
ソウマ「振り返ると、そこにはツキがいた。いつから見られていたんだろう。僕は恥ずかしい気持ちになって言い返す」
ソウマ「別に、イライラなんかしてないさ」
ツキ「あら、そうは見えなかったけど?」
ソウマ「奴らのことを盗聴していただけだよ。でも、心配する必要はなかったみたいだ。どうでもいいことでワイワイと盛り上がっているやつらと、計画に対して真剣に向き合っている僕らで、どっちが勝つかは明白だよ」
ツキ「ねえ、本当にそうかしら?」
ソウマ「どういうこと?」
ソウマ「ツキの言葉があまりに意外で、僕は思わず聞き返した。ツキは、遠くを見るようにして何かを考えているようだった。スピーカーからは、相変わらず楽しそうな声が漏れ聞こえていて、僕は余計にイライラしてしまう。すると、ツキが微笑んだ。そんな顔をするツキを見るのは初めてだったから、僕は少しだけ動揺してしまう」
ツキ「ねぇ、ソウマ。彼らも私たちも、同じくらいに厳しい戦いを目前に控えているわ。生きては帰れないかもしれない。自分たちを犠牲にしなきゃならないかもしれない。でも、私たちと彼らには違いがある」
ソウマ「違い?」
ツキ「えぇ。私たちは、笑うことを忘れてしまったわ。でも、彼らは笑ってる。厳しい運命を受け入れなきゃならない状況に置いて、笑うことができてる。時々思うのよ、そんな彼らの方が、本当は強いんじゃないかって」
ソウマ「そんなはずはない!」
ツキ「そうね。私もそう信じていたいわ。それに、私たちはこうやってやっていくしかないもの。肝心のタイヨウが、あんな感じだしね」
ソウマ「タイヨウは今どこに?」
ツキ「相変わらず、オリジナルのところよ。なんとしてでも進化の研究を進めなきゃって焦ってるみたい」
ソウマ「オリジナル……。ツキ、それって一体なんなんだ?」
ツキ「あなたは知らない方がいいわ。世の中にはね、知らない方がいいことって、たくさんあるのよ」
ソウマ「ツキはそう言って、部屋を出て行った。彼女があんなことを言うなんて、なんだか意外で、僕は余計に混乱してしまう。スピーカーから聞こえてきた、リサーチャーの言葉が頭に残って離れない」
リサーチャー「大変なときだからこそ、息抜きが大切なのよ。女の子はね、新しい服を着たり、普段付けないアクセサリーを付けたり、髪の色をちょっと変えたりすることで気分が明るくなるものなの。どうせ辛い戦いには変わりないんだし、ちょっとくらい息抜きがあってもいいでしょ」
ソウマ「……っ。思い出した。そうだ、ケーキ屋さんの軒先で、ドシャ降りの雨に途方に暮れてた僕のことを、傘を持った姉ちゃんが迎えに来てくれたんだった。帰り道に、姉ちゃんは言った。こんな可愛い弟に誕生日を祝ってもらえて、私は幸せだねって。可愛いって言われたことにムッとして、あの時、僕は黙り込んじゃったけど、でも、姉ちゃんの嬉しそうな笑顔は、よく憶えてる。この戦いに勝たなくちゃ。勝って、全部が終わったら、きっと僕たちは幸せに暮らすことができる。そのときまで、あの笑顔を取り戻すまで、僕は笑っちゃいけないんだ。どんなに辛くても、どんなに苦しくても、戦い続けなきゃいけないんだ」
ギーク「でも、本当にアイリたんの写真集じゃなくていいのかな? 髪留めなんかよりも、ずっと喜んでもらえると思うんだけど」
リサーチャー「はぁ……。分かったわ、ギーク。そんなに言うなら、それも一緒にプレゼントすればいいじゃない。きっと、気持ちは伝わるわよ」
ギーク「だよね! ユキちゃんの喜ぶ顔が楽しみだなぁ」
ヘッドハンター「ところで、このプレゼントの代金は誰に請求しておけばいいんだ? タクヤで構わないか?」
