【決算まとめ】ゲーム関連企業32社の1-3月…ミクシィが営業益300億円台乗せと利益面で圧倒 ガンホーは8四半期ぶり増収に 赤字企業は9社と市場の2極化進む

主要企業の本決算発表が最も多い1~3月の決算発表シーズンが終了し、大手ゲームソフト、主要モバイルゲーム企業の2017年1~3月期(一部11~1月期と12~2月期)決算が出そろった。そこで今回もゲーム関連企業32社分の決算の状況をチェックしてみたい。

まずは、毎回恒例となっている四半期業績を売上高規模で並べてみた表を見てみたい。この表は決算期の都合で、gumi<3903>とエイチーム<3662>の数字は11~1月期と、これまでと同様に2ヶ月前の数字となっている。また、従来どおり、gloopsなどを含むネクソン<3659>のモバイル事業の売上高も掲載し、サイバーエージェント<4751>(表中はCA)は、ゲーム事業の数字のみを取り上げている。
 

今回の決算では、32社中、増収が15社、減収が17社と減収企業が多数派になっている。これは決算期が1~3月の企業がいわゆるクリスマス商戦の反動を受けることと、決算期が1~3月と12~2月の企業が営業日数の少ない2月を含む四半期であることが影響していると言えよう。

むしろ、それよりも注意を払っておきたいのは利益面の状況で、赤字計上企業が前四半期の4社から9社に倍増した一方で、QonQで50%超の大幅な増益を達成している企業も8社あるなど、2極化が進んでいる。

ちなみに、32社を売上高と営業利益の増減別に分けると、以下のようになる(並びはコード順)。

増収増益…ミクシィ<2121>、ディー・エヌ・エー(DeNA)<2432>、グリー<3632>、コーエーテクモHD<3635>、KLab<3656>、エイチーム<3662>、オルトプラス<3672>、ガンホー<3765>、ドリコム<3793>、gumi<3903>、アカツキ<3932>、LINE<3938>、サイバーエージェント<4751>、カプコン<9697>
増収減益…コナミHD<9766>
減収増益…コロプラ<3668>、カヤック<3904>、モバイルファクトリー<3912>
減収減益…クルーズ<2138>、アクセルマーク<3624>、ボルテージ<3639>、モブキャスト<3664>、enish<3667>、イグニス<3689>、ケイブ<3760>、シリコンスタジオ<3907>、Aiming<3911>、エディア<3935>、セガサミーHD<6460>、バンダイナムコHD<7832>、マーベラス<7844>、スクエニHD<9684>



■バンナムHDはゲーム関連事業で1000億円規模の売上高をキープ


続いて四半期売上高100億円以上を抽出して並べたグラフに目を移してみたい。このグラフを見ると、バンダイナムコHDがクリスマス商戦の終わったこの四半期も売り上げ規模を維持し、ほかの大手ゲームソフト企業と大きく差を付けている上場が見て取れる。ほかに注目されるのは、ミクシィが後続グループを引き離し、セガサミーHDやスクエニHD、コナミHDとほぼ同水準まで売り上げを伸ばしてきたことだろう。
 

次に四半期売上高100億円以上のグラフを大手ゲームソフト企業各社のゲームにかかわる事業のみを取り出したもので見てみよう。こちらを見るとバンダイナムコHDは、ゲーム関連事業で1000億円規模の売上高を前四半期に続いて安定して計上できていることが分かる。また、カプコンが『バイオハザード7』や『モンスターハンターダブルクロス』の寄与で売り上げを大きく伸ばしている一方、スクエニHDやセガサミーHDはやや売り上げを落としている。
 

四半期売上高100億円未満の企業では、『ヴァルキリーコネクト』の海外展開が寄与したエイチームが躍進した。ほか、gumiやアカツキ、ドリコムなどが順調に売り上げを伸ばした一方で、Aimingやクルーズの売り上げが大きく減少した。ただし、クルーズは、『エレメンタルストーリー』以外の全てのゲームタイトルをマイネット<3928>グループに譲渡した影響がこの四半期にフルに出ているためであり、事業構造の変化に伴うものということになる。
 
 

