【Sp!cemartゲームアプリ調査隊】流入から定着まで繋げた7つの施策…大ヒット中の『FFBE 幻影戦争』、事前登録からリリース直後の施策を総まとめ


スマートフォンゲームの日々の運用とその効果をリサーチし、ゲーム関連企業へマーケティングデータを提供するSp!cemart(スパイスマート)。ゲームアプリの運用情報をいつでもウォッチできる「Sp!cemartカレンダー」や、毎月発行しているレポートを提供している。
 

なかでもカレンダーは、セールスランキング上位のモバイルオンラインゲームのゲームシステム・運用施策をダッシュボード形式のWEBツールとして提供。ゲーム内プロモーション施策の効果測定やセールスランキングと運用効果の相関関係を時系列で分析できる。
 
本連載記事ではSp!cemart協力のもと、カレンダー機能を用いた、ランキング上位タイトルの直近のゲーム内施策を分析。今回はWAR OF THE VISIONS ファイナルファンタジー ブレイブエクスヴィアス 幻影戦争(以下、FFBE 幻影戦争)』をピックアップする。


 

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(以下、Sp!cemartゲームアプリ調査隊より) 

■名作SRPGを彷彿とせる事前登録施策が奏功か


 
■『WAR OF THE VISIONS ファイナルファンタジー ブレイブエクスヴィアス 幻影戦争』
提供:スクウェア・エニックス(開発:gumi)
リリース日:2019年11月14日

 
本作は、「ファイナルファンタジー(FF)」シリーズのスマートフォン向けタクティカルRPG最新作です。同ジャンルのFFシリーズといえば、1997年6月にプレイステーション用ソフトとして発売された『ファイナルファンタジータクティクス(以下、FFタクティクス)』が挙げられるのではないでしょうか。
 
『FFタクティクス』は、国家間の問題や貧富の差が題材の社会派ストーリー、そして戦略性が求められるシミュレーションバトルなどが高く評価され、国内100万本以上の販売本数を記録する大ヒットになりました。ナンバリングタイトルならまだしも、外伝的な位置づけの強い作品のため異例のヒットでもありました。
 
『FFBE 幻影戦争』の初出は2018年12月3日にティザーサイト公開と共に発表されました。その後、2019年6月10日に事前登録受付を開始し、最終的に登録者数は100万人を突破。事前登録のタイミングでゲーム画像やシステムを公開したほか、報酬の目玉としてSSRユニット「ヤ・シュトラ(FFXIV: 漆黒のヴィランズの人気キャラクター)」を据えるなど、話題性を集めました。
 
<事前登録特典>
・10万突破:幻導石250個、ギルガメ(大)×20個
・20万突破:幻導石250個、体力回復薬(大)×5個
・30万突破:幻導石250個、武具【エクスカリバー】
・40万突破:幻導石250個、召喚獣【セイレーン】
・50万突破:幻導石250個、ユニット SSR【ヤ・シュトラ(FFXIV)】

 
以降、事前登録の突破状況をプレスリリースで発信したり、Twitterキャンペーンを通した出演声優のサイン色紙プレゼントで拡散にも努めていました。なかでもリリース前に実施された公式生放送では『FFタクティクス』のコラボを発表し、さらなる注目を集めました。
 
【リリース前の主な流れ】
■ 2018年12月8日に初出。ティザーサイト・PVを公開
■ 2019年6月10日に事前登録受付開始(FFXIV: 漆黒のヴィランズコラボ発表)
■ 事前登録期間中に声優のサイン色紙プレゼントのSNSキャンペーン実施
■ プレスリリースを通して事前登録状況や新PV・情報などを発信
■ 2019年11月11日に公式生放送(FFタクティクスコラボ発表)
■ 2019年11月14日に正式リリース

 
ゲーム本来の期待値の高さはもとより、『FFBE 幻影戦争』の世界観やシステムなどに縁(ゆかり)のある歴代FFシリーズからのキャラクター参戦(コラボ発表)は、往年のファンの心を掴んだことも考えられます。結果、リリース後は早々にApp Store(ゲームカテゴリー)の無料ダウンロードランキングで1位、セールスランキングは最高7位を記録し、現在もTOP20圏内をキープしています。
 
ヒットの要因をFFというゲームIPの知名度だけで決して済ませてはならず、当然開発を担当したgumi社によるノウハウも重要な要素となります。
 
これまで『ファントム オブ キル(以下、ファンキル)』(縦画面)や『誰ガ為のアルケミスト』(横画面)など、スマートフォン向けシミュレーションRPGでスマッシュヒットを記録したgumi社。
 
『ファンキル』は5年前にリリースされましたが、まだ当時の市場ではスマホ向けシミュレーションRPGのヒット作があまり出ていなかった時期でした。しかし、『ファンキル』では最適化したUIやゲームデザインを作り上げ、一躍スマホ向けシミュレーションRPGのヒットメーカーとなりました。
 
