一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)が、8月30日~9月1日までパシフィコ横浜にて開催した、国内最大のゲーム開発者向けカンファレンス「コンピュータ・エンターテインメント・デベロッパーズ・カンファレンス 2017」(CEDEC 2017)。
本稿では、9月1日に実施された講演「分析業務をブーストするBIツール活用術」についてのレポートをお届けしていく。本セッションでは、株式会社バンダイナムコスタジオのネットワーク統括部分析運営課・竹村伸太郎氏が登壇。分析・可視化に役立つOSSや商用BIツールの選定基準、導入時のメリットなどの紹介が行われた。
▲株式会社バンダイナムコスタジオの技術統括本部・技術本部・ネットワーク統括部・分析運営課の竹村氏。元々は3Dグラフィックスを専門としていたが、転籍のタイミングで心機一転し、大規模データ解析の仕事に従事。データ解析インフラの整備が一段落した今、機械学習の最新技術を会得すべく毎週東大で勉強している。
プレイヤーの行動をどう分析・可視化して運営に繋げるか? この課題に応えるため、企業は蓄積された大量のデータを収集して分析するためのツール「BIツール(ビジネスインテリジェンス・ツール)」を導入している。昨今では個人での利用も見られ、そんな社内外の期待に応えるかのように、以前は有償だったGoogle社提供のBI機能が無償になったり、Airbnb社内製の可視化ツールがOSSになるなど、昨年度を振り返っただけでも激しい動きがあったという。
一方で、ツールの選択肢が増えたが故に「何を選べばいいのか?」という問いに選定基準が定まらず、悩ましい状況に置かれている人もいる。そこで本セッションでは、数10タイトルの運営を支えるKPIポータルを数年にわたり設計・開発・運用する傍ら、この内製サービスだけでは難しい要望に対応すべく、補う形で商用BIツールを評価・導入した経験をもつ竹村氏が、「今、何を選べばいいのか?」というテーマに極力公平な視点で切り込んだ。
本セッションでは、まず竹村氏が「BIツールとは何か」を説明。BIツールは主に「データを誰かに伝えたい」「データから何かを発見したい」という2つの目的を叶えるために使われる傾向にある。クラウド最大手による可視化サービスの台頭、ホスティングや共有を含め、無料のサービスの登場、内製ツールがオープンソースになるケースなどがあり、BIツール市場は近年競争が激化している。その結果、導入の敷居が下がっているため、竹村氏は「費用な運用コストが懸念材料なら、この機会に見直して頂きたい」と語った。
続いて、話題はBIツール導入に至る経緯に。まず内製のデータ解析基盤“GRECO”として開発がスタート。ログ仕様を固め、数10種類のタイトルに対し、共通する指標を単一のWebサービス上で共有した。ここまでは成功していたのだが、やがて内製の限界に直面したという。
▲内製ツールには様々な問題点が付きまとった。
この状況を打破するために、代替ツールの選定を実施。OSS進興勢から「Re:dash」「Superset」、クラウド勢から「Google Data Studio」「Amazon QuickSight」、BIツールから「Microsoft Power BI」「QlikView」「Tableau」を評価対象とし、機能面、予算面など様々な側面から選定を行った。比較表は下記の通り。
▲機能面。
▲予算面。表は同一設定による費用シミュレーション。
「実は一番お伝えしたいのはここから」と竹村氏。「ツール選定の落とし穴」として、モノやカネといった観点からは評価しやすいが、扱うのは機密情報であるため、そこだけに囚われてはいけない。“GRECO”システムの運用で気付かされたこと。それは、システムの重要度が高まるほど、同時に情報統制(観覧権限の管理)やセキュリティに対する要求レベルが上がるということ。また、システムの導入希望タイトルが増えるほど、アウトプットまでの工程がきちんとスケールことが求められることだったという。