■ミクシィの営業利益は後続の3倍以上という結果に


次に各社の営業利益の状況を見てみたい。まずは四半期の営業利益20億円以上の企業をまとめたのが以下のグラフとなるが、ミクシィが唯一300億円台と他社の3倍以上の利益を計上するまさに“一人勝ち”の様相を呈している。一方、バンダイナムコHDやコナミHDなど大手ゲームソフト企業で利益率を落とす企業が目立ち、ミクシィに次ぐ利益を計上したのはガンホーという結果になっている。
 

四半期の営業利益20億円未満の企業をまとめたのは以下のグラフとなるが、この四半期はセガサミーHDが50億円超の営業赤字を計上しており、このグラフに加えるとほかの企業の数値が判別しづらくなってしまうため、セガサミーHDは除外して作成している。

大きく伸びているのはアカツキ、KLab、ドリコムといったところで、特にアカツキはこの四半期は営業利益でグリーを上回る水準となっている。逆に利益率の減少が目立つのは、クルーズとなるが、これは前述のゲーム事業の譲渡による影響が大きい。また、Aimingが大きく赤字に振れたほか、シリコンスタジオの赤字幅が2億円超に拡大したのも目立つ。
 

なお、前述の通り赤字計上企業は前四半期の4社から9社に倍増した。そのため、赤字計上企業が前四半期に減少したのは、一過性のものととらえるのが現状における分析結果となりそうだ。前四半期の黒字から赤字に転落したのは、セガサミーHD、ボルテージ、Aiming、アクセルマーク、エディアの5社で、前四半期に赤字を計上していた4社はいずれもこの四半期も赤字となっている。
 


■ミクシィの最高業績、ガンホーの8四半期ぶり増収が貢献


モバイルゲーム大手の売上高推移と営業利益推移をまとめたグラフを見てみたい。この四半期は2四半期連続の増収となり、過去最高の売上高となっている。その要因は、やはりミクシィが過去最高の四半期業績を達成し、四半期売上高で600億円の大台を大きく突破したことだろう。また、これまで右肩下がりの推移が続いていたガンホーの売上高が8四半期ぶりにプラスに転じたことも大きい。
 

一方、営業利益は、3四半期ぶりに増加に転じたが、こちらもミクシィの営業利益が全体の50%超を占めるなどその寄与度がかなり大きなものとなっている。また、こちらもガンホーの営業利益は4四半期ぶりにプラスに転じている。
 
 

■赤字企業数増加も全体の利益総額は上昇傾向が続く


四半期売り上げ規模100億円未満の上場SAPの売上高推移は、3四半期連続の増加となっている。この四半期の伸びについては、gumiやエイチーム、アカツキ、ドリコムといったあたりの寄与度が大きくなっている。
 

意外な印象なのが、上記の四半期売り上げ規模100億円未満の上場SAPの営業利益推移だ。こちらも3四半期連続の増加となり、2014年7~9月期を上回り、手元の集計数字上、最高の数字を記録している。前述の通り、赤字計上企業が倍増している中で利益の総額は増加していることになり、企業間の格差・明暗が大きく分かれているというように考えることができそうだ。
 
 

■市場の2極化が進む DeNAやグリーはトンネルの先に光が差す格好に


ここまで市場全体の状況を見てきたが、今回は2極化がさらに鮮明になってきたことが注目のポイントだろう。分かりやすい数字を挙げると、今回は増収増益の企業が14社ある一方、減収減益の企業の14社とその数字が拮抗している。

また、ブラウザゲームからネイティブゲームに移行する市場の変化の中で大きく出遅れていた感のあるDeNAやグリーがネイティブゲームの好調な立ち上がりで増収増益に転じるなど、ようやく長いトンネルから抜け出すきっかけをつかみ始めたことも大きな注目材料だ。

続いて、各社の個別の状況を見てみたい。前述の通り、今回は増収増益の企業、減収減益の企業がともに32社中14社とほぼ半々に分かれる結果となっている。
 

■増収増益組


・ミクシィ<2121>
『モンスターストライク』(以下『モンスト』)を中心とするエンターテインメント事業の売上高が第4四半期期間(1~3月)において、初めて600億円台を突破するなど好調に推移した。続く2018年3月期は、エンターテインメント領域で130億円の投資を行うこともあって2ケタ減益の予想としているが、これは『モンスト』のアクティブユーザー数減少を織り込んだ予想値であり、やや保守的な内容となっているようだ。まずは足元の第1四半期(4~6月)において、どのようなスタートを切ることになるのか注目したい。

