【インタビュー】スマホゲームをPCで遊べるプラットフォーム「AndApp」×アプリ版第1弾タイトル『幻獣契約クリプトラクト』の開発者対談が実現
ディー・エヌ・エー(DeNA)<2432>が、2016年11月にアプリ版の提供を開始した、“スマホアプリをPCで遊べるプラットフォーム”「AndApp」と、その第1弾タイトルとしてリリースされたバンク・オブ・イノベーションの『幻獣契約クリプトラクト』。今回は、そもそもの開発経緯から、スマホゲームをPCでもデータ連動してプレイ可能にすることでどのようなメリットが得られるのか、実際に届いたユーザーからの評判など、両社対談という形式でお話を伺ってきた。
▲左から順に、西村英之氏(バンク・オブ・イノベーション)、海老原康太氏(バンク・オブ・イノベーション)、坂本宇氏(ディー・エヌ・エー)、門間史晃氏(ディー・エヌ・エー)。
――:まず始めに、みなさんが担当されている業務内容についてお教えください。
坂本宇氏(以下、坂本):AndAppのプロダクトオーナーをしております。システム開発をどのように進めていくかなどを含め、プロダクトを成長させていく役割を担っています。
門間史晃氏(以下、門間):AndAppのテクニカルコンサルタントをしております。社内だけでなく、社外のお客様から技術的な質問やお悩みを頂戴し、共に解決していくという立場になります。
海老原康太氏(以下、海老原):『幻獣契約クリプトラクト』のプロデューサーをしております。主にイベントや機能追加の内容を考えたり、プロジェクトマネジメントをしたり、今回のようにチャネル拡大に携わるなど幅広く担当しています。
西村英之氏(以下、西村):『幻獣契約クリプトラクト』開発ディレクターをしております。主に開発スケジュールやエンジニアのタスク管理をしており、クオリティ管理についても、私の担当になります。
――:そもそも、どういった経緯で『幻獣契約クリプトラクト』をPCアプリで遊べるようにという企画が始まったのでしょうか?
坂本:最初にご提案させていただいたのは弊社からで、時期としては2015年12月頃になります。そこから話を徐々に詰める形で2016年11月にアプリ版の第1弾タイトルとしてリリースさせていただきました。
――:海老原さんとしては、最初に話を持ち掛けられたときの印象はいかがでしたか。
海老原:タイトル自体はスマホで2015年2月にリリースしてから時間が経っていたので、今後の展開としてPCにチャネルを増やせるというのは興味深かったです。それまでにもブラウザゲームというものは存在しましたが、スマホゲームをPC上で動かすという試みはあまりされていませんでしたので。
――:立ち上げの際に苦労された点はございましたか?
西村:会社としてPC版という部分のノウハウがなかったことは大きかったです。ただ、肝になりそうなプレイヤー認証や課金周りのシステムについては比較的スムーズに実装できたので、特に苦労したという記憶はありません。そのほかには、セキュリティ面でスマートフォンとPCではデータの残り方が異なるので少し苦労しました。
――:セキュリティ面の問題については、どのように解消されたのでしょうか。
門間:AndAppでもセキュリティに対するアドバイスや診断をさせていただきました。
西村:弊社で見つけきれなかった問題をご指摘いただけて非常に助かりました。
門間:弊社にはセキュリティに関して専門的にチェックできる部署がありますので、必要に応じてタイトルごとにどういった脆弱性を持ち得る可能性があるかなど、確認してレポートとして提出させていただいております。
――:AndAppとしては、特にどういった部分が大変だったのでしょうか?
門間:弊社としてもスマホゲームをPCに落とし込むというのは初の試みでしたので、Windows に対応させるというところで社内で知見のある人材を集め、徐々にシステム化をすすめてまいりました。
坂本:PC対応する時に、ゲーム側の開発工数を削減できるように、かつパートナー様のリスクを最小限にするためにどうするか検討を重ねましたよね。
門間:そうですね。既存のスマホゲームを如何にPC対応しやすくし、開発工数を削減できるかという部分を考えるのに苦労しました。その甲斐もあり、現在は各社のゲームがスムーズに AndApp へ移植できる形が作れています。
――:現在は、相談してからどれほどの期間でPCに移植できるのですか?
門間:クリプトラクトに関しましては、20 日ほどで PC に移植できたと伺っております。その他のタイトルに関しても AndApp SDK の組み込みと PC 化あわせて、大体 1 〜 3 ヶ月くらいで完了されている認識です。また、AndApp SDK の組み込み自体は非常に簡単で、数日で組み込みが完了したというパートナー様もいらっしゃいます。
坂本:その他の契約面等の実務作業についても開発と並行して行っております。
――:他には、具体的にどういった問題が発生する可能性があるのでしょうか?
坂本:PC対応については、パートナー様の開発環境・実装方法によって対応方法が変わってきます。そのため、パートナー様とお話をさせていただき、どの部分に工数がかかる可能性があるかなどは、最初に見極めてますね。
門間:そうですね。ただ、Unity や cocos2d-x など、使用されているエンジンによって対応方法にある程度パターンはありますので、まずはパターンに応じた解決方法のご提案やアドバイスをさせていただいております。
――:西村さんとしては、実際にやり取りにおける部分での印象はいかがでしたか?
西村:とにかくレスポンスが早いというのは非常に助かりました。技術的な話をすぐに理解していただき、的確なアドバイスをいただけるという点も嬉しかったですね。
海老原:技術担当が直接お話させていただいたことで、ロスなくスムーズに進行していたと思います。
――:AndAppを利用してみてのメリットについてはいかがでしょうか?