リサーチャー「そうね。いつも苦労させられてるし、それくらい、いいんじゃないかしら」
ソウマ「……。盗聴器の電源を切って、立ち上がる。戦いに向かうために。幸せな過去を取り戻すために。あの笑顔を取り戻すために……でも、スピーカーから音は出ていないはずなのに、奴らの楽しそうな声が、頭の中に響いてる。このモヤモヤした気持ちはなんだろう。その正体が、掴めない……」
ソウマ「黒コートたちが、ヘッドハンターたちの事務所を盗聴することに成功したという知らせを聞いて、僕は組織の拠点へ向かった。無駄な戦いは避けたかった。奴らの動きを知ることができれば、先回りをすることができる。姉ちゃんがロストに向かうのを諦めてくれれば、どんな方法でも良かったのだ。でも、スピーカーから聞こえてきた声は予想に反して楽しげだった」
ヘッドハンター「だが、奴らはロストに向かってる途中だろ? そんなことに現を抜かしている暇があるのか?」
リサーチャー「何言ってるのよ。こういう状況だからこそ、息抜きが大切なんじゃない」
ギーク「でも、何をしたらいいのかさっぱり分からないよ」
リサーチャー「ふふっ。そんなに構える必要はないわ。こういうのって、気持ちが大事なんだから」
ソウマ「一体なんの相談をしているんだろう。話の内容はさっぱり分からなかったけれど、戦いと全く関係のない話題であることだけは分かった」
ギーク「じゃあさ、みんなで歌を歌うっていうのはどう?」
ヘッドハンター「おい、それはちょっと勘弁してくれ。歌なんて、姪にせがまれて以来、歌ったことがない」
リサーチャー「うーん、やっぱり何かプレゼントを届けるのが良いんじゃないかしら?」
ギーク「あぁ! そういえば! ネットオークションでプレミア価格が付いているアイリたんの写真集が落札できそうなんだ! あれをプレゼントするのはどうかな?」
ヘッドハンター「おいおい、プレゼントっていうのは、相手の喜ぶものをあげるのが普通だろ」
ギーク「もー、ヘッドハンターも文句ばっかり言ってないで、何かアイディアを考えてよ」
ヘッドハンター「そうだな。やっぱり、現金をあげるのが1番良いんじゃないか」
リサーチャー「はぁ……。二人とも、女心が全然分かってないんだから」
ソウマ「こんな奴らと本気で戦っていたのかと思うと腹が立った。組織は、日々計画を遂行することを1番に考えている。タイヨウが推進している研究の進捗や、組織の勢力拡大、資金繰りについて、常に綿密な計画を立てて実行をし続けている。でも、姉ちゃんたちは違うんだ。そう思ったら、なんだか凄く胸がムカムカした」
リサーチャー「二人とも、もっとユキの気持ちになって考えられないの?」
ヘッドハンター「だが、あいつにプレゼントを受け取るような心の余裕があるだろうか」
ギーク「そうだよねぇ。ここのところ敵も強くて、戦いも大変そうだし」
リサーチャー「違うわ。大変なときだからこそ、息抜きが大切なのよ。女の子はね、新しい服を着たり、普段付けないアクセサリーを付けたり、髪の色をちょっと変えたりすることで気分が明るくなるものなの。どうせ辛い戦いには変わりないんだし、ちょっとくらい息抜きがあってもいいでしょ」
ギーク「そうか! そうだよね! 僕も古いアイパッツを新しいアイパッツProに買い替えると、毎日がちょっとだけ楽しくなったりするし」
ヘッドハンター「そんなもんかねぇ」
リサーチャー「えぇ。だから、ユキの誕生日には何かをプレゼントしてあげたいのよ。そして、みんなで祝ってあげられたらいいなって思ってるの」