・ディー・エヌ・エー(DeNA)<2432>
任天堂<7974>との協業タイトル『ファイアーエムブレムヒーローズ』が好スタートを切ったことなども寄与し、国内アプリゲームが大幅伸長したことで第4四半期期間(1~3月)は9%増収、31%増益と増収増益を達成した。また、オリジナルタイトルについても『逆転オセロニア』が累計900万ダウンロードを突破するなど順調に成長し、主力タイトルに育ってきている。ただ、懸念材料であるキュレーションプラットフォーム事業は、結論を出す具体的なめどをもまだついていない状況で、問題がクリアになるには時間がかかりそうだ。

・グリー<3632>
Webゲームのコイン消費の減少が続いたものの、ネイティブゲームの伸びでカバーし、第3四半期期間(1~3月)は増収・営業増益を達成した。ネイティブゲームのコイン消費はQonQで31.7%の増加となっているが、4月にリリースした『アナザーエデン』の貢献を考えると第4四半期期間(4~6月)はさらにこれを上回ってくることも予想される。なお、第4四半期は『アナザーエデン』のほかに3タイトルのリリースが予定されている。

・コーエーテクモHD<3635>
2017年3月期の連結業業績予想はコンシューマ、スマホタイトルともに2018年3月期への期ずれが発生したことなどで当初予想を下回っての着地となった。ただし、業績の四半期推移(QonQ)という観点で見てみると、第4四半期期間(1~3月)は売上高で前四半期68.4%増、営業利益で同7.0倍での着地となっている。これは2月にワールドワイドで発売した『仁王』(PS4用)や、同じく2月に配信を開始したスクウェア・エニックスと共同で開発したスマホゲーム『ディシディア ファイナル ファンタジー オペラオムニア』の寄与が大きいようだ。

・KLab<3656>
主力の『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル』と『BLEACH Brave Souls』の売上が増加したことに加え、販売管理費の抑制も奏功し、第1四半期(1~3月)は大幅な営業黒字転換を達成した。なお、2016年12月期通期予想については、売上高で50億円、営業利益で23億円の幅を持ったレンジ予想を打ち出しており、現時点ではこの第1四半期のペースが維持できるのかどうかは読みづらいところか。

・エイチーム<3662>
第2四半期期間(11~1月)は、四半期ベースで過去最高の売上高を更新するなど好調に推移した。特にエンターテインメント事業は、『ヴァルキリーコネクト』の海外展開の順調な立ち上がりが大きく貢献しており、海外売上高は初の10億円台乗せを実現した。一方、昨年12月22日にリリースした新作『放課後ガールズトライブ』は、KPI上で目標に到達していないものがあり、いったん中身の立て直し・拡充を図っているとしており、次の第3四半期決算発表時にその経過がどうなっているのかをしっかりと確認したい。

・オルトプラス<3672>
第2四半期期間(1~3月)は12四半期連続の営業赤字計上となったが、QonQで4%の増収、営業赤字幅縮小とここにきてようやく改善が進んできた。また、期中はフォワードワークスやKADOKAWAなどとの協業タイトルの開発を推進しており、これらのリリースが進むことで一層の収益改善が進むかどうかが今後のポイントとなってくる。まずはこれらのタイトルの開発状況などの最新情報をじっくりと見守りたい。

・ガンホー<3765>
主力の『パズル&ドラゴンズ』の売上高は減少傾向が続いているが、PS4向けのオンラインアクションゲーム『LET IT DIE(レット イット ダイ)』、スマホ向けタイトルの『ディズニー マジックキングダムズ』なども寄与し、第1四半期(1~3月)の売上高はQonQで2%増、営業利益は同6%増と増収増益に転じた。なお、売上高がQonQで増収に転じたのは前述の通り8四半期ぶりとなる。第2四半期はこの改善傾向が一過性のものなのか、それとも大きくトレンドに変化が出てきたのか、確認する上で注目の四半期となってきそうだ。

・ドリコム<3793>
第4四半期期間(1~3月)は、四半期ベースで過去最高の売上高を記録し、営業利益もQonQで2.7倍に拡大するなど好調に推移した。IPタイトルを軸とした戦略に転換しての第1弾タイトルとなる『ダービースタリオンマスターズ』が主力タイトルとして成長しつつあり、業績を大きくけん引した。さらに今期は年間で新規IPタイトルを6~7本リリース予定としており、一層の業容拡大が期待されることになりそうだ。

