【レビュー】『モバイル版MTGアリーナ』をレビュー…手軽さと充実のサポートで気軽に遊べるカードゲームに!
現在、Wizards of the Coastから『モバイル版MTGアリーナ』がリリース中だ。本作は、世界中でプレイされている歴史あるTCG『マジック:ザ・ギャザリング(以下、MTG)』をスマートフォンでプレイできるアプリである。
モバイル版に先駆けてPC版は既にリリースされており、現在も多くのプレイヤーがプレイしている。そんな本作が待望のモバイル版で登場ということで、TCG好きの筆者はすぐに飛びついてしまった。
今回は、アナログの『MTG』とPC版『MTGアリーナ』のプレイ歴もある筆者が、モバイル版をプレイした感想をお伝えしていく。
■そもそもMTGとは
まずは本作で遊べる『MTG』そのものについて簡単にご紹介しよう。「名前は聞いたことがある」という人も多いのではないだろうか?『MTG』は、1993年に発売された世界初のトレーディングカードゲーム。ひと言で表すのならば“TCGの原点”が一番しっくり来る表現だろう。
昨今は多くのTCGが世に出ているが、そのほとんどが『MTG』に強い影響を受けている。体力と攻撃の概念やカードを発動するためのマナ、罠のように発動する呪文など、このどれもが『MTG』から生まれたものだ。
世界観やカードデザインはアニメ調なものではなく、ゴブリンやリアルな人間、巨大なドラゴンなど、リアリティで幻想的なデザインが採用されている。洋風なイラストが好きな人に刺さるデザインだ。
プレイヤーは、さまざまな世界を飛び回る能力者の“プレインズウォーカー”として、クリーチャーたちを使役して戦うという設定だ。
▲ゲーム内ではさまざまなプレインズウォーカーたちが、背景ストーリーのキャラクターや実際のカードとして登場する。彼らの織り成す時空を巡るストーリーも『MTG』の見どころの1つだ。
競技ゲームとしてもTCGの中で頭一つ抜けており、トップのプロゲーマーは『MTG』一筋で数千万を稼ぐほど。最近のコロナ渦では、この『MTGアリーナ―』を使用したオンラインの大会が頻繁に行われており、eスポーツ的な面でも注目が集まっているタイトである。
■PC版と遜色ないクオリティのモバイル版
『MTG』アリーナは、PC版の段階で美麗なグラフィックが話題となっていた。ただ美麗なだけでなく、ゲーム内の各所で作品の雰囲気に合ったクールさや神秘感を感じられるのもポイントだ。ゲームのUIについては、PC版からやや精度や反応が落ちるものの、プレイ中に気になるほどではない。カードをプレイした際の没入感やインパクトは十分。正直、モバイル版になることである程度の劣化は覚悟していたが、このクオリティで移植してくれたのであれば、プレイヤーとして素直に嬉しいところだ。
カードの表示サイズについては、当然ながらPC版と比較すると小さめになってしまっているが、従来のスマホで遊べるDCGと比較すれば標準的と言える。ただし、MTGはカードの処理をするためにタッチを行い頻度が多いので、慣れないうちは細かい操作ミスに注意する必要があるだろう。
▲神話レアと呼ばれる最上位のレアリティのカードをプレイする際には、各カードに演出が用意されている。
■充実のチュートリアルで初心者をサポート
最初にはっきりと言ってしまうが『MTG』のルールはお世辞にも簡単とは言えない。単語で表記されるだけの能力やカードを使えるタイミングなど、初心者が1日で全てを理解するのは至難の業だろう。それも制作サイドは重々理解しているようで、本作はチュートリアル機能が非常に充実している。むしろ、ここまで説明してくれるのかと驚くほどだ。
まずはAIとの対戦から始まり、ゲームを始めて間もないタイミングでは精霊からの優しいアドバイスを受けながら、じっくりと、1つ1つのカードの使い方や全体のルールを学ぶことができる。
▲チュートリアルの一環のカラーチャレンジでは、赤、青、緑、白、黒のそれぞれが得意とする戦略まで学べる。ステージをクリアしていくごとに報酬が手に入り、徐々にデッキが強くなっていくのも面白い。
筆者は元々アナログの『MTG』をプレイしていたので、ここから始めたプレイヤーではないのだが、当時に『MTGアリーナ』のこのチュートリアルがあれば、もっと素早くゲームを理解できただろう。文字だけでなく、動くカードと音声で教えてくれるので、頭に入ってくるスピードがルールブックを読むのとでは段違いだ。
既存のプレイヤーからしても、スマホで手軽に遊べるようになったことで、友人に『MTG』を勧めやすくなったという大きなメリットがある。いきなり紙のカードを買い揃えたり、快適に動くPCを用意したりすることはハードルが高いが、スマホで誰でも遊べるとなれば「まずはやってみよう」と感じる人も多いことだろう。
■多彩なフォーマットで自分好みのスタイルでプレイ
ゲーム内で遊べるモードは、期間限定のイベントモードを含めば10種類以上になる。常設されているモードに加えて、さまざまなルールでの対戦が楽しめるので、飽きることなくゲームをプレイし続けられるだろう。
