【イベントレポート】新清士氏が登壇 「VRでビジネス化が進み始めている最前線」をお届け

GMOアプリクラウドは、11月21日と22日、東京都内にあるGMOYoursにおいて、『ゲームの未来を考える<AI、VR 、AR、e-Sports>~先駆者たちが最先端技術と最新トレンドを語る~ Presented by GMOアプリクラウド』を開催した。

国内のゲーム人口は4000万人を超えたと言われるなか、市場はなお成長を続けており、2016年は過去最高の1兆3801億円を記録している。

本イベントはAI、AR/VR、e-Sportsといった新たなキーワード、ムーブメントも生まれ、ゲーム業界は新たな局面を迎える中、業界の最前線にいる有識者を招いて、現在のゲームを取り巻く環境から未来を見据えていくという内容だ。

22日にセッションでは「VRでビジネス化が進み始めている最前線」というお題で、よむネコ代表取締役、Tokyo VR Startup 取締役でもある 新 清士 氏が登壇し、
現在のVRを俯瞰的に話、未来について話した。

本稿ではそんなイベントレポートを行う。
 

▲新 清士氏

新 清士氏が代表を務める「よむネコ」は今年の3月にgumiのグループ会社となっている。

現在gumiはVRなど仮想空間に特化したインキュベーションプログラムを東京・ソウル・デンマークを拠点とするノルディックという3つのVR Startupsと、アメリカのゲーム会社inXileと、VRゲームを開発するドイツのベンチャーPlaysnakへの投資を行っており、いかにこの領域に力を入れているかがわかる。
 
そんなワールドワイドな環境に身を置く新氏が、現在のVR市場はどう分析している説明した。
 

▲The VR Fundの2017年下半期のカオスマップ エンターテイメント

まずはThe VR Fundのカオスマップだ。市場成長としては、昨年の下半期と比べてエンターテインメント分野への投資が79%アップしている。

その理由の一つとして「PlayStationVR(PS VR)の普及も大きいのではないか」と新氏は見解を述べた。
 

▲昨年発売になったスタリッシュクアクション『RAW DATA』。


▲北米地域などでもベータが開始した『Rec Room』


▲HTC VIVEを買った人は誰もが入れてる?『Google Earth VR』

これらのゲームの売上推移を元に、市場自体は伸びているとし、またハードの販売台数が増えることで更に伸びていくだろうと説明した。

一方でハードウェアの販売台数はどうだろう。PS VRの販売台数が世界で100万台を超え、『Google Earth VR』をベンチマークと見立てるとHTC VIVEが約40万台、ここにOculus Riftを含めて、ハイエンドと呼ばれるVR機器の世界の販売台数はトータルで200万台には届かず、ここにGearVRといったモバイルVRを追加するで200万台を超えるくらいではないかと考えているそうだ。

ただ新氏は「われわれが期待してた程ではなく、もう少し伸びて欲しかった」というのが本音のようだ。

次はVRユーザーに関してだ。VRに慣れてきた北米のユーザーたちは、本格的なVRを求めている傾向にあるという。

北米では先日『The Elder Scrolls V: Skyrim VR』が販売開始、PCやコンシューマーでも大ヒットした『FALLOUT4』、熱狂的なファンを持つFPS『DOOM VFR』といった大作タイトルが販売を控えている。

新氏によれば「これらが売れるかかどうか、どの程度受け入れられるかは今後のVRの市場がどれくらいのペースで伸びるかを支える論拠になる」と言う点からも注目しているとのことだ。

またVRゲームでの移動方法はユーザーへの酔いに影響するため、移動方法がどの程度受けいれられるのか、そもそも受け入れられないかはVRコンテンツを開発するにあたって注目すべき点だろう。
 
 

■安価な一体型HMDの登場、VR市場の今後はどうなる

 
 
次の話題はVR市場が今後どう変化していくかという内容だ。

まずは現在のVRの課題をおさらいとして以下の3つの点を挙げた。

・価格の高さ
・センサー設置などの煩わしさ
・コード

新氏は、「VRハードとしての今の最終的な理想形として、ルームスケール型と呼ばれるVRの中に入り自由に歩き回れること。そしてセンサーやコードがない状態で体験できること」と述べた。今はハードウェアメーカーのどこがやるのかという競争に入っているという。

ルームスケールでのVR体験はできないものの、新氏は、先日発表となった199USドルの一体型VR HMD「Oculus GO」を試すことができたようで、非常に良かったとのこと。

普通のGearVRより綺麗で、液晶も次世代のものになっていたようだ。メガネを付けたままでも装着することができ、HMD自体にスピーカーの内蔵しているんだそう。

新氏曰く、「Oculus GO」は安価なハードを全て駆逐するのでは?と考えているようだ。

その他で注目のハードとして、「Pimax8K」やOculusの一体型VR HMD「Santa Cruz」を挙げていた。特にOculusの「Santa Cruz」に関しては注目しており、ハードウェア内にOSの機能を持たせて、「Oculus Storeで買ったものしか動かないようにしていくのではないか?」と見解を述べた。
 

というのも、今はOSの囲い込み競争が始まろうとしている前夜という位置付けでも市場を見ているからだ。

具体的には、今後VR HMDにOSも提供していくことで、Facebookの強みを活かして、ワンステップでソフトが広がるようにする。これによってAppleやGoogleからの脱却を狙っているのではないかと分析していた。

またMicrosoftは同社のOSである「Windows10」のなかでMR(VR)の機能を組み込んでいる。

一体型のVRデバイスが普及し、その機能する新たなプラットフォーマーの主導権争いという点でも注目したい点だ。
 

■店舗でVRゲームを運営してわかったユーザーの求める内容とは




よむネコが、リリースしたVRアドベンチャー『エニグマスフィア』は大阪の「HEP FIVE」にあるジョイポリスで運営している。

新氏によると「おっさんがいると違和感極まりない、日本で一番プリクラを売るような店舗」でコードだらけのVRが受けいれられるかは懐疑的だったようだ。

そんなキラキラ度合いの高い場所において、『エニグマスフィア』はいい結果が出たという。体験者の4割は女性でだったそうだ。

更に店舗での運営を行っていく中でわかったのは、ハードを買う層と店舗で遊ぶ層が確実に違うこともわかったという。

VRのハードはほぼ男性が買っているが、店舗での体験はUSJのようなテーマパークとして扱っている点が大きいのではないかというのが、その見解だ。
 

■VRユーザーの層とそのニーズとは




現在のVRユーザーは2つの層に別れているため、まずどちらに向けてアプローチするか考える必要がある。ゲームでは特に気にしなければならないという。

1つはコアゲーマー向けのニーズ。VRの購入者、個人ゲーマーは今本格的なゲームを望んでいる。その一方でキャラクターを使ったVRのニーズはあるものの日本特有の現象で海外ではあまり見ない状況だ。

現在日本ではキャラクターVR方面に偏り始めており、世界展開しにくいという懸念があるようだ。

その一方でライトユーザー向けのニーズについてはVRを体験したい人層はまだおり、今後は店舗型も地方へ広がっていくようになるため、リピーターをどう確保していくかがポイントになるという。
 

最後に新氏は、VR上で"ガチ"なRPGを開発中で、仲間も募集中とのこと。その内容はTwitter上でじょじょに公開していくとのことなので気になる人はチェックしてみよう。