・gumi<3903>
第3四半期期間(11~1月)は売上高が四半期ベースで過去最高を更新しており、各利益項目もQonQで大幅な増益を達成した。『ブレイブ フロンティア』の国内外での売上減少が続いているものの、『ファイナルファンタジー ブレイブエクスヴィアス』や『誰ガ為のアルケミスト(タガタメ)』『クリスタル オブ リユニオン』が好調に推移し、これをカバーした。特に『タガタメ』は、FateコラボとTVCMが奏功し、売上高が第1四半期との比較で約3.5倍に拡大し、同社の主力タイトルに育ったとしている。

・アカツキ<3932>
バンダイナムコエンターテインメントとの協業タイトル『ドラゴンボールZ ドッカンバトル』の国内外での好調により、第4四半期期間(1~3月)の業績はQonQで右肩上がりの成長トレンドを継続した。ただ、その一方で、2018年3月期については、『八月のシンデレラナイン』や『新テニスの王子様 RisingBeat』など開発中の新作タイトルによる不確定要素が大きく、予想を非開示としている。

・LINE<3938>
パフォーマンス型広告が好調持続に加え、スタンプなどコミュニケーションサービスも過去最高売上を記録し、第1四半期(1~3月)はQonQで増収増益を達成した。しかし、ゲームなどコンテンツサービスの売り上げは、緩やかな右肩下がりのトレンドが続いており、今後の立て直しに向けた施策が注目されるところ。

・サイバーエージェント<4751>
第2四半期期間(1~3月)は、QonQで全体業績もゲーム事業単独でも増収増益を達成した。ゲーム事業では、3月15日にリリースした『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』が大きく寄与している。ただし、第2四半期への寄与は、リリースから半月程度のものであり、これがフル寄与する第3四半期は一段の伸びが期待されることになりそうだ。

・カプコン<9697>
今年3月に発売した『モンスターハンターダブルクロス』(ニンテンドー3DS)の寄与などにより、第4四半期期間(1~3月)は売上高で前四半期比35.6%増、営業利益で同2.5倍と大幅増収増益を達成した。スマホゲームでは『囚われのパルマ』が健闘したが、コンシューマ向けの「バイオハザード」シリーズ、「モンスターハンター」シリーズにかかる比重は依然として大きなものとなっている。

■増収減益組


・コナミHD<9766>
第4四半期期間(1~3月)は、『遊戯王 デュエルリンクス』を約150の国と地域で配信開始し、日本だけでなく海外でも人気を集めた。その結果、デジタルエンタテインメント事業は前四半期比で10.9%の増収、4.6%の営業増益となっている。ただし、全体業績では前四半期に営業利益が19四半期ぶりに100億円の大台乗せを実現していた反動もあって、増収ながら営業減益という結果になっている。
 

■減収増益組


・コロプラ<3668>
上期は既存タイトルを中心とした展開となり、年末需要からの反動減という季節要因もあって、第2四半期期間(1~3月)はQonQで10.8%の減収となった。しかし、利益面については、広告宣伝費が7億円減少となるなどコスト抑制に努めたことが奏功し、営業利益で同0.9%の増益を確保した。下期は新作2タイトルのリリースを予定(うち1タイトル『プロ野球バーサス』は5月23日配信開始)しているが、これら新作タイトルでどれだけ上積みしていけるのかがポイントとなってこよう。

・カヤック<3904>
第1四半期(1~3月)は、QonQで売上高は10.4%減ながら営業利益は3.1%増となり四半期ベースで過去最高を更新した。Lobiがビジネスモデル変更により直前四半期比で減収となったものの、広告宣伝費など費用が減少したことなどから、営業利益率が前四半期の20.5%から23.7%に向上した。なお、今期はソーシャルゲームサービスにおいて下期に3~4本の新作をリリースする予定だ。