ソウマ「スピーカーからの声を聞いて、彼らが何の相談をしていたのかに気付く。そうか。そういえば、もうすぐ姉ちゃんの誕生日がやってくる。ロストの前、父さんと3人で暮らしていたとき、姉ちゃんの誕生日をお祝いしたことを思い出した。父さんは、相変わらず帰ってくるのが遅くて、姉ちゃんは、少し、悲しそうだった。そんな姉ちゃんのことを励ましたくて、僕は、ひとりでケーキを買いに行った。駅前にケーキ屋さんがあることを憶えていたから、小銭を握りしめて、姉ちゃんに見つからないように家を抜け出した。外は小雨が降っていた。ちょっとくらいなら大丈夫かなと思って、僕は傘を差さずに走ってケーキ屋さんに向かったんだけど、ショートケーキを買って外に出ると、雨は急にドシャ降りになった。ケーキを濡らすわけにはいかなったし、でも、傘を買うお金も残ってなくて、僕は、軒先で途方に暮れてしまった。あの後、僕はどうしたんだっけ……。スピーカーからの楽しげな声を聞きながら、それがどうしても思い出せなかった」
リサーチャー「ねぇ、髪留めなんてどうかしら?」
ヘッドハンター「かんざしのことか? おぉ! それだったら、俺の芸者コレクションが」
リサーチャー「そういうのじゃなくて、もっと普通の可愛いヘアピンをプレゼントするのはどう?」
ギーク「それ名案だよ! タクヤの運転は乱暴だから、きっと髪の毛が乱れちゃうと思うし」
リサーチャー「うん、それに、小さいものなら戦いの邪魔にもならないでしょ」
ヘッドハンター「なるほどな。それなら、知り合いの業者をあたってみることにしよう。幾分貸しのあるセンスの良いバイヤーが何人かいたはずだ。時間はないが、多少の無理は聞いてくれるだろう」
ギーク「流石ヘッドハンターだね」
リサーチャー「たまには役に立つじゃない」
ヘッドハンター「おいおい、たまにっていうのは余計じゃないか」
ソウマ「姉ちゃんが羨ましかった。こんなにも考えてくれる仲間がいる、姉ちゃんのことが。どうして僕と姉ちゃんはこんなにも違うんだろう。そう思うと、なんだか胸が締め付けられるような気持ちになった」
ツキ「どうしたの? なんだかイライラしているみたいじゃない?」
ソウマ「振り返ると、そこにはツキがいた。いつから見られていたんだろう。僕は恥ずかしい気持ちになって言い返す」
ソウマ「別に、イライラなんかしてないさ」
ツキ「あら、そうは見えなかったけど?」
ソウマ「奴らのことを盗聴していただけだよ。でも、心配する必要はなかったみたいだ。どうでもいいことでワイワイと盛り上がっているやつらと、計画に対して真剣に向き合っている僕らで、どっちが勝つかは明白だよ」
ツキ「ねえ、本当にそうかしら?」
ソウマ「どういうこと?」
ソウマ「ツキの言葉があまりに意外で、僕は思わず聞き返した。ツキは、遠くを見るようにして何かを考えているようだった。スピーカーからは、相変わらず楽しそうな声が漏れ聞こえていて、僕は余計にイライラしてしまう。すると、ツキが微笑んだ。そんな顔をするツキを見るのは初めてだったから、僕は少しだけ動揺してしまう」
ツキ「ねぇ、ソウマ。彼らも私たちも、同じくらいに厳しい戦いを目前に控えているわ。生きては帰れないかもしれない。自分たちを犠牲にしなきゃならないかもしれない。でも、私たちと彼らには違いがある」
ソウマ「違い?」
ツキ「えぇ。私たちは、笑うことを忘れてしまったわ。でも、彼らは笑ってる。厳しい運命を受け入れなきゃならない状況に置いて、笑うことができてる。時々思うのよ、そんな彼らの方が、本当は強いんじゃないかって」