他方、『FFBE』シリーズはgumiの子会社エイリムが開発を担当するなど、全社的にも親和性が高いIP、ジャンル、世界観を兼ね備えているのも開発体制における強みのひとつかもしれません。
 
ここからは、『FFBE 幻影戦争』のマネタイズやゲーム概要はもとより、直近におけるランキング推移と施策について、「Sp!cemartカレンダー」で覗いてみましょう。
 

■VIPシステムも搭載したマネタイズ面

 
 
本作のバトルシステムは、一般的なシミュレーションRPGのそれですが、細かいところで『FFタクティクス』の仕様や演出を踏襲しているのが特徴的です。
 
高低差のあるタクティカルバトルはもちろん、アビリティ使用時のチャージ時間、倒れたユニットが3ターン経過後にクリスタル(または宝箱)に変化、アビリティ発動前の格好いい台詞(詠唱)など、過去シリーズを遊んだことのある人こそ、随所に散りばめられた“FFタクティクスらしさ”に目を奪われたのではないでしょうか。
 
 
当然、シミュレーションRPGの初心者、快適なゲームプレイを促進させるために、「オートモード」と「倍速モード(※後述)」を搭載しています。そのほか、キャラクター特有の必殺技「リミットバースト」など、爽快感のあるプレイが楽しめます。
 
細かいゲームシステムに関しては、Social Game Infoの先行レビュー記事や上部の動画をご覧ください。
 
■関連記事
【レビュー】スクエニ、期待の大作『WAR OF THE VISIONS FFBE 幻影戦争』…先行プレイで見えてきたタクティカルRPGの神髄に迫る!
 
本作の主なマネタイズは、有償アイテムの幻導石の販売です。幻導石は召喚(ガチャ)や特定アイテムの購入などに使用します。幻導石のラインナップは以下の通り。
 
【幻導石のラインナップ】
・幻導石60個(120円)
・幻導石305個(610円)
・幻導石490個(980円)
・幻導石800個+おまけ100個(1,600円)
・幻導石1470個+おまけ200個(2,940円)
・幻導石2450個+おまけ400個(4,900円)
・幻導石5000個+おまけ900個(10,000円)

 
ガチャでは、バトルに参加するユニットと、装備品としての役目を持つビジョンカードの2種類が排出されます。ガチャは、1回で幻導石200個(400円相当)、10連が2000個(4,000円相当)必要です。なお、1日1回限定で有償の幻導石50個で引くこともできます。
 
そのほかマネタイズ面では「ロイヤル」という、いわゆるVIPシステムを搭載しています。このロイヤルでは、幻導石の購入数に応じて、累計ログインボーナスにアイテムが追加されたり、体力回復の回数が増えたりと、段階(ロイヤルランク)に応じてさまざまな恩恵が得られるのが特徴です。
 
なかでも最初のロイヤルランク1の恩恵には、バトルスピードの倍速機能1.5倍が解放されます。ロイヤルランク1に必要な購入個数は300個ほどで小額ですが、多くのユーザーがバトルをスムーズに進めたいという考えから、該当個数分の幻導石を購入し、言わば課金ハードルを著しく下げるキッカケになっているとうかがえます。なお、倍速機能2倍はロイヤルランク8で解放されます。
 
 

■売上ランキングTOP10入り。リリース直後の施策まとめ

 
『FFBE 幻影戦争』【調査期間:2019年11月14日~11月25日】

 
Sp!cemartカレンダーでは、リリースから現在までのランキング推移として、2019年11月14日(木)~11月25日(月)を抜粋しました。ランキング推移は、先ほど言及したように無料・セールス共に高い順位を記録しているのが分かります。カレンダー上では、“リリースのタイミングにどのような施策を展開していたのか”にフォーカスをあてていきます。
 
【リリース直後の主な施策】
・リリース記念ログインボーナス(12月1日04:59まで)
・リリース記念クエスト(11月30日23:59まで)
・リリース記念URユニット1体確定10連召喚(11月30日23:59まで)
・リリース記念URビジョンカード1枚確定10連召喚(11月30日23:59まで)
・友だち招待キャンペーン(11月30日23:59まで)
・『FFXIV: 漆黒のヴィランズ』コラボ施策(11月30日23:59まで)
・事前登録者数100万人突破の報酬プレゼント(2020年1月31日23:59まで)

 
大きく分けて7つの施策を展開していました。リリース記念のログインボーナスやクエスト、報酬プレゼントは新規定着のキッカケにつながるほか、事前登録段階から話題を集めていた『FFXIV: 漆黒のヴィランズ』のコラボ施策も配信開始時から体験することができました。
 
