カヤック<3904>は、2017年3月24日(金)~26日(日)、文京シビックホール 大ホールにおいて、ゲーム音楽交響楽団「JAGMO」によるフルオーケストラ公演「剣士達の交響乱舞」を開催した。
JAGMOは“ゲーム音楽を音楽史に残る文化に”というビジョンのもと、これまで高い芸術性を保持するオーケストラ公演を実施している。一方でカヤックは、去る2015年3月31日にJAGMOの全事業を譲受し、同社が持つコンテンツやクリエイティブの強みを活かして、JAGMOが開催した同年7月の夏公演をサポートし、満員御礼の大成功を収めた。
本稿では、2017年3月公演であるフルオーケストラ公演「剣士達の交響乱舞」の模様を取材。
「剣士達の交響乱舞」公演プログラム
■『FINAL FANTASY』シリーズより
・(FINAL FANTASY XIII)「閃光」
・(FINAL FANTASY V)「ビッグブリッヂの死闘」
■『ゼルダの伝説』シリーズより
・(ゼルダの伝説)「メインテーマ」
・(ゼルダの伝説 時のオカリナ)「タイトル」「大妖精の泉」「コキリの森」「ハイラル平原メインテーマ」「迷いの森」「森の神殿」「ゲルドの谷」「風車小屋」「ボス戦闘」
・(ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド)「メインテーマ」「戦闘(フィールド)」「ガーディアン戦」「リトの村(昼)」
■『ファイアーエムブレム』シリーズより
ほか、『ファイアーエムブレム ヒーローズ』『ファイアーエムブレム Echoes』より
・(ファイアーエムブレム)「メインテーマ」
・(ファイアーエムブレム 覚醒)「遠征〜炎」「貴様らが...姉さんの言葉を語るな!」「『Ⅰ』〜為」
・(ファイアーエムブレムif)「光射す彼方へ〜颯」「汝、光の同胞よ」「汝、闇の同胞よ」「すべての路の果てに〜地」「いつかきた旅路〜轟」「if〜ひとり思う〜」
■『モンスターハンター』シリーズより
・(モンスターハンター)「英雄の証」「咆哮~リオレウス」
・(モンスターハンター2)「炎国の王妃~テオ・テスカトル&ナナ・テスカトリ」
・(モンスターハンターポータブル 2nd G)「闇に走る赤い残光~ナルガクルガ」「絶対零度」
・(モンスターハンター3)「健啖の悪魔~イビルジョー」
・(モンスターハンターポータブル 3rd)「閃烈なる蒼光~ジンオウガ」
・(モンスターハンター3G)「剛き紺藍~ブラキディオス」
・(モンスターハンタークロス)「灼熱の刃~ディノバルド」
■『大神』より
「タイトル」「プロローグ」「オイラのテーマ」「神州平原」「妖怪退治」 「ウシワカ演舞~ウシワカと遊ぶ」「常闇ノ皇」 「Reset」「太陽は昇る」
■『キングダムハーツ』シリーズより
・(キングダムハーツ)「Dearly Beloved」「Night of Fate」「Traverse Town」
・(キングダムハーツⅡ)「Roxas」「Tension Rising」「Old Friends, Old Rivals」「Darkness of the Unknown」「The 13th Struggle」
・(キングダムハーツ 358/2 Days)「Vector to the Heavens」
・(キングダムハーツ バース バイ スリープ)「Birth by Sleep -A Link to the Future-」
■『アークザラッド』シリーズより
※3月24日(金)夜、25日(土)夜公演限定
・(アークザラッド)「アークザラッドのテーマ」 「戦闘 2」「戦闘 6」 「セーブ&ロード」
・(アークザラッド2)「エルクのテーマ」 「LAST BATTLE」 「明日へ」
■『ワイルドアームズ』シリーズより
※3月24日(金)夜、26日(日)昼公演限定
・(ワイルドアームズ)「荒野の果てへ」「街」
・(ワイルドアームズ 2nd イグニッション)「フィールド・彷徨」 「西風の吹く街」「バトル・VSロードブレイザー」
■旬を捉えたラインナップ 大胆な和楽器アレンジが響いた2017年の初公演
2017年最初の公演を迎えたJAGMO。昨年の活動では、2016年3月に「伝説の狂詩曲」、5月・10月に東方Projectフルオーケストラ「幻想郷の交響楽団」、8月に任天堂のゲーム音楽をプログラムに含んだ「伝説の交響組曲」、そして12月に聖夜をテーマにした「英雄達の譚詩曲」と、大きい公演を5回開催してきた。
「剣士達の交響乱舞」と題した今回は、剣士に因んだRPGやアクションゲームの名作タイトルの楽曲がラインナップに。また、これまで演奏した曲目も編曲、楽器のバリエーションが手伝って、新たな一面を見せてくれた。途中休憩もあったが、演奏中は脳内で繰り広げられる主人公(剣士)たちの怒涛のアクションシーンが目に浮かび、2時間強の演奏時間を物ともせずにアッという間に駆け抜けた。
