【インタビュー】マーケティングプラットフォーム「Repro」が生んだ『グランドサマナーズ』の変化 ― キーマンが語るアプリ内マーケティングのインパクト
NextNinjaが開発を行う『グランドサマナーズ』は、直感操作で爽快なアクションバトルが楽しめるスマートフォン向けドットRPG。2016年12月に配信を開始し、約2年間で根強いファンの獲得に成功してきたタイトルだ。
そんな『グラサマ』の成功を影で支えているのが「Repro」だ。モバイルアプリの分析・マーケティングツールの提供を事業の軸に、アプリ/Webビジネスの成長に必要なすべてのサービスを提供するマーケティングプラットフォームとして、今後多くのゲームタイトルでの活躍が期待されるツールである。
今回は、NextNinja代表であり『グラサマ』のプロデューサー・山岸聖幸氏(写真左)とRepro株式会社でゲーム市場での事業開発を担当する重崎竜一氏(写真右)にインタビューを行った。「Repro」が『グラサマ』内でどのように動き、どんな成果を上げているのか。ゲームをプレイしただけでは見えない実情に迫った。
■「Repro」は増え続ける広告費の打開策
――まずはお二人がどんな業務に携わっているか教えてください。
山岸氏(以下、山岸):NextNinja代表の山岸です。弊社では『グランドサマナーズ』というゲームの開発、運営をしており、そのすべてが自社で完結しているのが特徴ですね。企画と開発、運用だけでなく、プロモーションも一気通貫で行っています。加えて海外35カ国へも、会社がある西五反田でローカライズし、配信しています。ちなみに、海外版にも「Repro」を導入しています。
重崎氏(以下、重崎):Repro株式会社の重崎と申します。私どもはマーケティングツール「Repro」を開発・提供しています。世の中には高機能ではあるけれど使いこなせないツールが多々あると思います。我々はツール屋で終わらずに、KPIを伸ばしていただくための運用、マーケティングシナリオの部分を強くサポートできるような体制を築いています。私の担当領域はゲーム市場における事業開発です。既存のツール提供にとどまらず、マーケットの課題・ニーズに合わせたプロダクト開発・提供にも関わっています。
――昨今のスマートフォンゲーム市場についてはどのように見ていますか?
山岸:今このタイミングに限ってみれば、厳しい市場になっていると感じます。大手メーカーでも売上が横ばいなのに対して、広告費は上がり続けている。このままだと、いずれ広告費が上回ってしまいます。広告の費用対効果はまっさきに考えるべき課題と言えます。
その要因はゲームが増えすぎたこと、そして中国勢が莫大な広告費で勝負していることだと見ています。もともと大変だったのに拍車をかけて、負のサイクルが出来上がってしまったのが現状ですね。
――そんな状況に対してNextNinjaさんはどのように対応しているのでしょう。
山岸:もちろん「Repro」を導入したことは大きいです。「Repro」のおかげで『グランドサマナーズ』は毎年のようにKPIが上がっています。私たちもKPIを上げるために細かい改善を日夜行っていて、課題発見から解決のアプローチまで一気通貫で実現できるのは「Repro」あってこそというわけです。
――重崎さんは、マーケティングの市場をどのように見ているのか教えてもらえますか。
重崎:高度化、複雑化している印象です。マーケティング手法自体は増加しているものの、肝心の全体設計をできている事業者や代理店側が少ない気がしますね。私たちは一見ツール屋に見えますが、本質的には課題解決のためにアプリ内外のマーケティング設計も支援できることを強みとし、今後より一層そうしたポジショニングを心がけたいと考えています。
――『グランドサマナーズ』は、「Repro」導入以前はどのようなマーケティングを行っていたのでしょうか。
山岸:もう考えつく限りの打ち手はやり尽くしたんですよ。ゲーム内外でいろんなことをやって、これ以上数字を上げることが難しいなという壁にぶつかっていました。特にゲームの中で、ユーザの方をセグメントして、適切なコミュニケーションを取る。具体的にはプッシュ通知とアプリ内メッセージの施策をどうするか、という部分が改善できていませんでした。
▲Reproはアプリ内マーケティングのソリューション
――そんなときに、ちょうど「Repro」と出会ったと。
山岸:以前平田さん(Repro株式会社CEO・平田祐介氏)がB Dash Campのプレゼンで賞をとったことがあり、私もそれを見ていたんです。そのときの話が強烈で、その後代理店さん経由であらためて紹介してもらいました。代理店さんからは「リテンション広告に取り組まれるのであれば、予算の一部をReproに充てた方が良いのではないか」と提案されましたね。