リリース後は、早々にセールスランキングでTOP10入りを果たしましたが、その要因は前述している「リリース記念URユニット(ビジョンカード)1体確定の10連召喚」、つまりはふたつのガチャ施策となります。
 
 
それぞれ実施回数は1回、かつ有償の幻導石が2000個必要となります。ユニット、ビジョンカードの双方のリリース記念召喚を実施すると、有償の幻導石が4000個必要となり、単純計算で8,000円相当の課金につながります。
 
とはいえ、最高レアリティであるURのユニット及びビジョンカードが最初から手に入るチャンスでもあり、多くのユーザーがスタートダッシュを求めて同施策をキッカケに課金したことが考えられます。また、リリース限定セールとして、各幻導石の販売商品には通常よりも多くおまけが付くなどで訴求していました(購入は各商品1回まで)。
 
他方、流入面では友だち招待キャンペーンを展開していました。友達招待キャンペーンでは、ホーム画面のフレンドから「友達を招待」をタップして、LINEやメールなどの任意の方法で招待コードを相手に伝えるだけで完了。招待されたユーザーはチュートリアル終了後に幻導石500個(1,000円相当)がプレゼントされるほか、招待したユーザーは下記条件を満たすごとに合計で幻導石600個(1,200円相当)を受け取ることができます。
 
 
流入から定着、そしてリリース後の売上形成など、以上の7つの施策を通して実現していたことが考えられます。
 
 

■マルチプレイ要素を活用した施策にも期待感

 
FFシリーズのスマホゲームといえば、定番のRPGから始まり、パズルやアクション、リズムゲーム、デジタルカードゲームなど、さまざまなジャンルのタイトルがリリースされてきました。ですが、外伝的作品でありながら大ヒットを記録し、今でも根強いファンを抱えているシミュレーションRPG『FFタクティクス』を題材としたスマホゲームは世に出ていなかったことを考えると、まさに待望ともいえるタイトルになったことでしょう。
 


当然『FFタクティクス』題材とオフィシャルで公言しているわけではありませんが、細かいバトル演出やコラボ施策などを鑑みるに、本作は根強いファンに向けた一種のラブコールでもあったのかもしれません。実際にその声は、App Storeの★4.5(2019年11月25日現在)に色濃く反映していることだと思います。
 
運営面では、リリース後1週間で新しいユニットを追加したガチャ施策で、再びTOP10入りを果たすなどの好調ぶりを見せています(関連記事)。基本的には、重厚な物語を体験できるストーリー(ソロプレイ)を中心に、それらの追加をはじめ、期間限定イベントの開催、なによりユニットの育成などを通して、ゲーム運営が行われていることだと考えます。
 


さらに裾野を広げるコンテンツとしては、マルチプレイ要素が挙げられます。本作には、デュエルという対人戦のほかに、協力して戦うレイド戦が搭載されています(ギルド要素もあり)。基本的にソロで楽しむ傾向の強いシミュレーションRPGですが、今後の施策によってはマルチプレイ要素を活用した大会・イベントの展開にもつなげることができるでしょう。
 
まだ本作はリリースして間もないため、TVCMなどの大規模プロモーションを通して、さらなる伸びにも期待がかかります。
 
「Sp!cemartカレンダー」では、各ゲームのイベント情報をランキング推移と共に閲覧できます。自社はもとより、競合他社の施策一覧を取りまとめた分析などにもご活用できます。ぜひ、ご興味がある方はお問い合わせページからご連絡ください。

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■執筆 <株式会社スパイスマート>
スマートフォンゲーム内運用に関する調査・分析を行うリサーチ事業とコンサルティング事業を展開しており、「Sp!cemart」というサービス名称で各種ソリューションを提供。

コーポレートサイト:http://corp.spicemart.jp/
Sp!cemart 商品に関する問合せ:info@spicemart.jp
 

■Sp!cemartゲームアプリ調査隊 バックナンバー

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Vol.2 〜新作リズムゲーム『欅坂46・日向坂46 UNI'S ON AIR』、リリースから直近1ヵ月の運営施策を探る〜

Vol.3 〜初週で全世界1億DLを記録した『Call of Duty®: Mobile』、リリースから直近1ヵ月の運営施策を探る〜

Vol.4 〜Riot Games大特集。新作『Team Fight Tactics』の概要から『LoL』の直近プロモ・e-Sports施策まで〜


 

 
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会社情報

会社名
株式会社スクウェア・エニックス
設立
2008年10月
代表者
代表取締役社長 桐生 隆司
決算期
3月
直近業績
売上高2428億2400万円、営業利益275億4800万円、経常利益389億4300万円、最終利益280億9600万円(2023年3月期)
企業データを見る
株式会社スパイスマート
http://corp.spicemart.jp/

会社情報

会社名
株式会社スパイスマート
設立
2015年7月
代表者
代表取締役 久保 真澄
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