マイネット<3928>は、2月13日、2016年12月期の連結決算を発表するとともに、東京都内で証券アナリスト・機関投資家向けの決算説明会を開催した。発表した売上高68億100万円(前の期比129.4%増)、営業利益5億円(同244.7%増)、経常利益4億1000万円(同212.4%増)、最終利益8億8200万円(同824.8%増)となった(今期が初の連結のため、前の期との比較は参考値)。
決算説明会に臨んだ上原仁社長(写真)は、「創業から11年になるが、ずっと変わることなく、マイネットを100年成長する会社にするという目標を持ち続けている。会社として着実に成長を遂げているが、今年は100年成長する会社になるための基盤を作ることができた1年だった」と振り返った。
スマホゲーム市場が成熟化し、規模や経営体力が必要になる中、市場から撤退する会社が出ているが、マイネットは、タイトルの買い取りもしくは企業買収を積極的に行っていく予定。大規模なM&Aや資金調達を実施し、PMIも成功させた。そこで得た経験やノウハウが生きる局面に入ってきたといえそうだ。
今回の決算説明会レポートでは、第4四半期の業績推移を中心に見ていきたい。
まず、第3四半期(16年7~9月)の業績を振り返っておこう。売上高は前四半期比(QonQ)8%増の15億300万円、営業利益は同45%増の7600万円、経常利益は同40%増の7200万円、四半期純利益は同47%増の7100万円と大幅な増益を達成した。6月と7月に獲得したタイトルがフルに貢献した。
続く第4四半期(16年10~12月)の業績を見ると、売上高が前四半期比69.9%増の25億5000万円、営業利益が同291.0%増の2億9900万円、経常利益が同200.7%増の億1800万円、最終利益が同902.7%増の7億1800万円と超が付くほどの大幅な増収・増益を達成した。
大幅な業績の伸びとなったが、これは主に買収したC&Mゲームスが連結に寄与したことによる。マイネットは、2016年11月にC&Mゲームスを買収し、大規模タイトルやIPタイトルなど16タイトルのモバイルゲームを取得した。2カ月のみの寄与だが、第4四半期だけで売上高10億円、営業利益が1億8000万円押し上げた。
▲売上高と営業利益の推移。C&Mゲームスの寄与が大きいことが確認できるが、マイネットゲームスやマイネットエンターテイメントだけでも増益を達成していたことがわかるだろう。
▲タイトルの仕入れ状況。第3四半期までに11タイトル、さらにC&Mゲームスの16で年間合計27タイトルを取得した。億を超えるタイトルもあったが、マイネットでは、月商2000万円程度の小さなタイトルでも利益を出せているという。
▲費用の推移。C&Mゲームスの影響で全体的に規模が大きくなったが、外注費の売上高に対する比率が12.5%と従前に比べて低下していることが確認できる。BORやオフショア活用が効いたとのこと。また、広告宣伝費が増えたが、C&Mゲームズのタイトルが相互送客ネットワーク「CroPro(クロプロ)」に入っておらず、これまでのプロモーション手法を踏襲したことによる。
▲従業員数の推移。C&Mゲームスが加わってことで従業員数は600人が間近に。
▲貸借対照表。総資産が大きく増えた。先に新株予約権の行使と、借入金の返済を行ったため、その後の貸借対照表は大きく変わっているとのこと。
(1)C&MゲームスのPMIは順調に進展
M&Aの難しさは買収後にある。買収した会社の価値を損なわずにいかにグループに取り込んでいくか、である。その点については、クルーズから買収したC&MゲームスのPMI(Post Merger Integration)」について「大変よい状況」にあるとのこと。買収後、売上高と利益は安定的に伸びているだけでなく、在籍する正社員も93.8%が引き続き在籍しているという。
「PMI」とは、M&A成立後、買収した会社をグループに統合していくプロセスだが、一般的にM&A実施後は、そこに在籍するコアスタッフが退職してしまったり、買収前に比べて業績が落ち込んでしまったりといった問題が発生する。マイネットゲームスやマイネットエンターテイメントなどの経営は若手に任せる一方、上原社長自らがC&Mゲームス社長に就任し、陣頭指揮を執ってきた。
上原氏は、PMIについて最初の3ヶ月間が重要とし、少人数で結成したPMIチームが残るかどうか揺れる社員に「一緒にやろう」と働きかけていった。その結果、買収時点で在籍した正社員224名のうち、210名が会社にとどまったそうだ。「(残った社員から)口を揃えて『残ってよかったです』といってもらえたと明かした。