以前使っていたのは、リエンゲージメント広告のプラットフォームでしたが、「Repro」であればそこで使うお金を削減できるよと。実際にReproさんのお話を聞いていると、リテンションだけでなく、マーケティングツールとして細かなことがゲーム内でできるということで導入しました。
重崎:もちろんリエンゲージメント広告出稿もリテンション改善に有効ですが、ユーザーの皆さんが休眠する前にゲームに定着していただくことがより重要です。
アプリ内でユーザーの方のプレイ継続を阻害する要因がある時、アプリ内で対策が実行できユーザー体験としても良いものになればそれに越したことはありませんから。それでも休眠してしまうユーザーの皆さんに対してはリエンゲージメント広告出稿も効果的でしょう。
――ユーザー体験を踏まえたマーケティングシナリオの組み立てが「Repro」の強みであると。
重崎:そうですね。世の中にはさまざまな分析ツールやマーケティングツールがあるものの、事業者様が課題解決するためにはツール提供だけではなく、設計と実行のサポートが肝となります。ユーザーさんの体験をどうしたら改善できるか、どんな道筋が考えられるかを想定できるかを導入時点で設計できるのが強みです。
また、ツールとしての強みは非エンジニアでも活用しやすい点です。一度導入してしまえば、アプリ内マーケティング施策を行う際のエンジニア工数は一切不要です。マーケターや運用担当者が管理画面上でセグメント抽出を簡単にでき、課題発見後の対策をすぐに実行できるのです。
▲Reproの管理画面上で簡単にセグメントが可能
山岸:同時に外資系のツールと比較すると細かなサポートにも対応してくれるのもありがたいですよね。海外のツールにも近しい機能はあるものの、やはり日本発の「Repro」のほうが安心感があります。
――「Repro」を介して行った施策の中で、印象的なものはありますか?
山岸:無料ガチャを忘れる人にアプリ内メッセージで知らせる機能は積極的に使っています。『グラサマ』は毎日無料ガチャが回せるんですけど、これが結構忘れられてしまうんですよ。そのため「アクティブに利用しているが直近で無料宝具召喚を行っていないユーザーの方」をセグメントして「忘れてない?」とアプリ内メッセージを配信し、大きな成果につながりました。
他にも、セグメント設計を行ったうえで実施したプッシュ通知は印象的でした。「チュートリアルを突破していないユーザーの方」「チュートリアルは突破したがプレイヤーランクが3以下のユーザの方 」「武具強化を行っているが、限界突破を行っていないユーザーの方」などにセグメントを分けユーザーの皆さんごとに配信内容を打ち分けたところ、継続率に大きな改善が見られました。
あたりまえのことですが、ユーザーの皆さんの状態毎に刺さるメッセージは異なるため、全配信ではなくセグメント配信をしているのです。グラサマではこのような施策を50以上は回しています。
▲ユーザーの方の状態に応じて50以上のマーケティングシナリオを配信
――導入はスムーズに行えましたか?
山岸:実はReproのツール機能は魅力的でしたが、イベント設計や実装が不安でした。しかし、キックオフ時にReproのカスタマーサクセス担当から設計書をご提案いただいたとき、まず思ったのが「ソーシャルゲームの運用者が設計したな」ということでした。
ソーシャルゲームがほしいトリガーポイントがたくさんあって、運用にあたって気にすることが網羅されていました。例えばユーザーさんが何回、どんな行動をしたかなどが分かるんです。そしてReproさんからは、「どこから導入していきましょうか」というお話をしていただいて、こちらとしてもとても分かりやすく話を進めることが可能でした。
重崎:導入に関してはカスタマーサクセスチームと連携して、ヒヤリングで出てきた課題や、やりたいことを解決できる初期設計を提案できるよう心がけています。また今後もゲーム事業者の方が使いやすくなるように、ゲーム業界特化のアップデートを行う計画を考えているところです。
山岸:本当に丁寧に対応してくれて助かりました。問い合わせに対するレスポンスも早く、なおかつ正確ですし。
重崎:サポートの早さは私たちも意識しているところなので、そう言っていただけると嬉しいです(笑)。カスタマーサクセスチームは採用、育成ともに強化している部分で、今後多くのゲームタイトルで採用されてもスピード感を維持できるよう頑張りたいです。
■デジタルマーケティングはまだまだ伸びしろがある
――そもそも「Repro」はどんなゲームに合っていると考えていますか?
