【インタビュー】一目で理解できるMOBAを目指した『フレイム×ブレイズ』…手軽さと奥深さを融合したタイトルの新たな運営体制を開発者が語る
スクウェア・エニックスはスマートフォン向けアクションゲーム『フレイム×ブレイズ』を4月12日より配信開始した。
本作はスマートフォン向けアプリでは珍しい3on3形式のMOBA系タイトル。プレイヤーは仲間と協力しながらフィールドのモンスター仲間にしていき、対戦相手の”リアクター”と呼ばれる大型モンスターの撃破を目指す。
今回、配信を記念して、プロデューサーの岡山博紀氏、ディレクターの阿部雄仁氏にインタビューを実施。本作でこだわったポイントや今後の展開について話を伺った。
■日本で馴染みの浅いスマホ向けMOBAジャンルへの挑戦
▲『フレイム×ブレイズ』プロデューサーの岡山博紀氏(写真左)と、ディレクターの阿部雄仁氏(写真右)。
――:まず始めに、お二方の経歴をお聞かせください。
岡山博紀氏(以下、岡山):私はこれまでブラウザゲームの『戦国IXA』など、オンラインゲームに携わることが多く、弊社に勤めて8年になります。最近では『キングダムハーツ ユニオンクロス』や『フレイム×ブレイズ』のプロデュースを担当しています。
阿部雄仁氏(以下、阿部):私は『キングダム ハーツII』から『キングダムハーツII FINAL MIX+』、『ファイナルファンタジーXIII』シリーズに一通り携わっております。スマートフォンタイトルでは『メビウス ファイナルファンタジー』のチームに加わっていたこともあるのですが、運営についてはほぼ未経験に近いです。
――:本作の開発経緯について教えて下さい
岡山:弊社の北瀬から、「阿部と組んで何かやってみてよ」というお話をいただいたことが始まりでした。そこから、「みんなでワイワイ集まって大会をやれるようなタイトルがスマートフォンで欲しい」という話が噛み合ったのが『フレイム×ブレイズ』の発端になります。そこで”大会を開催”する、ということを考えた時にゲームジャンルとしてMOBAが相応しいのではないかと思い、現在の形に至りました。
――:MOBAはまだ日本では馴染みの浅いジャンルでもあると思うのですが、あえてチャレンジしようと思われたのは何故だったのでしょうか?
岡山:まず、いわゆる海外産のMOBA系タイトルを一通りプレイしてみたのですが、どれも1試合辺りにかける時間が長いんですよね。そこで、スマートフォンで手軽に遊べるという特性を活かすため、10分で遊べるMOBAを作ろうという点に着眼しました。さらに、国内向けを意識して様々な工夫を加えていきました。
阿部:”モンスターを仲間にして戦う”というデザインは、日本でゲームをする方には、なじみやすいのではないかと思います。
岡山:比較的受け身のゲームが好まれる傾向にある中、MOBAは戦闘中の状況が分かりにくく、回答が一つでない部分が初心者には難しい部分であると感じましたので、如何にそれを解決していくかがテーマのひとつでもありました。
――:MOBA特有の“分かりにくさ”については、どのように解決されたのでしょうか?
阿部:社内でMOBA系のゲームをプレイしていただいた際に気付いたのですが、約半数の人がタワー(※)について理解できていませんでした。モンスターや敵プレイヤーを把握することはできていても、弾を撃ってくるタワーを破壊するものだと思えないらしい。そこで、本作においてバトルに関わるものは、全て生き物にしてしまいました。大きいものは強い、リアクターは体力ゲージがあって減らせば勝ちと、細かいルールを知らない方でも体力ゲージを見ると一目でどちらが有利か理解できる分かりやすさを表現することができました。
※一定範囲に入った敵モンスター・プレイヤーに自動攻撃を行う防衛設備。
岡山:あとは、先ほども挙げた”モンスターを仲間にする”という点も分かりやすさに繋がっています。仲間にしたモンスターはAIで動くので、相手プレイヤーにやられたくないという理由で人の居ないエリアに行っても、モンスターを倒して仲間にすることで戦いに貢献できます。また、各モンスターの特色を理解することでプレイヤーができることも増えていきます。そのほか、もし通信の不備があった場合にもモンスターは動き続けてくれます。
――:モンスターごとに特色が戦略を出すためでしょうか?