・モバイルファクトリー<3912>
第1四半期(1~3月)は、広告宣伝費を前四半期の1億2800万円から7100万円まで抑制した影響により、売上高は微減となったものの、各利益項目は大幅な増益を達成した。3月15日にリリースした新作『レキシトコネクト』は、初動の継続率は『ステーションメモリーズ!(駅メモ!)』のリリース時を上回っているとのことだが、現在の『駅メモ!』には及んでおらず、今後『駅メモ!』と同じように育成していくことができるかどうかが問われることになりそうだ。
 

■減収減益組


・クルーズ<2138>
インターネットコマース事業は順調に成長し、通期で過去最高の売上高を更新したが、インターネットコンテンツ事業は2016年11月にStudio Z社に移管した『エレメンタルストーリー』以外の全てのゲームタイトルをマイネット<3928>へ譲渡したことに伴い、第4四半期期間(1~3月)の売上高は譲渡前の約4分の1に縮小している。今期も特に上期は譲渡による影響が全体業績に及ぶことが予想される。

・アクセルマーク<3624>
第2四半期期間(1~3月)は、主力タイトルの『ワールドクロスサーガ』がゲーム内バランスの悪化によってアクティブユーザー数が減少し、売り上げも落ち込んだことで大幅な減収となった。プロモーションを抑制したことでの広告宣伝費は大幅に減少したものの、各利益項目は赤字計上にとどまった。続く第3四半期は抑制していたプロモーションを再開したこと、新作の開発段階が進み先行投資が増えることで赤字幅が拡大する見通し。

・ボルテージ<3639>
基幹シリーズの減少は想定通りとなったものの、新シリーズおよび実験作・その他の立ち上がりが想定よりも遅れ、第3四半期期間(1~3月)は減収・赤字転落となった。ただし、読み物アプリ『Lovestruck:Choose Your Romance』『ワタシドラマ』や、カジュアル層をターゲットとした『フェイク~芸能人は全員嘘つき?~』などの複数の新シリーズ・実験作のタイトルが第3四半期期間に配信開始となっており、第4四半期はこれらをいかに育てていけるのかがポイントになってくる。

・モブキャスト<3664>
ブラウザゲーム市場の縮小に伴う売上高減少で減収となり、各利益項目の赤字幅も拡大した。新作は『キングダム 乱 -天下統一への道-(旧称「Project OK」)』と『モバプロ2 レジェンド(旧称「Project LEGEND」)』の事前登録を3月より開始(『モバプロ2 レジェンド』は5月15日に配信開始)したほか、新作プロジェクトのProject「LIP」とProject「SMP」がパズルゲームであることを明らかとなった。これら新作タイトル群がどこまで業績に寄与してくるかが、2017年12月期の注目点と言えよう。

・enish<3667>
第1四半期(1~3月)は、タイトル譲渡の影響もあり売上高が減少した。また、『12オーディンズ』において、大型コラボレーションの実施やプロモーションの強化などの取り組みを進めたことなどで、販売費及び一般管理費が前年同期の1億8400万円から3億1500万円に膨らみ、前年同期比でもQonQでも赤字幅が拡大した。営業赤字計上は10四半期連続となっており、今後の収益構造の見直しが大きな課題になりそう。

・イグニス<3689>
第2四半期期間(1~3月)は、QonQで売上高はほぼ横ばいの推移となったものの、新プロダクト・新規事業の開発・立ち上げに向けた研究開発費の増加や、婚活サービス「with」を中心とした広告宣伝費の増加など積極的な事業投資により販管費が増加し、大幅な営業減益となった。なお、ネイティブゲームは、3Dアクションゲームとなるるコードネーム「GK」を開発中だ。

・ケイブ<3760>
主力タイトルの『ゴシックは魔法乙女』の売り上げが前四半期比微減となった。また、3月に小林幸子さんを起用した全国CMを年3月18日~26日に放映したことなどもあって、広告宣伝費がQonQで3000万円増加したこともあり、各利益項目も減益となった。ただし、そうした積極的なプロモーションの効果により、『ゴシックは魔法乙女』の4月売上高は単月で過去最高となっており、続く第4四半期期間(3~5月)の業績回復が期待されるところ。

・シリコンスタジオ<3907>
第1四半期(12~2月)は、『逆襲のファンタジカ:ブラッドライン』のサービスを終了したことなどから大幅な減収、赤字計上となった。ただし、同社が開発に全面協力したスクウェア・エニックスの新作『ブレイブリーデフォルト フェアリーズエフェクト』が順調なスタートを切ったこと、次世代型ゲームエンジン「Xenko」がリリースされたこと、『刻のイシュタリア』と『逆襲のファンタジカ』をマイネット<3928>グループのS&Mゲームスに譲渡したことなど複数の要素で第2四半期は状況に大きな変化が出てきそうだ。

