HatchUPは、7月21日、セミナーイベント「Social Top Runners vo.14東京」を東京都渋谷区にあるセルリアンタワーで開催した。GMOインターネットが後援。このイベントは、「ソーシャルアプリ・ソーシャルメディア市場におけるトップ企業を紹介することで、優れた技術者やクリエイターの市場参加促進が狙い」。今回は、gumiの国光 宏尚 氏の講演の模様をレポートしておこう。1ヶ月も経過してしまったが、今読んでも興味深い内容になっているのでぜひ一読していただきたい。
セミナーの冒頭、国光氏は、国内のソーシャルゲーム業界について、引き続き成長市場であり、今後も大きな成長が見込まれる市場であることを示した。三菱UFJモルガン・スタンレー証券による調査によると、2010年のソーシャルゲームの市場規模は前年比30%増の1071億円、2011年は50%増の2134億円、2013年は3048億円規模に達する見込みだ。
ソーシャルゲーム市場の伸び方も早い。2011年の市場規模は、映画産業が60年かかって形成した市場規模(2000億円)に匹敵し、2013年以降は家庭用ゲーム業界が約25年かけて達成した市場規模(3000億円)に匹敵する。また、利益ベースで見ると、流通やパッケージ制作などが介在しないため、ソーシャルゲームの方が大きくなっているとのこと。時価総額でも同様の状況にある。
しかし、日本のソーシャルゲーム市場は現在、タイトル数が急速に増加して飽和状態にある。いわゆるレッドオーシャンだ。こうした状況にも関わらず、ソーシャルゲームのリリースは減っていないが、国光氏は「業界の現状が理解されていないのか、リリースしたゲームの90%は即死」する状況にあるという。
そんななか、強いSAPは、ますます力を付けていると語る。現在、「GREE」はgumiを含む4強であり、「Mobage」は3強にあるなど寡占状態にあるが、勝ち残っている企業の共通点は、レッドオーシャンといわれているなかでも勇気を出して攻め続けている点にあると指摘している。
それでは、国内のスマートフォン向けはどうか。これについて「ほぼ勝負が付いている」。かつて「スマホの特徴を活かしたコンテンツが伸びる」といわれた時期があったが、上位SAPでこの話を信じている人はいないという。この議論で欠落していたのは「誰がスマホでソーシャルゲームを遊ぶのか」という視点だ。フィーチャフォンで「Mobage」や「GREE」で遊んでいた人は、端末のOSがAndroidやiOSに変わっただけで、スマートフォンでも同じ使い方をしている。ふたを開けてみたら実にシンプルだったというのだ。
次に、gumiの会社概要と、国光氏のキャリアが紹介された。残念ながら時間の関係上、開発体制や特徴については説明が割愛されてしまったが、個人的に興味深かったのは、国光氏が前職で映像制作やプロデュース業務を行っていたことだ。gumiのソーシャルゲームは、ゲームだけでなく、Flashの演出が他に比べてレベルが高く、違った体験が得られると思っていたのだが、この点に氏の経験とセンスが活かされているのでは、と感じた。
gumiは創業後、携帯電話向けSNSを運営し、mixiよりも早くオープン化していたという。ここで運営されていたソーシャルゲームが「GREE」などでヒットすることになった。現在、メインとなっているのは「任侠道」、「さんごくっ!」、「デュエルサマナー」などで、いずれも好調な運営成績となっている。さらに「海賊道」や「デュエル英雄譚」、「デュエルインワンダーランド」といった新作も既存タイトル以上に順調のようだ。売上や利益も非常に伸びている。
今後については、世界展開を行っていくことを明らかにした。国光氏は、日本のソーシャルゲームやモバイルゲームは、国内で考えられている以上にレベルが高いという。現在、アメリカのモバイルゲームの状況は、日本のほぼ1年遅れで、いまが一番攻め時であると強調した。日本のベンチャーは、ガラパゴスな仕様や資金調達の面で劣勢だったが、スマートフォンという共通な仕様になったことで大きなチャンスが生まれている。
最後に日本のIT業界について、ここ1年で技術者間の給与格差が破壊的に広がっていると指摘している。製造業などと異なり、売上が倍になってもコストがそれほど変わらないネットビジネスが生まれている。そういう価値を生み出すエンジニアは毎月、200万円、300万円もらえる一方、受託ビジネスは新興国との競争に晒され、人月単価が下がっている。価値のある仕事のできる人の給与は今後も上がっていくとし、転職を考えている人はぜひgumiに応募してほしいと呼びかけた。
■関連サイト
SocialTopRunner
gumi採用ページ
会社情報
- 会社名
- 株式会社gumi
- 設立
- 2007年6月
- 代表者
- 川本 寛之
- 決算期
- 4月
- 直近業績
- 売上高120億6600万、営業損益50億4000万円の赤字、経常損益45億1400万円の赤字、最終損益59億3400万円の赤字(2024年4月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 3903