【マイネット決算説明会】第1四半期は買取タイトル寄与し過去最高の売上 財務・組織の体制整い買取・M&Aをさらに積極化へ



マイネット<3928>は、5月16日、東京都内のマイネットオフィスで、第1四半期(17年1~3月)の決算説明会を開催した。同社が前日に発表した決算は、売上高28億9800万円(前年同期比113.7%増)、営業利益2億4700万円(同247.8%増)、経常利益2億3300万円(同247.7%増)、最終利益9800万円(同122.7%増)だった。取得したタイトルのうち、安定運用期に入ったタイトルが収益に貢献した。

また、前四半期(2016年10~12月期)との比較(QonQ)では、売上高が13.3%増、営業利益が17.3%減、経常利益が7.0%増、最終利益が86.3%減だった。売上が伸びたものの、タイトルに係る償却費が増えたことで営業減益となった。最終利益が大きく減ったが、前の四半期に計上された特別利益(一時的な利益)がこの四半期では計上されなかったため。
 


決算説明会に臨んだ上原仁社長(写真)は「業績は狙ったところに着地させることができた。過去最高の売上高となり、利益も昨年の3.5倍と着実に成長している。また、新株予約権の行使がすべて完了し、借入金の返済を行い、健全な財務体質となった。これから攻めていける体質になった」とし、今後も「攻めの経営」を行うことを強調した。なお、断りがない限り、「」内は上原社長の発言となる。


 
■第2四半期は売上高は過去最高を記録

まず、前期の第4四半期(16年10~12月)の業績から振り返っていこう。業績は、売上高が前四半期比69.9%増の25億5000万円、営業利益が同291.0%増の2億9900万円とQonQでは超が付くほどの大幅な増益を達成した。これは主に買収したC&Mゲームスが連結に寄与したことによる。2016年11月にマイティゲームス(当時のC&Mゲームス)を買収し、大規模タイトルやIPタイトルなど16タイトルのモバイルゲームを取得した。
 


続く、第1四半期は、売上高が同13.3%増の28億9800万円、営業利益が同17.3%減の2億4700万円と増収減益となった。前の四半期では2ヶ月のみの収益寄与だったマイティゲームスがフルで四半期業績に寄与したことなどで売上は2桁の伸びとなった。また利益面は、安定運用期に入ったタイトルが寄与したが、取得したタイトルの増加に伴って発生する減価償却費やのれんの償却費、コーポレート部門に増員に伴う人件費・採用費が増えたことが響いたとのこと。
 


ちなみに、「安定運営」の定義について会場から質問が出た。同社では、タイトルの運営移管後、半年から1年ほどをかけて、様々なバリューアップを施すという。バリューアップを終えると、「安定運営」に入ったと定義しているそうだ。マイティゲームスなどのタイトルは、買い取りから間もないこともあり、まだバリューアップ期間中だが、同社の運営する35タイトルのうち、過半数が安定運用期に入っているそうだ。


 
▲費用の推移となる。買い取りや買収を行ったためだが、減価償却費やのれん償却が増えている。また売上高に対する広告宣伝費比率は4.2%から2.2%に低下し、「正常化」した。同社の運営する相互送客ネットワーク「CroPro」が効果を発揮したようである。

 
▲貸借対照表。新株予約権の行使が完了し、調達した資金であおぞら銀行からの借入金28億円を返済した。流動負債が56%減の25億円と大きく減少した。現預金は22%増の31億円となった。

 
▲グループの従業員数は3月末現在で576名に増加した。第1四半期では、ゲーム開発者ではなく、コーポレート部門の人員を中心に増やしたそうだ。コーポレート部門を成長の基盤となる存在と位置づけており、第2四半期以降の開発者の増加に対応できるようにしているとのこと。次の四半期では、4月の新卒社員や、S&Mゲームスのスタッフが加わったことで約670名になるという。