▲指揮者・永峰大輔さん(中央右)、コンサートマスター・枝並千花さん(中央左)
冒頭は、シリーズ屈指の人気を誇るニンテンドウ64用ソフト『ゼルダの伝説 時のオカリナ』。メインテーマをはじめ、戦闘曲、ダンジョンなど10曲からなるメドレーで圧倒した。壮大かつ神秘的、しかしどこか物寂し気な同シリーズ特有の曲調だが、特筆すべきは効果音の演奏。謎を解いたとき、宝箱を開けたとき、朝を迎えたとき……。『ゼルダの伝説』シリーズには、終始流れるBGMとは異なり、場面を印象付ける効果音(あるいは短い楽曲)がプレイヤーの達成感を後押ししてくれる。
演奏中は、これらの効果音を随所に散りばめられていたのだ。たとえば、ダンジョンの演奏中にも関わらず、謎解き音や宝箱の開封音などが挟み込み、まるで一連のダンジョン攻略を体験しているかの如く演奏にのめり込めた。そのほか、キャッチ―でオカリナの旋律が印象深い「迷いの森(サリアの歌)」や、特徴的な楽器・サンダーシートで雷音を表現した「風車小屋(嵐の歌)」など、同シリーズを代表する楽曲も演奏し、一発目の演目として相応しい王道ラインナップで観客の心を掴んだ。
続いても『ゼルダの伝説』シリーズより。加えて、2017年3月3日にNintendo Switchのローンチタイトルである『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』という、発売して間もないシリーズ最新作の演奏だ。発売から1ヵ月もしないで、このタイミングで同作のフルオーケストラを聴けるのは、恐らく世界最速といっても過言ではないだろう。
シリーズ初のオープンワールドを採用した同作は、大自然を感じさせる環境音を基調としているほか、静かでのびやかな印象を持つ楽曲が多い。しかし、演奏中にガラリと雰囲気を変えたのは、謎のからくり兵「ガーディアン」戦。フィールド中に対峙すると、強力な攻撃を容赦なく叩き込んでくるため、初遭遇時、多くのプレイヤーが痛い目を見たのではないだろうか。ガーディアンに見つかった瞬間に流れるこの楽曲は、小刻みに鳴り響くピアノの旋律が印象的。トラウマ必至の楽曲を、豪華なフルオーケストラにも関わらず、無機質で不気味な雰囲気を保ちながら演奏した。
続いては、プレイステーション用ソフトとして人気を博した荒野が舞台の人気RPG『ワイルドアームズ』シリーズより5曲を演奏。2016年12月開催の「英雄達の譚詩曲」の初演奏では第一作目から、口笛の音色が印象的なシリーズの代表曲「荒野の果てへ」と、民族色の強い音楽の「街」BGMの2曲を披露。今回は新たに第二作目の『ワイルドアームズ セカンドイグニッション』より「フィールド」「西風の吹く街」「VSロードブレイザー」の3曲を追加した。なかでもラスボス戦の「VSロードブレイザー」では、同作の主題歌「どんなときでも、ひとりじゃない」のアレンジでもあるため、シリーズファンはふたつの楽曲をフルオーケストラで体感できたのではないだろうか。
そして『モンスターハンター』シリーズの演奏も外せない。メインテーマ「英雄の証」から始まった演奏では、狩猟曲が中心のオリジナルメドレーを披露。リオレウスやナルガクルガ、ジンオウガなど、各タイトルを代表するモンスターたちの楽曲を矢継ぎ早に繋げていった。胸にズシンと響く轟音を力強い和太鼓が表現するなど、脳内では次々と飛び出てくるモンスターの猛攻に対峙しているかのよう。まるで難度の高いクエストを体験しているかの如く充実した疲労感が味わえた。
そして『モンスターハンター』シリーズの演奏も外せない。メインテーマ「英雄の証」から始まった演奏では、狩猟曲が中心のオリジナルメドレーを披露。リオレウスやナルガクルガ、ジンオウガなど、各タイトルを代表するモンスターたちの楽曲を矢継ぎ早に繋げていった。胸にズシンと響く轟音を力強い和太鼓が表現するなど、脳内では次々と飛び出てくるモンスターの猛攻に対峙しているかのよう。まるで難度の高いクエストを体験しているかの如く充実した疲労感が味わえた。
『アークザラッド』シリーズも初演奏だ。なかなかフルオーケストラで聞く機会が少ないタイトルだけあり、密かに楽しみにしていた観客も多かったのではないだろうか。同作の作曲を担当したのは、『グランツーリスモ』シリーズでもお馴染み、フュージョングループ・T-SQUAREのリーダーであるギタリストの安藤まさひろ氏だ。疾走感抜群の胸躍るオープニング曲「アークザラッドのテーマ」をはじめ、第二作目と合わせて7曲を披露。なかでも「戦闘曲」は『1』『2』とシリーズ通して流れるため、多くのプレイヤーは何度も耳にしたのではないだろうか。短い楽曲だが「セーブ&ロード」を間に挟むなど、RPGらしい粋な演出が垣間見えたところで、ラスボス戦「LAST BATTLE」、エンディング曲「明日へ」と、物語も繋がっている『1』『2』という長編シリーズを綺麗に完走(奏)した。