ヒトやスピードの視点から評価できているか? セキュアな認証、組織情報に即した認可ができるか? 提携処理の自動化や、分業体制の構築は可能か? など、様々な視点から、バンダイナムコスタジオでは「Power BI」を選定。最大の理由は、バンダイナムコグループのグループウェアとして「Office 365」を採用していたことだったという。Power BIはOffice 365から認証基盤やAD上の社員情報に引き継げるという利点があった。
▲Power BIの選定理由や主観的評価について。
次に、Power BIの機能と具体的なメリットを解説。まずは観覧者と作成者、それぞれの視点で基本的な機能を説明した。
▲観覧者視点(左)と作成者視点(右)。
Power BIはレイアウトやデータモデリングの編集機能を提供している。Excelなどでも可能だが、「売上の月初累計を求めたい」「売上の前月比増減率を求めたい」といった場合はどうするか。Excelの場合、SUMIFS関数などを駆使しなければならず、platform列を加えたいなどの仕様の拡張が困難という問題点もある。また、SQLの場合は、クエリが複雑化したり、DB依存しているためMySQLなど現実困難なものもあるという。
▲SQLの場合。竹村氏曰く、出来はするが簡単とは言い難い。
▲Power BIの場合は、計算内容と対象カラムをマウスで選ぶだけで実現できる。
▲Power BIにはDAXと呼ばれるDSLが用意されており、月初累計であればとても簡素に記述できる。
「Excel使いにとってのBIツール」という内容では、BIツールの利点を発表。1つは、Excel標準機能では難しい計算が簡単にできること。計数報告でよく使う計算は事前に用意されている、BIツールを少し触れるだけで省力化できる、データ間の関連付けも簡単などが挙げられた。2つめは、スキルがインフラに依存しないという点。ビッグデータのインフラはまだ過渡期であり、今あるインフラがずっと使われる保証はない。BIツールも過渡期ではあるが、インフラよりは自分の裁量で決められやすいはずだと語った。
最後のまとめとして、商用BIツールは非常に便利で、無料でできることも多い。しかしながら、本運用時のツール選定には気をつけてほしいと竹村氏。サービスの価値が上がれば求められるものも変化する。予算や機能だけでなく、ヒトやスピードなど、より多面的な評価で選定してほしいと語たった。そして、導入の成果を来年以降のCEDECで発表して欲しいと話し、セッションを締めた。
本稿では、9月1日に実施された講演「分析業務をブーストするBIツール活用術」についてのレポートをお届けしていく。本セッションでは、株式会社バンダイナムコスタジオのネットワーク統括部分析運営課・竹村伸太郎氏が登壇。分析・可視化に役立つOSSや商用BIツールの選定基準、導入時のメリットなどの紹介が行われた。
▲株式会社バンダイナムコスタジオの技術統括本部・技術本部・ネットワーク統括部・分析運営課の竹村氏。元々は3Dグラフィックスを専門としていたが、転籍のタイミングで心機一転し、大規模データ解析の仕事に従事。データ解析インフラの整備が一段落した今、機械学習の最新技術を会得すべく毎週東大で勉強している。
プレイヤーの行動をどう分析・可視化して運営に繋げるか? この課題に応えるため、企業は蓄積された大量のデータを収集して分析するためのツール「BIツール(ビジネスインテリジェンス・ツール)」を導入している。昨今では個人での利用も見られ、そんな社内外の期待に応えるかのように、以前は有償だったGoogle社提供のBI機能が無償になったり、Airbnb社内製の可視化ツールがOSSになるなど、昨年度を振り返っただけでも激しい動きがあったという。
一方で、ツールの選択肢が増えたが故に「何を選べばいいのか?」という問いに選定基準が定まらず、悩ましい状況に置かれている人もいる。そこで本セッションでは、数10タイトルの運営を支えるKPIポータルを数年にわたり設計・開発・運用する傍ら、この内製サービスだけでは難しい要望に対応すべく、補う形で商用BIツールを評価・導入した経験をもつ竹村氏が、「今、何を選べばいいのか?」というテーマに極力公平な視点で切り込んだ。
本セッションでは、まず竹村氏が「BIツールとは何か」を説明。BIツールは主に「データを誰かに伝えたい」「データから何かを発見したい」という2つの目的を叶えるために使われる傾向にある。クラウド最大手による可視化サービスの台頭、ホスティングや共有を含め、無料のサービスの登場、内製ツールがオープンソースになるケースなどがあり、BIツール市場は近年競争が激化している。その結果、導入の敷居が下がっているため、竹村氏は「費用な運用コストが懸念材料なら、この機会に見直して頂きたい」と語った。