会場からは経営統合を行わなかった理由について質問がでたが、上原氏は「選択肢としてはありうるが、組織ごとの文化と強みがそれぞれ形成されていた」と回答した。短期間での統合はデメリットが多く、それぞれの強みを発揮させることが望ましいと判断したようだ。タイトルの共同運営など徐々に融合させながら、両社の強みを相互に取り入れていく方針。
なお、上原氏は、「C&Mゲームスのメンバーは、クルーズのメンバーだが、いずれも非常に有能なメンバーばかりだ。鍛え上げたスタッフを預けていただき、(クルーズの)小渕社長には感謝している」と述べた。マイネットの培ったリビルドや運用のノウハウ「PARADE競争力」を組み合わせることで、買い取ったコンテンツをさらに伸ばしていきたいとした。
(2)AIによる自動運用を実施
今回、興味深いトピックスとして、AI(人工知能)を使った自動運転を行うことも明らかになった。自動運転と言っても、ロボットタクシーではなく、スマートフォンゲームの自動運用である。ネット広告の運用に活用する事例が増えているが、スマートフォンゲームの運用で活用する事例は珍しい。
まず月商1000~1500万円規模で、運用年数2年のタイトルから試験的に導入し、検証を行っていく。AIがビッグデータを解析し、施策の策定やサービスの最適化を行うとのことで、検証結果次第で、他のタイトルにも広げていくことになりそうだ。同社では、すでにスマートフォンゲームの運用では一部自動化を行っているが、それをさらに推し進めることになる。
(3)マーケティング戦略子会社を設立
新たな戦略子会社として「株式会社ネクストマーケティング」を設立することを明らかにした。代表取締役社長には、マイネット副社長の嶺井 政人氏が就任する。執行役員には祭原 祐氏、中山 和哉氏が就任する。
今回設立したネクストマーケティングは、マーケティング関連事業を展開する予定。上原社長は、「嶺井は、もともと学生時代から起業をやっており、自ら創業した3社、投資した1社をM&AによるEXITさせた経験を持つ。またモルガン・スタンレーで経験を積むなど経験も豊富だ」と期待を示した。
気になる具体的なサービス内容については、4月~6月に発表する予定で、「マーケットには存在しなかったが、言われてみると理にかなったと思える事業領域になる」(上原社長)とのこと。マイネットのスマートフォンゲームのリビルド事業を創出して大きく育てたように、単なるネット広告事業ではない可能性が高い。
(4)ニアショア開発を推進
ニアショア開発として、北海道・札幌にも拠点を置くINDETAILと提携し、『ドリランド 魔王軍vs勇者!』や『エンジェルマスター』など4タイトルの運営を任せている。マイネットでは、東京でINDETAILのスタッフのトレーニングも担当し、札幌で運営に携わってもらっているとのこと。運営移管後、利益が伸びている状況で、マイネットとINDETAIL双方にメリットがあるという。今後も人事交流のできるパートナーとの連携を深めていきたい、としている。
(5)リスタートへの投資
大きなトピックスとしては、「バリューアップの再現性が高まってきた」こともあり、既存のローリスク・ローリターン型の投資だけでなく、ミドルリスク・ミドルリターン型の投資を第1四半期から開始した。利益成長の潜在力が高いが、低迷しているタイトルを安値で買い取り、バリューアップでリスタートさせる「リスタート投資」である。リリース後、初動が好調だったが、その後、様々な理由でランキングをキープできなかったタイトルを対象にしているという。具体的なタイトルは明かされなかったが、2タイトルで投資を実行しているという。
(6)財務戦略…東証一部へ市場変更も
企業買収やタイトルの買い取りを行うには機動的に資金調達を行う必要がある。マイネットでは、財務レバレッジをあまりかけず、エクイティとデットでバランスよく調達していく。銀行とのコミュニケーションを強化し、借入条件の改善を行っていくとともに、株式市場からの資金調達にも備えて、機関投資家向けのIR活動を強化していく考え。機関投資家向けIRについては、機関投資家の比率が16年6月末の11%から期末には20%に上昇した。
同時に、現在の東証マザーズから東証一部への市場変更に向けた取り組みを開始することを明らかにした。今回の決算で東京証券取引所がで定めた市場変更に関する利益基準はクリアし、重要な形式基準はほぼ解決したとのことで、今後、審査に向けた準備を行うという。
(編集部 木村英彦)
会社情報
- 会社名
- 株式会社マイネット
- 設立
- 2006年7月
- 代表者
- 代表取締役社長CEO 岩城 農
- 決算期
- 12月
- 直近業績
- 売上高87億1700万円、営業利益1億6800万円、経常利益1億2500万円、最終利益1億4300万円(2023年12月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 3928