スマートフォンアプリ業界に身を置く方々に話を伺い、2016年上期の市場動向と下期のトレンドを読み解く特別企画「ゲームアプリ市場のキーマンに訊く2016年上期振り返り」。本企画では、パブリッシャーやデベロッパー、広告会社など多種多様な分野で市場を見つめるキーマンたちにインタビューを実施してきた。全8名が述べる振り返りと展望は各々異なり、業務上におけるヒントにも繋がるようであれば幸いだ。
■ネクソン社長インタビュー「世界のゲーム市場は危機的状況」「必要なのはコモディティ化したゲームではなく、独創的で面白いゲーム」
■Aiming椎葉社長インタビュー「良いゲームを作れば受け入れられるハッピーな状況」「MMO中心にスマホゲームに注力」
■マイネット上原社長インタビュー「しっかり作ったゲームが評価される安全な市場」「開発と運営の役割分担が明確化、セカンダリー市場の位置づけが変わった」
■馬場功淳氏が語る上半期のVR市場とコロプラの取り組み 「来年、再来年を見据えて技術・経験・ノウハウを積みたい」
■ジークレスト『夢100』総監督の佐野哲也氏に聞く女性向けゲーム市場のいま…ニーズの明確化で大きく成長、下期以降は多様なタイトルが登場する
■CyberZ山内社長インタビュー「e-Sportsは今後日本でさらに発展するための地盤作りの段階」
■モバイルファクトリー宮嶌裕二社長インタビュー「リアルと結びつくことでもっと豊かな体験にできる」「他社と徹底的に違う遊びを提供したい」
■グリー荒木英士氏が語るネイティブアプリ業界の動向とVR市場の現状「ネイティブは総合力が問われる時代に」「VRは市場の確立を」
一連のインタビューで、新作のリリース本数が減っているといういった話が出てきたが、今回、まとめの意味も込めて、検証してみたいと思ったのだが、これに関する市場統計はほんとどみたことがないので、Social Game Info(以下、当サイト)に掲載された新作記事本数の推移をまとめてみた。
まず、2013年から2016年12月までの期間、当サイトに掲載された新作記事本数の推移をまとめたもの(※)が以下のグラフとなる。こちらをみると、2013年11月の228本をピークとして、ゆるやかな下落トレンドに転じている。2014年1月以降、200本を超える月はなくなり、直近では4月が108本、5月が110本と顕著に減っている。年別の月平均本数をみると、2013年が186本、2014年が152本、2015年が130本、2016年上半期が117本となった。
この背景として、国内スマホゲームの市場が成長期から成熟期に移行するなか、ゲーム会社のリリース戦略の変更があるようだ。ゲームを複数本リリースして一定確率でヒットを狙うというよりは、しっかりと作りこんだ少数のタイトルに注力するようになった。あくまで記者の実感だが、決算説明会などでも、年間○本リリースすると宣言する会社が減り、「リリースを保証するものではない」と前置きをしつつ、何本の開発を行っているなどとコメントする会社が増えたように感じている。
その一方、既存のタイトルについては、これまで以上に運用を重視する傾向が強まってきた、といえるかもしれない。いわゆるIPコラボの増加などが象徴的なのだが、キャンペーンやイベント情報(以下、キャンペーン情報)の発信に力を入れるようになったことも見逃せない変化だ。当サイトに掲載したキャンペーン情報の告知記事の本数は、下のグラフのとおりで非常に大きく増えている。2013年は月100本程度だったが、右肩上がりで伸び、直近は800本を超える月も出た。2013年との比較でみると、ざっくり8倍だ。
キャンペーン情報については、2013年以前においては、ゲーム内の告知だけで済ます会社が非常に多かった。プレスリリースを配信する会社の方がむしろ珍しく、新作記事のほうがキャンペーン情報よりも多かった。つまり、ゲーム公式サイトやソーシャルメディア、プレスリリースなどで、ゲーム外でもきちんと告知する会社が増えてきたのだ。また、従前より情報配信に力を入れていた会社でも、「○月○日からキャンペーンを開始」などと事前告知するだけでなく、開始後に「開始した+追加情報」とフォローアップの情報配信をするようになった。
アプリマーケティングに携わっている方の話を聞くと、ここ最近、新規ユーザーの獲得を狙ったプロモーションだけでなく、既存ユーザーのゲームの継続利用や、休眠ユーザーの復帰などを促す広告、いわゆるリテンション広告などの比率を増やしているという話をよく聞くし、それに対応した広告商材も増えてきた。直近の外部情報への発信強化は、こうした流れと軌を一にするものといえるのではないか。
以上、上期の総括というわけではなく、ここ2、3年の傾向を確認するものとなったが、1本1本のタイトルの開発により多くの人と時間をかけ、よりクオリティの高いゲームを出すことに注力するゲーム会社が増えたこと、そして、その一方、すでに既存のタイトルについては運用体制を強化するとともに、イベントやキャンペーンの情報発信をゲーム内だけでなく、ゲーム外でも行う会社が増えてきたこと、が今回のまとめとなる。この傾向は今後も続くと予想されるが、当社も何とか死なないように頑張っていきたい。