海老原:自宅にいると中々スマホを触らないタイミングがあると思いますので、その時間を上手く『幻獣契約クリプトラクト』を遊ぶタイミングにできるというメリットがひとつあります。また、主にPCゲームをプレイされているお客様にリーチしにくいという部分を解消でき、全体的な認知度も向上しました。そのほか、PC上でゲームを動かせるのはテストもしやすく開発チーム内でも非常に好評です。
――:AndAppでは、ゲームを遊べるだけでなく公式やユーザーの情報が見られたりもしますが、現在の構造にはどういった意図があって行きつかれたのでしょうか?
坂本:最初はユーザーがPCを最大限に使ってスマホゲームを楽しめるようにというところからスタートしています。スマホゲームを大画面で遊べるのはひとつの快感ですし、同時にTwitterなどで流れてくる情報が見られるとさらに便利ではないかというところから機能を追加していきました。ユーザーの反応としても、演出がきれいに見られるのが嬉しいという声もあり、PCならではの部分が活かせているのかなと思います。今後は、機能面の拡充というところをさらに高めていきたいですね。
――:AndAppとしては、どういったタイトルを移植するのが特に相性が良いと考えておられますか。
坂本:基本的にはどのようなゲームでも楽しめる世界にしていきたいとは思っています。ただ、その中でもユーザーからの反応をみていて好評だなと思うのが、バトル含めオートで進められるゲームですね。PCで遊んでいるので、バトルをオートで進めながら攻略サイトをチェックするなど、スマホではあまりできない体験を提供できるゲームは相性が良いと思います。
海老原:『幻獣契約クリプトラクト』は、ストーリーやグラフィック、エフェクトといった点を推しにしているので、特にPCの大画面で遊べるという点で、親和性は高いと思います。またオートで進められるゲームという点でも、相性はいいかと。
――:『幻獣契約クリプトラクト』ユーザーからはどういった声が挙がっていますか?
海老原:スマホとは異なる迫力が感じられる、また動作が軽くなったという声をいただきました。
――:ユーザー層としては、スマホで遊んでいた人と新規で始められる人の割合はどのような印象でしょうか?
坂本:だいたい5:5という感覚ですね。想定としては、元々スマホで遊んでいるユーザーがPCも始めるケースが多いのではと考えていたのですが、新たにゲームを開始するユーザーが予想以上に見込めたことは、ひとつパートナー様への価値を提供できた部分だと思います。
海老原:ゲーム内やTwitterで告知をしたことで、こういったサービスがあるということをお客様に認知していただけたのが主な要因かもしれません。PC版で新たにゲームを始めていただいたお客様には、スマホ版にも引けをとらないくらい楽しんでいただけていると実感しています。
坂本:新しいマーケティングのチャネルとしても確立していくという点は、弊社としても目指していきたいところです。
海老原:まだまだ我々がリーチできていない層が多くあると思いますので、今後も積極的に取り組みを行っていきたいと考えています。スマホとPCがリンクした形の広告というのも面白いかもしれませんね。
――:今後の『幻獣契約クリプトラクト』に関して、お話いただけるところがあればお聞かせください。
海老原:RPGであるため、デザインの品質や世界観、シナリオにこだわりを持って制作しております。こういった独自性については多くのお客様の心に刺さって欲しい部分ですので、今後とも詰めていきたいと思っています。
――:最後に、読者の方々にメッセージをお願いします。
坂本:『幻獣契約クリプトラクト』様と共に、ゲームが遊びやすくなるプラットフォームへ成長していけるよう動いています。ユーザーからこのタイトルもAndAppで遊びたいという声はいただいておりますので、これからも対応タイトルを増やしていきたいと思います。
門間: 各パートナー様が開発しやすい環境を整え、サポートをさらに充足させ、皆様のご期待に添えるよう頑張っていきたいと思います。今後、新たなプラットフォームの機能なども開発していこうと思いますので、そういった際に迅速なサポートが行えるようにしていきたいと思います。また、PC化に向けて開発のイメージがつかなかったり、問題点を抱えられているパートナー様につきましても、弊社にもだいぶナレッジが溜まってきましたので、まずはお問い合わせいただければ嬉しいです。
海老原:『幻獣契約クリプトラクト』はスマホゲームから始まったサービスではありますが、大画面で遊んでもクオリティを落とさずにPCならではの良さも感じていただけるサービスになっていると思います。この先も、スマホでもPCでも楽しんでいただける良いコンテンツを作り続けていきたいと思います。
西村:リリース当初はお客様にご迷惑をおかけすることもありましたが、今は対応も進み、多くの方にPCで『幻獣契約クリプトラクト』を遊んでいただけるようになりました。もし、リリース時にプレイできなかった方がおられましたら、この機会にもう一度ダウンロードしていただけると嬉しく思います。
――:本日はありがとうございました。
(取材・文 編集部:山岡広樹)
会社情報
- 会社名
- 株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)
- 設立
- 1999年3月
- 代表者
- 代表取締役会長 南場 智子/代表取締役社長兼CEO 岡村 信悟
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上収益1367億3300万円、営業損益282億7000万円の赤字、税引前損益281億3000万円の赤字、最終損益286億8200万円の赤字(2024年3月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 2432
会社情報
- 会社名
- 株式会社バンク・オブ・イノベーション(BOI)
- 設立
- 2006年1月
- 代表者
- 代表取締役社長 樋口 智裕
- 決算期
- 9月
- 直近業績
- 売上高213億3300万円、営業利益49億円、経常利益49億2000万円、最終利益32億9300万円(2023年9月期)
- 上場区分
- 東証グロース
- 証券コード
- 4393