ソウマ「そんなはずはない!」
ツキ「そうね。私もそう信じていたいわ。それに、私たちはこうやってやっていくしかないもの。肝心のタイヨウが、あんな感じだしね」
ソウマ「タイヨウは今どこに?」
ツキ「相変わらず、オリジナルのところよ。なんとしてでも進化の研究を進めなきゃって焦ってるみたい」
ソウマ「オリジナル……。ツキ、それって一体なんなんだ?」
ツキ「あなたは知らない方がいいわ。世の中にはね、知らない方がいいことって、たくさんあるのよ」
ソウマ「ツキはそう言って、部屋を出て行った。彼女があんなことを言うなんて、なんだか意外で、僕は余計に混乱してしまう。スピーカーから聞こえてきた、リサーチャーの言葉が頭に残って離れない」
リサーチャー「大変なときだからこそ、息抜きが大切なのよ。女の子はね、新しい服を着たり、普段付けないアクセサリーを付けたり、髪の色をちょっと変えたりすることで気分が明るくなるものなの。どうせ辛い戦いには変わりないんだし、ちょっとくらい息抜きがあってもいいでしょ」
ソウマ「……っ。思い出した。そうだ、ケーキ屋さんの軒先で、ドシャ降りの雨に途方に暮れてた僕のことを、傘を持った姉ちゃんが迎えに来てくれたんだった。帰り道に、姉ちゃんは言った。こんな可愛い弟に誕生日を祝ってもらえて、私は幸せだねって。可愛いって言われたことにムッとして、あの時、僕は黙り込んじゃったけど、でも、姉ちゃんの嬉しそうな笑顔は、よく憶えてる。この戦いに勝たなくちゃ。勝って、全部が終わったら、きっと僕たちは幸せに暮らすことができる。そのときまで、あの笑顔を取り戻すまで、僕は笑っちゃいけないんだ。どんなに辛くても、どんなに苦しくても、戦い続けなきゃいけないんだ」
ギーク「でも、本当にアイリたんの写真集じゃなくていいのかな? 髪留めなんかよりも、ずっと喜んでもらえると思うんだけど」
リサーチャー「はぁ……。分かったわ、ギーク。そんなに言うなら、それも一緒にプレゼントすればいいじゃない。きっと、気持ちは伝わるわよ」
ギーク「だよね! ユキちゃんの喜ぶ顔が楽しみだなぁ」
ヘッドハンター「ところで、このプレゼントの代金は誰に請求しておけばいいんだ? タクヤで構わないか?」
リサーチャー「そうね。いつも苦労させられてるし、それくらい、いいんじゃないかしら」
ソウマ「……。盗聴器の電源を切って、立ち上がる。戦いに向かうために。幸せな過去を取り戻すために。あの笑顔を取り戻すために……でも、スピーカーから音は出ていないはずなのに、奴らの楽しそうな声が、頭の中に響いてる。このモヤモヤした気持ちはなんだろう。その正体が、掴めない……」
特に、ソウマ・ツキの両役柄を瞬時に演じ分けた朝井さんには脱帽の一言。普段、作中ではあまり絡みが見られないキャラの共演に感動のシナリオということで会場には涙する来場者の姿も。アフレコを終えた中恵さんは「ギークやヘッドハンターと楽しそうな会話をしているのは、演じていて楽しかったです」と感想を語ってコーナーの締めとした。
なお、下記のページではタイムシフトにて本イベントの視聴が可能となっている。
(取材・文:編集部 山岡広樹)
(取材・撮影:編集部 和田和也)
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■『消滅都市』
(c) Wright Flyer Studios, Inc.
会社情報
- 会社名
- 株式会社WFS
- 設立
- 2014年2月
- 代表者
- 代表取締役社長 柳原 陽太