続いて、話題はBIツール導入に至る経緯に。まず内製のデータ解析基盤“GRECO”として開発がスタート。ログ仕様を固め、数10種類のタイトルに対し、共通する指標を単一のWebサービス上で共有した。ここまでは成功していたのだが、やがて内製の限界に直面したという。
▲内製ツールには様々な問題点が付きまとった。
この状況を打破するために、代替ツールの選定を実施。OSS進興勢から「Re:dash」「Superset」、クラウド勢から「Google Data Studio」「Amazon QuickSight」、BIツールから「Microsoft Power BI」「QlikView」「Tableau」を評価対象とし、機能面、予算面など様々な側面から選定を行った。比較表は下記の通り。
▲機能面。
▲予算面。表は同一設定による費用シミュレーション。
「実は一番お伝えしたいのはここから」と竹村氏。「ツール選定の落とし穴」として、モノやカネといった観点からは評価しやすいが、扱うのは機密情報であるため、そこだけに囚われてはいけない。“GRECO”システムの運用で気付かされたこと。それは、システムの重要度が高まるほど、同時に情報統制(観覧権限の管理)やセキュリティに対する要求レベルが上がるということ。また、システムの導入希望タイトルが増えるほど、アウトプットまでの工程がきちんとスケールことが求められることだったという。
ヒトやスピードの視点から評価できているか? セキュアな認証、組織情報に即した認可ができるか? 提携処理の自動化や、分業体制の構築は可能か? など、様々な視点から、バンダイナムコスタジオでは「Power BI」を選定。最大の理由は、バンダイナムコグループのグループウェアとして「Office 365」を採用していたことだったという。Power BIはOffice 365から認証基盤やAD上の社員情報に引き継げるという利点があった。
▲Power BIの選定理由や主観的評価について。
次に、Power BIの機能と具体的なメリットを解説。まずは観覧者と作成者、それぞれの視点で基本的な機能を説明した。
▲観覧者視点(左)と作成者視点(右)。
Power BIはレイアウトやデータモデリングの編集機能を提供している。Excelなどでも可能だが、「売上の月初累計を求めたい」「売上の前月比増減率を求めたい」といった場合はどうするか。Excelの場合、SUMIFS関数などを駆使しなければならず、platform列を加えたいなどの仕様の拡張が困難という問題点もある。また、SQLの場合は、クエリが複雑化したり、DB依存しているためMySQLなど現実困難なものもあるという。
▲SQLの場合。竹村氏曰く、出来はするが簡単とは言い難い。
▲Power BIの場合は、計算内容と対象カラムをマウスで選ぶだけで実現できる。
▲Power BIにはDAXと呼ばれるDSLが用意されており、月初累計であればとても簡素に記述できる。
「Excel使いにとってのBIツール」という内容では、BIツールの利点を発表。1つは、Excel標準機能では難しい計算が簡単にできること。計数報告でよく使う計算は事前に用意されている、BIツールを少し触れるだけで省力化できる、データ間の関連付けも簡単などが挙げられた。2つめは、スキルがインフラに依存しないという点。ビッグデータのインフラはまだ過渡期であり、今あるインフラがずっと使われる保証はない。BIツールも過渡期ではあるが、インフラよりは自分の裁量で決められやすいはずだと語った。
最後のまとめとして、商用BIツールは非常に便利で、無料でできることも多い。しかしながら、本運用時のツール選定には気をつけてほしいと竹村氏。サービスの価値が上がれば求められるものも変化する。予算や機能だけでなく、ヒトやスピードなど、より多面的な評価で選定してほしいと語たった。そして、導入の成果を来年以降のCEDECで発表して欲しいと話し、セッションを締めた。
(文・長戸勲)
会社情報
- 会社名
- バンダイナムコスタジオ