【イベントレポート】サーバー系トラブルは一切なし!? 「Virtual Cast」開発インフィニットループ山口氏とモノビット安田氏が語るモノビットエンジンの利点とは
2018年7月13日、東京・秋葉原UDX GALLERY NEXT THEATERで開催したアプリ・ゲーム業界向け開発&運営ソリューション総合イベント「Game Tools & Middleware Forum」(GTMF)において、セッション「VRライブ・コミュニケーションサービス「バーチャルキャスト」でのモノビットエンジンの採用事例と最新情報」が行われた。
登壇したのは、モノビットミドルウェア事業部部長 安田 京人氏とインフィニットループ 第四分室 仮想室 室長 山口 直樹氏で、VRライブ・コミュニケーションサービス「バーチャルキャスト」で利用しているモノビットエンジンについて語った。
■ボイスチャットは簡単に実装できる
▲モノビットミドルウェア事業部部長 安田 京人氏
まず最初に登壇した安田氏は、モノビットエンジンVer2.0について説明した。同エンジンは、スマートフォンや家庭用ゲーム、そしてVRを含めた非ゲーム系で、マルチプレイや他者とのコミュニケーションが必要な際に簡単に実現できるリアルタイム通信のミドルウェアとなる。
なかでも今回の話のメインとなるのが「VR Voice Chat2.0」で、「Monobit Unity Netwoking 2.0」のアドオンのような形となる。機能としてはUnityでボイスチャット機能を簡単に実現できるというもの。「Monobit Unity Networking 2.0」と「VR Voice Chat2.0」に関してはゲーム以外にも利用されており、サン電子のARグラス『AceReal』にも採用実績がある。
「VR Voice Chat2.0」の実装は非常に簡単だと安田氏は言う。Unityでの開発は多くのオブジェクトを作成することになる。しかし同ミドルウェアでは、ボイスチャットをしたいオブジェクトにモノビットボイスというコンポーネントを追加するだけで完了する。また機能としても充実しており、例えば無音検知機能では会話時のノイズやキーボードの打鍵音の排除、ハウリングの防止といったことが可能で、非常に快適なボイスチャットができるようになるという。
またマルチキャスト配信機能においては、特定のプレイヤーに対して自身の音声の送信可否を設定できる。しかも、その音声の範囲においても細かな設定が可能になる。対戦ゲームの場合ブリーフィングは全員に、戦闘中は自分のチームにだけ音声を公開するといったことも可能だという。
▲遅延音声のカットやボイスチェンジャー機能搭載している。
なお、現在「VR Voice Chat2.0」はPCとスマートフォンとPlayStationVRには対応していないが、2018年冬から来年を目処に対応する予定とのこと。安田氏は、UnityNetworking互換APIを使って開発しているタイトルについても、別APIからの置き換えは1日で完了できるとし、モノビットの公式サイトから実際にダウンロードして使ってほしいと呼びかけていた。
続いて登壇したのは、インフィニットループ 第四分室 仮想室 室長 山口 直樹氏だ(顔出しはNGとのこと)。ドワンゴとの共同開発となったVtuber配信機能「VirtualCast」で利用した技術の紹介とその利点を語った。
まず最初に山口氏が取り上げたのが「VRM」に関してだ。VRMはオープンソースと公開中のドワンゴが提唱したアバアーに特化したプラットフォーム非依存のファイル形式で、環境による異なるスケールや座標を統一し、アバターを作りやすく、また使いやすくしている。その思想はプラットフォームをまたいで使えるようにすることを目指していると説明していた。
3Dのキャラはモデルによって座標が統一されていないと、同じスクリプトを使用した際に違う動きになってしまう。キャラクターごとにスクリプトを組むことは非常に労力もかかるため、合理的とは言いにくい状況になってしまう。だが、このVRMを利用することで統一した制御をすることができる。また座標を統一するためだけにVRMを利用するというのもありなのでは?と山口氏が裏技的な利用方法を話していた。
また筆者として非常に興味深かったのは、アバターの人格に関する許諾に関してだ。以前キャラの利用においては、テキスファイルとして同梱することがほとんどだったが、VRMに関しては上記の画像のように、プログラム内で製作者が意図した利用を定義することができるようになっていた。
▲またピクシブのRoidにも対応している。
続いて取り上げた技術は「Monobit Unity Networking 2.0」と「VR Voice Chat2.0」となる。山口氏が、モノビットエンジンを採用した理由としてまず挙げたのは、LINUXサーバが利用でき自社での高い環境だという。インフィニットループはLinuxサーバの構築を非常に得意としておりその点は採用の理由として非常に大きかったそうだ。また値段の安さやそれに対してのコストパフォーマンスという点でも他社の競合他社に比べて優れていたと山口氏は語っていた。
「VirtualCast」はクライアント側の話題がどうしても目立つが、インフィニットループの本業とも言えるサーバ側の対応にもかなり力を入れているという。
▲自社でサーバ構築できる利点
▲さらに詳しい内容がこちら。真ん中がエラスティッキャッシュ。キャッシュデータがAPIサーバが見て軽い・重いを判断しサーバに振り分けを行なっている。
▲サーバーが増えてもクライアントから見れば一つの大きなサーバとして扱える。R18の部屋を作ることも可能とか。
▲M4からM5にしたらパフォーマンスが劇的に変わった。値段との相談もあるが、状況によっては「M5一択でやるべきでは?」と山口氏。
では導入しての悪い点はなかったのだろうか。山口氏はセッションで問題点を2点を挙げていた。
まず1点目はナレッジが少ないことだ。モノビットエンジンで気になる点があり、調査・検索をすると大抵他社の競合エンジンのリファレンスが出ることが悩みだという。この点についてはみんなで利用してナレッジを増やそうと山口氏は呼びかけていた。
2点目は、PSVRに対応していないことだ。山口氏はユーザーからVirtualCastのPSVR版リリースについて聞かれることあるが、リリースできない理由の一つとして挙げていた。ただし先に登壇した安田氏が今後のPSVR対応に関して触れていたので、もうしばらくお待ちをということになりそうだ。
ただそれらの点を踏まえても導入のメリットは非常に大きかったようで、山口氏はモノビットのサポート対応の良さと、サーバー系のトラブルが一切なかったことを強く挙げていた。気になる点があった際に、モノビットへ問い合わせると次の日には回答が来ること、そして何よりも日本語でのやりとりという安心感が大きかったそうだ。
トラブルに関しても4月13日の「VirtualCast」のサービス開始からサーバー系のトラブルが一切なかったと説明していた。サービス運営を行うにあたっては非常にこころ強い理由になるだろう。最後に山口氏は今後のVirtualCastの今後の予定を話してセッションを締めくくった。
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会社情報
- 会社名
- monoAI technology株式会社
- 設立
- 2013年1月
- 代表者
- 代表取締役社長 本城 嘉太郎
- 決算期
- 12月
- 上場区分
- 東証グロース
- 証券コード
- 5240