阿部:各キャラクターが次にどのような行動をするのかを理解できるからこそ立てられる戦略もあると思いますので、モンスターの種類によって動きを端的にし、プレイヤーに利用していただく形にしました。
岡山:モンスターが戦略や利益を与える有限のリソースならば、マップの構図を変えるより、出現するモンスターや配置を変更するだけでも十分に楽しめると考えました。
――:キャラクターのスタイルチェンジについてはいかがですか。
阿部:もともとは試合が始まった段階で「これが鉄板の戦い方だろう」という戦法が確立されてしまわないようにカウンター的な役割を想定して実装していました。従来のMOBA系ゲームは、対戦相手によって自身やチームの装備を数多くのプランの中から決定していくゲームが多く見られるのですが、本作は長くても1戦10分のゲームです。そこで、各キャラに2パターンの戦略を用意することで短い時間でも選択肢のある戦術バトルを楽しんでいただけるようにと考えました。
岡山:本作だと、カードセットによる装備プランも戦略のうちのひとつに入るのですが、まだMOBAに馴染みのないユーザーからすると最初はとっつきにくい部分があるかもしれません。しかし、スタイルチェンジは見た目の変化による派手さもありますし、ライトユーザーでも何が起こったのかを理解しやすくしたという意図があります。
■狭く深くではなく、広く浅く考えるマネタイズについて
――:装備カードは課金で購入することも可能になっていたので、純粋に腕を競い合うという意味では少し離れた部分にもなると感じたのですが、その辺りについてはどのようにお考えでしょうか?
阿部:基本的なカードは全て本作のボードから入手可能になっておりますので、あくまでもエージェント専用のカードセットをいち早く作りたいという方のためへの時間短縮の意味合いが強くなっております。また、レアリティが高いから絶対に強いというわけではなく、むしろパラメーターの上昇値で見るならレアリティの低いカードの方が高いこともあります。もちろん、高レアリティカードは幅広い戦況に活かせるような仕様にはなっておりますので、組み合わせが重要になりますね。
岡山:ボードにはエージェント専用のものも存在していて、これは各エージェントを使い込むことで入手可能です。なので、かける時間にもよりますが課金の有無で大きな実力差は出ないようになっています。
――:マネタイズについては、どのように考えられているのでしょうか。
岡山:本作では、MOBA系ゲームでは他に見られないスタミナ制を採用しています。ただ遊ぶと消費するだけのものではなく、対戦の際にエナジーをBETする数によって報酬が豪華になるようなシステムになっているんです。理想としては、チーム全員のエナジーを合わせてフルBETで遊ぶ方が良いものがもらえるのですが、エナジーがなければBETせずに遊ぶことも可能となっております。このエナジー回復を課金で考える部分もありつつ、海外タイトルでよく見られる動画広告のシステムを実装しておりますので、動画を見ることでも回復できるようにしました。
阿部:あとは、対戦の勝敗を金額で付けるわけではないので、エージェントの使用権を落とし所にしました。運営開始直後は新規エージェントを1~1.5ヶ月程度に1体追加していきたいと考えています。何体エージェントが増えても、使用権で一括なので、運営が進むほど、ユーザー様が得をするような課金になればいいと考えています。
岡山:エージェントの使用権については、ゲームに慣れるまで最初のオススメエージェントが解禁されているので、ゲームを始めたばかりでも安心して遊べるようになっており、色々なキャラクターに触れるきっかけにもなっています。マネタイズについては、ユーザー層の面の広さを重視し、母数、国数を増やす方向で考えていきたいと思っています。
――:国を増やすという点では本作は既に海外での配信も決定しておりますが、そちらの反響はいかがでしょうか?
岡山:海外ではMOBAの認知度が日本より高いこともあり、かなり興味を持っていただけています。海外の方からすると、本格的なMOBA系ゲームはPCで遊べる環境にあるので、逆にこういったライトなMOBA系ゲームを求めていたとの声もいただけました。日本らしいデザインが好まれている部分もあり、当初は国内向けを意識して開発していた部分もあるのですが、結果的に他国からも良好な反応をいただけていますね。
――:先ほど「みんなでワイワイ集まって大会をやれるようなタイトル」にというコンセプトもあると仰っておられましたが、e-Sports化やリアルイベントの構想もあるのでしょうか。
岡山:これは私の夢の話になりますが、いつか世界一決定戦を開催したいです。まずは日本一のチームを決定するイベントを開催し、日米最強決定戦を開催できればと考えています。一目見て戦況が分かるという意味では競技に向いたタイトルに仕上がっていると思いますので、e-Sports化についても前向きに検討していきたいです。
――:最後に読者の方々に一言お願いします。
阿部:まだ対戦に慣れていない方でも、スキルぶっ放すなり、モンスター狩るだけでも戦いに貢献できますしエナジーがフルBETならば勝ち負けに関係なく良質な報酬が手に入る仕様になっています。なので、まずは気負わず気楽に遊んでいただけると幸いです。
岡山:類を見ないゲームに仕上がったと自負しています。対戦ゲームが苦手な人でも直感的な操作で楽しめるようになっておりますので、是非、一度手に取って遊んでみてください!
――:本日はありがとうございました。
(取材・文 ライター:間浩人)
(撮影 編集部:山岡広樹)
■『フレイム×ブレイズ』
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会社情報
- 会社名
- 株式会社スクウェア・エニックス
- 設立
- 2008年10月
- 代表者
- 代表取締役社長 桐生 隆司
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高2428億2400万円、営業利益275億4800万円、経常利益389億4300万円、最終利益280億9600万円(2023年3月期)