さらに初演奏となったのは、『ファイアーエムブレム』シリーズ。当日は、声楽の優雅さで耳に残る「メインテーマ」をはじめ、『覚醒』『if』、そして2017年2月にリリースしたばかりのスマホゲーム『ヒーローズ』、今春発売予定の外伝のリメイク作品『エコーズ』より、10曲と大ボリュームのラインナップとなった。戦闘中の音楽はもとより、イベントパートを彩る情緒溢れる楽曲、熱戦が繰り広げられるラストバトル、そして『if』の主題歌などバラエティに富んだ内容で観客を魅了した。
奇をてらった演奏を見せたのは『ファイナルファンタジー』シリーズだ。『XIII』の「閃光」と『V』の「ビッグブリッジの死闘」を交互に入り乱れるように編曲された内容は過去にも演奏したが、なんと今回は和楽器をふんだんに取り入れたアレンジで新たな一面を見せてくれた。たとえば、肝となる「閃光」の主旋律を尺八で表現。また、「ビッグブリッジの死闘」に関しては、『XIII-2』でも和楽器アレンジバージョンが流れるため、そういう意味ではゲーム内でも流れたBGMを、生の演奏が聴ける貴重な演目となった。
とりを飾ったのは『大神』。過去公演から新たに琴を加え、大幅なアレンジで演奏した。力強いシーンでは、和太鼓、三味線、尺八の旋律が響き渡る一方、ゆったりとシーンの「プロローグ」では琴の音色が神秘的かつ透明感のある雰囲気を与えてくれた。複数の和楽器を主旋律に据えた今回の公演は、全く新しいオーケストラサウンドの演奏として、JAGMOならではの凄みを改めて感じた瞬間だった。
これまで何度も開催してきたJAGMOのフルオーケストラだが、今回の楽曲ラインナップはとても旬を捉えていると感じた。『ゼルダの伝説』はシリーズ最新作の発売月、『モンスターハンター』も最新作『XX』の発売月、『ファイアーエムブレム』と『キングダムハーツ』はスマホゲームがリリース、『アークザラッド』『ワイルドアームズ』も新作スマホゲームが開発中……といった具合だ。
考えすぎだとは思うが、直近、話題性のあるタイトルが並んでいると、聞き手としても違和感なく演奏に浸れるもの。原作IPが長年愛されることで、シリーズ続編の登場や、断続的なマーチャンダイジングによる露出など、色あせないのがゲームタイトルの良いところであり、今後もJAGMOは、ゲーム業界の歩みと共に成長していく交響楽団になるのではないだろうか。
▲ロビーでは、パンフレットや缶バッジなどを販売。
▲「JAGMOパトロネージュプログラム」の受付。会員になることで、公演の優先購入権やオリジナルグッズなど、様々な特典を得られる。
▲JAGMOオリジナルピンバッチ(全10種)のガチャガチャも設置。
なお、次回開催は、2017年5月3日、東京オペラシティ タケミツメモリアル(東京都新宿区)において、東方Projectフルオーケストラ公演「幻想郷の交響楽団 - 夢幻狂奏曲 -」を開催。東方Projectフルオーケストラコンサート第二弾となる本公演は、第一弾公演で特に反響の大きかったシリーズ前半作品の楽曲を中心とするメドレーのリアレンジに加え、「東方非想天則」「東方神霊廟」「東方輝針城」「東方紺珠伝」など、演奏希望の声が多かったタイトルから27曲を厳選して演奏するという。
また、東方Project×JAGMOの新作アレンジCD「幻想郷の夢幻即興録」の会場限定販売ならびに第一弾アレンジCD「幻想郷の超絶弦楽四重奏団」を再販することが決定。さらに、音源だけで満足できない方のために、本公演の映像を何度でも観られる「テイクアウトライブ」の販売も実施することが決定した。「テイクアウトライブ」では、当日のコンサート映像の中から厳選された3曲だけではなく、公演のメイキング映像やリハーサルの様子が特典映像としてついている。
そして、要望を受け、来場者によるコスプレを解禁。クラシックホールにおいてコスプレでの来場が解禁されることは非常に珍しく、JAGMO初の挑戦でもある今回の試みとなる。公演概要などは下記のサイトでチェック。
会社情報
- 会社名
- 株式会社カヤック
- 設立
- 2005年1月
- 代表者
- 代表取締役CEO 柳澤 大輔/代表取締役CTO 貝畑 政徳/代表取締役CBO 久場 智喜
- 決算期
- 12月
- 直近業績
- 売上高174億6700万円、営業利益10億2100万円、経常利益10億3800万円、最終利益5億1100万円(2023年12月期)
- 上場区分
- 東証グロース
- 証券コード
- 3904