多くの場合のゲームプレイの中心となるのが、デッキを組んで戦うランク戦と、カードパックから入手したカードで戦うドラフト戦の2種類だ。
ランク戦は、文字通りプレイヤー間でランクを競い合うモード。1本先取で戦うシングルと、サイドデッキの入れ替えを使って2本先取で行うマッチの2つに分かれている。
■ランク戦(シングル・マッチ)
『MTG』は一般的に2本先取のゲームなので、本格的に遊びたい方にマッチがオススメのモードとなっている。
一方で、サイドデッキの作り方と使い方が難しい、1試合ごとにサクサクゲームをプレイしたいという方にはシングルがオススメ。こちらは1試合の勝敗で結果が決まるので、勝っても負けてもスピーディーにゲームを進められる。
モバイル版になっても、本格的なマッチのマジックが楽しめるのは嬉しいところ。カジュアル遊びたい人、腰を据えて臨みたい人、それぞれに合った遊び方でプレイできる。
▲カードパックや報酬で手に入るワイルドカードは、対応したレアリティのカードに変換できる特別なカード。『MTG』アリーナではカードをポイントに変換するという概念はなく、こちらを使って欲しいカードを集めていく方式だ。
■ドラフト(プレミア・マッチ・シングル)
ドラフトは、カードパックから入手したカードを使って戦うフォーマット。ただカードをそのまま使うのではなく、1パックから1枚取って残りのカードを別のプレイヤーに渡し、その後に自分は受け取った別のパック残りから2枚目を選択する、文字通りカードをドラフトしていくルールだ。
構築されたデッキでは使われないカードが活躍したり、臨機応変な対応力が試されたり、通常の試合とは違った『MTG』の面白さを味わえるのがドラフトの醍醐味だ。
パックを使用して戦うので、手元にカードが1枚もない状態でも、コインか課金通貨があればすぐに遊べるのも良いポイント。ピックしたカードはそのまま自分のコレクションに入るので、ドラフトをしてカードを集めながら『MTG』の基礎を学ぶという始め方は、初心者にオススメのスタート方法の1つだ。
▲プレミアドラフトは、パックからカードをドラフトするタイミングから他のプレイヤーとリアルタイムで同時に行う。AIが自動でプレイヤーとしてカードをピックする他のレギュレーションとは異なり、よりアナログに近い本格的なドラフトが楽しめる。
他にも『MTGアリーナ』だけで楽しめる特別フォーマットのヒストリックや、デッキの中のカードの種類を全てバラバラで戦うブロールなど、遊び方の幅はかなり広い。1つのモードを極めるか、さまざまなフォーマットを楽しむか、遊び方はプレイヤー次第だ。
■スマホから始められるeスポーツでもある『MTGアリーナ』
こういったDCGなどの対戦ゲームを好む人の中には、自分の腕を試したいという考えを持つ人も多いだろう。ランク戦も実力を競い合うと言えばそうなのだが、やはりどこかやり直しの効く作業的な面もあり、真剣勝負のヒリついた感覚を味わうには少し刺激不足だ。そんな対戦ゲームを求める人にこそ、この『MTGアリーナ』はうってつけである。本作では、毎シーズンにゲーム内で完結する世界大会の予選が行われており、その参加権利はランク戦で一定以上のランキングに入ることで獲得できる。
つまり、今手にあるスマホが世界大会の切符になり得るということだ。1人の競技シーンファンとしては、モバイル版が普及することで、新たなスター選手が生まれるのではないかと楽しみにしている。
▲公式サイトでは随時大会スケジュールが掲載されている。参加条件をよく読み、これに参加することを目標にプレイすれば、自然とモチベーションも高く保てるだろう。
ただし、回線接続や安定性の面から、競技的にプレイをすることが前提なのであれば、PC版を利用するのがベターであるということは念頭に置いておいていただきたい。PC版とモバイル版のアカウントの連携は簡単に行えるので、両方のプラットフォームをうまく使い分けるのが最も効率的な『MTGアリーナ』の遊び方だろう。
▲アバターを設定したり、試合中にエモートを送ったり、ゲームの外側の遊べる要素もある。
TCG好きの方々の中には、『MTG』の硬派な雰囲気に腰が引けて敬遠してしまっていた人も居たはず。そんな方々にとって、スマホで手軽に遊べるモバイル版『MTGアリーナ』の登場は、背中を押すきっかけになってくれるに違いない。
初心者に向けたサポートも充実しているので「MTGやってみない?」と友人に気軽に声をかけて一緒に始めるのも良いだろう。
年々盛り上がりを見せるeスポーツ界隈。このモバイル版『MTGアリーナ』の登場の波を受けて、新規層の増加によるプレイヤー増加、延いてはTCG・DCGの競技シーンもより活性化することに期待したい。
(文 ライター:セスタス原川)
■『モバイル版MTGアリーナ』
©2020 Wizards of the Coast LLC
会社情報
- 会社名
- Wizards of the Coast(ウィザーズ・オブ・ザ・コースト)