■ネクソン社長インタビュー「世界のゲーム市場は危機的状況」「必要なのはコモディティ化したゲームではなく、独創的で面白いゲーム」
■Aiming椎葉社長インタビュー「良いゲームを作れば受け入れられるハッピーな状況」「MMO中心にスマホゲームに注力」
■マイネット上原社長インタビュー「しっかり作ったゲームが評価される安全な市場」「開発と運営の役割分担が明確化、セカンダリー市場の位置づけが変わった」
■馬場功淳氏が語る上半期のVR市場とコロプラの取り組み 「来年、再来年を見据えて技術・経験・ノウハウを積みたい」
■ジークレスト『夢100』総監督の佐野哲也氏に聞く女性向けゲーム市場のいま…ニーズの明確化で大きく成長、下期以降は多様なタイトルが登場する
■CyberZ山内社長インタビュー「e-Sportsは今後日本でさらに発展するための地盤作りの段階」
■グリー荒木英士氏が語るネイティブアプリ業界の動向とVR市場の現状「ネイティブは総合力が問われる時代に」「VRは市場の確立を」
一連のインタビューで、新作のリリース本数が減っているといういった話が出てきたが、今回、まとめの意味も込めて、検証してみたいと思ったのだが、これに関する市場統計はほんとどみたことがないので、Social Game Info(以下、当サイト)に掲載された新作記事本数の推移をまとめてみた。
まず、2013年から2016年12月までの期間、当サイトに掲載された新作記事本数の推移をまとめたもの(※)が以下のグラフとなる。こちらをみると、2013年11月の228本をピークとして、ゆるやかな下落トレンドに転じている。2014年1月以降、200本を超える月はなくなり、直近では4月が108本、5月が110本と顕著に減っている。年別の月平均本数をみると、2013年が186本、2014年が152本、2015年が130本、2016年上半期が117本となった。
当サイトに掲載された新作記事本数の推移
(※)ただし、この数字は、あくまで当サイトの新作紹介として掲載されたものであり、マーケット全てを網羅するものではないこと、そして、iOSとAndroidを別々にリリースした場合、それぞれ1本ずつとしてカウントされている点はご留意いただきたい。あくまでトレンドの目安として考えていただければと思う。この背景として、国内スマホゲームの市場が成長期から成熟期に移行するなか、ゲーム会社のリリース戦略の変更があるようだ。ゲームを複数本リリースして一定確率でヒットを狙うというよりは、しっかりと作りこんだ少数のタイトルに注力するようになった。あくまで記者の実感だが、決算説明会などでも、年間○本リリースすると宣言する会社が減り、「リリースを保証するものではない」と前置きをしつつ、何本の開発を行っているなどとコメントする会社が増えたように感じている。
その一方、既存のタイトルについては、これまで以上に運用を重視する傾向が強まってきた、といえるかもしれない。いわゆるIPコラボの増加などが象徴的なのだが、キャンペーンやイベント情報(以下、キャンペーン情報)の発信に力を入れるようになったことも見逃せない変化だ。当サイトに掲載したキャンペーン情報の告知記事の本数は、下のグラフのとおりで非常に大きく増えている。2013年は月100本程度だったが、右肩上がりで伸び、直近は800本を超える月も出た。2013年との比較でみると、ざっくり8倍だ。
当サイトに掲載されたキャンペーン記事の本数の推移
キャンペーン情報については、2013年以前においては、ゲーム内の告知だけで済ます会社が非常に多かった。プレスリリースを配信する会社の方がむしろ珍しく、新作記事のほうがキャンペーン情報よりも多かった。つまり、ゲーム公式サイトやソーシャルメディア、プレスリリースなどで、ゲーム外でもきちんと告知する会社が増えてきたのだ。また、従前より情報配信に力を入れていた会社でも、「○月○日からキャンペーンを開始」などと事前告知するだけでなく、開始後に「開始した+追加情報」とフォローアップの情報配信をするようになった。
アプリマーケティングに携わっている方の話を聞くと、ここ最近、新規ユーザーの獲得を狙ったプロモーションだけでなく、既存ユーザーのゲームの継続利用や、休眠ユーザーの復帰などを促す広告、いわゆるリテンション広告などの比率を増やしているという話をよく聞くし、それに対応した広告商材も増えてきた。直近の外部情報への発信強化は、こうした流れと軌を一にするものといえるのではないか。
以上、上期の総括というわけではなく、ここ2、3年の傾向を確認するものとなったが、1本1本のタイトルの開発により多くの人と時間をかけ、よりクオリティの高いゲームを出すことに注力するゲーム会社が増えたこと、そして、その一方、すでに既存のタイトルについては運用体制を強化するとともに、イベントやキャンペーンの情報発信をゲーム内だけでなく、ゲーム外でも行う会社が増えてきたこと、が今回のまとめとなる。この傾向は今後も続くと予想されるが、当社も何とか死なないように頑張っていきたい。
(編集部 木村英彦)