 
■事業戦略

続いて、第2四半期以降の戦略を説明した。

(1)大型タイトルの買い取り
新株予約権など調達した資金で引き続き大型タイトルの仕入れやM&Aを行なう考え。第1四半期では2タイトルの買い入れを行ったが、第2四半期では『モンスターギア バーサス』や『ボーダーブレイクmobile』『夢色キャスト』『刻のイシュタリア』『逆襲のファンタジカ』の仕入れを発表した。いずれも「まだまだ伸びしろがあるタイトル」。第2四半期以降の業績拡大に寄与することになる。
 


決算発表と同時に設立を発表したマイネット・ストラテジックパートナーズ(MSパートナーズ)は、ゲームタイトルの買い取りやM&Aのアクションを行う戦略子会社となる。同社では、投資戦略室と事業開発室がこうした業務を行ってきたが、仕入と運営の役割を明確化し、仕入業務の生産性の可視化を狙う。MSパートナーズが仕入を行い、マイネットが手数料を支払うもので、将来的にはマイネットだけでなく、パートナー企業も対象にサービス提供する考え。
 


(2)英語圏向けサービスを提供するS&Mゲームス
英語圏向けの事業戦略子会社S&Mゲームスについては、シリコンスタジオから取得した『逆襲のファンタジカ』と『刻のイシュタリア』の運営を行いつつ、日本から海外向けにタイトルを新たに配信して収益を伸ばしていく。海外向けタイトルについては、すでに配信されているタイトルの買い取り、もしくは国内で評価されているタイトルを協業などの形で配信するという。マイネットが国内で展開してきたビジネス手法と大きく変わるものではない。
 


上原社長は、新設会社で運用する点について、「専門的な会社が領域を細分化してチーム結成や仕入交渉を行った方が生産性が高くノウハウもたまり、ユーザーバリューも高い。当社ではこれをセグメントフォーカス戦略と呼んでいる。もう一つは、英語圏のユーザーに一番強いチームを作ることがある。幸いシリコンスタジオから移籍した開発スタッフ60名はグローバルで評価されるタイトルを長年運営してきた。マイネットグループにも英語圏に強いタイトルを運営してきたメンバーもいるので、一緒にやることで"Tokyo to Global"を勝ち抜きたい」とコメントした。



(3)ミドルリスク・ミドルリターン型の「リスタート」を開始
ミドルリスク・ミドルリターン型の「リスタート」と呼ぶ運用サービスを開始したことを明らかにした。今回の取り組みは、利益成長の潜在力が高いものの、低迷しているタイトルを安値で買い取り、バリューアップを図るものとなる。買い取ったタイトルの運用の効率化で収益を稼ぐスタイルとは異なる。

タイトルは明かさなかったが、すでに開始した1タイトルでは、一時的に赤字となったものの、新規ユーザーが増加し利益が出る状態になったという。2タイトル目にも着手し、4月末に第1弾のアップデートを行い、5月から大型のプロモーションを行なう。開発レベルの底上げとこれまでの運用ノウハウの蓄積で、新規開発に近い、大型のアップデートに対応できるようになったことがその背景にある。
 



(4)AIによる自動運転の進捗
AI(人工知能)を使った自動運転について、試験的に実施したタイトルで「定常的な更新」に関しては8割まで自動化できていることを明らかにした。前回の決算説明会では月商1000万円~1500万円規模で、運用年数2年のタイトルで試験的に導入し、検証を行っている旨の発表があったが、プロジェクトは順調に進行しているようだ。どこまでAIによる運用が可能なのか、続報が待たれる。
 


 
(編集部 木村英彦)
株式会社マイネット
http://mynet.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社マイネット
設立
2006年7月
代表者
代表取締役社長CEO 岩城 農
決算期
12月
直近業績
売上高87億1700万円、営業利益1億6800万円、経常利益1億2500万円、最終利益1億4300万円(2023年12月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3928
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