重崎:どちらかというと、なにをすればいいかちょっと迷ってしまうようなゲームとの相性はいいです。そういう意味ではソーシャルゲームって、ライトユーザーの方は次に何をすればいいかわからなくなるケースがありますし、そこで「Repro」を介してコミュニケーションして上手く誘導できると思います。
山岸:『グラサマ』はまさにそのひとつですよね。キャラクターユニットと装備があって、進化、限界突破、覚醒とさまざまな強化方法が存在します。それらを最初から理解させるのではなく、「Repro」の通知で上手に説明してもらうことでユーザーの皆さんを導けるのです。
――『グラサマ』と「Repro」、それぞれ現状の課題があれば教えてください。
山岸:ゲーム内KPIは順調に上がってきていますが、ここからさらに上げることができるのか、という点は見えない部分であり、課題と言っていいと思います。ほかのゲームを比較してもKPIは良いのですが、より上を目指すにはどうするべきか、これから考えなければいけないところです。ゲーム外での課題だと、効率を維持したままユーザー獲得を伸ばさなければいけません。3月15日(金)からは「グラサマアートギャラリー」を開催しますが、このようなリアルイベントや、ゲーム外広告を通じて楽しんでもらえるよう注力する必要があると考えています。
重崎:弊社はゲームに限らずECやマッチング、コミックといったたくさんのジャンルにソリューションを提供してきました。各業界に特化したシステムを作ることで役に立てる幅を広げてきた歴史がありますし、それをゲーム市場でもやっていきたいですね。これは2019年の大きなテーマであり、「Repro」がより多くの人に認知されるチャンスがあると思います。
――最後に、読者へ向けてのメッセージをお願いします。
山岸:『グラサマ』の成功事例は特殊だと思います。2年間運用してKPIが上がり続けたり、2年経過した今が一番ユーザー数が多かったり、このような例はあまり聞きません。これは「Repro」が大きく影響しています。
現在のスマートフォンゲームは、リリースしたばかりのころは好調でも、数ヶ月経つと徐々に勢いは衰え、獲得単価もあがっていきます。CPIがLTV(※Life Time Valueの略)に届くまでに、安定した運営に到達するかのチキンレースみたいなところがあります。
それか大手メーカーのように、利益が得られることを信じて大規模なプロモーションを投下するかの二択です。大手メーカーの真似ができない私たちのような会社は大変ですけど、「Repro」にはそのヒントがあります。特に現状苦しくて、改善したいと考えているアプリには有用だと思います。
――『グラサマ』の今後についても、考えを聞かせてもらえますか。
山岸:まずは「グラサマアートギャラリー」というゲーム外でのイベントを行いますので、ファンの方にはぜひ足を運んでいただきたいです。また国内、海外の双方で配信しており、その幅をより広げていきたいです。海外にもガンガン攻めていきますので、期待して見守ってもらえると嬉しいです。
――では重崎さんからも、読者へ向けてのメッセージをお願いします。
重崎:ゲームのデジタルマーケティングは、獲得の面だと頭打ちだと言われていますが、まだまだ伸びしろがあると考えており、それがまさにアプリ内マーケティングです。弊社ではゲーム業界に特化したソリューションを開発、提供できることを目標に動いています。課題はまだまだありますが、さまざまな会社さんと一緒に解決していけたらとおもいます。
山岸:ソリューションができたら、まっさきに僕に話してくださいね!
重崎:ぜひ(笑)。お客様からのフィードバックはとても貴重ですし、『グラサマ』さんのお力も借りつつ頑張っていきたいです。
――ありがとうございました。
なお、Repro株式会社では、4月16日(火)で開催される、Next Marketing Sumit 2019にて登壇を予定している。セッションタイトルは「着目すべきは“定着”。継続成長の秘訣はアプリ内マーケティングにあり!」。
本セッションでは、アプリ内マーケティングについて実際に成果が出た施策の事例とReproのノウハウが詰まったワークショップを通じてユーザー獲得後の定着や利用促進に関する課題解決のきっかけを提供する。
当日参加は事前申し込みとのこと。その他の詳細については、下記サイトを確認してほしい。
▼▼▼お申し込みはこちらから▼▼▼
グランドサマナーズ2周年を記念して、3月15日(金)〜3月17日(日)までアキバCOギャラリーにて「グランドサマナーズ2周年記念アートギャラリー」を開催する予定だ。入場記念として日替わりで缶バッチを配布するなど盛りだくさんの内容となっている。
■『グランドサマナーズ』
© GOOD SMILE COMPANY, Inc.
© NextNinja Co.,Ltd.