・Aiming<3911>
マーベラス<7844>との共同タイトルである『剣と魔法のログレス いにしえの女神』(以下『ログレス』)が前四半期に大きく回復していたことによる反動から第1四半期(1~3月)の売上高はQonQで24.8%の減収となり、営業損益、経常損益、最終損益はいずれも前四半期の黒字から赤字に転落した。また、期中にリリースした新作『ラピクロ』はスタートでサーバートラブルを起こし、期待を下回るスタートとなった。なお、新作は大手ゲーム会社との共同タイトルとなる大型MMORPGとIPタイトル2本などを開発中だ。

・エディア<3935>
第4四半期期間(12~2月)は新作タイトルのうち不採算となった『マギアコネクト』と『アドヴェントガール』のサービスを終了したこともあり、QonQで14.1%の減収、900万円の営業赤字計上となった。2018年2月期は、新作がゲームサービス、ライフサポートサービスともに下期にリリース予定で下期偏重となる見通しだが、先日に「位置情報」×「ゲーム」の新サービス第一弾となる『MAPLUS++(※仮称)』を発表しており、その開発の進捗状況には注目しておきたい。

・セガサミーHD<6460>
2017年3月期通期では大幅な増益を達成しているものの、第4四半期期間(1~3月)に限定して見てみると、売上高はQonQで30.1%減、営業益は55億円の赤字と7四半期ぶりの赤字計上となっている。スマホゲームは、『オルタンシア・サーガ -蒼の騎士団-』や『ぷよぷよ!!クエスト』など既存主力タイトルを中心とした展開が続いており、これらの続くタイトルの育成が引き続き課題となっている。

・バンダイナムコHD<7832>
ネットワークエンターテインメント事業は、ワールドワイド展開している『ドラゴンボールZ ドッカンバトル』や『ワンピース トレジャークルーズ』などの主力タイトルが人気となり、2017年3月期通期で大幅な増収増益を達成した。また、ネットワークコンテンツ売上高に絞って第4四半期期間(1~3月)の売上高を見てみると、547億円と500億円の大台を大きく突破している。

・マーベラス<7844>
コンシューマ事業と音楽映像事業が好調に推移し、2017年3月期通期の連結業績は増益を確保した。ただし、第4四半期期間(1~3月)をQonQで見ると、売上高は10.3%減、営業利益は22.8%減と大きく落ち込んでいる。これは前四半期はオンライン事業の主力タイトル『ログレス』が急回復していたものの、第4四半期期間は反動減で落ち込んだことが大きく影響している。

・スクエニHD<9684>
第3四半期期間(10~12月)に家庭用ゲーム機向けの大型新作『FFXV』が寄与した反動もあって、第4四半期期間の売上高はQonQで20.3%減、営業利益は5.2%減となった。ただし、逆に考えると『FF』のナンバリングタイトルレベルの反動があっても一定レベル以上の収益が上げられる体制が構築できていることが確認できたとも言える。なお、第4四半期期間の業績を前年同期比で見ると、売上高は8.8%増、営業利益は4.3倍となっている。
 

■まとめ


今回の四半期決算では、赤字計上を余儀なくされた企業が9社あった一方で、増益となった企業が17社と全体の半数以上になるなど、企業間の収益性で大きく明暗が分かれる結果となった。

また、前述の通り、長らく右肩下がりの業績トレンドが続いていたDeNAやグリーが増収増益に転じ、ガンホーも8四半期ぶりに増収となるなど、これまで立て直しに苦戦していたモバイルゲーム大手が復調の兆しを見せたこともこの四半期の特徴と言えそうだ。DeNAは任天堂とのさらなる協業タイトル、グリーは『アナザーエデン』の貢献など次の四半期以降もその動向が注目されることになりそうだ。

なお、フォワードワークスのタイトルも次の四半期くらいには、そろそろリリースに向けた動向が活発化してくることが予想され、関連銘柄となるドリコムやオルトプラス、グリーなどにスポットライトが当たることも予想される。


(編集部:柴田正之)