【CEDEC 2021】『メギド72』が教える「こだわり」の運用を貫くための分析術 “キャラの平等性”を保つ秘訣や「ゲーム大賞優秀賞」受賞を訴求に活用した理由も紹介!
コンピュータエンターテインメント協会(CESA)は、8月24日~26日の期間、オンラインにて、国内最大のゲーム開発者向けカンファレンス「コンピュータ・エンターテインメント・デベロッパーズ・カンファレンス 2021」(CEDEC 2021)を開催した。
競争が激化しているスマホゲームの世界で成功するには、質の高いゲーム体感の提供はもちろんのこと、一度獲得したユーザーをファンに変え、SNSなどで話題の熱量を高く保つことが重要となる。そんな中、『メギド72』は必ずしも正攻法だけで作っているわけではなくゲーム内外も独特の「こだわり」により、熱狂を生んできた面がある。そこで、本セッションでは、『メギド72』がどのようにしてチーム全体が一体となってユーザーを夢中にさせるコンテンツとコミュニティを作り上げてきたか、様々な観点からノウハウを紹介した。
▲『メギド72』は、運営・パブリッシュ・マーケティングなどをDeNAが、開発をメディア・ビジョンが担当する、本格スマホ向けRPG。今年で4周年を迎えるタイトルで、2019年にはスマホアプリから唯一、日本ゲーム大賞 優秀賞を受賞したことが話題となった。
■ゲームデザインの「こだわり」を運用するために
ここからはいよいよ本題へ。現在はヒットタイトルとなった『メギド72』だが、何故、初速に失敗してしまったのか。それは、各施策の「こだわり」を上手くゲームサイクルとしてワークできなかったためだと考えていると早川氏は話す。
・商材(ガチャ)としてのキャラクターにレアリティ差分を作っていない
を挙げた。
ここで登場したのが、「タクティカルソート」と呼ばれるバリエーションとなる。属性などによるバリエーションでは、タイプが異なるだけで遊び方自体にはあまり変化がないことが多い。しかし、タクティカルソートでは遊び方自体を変えていることがポイントとなる。これによりユーザーの飽きが訪れにくい構造を作ることに成功した。
▲こういった調整を行う方法として、キャラの追加や「霊宝」と呼ばれる、いわゆる武器の追加でゲームをアップデートしている。
『メギド72』が、性能に対する魅力に特にフォーカスしてきた理由は、「こだわり」の運用をベースに先ほどの区分けで考えたときに、キャラの魅力だけで売上を立てることは極めて難しいと判断したため。キャラの魅力で購買を促す際には、売上の高いキャラの登場機会を増やしたり、衣装の数を増やしたりすることが常套手段となる。しかし、『メギド72』の「こだわり」の運用では、その手段を取ることはできない。そこから別の手段を模索することはあまりにも勝算が少ないため、性能の魅力を最大の魅力としてユーザーに届けることを考えているという。
しかし、この「タイムリー」という部分が非常に難しい。制作期間の長期化により、設計時とリリース時のタイミングがずれてしまい、リリース時に環境にマッチしていない可能性があるためだと川上氏は解説した。
ここからは魏氏が登壇し、いくつかの事例からマーケティング施策での「こだわり」を紹介した。
▲これまで数々の施策を実施してきたが、本講演では2019年の「ゲーム大賞優秀賞」受賞施策と、2020年の3回目のハーフアニバーサリーに実施した「メギドミー賞」施策について、当時、どのような考えで施策実施に至ったのかを解説していく。
ゲーム大賞とは、一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)が開催している、その年の優れたゲーム作品に授与される賞である。『メギド72』は、2019年の受賞作品の中で唯一のスマートフォンゲームとなった(関連記事)。
そこで、「ゲーム大賞 優秀賞」受賞を活用することで伸び悩んでいる状況を打破していきたいと考えた。しかし、訴求自体がニッチということもあり、社内では実際にこの訴求を活用することに対して不安視する声も多く挙がっていたという。
そこで、当時プロデューサーを務めていた宮前氏にとことん相談することに。リスクがあることは分かるが、今回を逃したら2度とこのチャンスはやってこないことや、他に事例がないことは関係なく、『メギド72』として事例を創出する気持ちが大事という結論に至った。
①既存のお客様への感謝
苦しい時期を支えてくれた全てのユーザーに対しての感謝を、施策を通して伝えた。今までプレイしたゲームがここまで大きくなったことを伝えるために初の交通広告を実施したり、受賞したことを一緒に喜んでもらえるためにゲーム内外のキャンペーン施策やプレゼント施策を実施した。上記を通して全体的な「お祝いムード」を一緒に創出した。
「ゲーム大賞優秀賞」受賞を使い倒すとはいえ、実際に訴求効果が出なければあまり意味はない。そこで、まずはデジタル広告を基軸に訴求テストを細かく繰り返し、実際の数値面での効果を分析。ブラッシュアップを続けた結果、この訴求は有効であるという判断に至ったため、年末年始の大型マーケティングに関しても、それ以外の軸ではなく「ゲーム大賞優秀賞」受賞の訴求を軸に添えて展開していくという意思決定をしている。そこで、新規ユーザーに対しては「何か受賞した凄そうなゲーム」という刷り込みを行いたいとの想いがあったと魏氏は語った。
ここで魏氏は、本施策を実施した際の数値面での改善率を発表した。
本訴求を通して「このタイミングでしか使えない訴求」や「効果が出るタイミングが一時的な訴求」に対して、それをどうやってリアルタイムに自タイトルに取り入れることができるかを考えて実行に移すことが運用型のゲームマーケティングとしては非常に重要なポイントになると述べた。
「メギドの日」とは、他タイトルのハーフアニバーサリーと同様の立ち位置で、ゲーム内外で多くの施策が展開されている。1年目は「#メギド愛」を活用した施策、2年目はもう少し踏み込んで「Twitter」を基軸とした施策展開に。3年目は過去2回の成果を踏まえて大きく踏み込んだプロモーションを実施した。本講演では、この3回目の話を展開していく。
・4月後半から7月2日までの約2.5ヶ月にも及ぶユーザー参加型投票コンテンツ
当時、ティザーサイトがオープンしたタイミングでは実施の経緯や詳細の説明をはっきりと発表していなかったため、ユーザーからは戸惑いの声が多く挙がった。しかし、企画終了時のユーザーの声は一変。お祝いや喜びの声で溢れかえる結果となった。
各賞ごとにノミネート動画を用意し、合計50本以上のPVを制作。実際に投票を行う際にはユーザーからコメントを募り、それに全て目を通して、いくつかに関してはPV内でも使用している。これにより、選出理由の納得感がより深く生まれ、施策に対してのストーリー性が増したと考えているとのこと。
ノミネート動画だけでなく、授賞式においてもよりそのコンテンツに対しての没入感や期待値を創出するために、OP・ED共にスペシャルPVを用意。EDのPVにも、実際のユーザーからのコメントを多数活用し、メギドミー賞を振り返る内容にしている。また、3Dで全キャラを登場させることで、受賞したキャラだけのイベントではなく、全キャラに関係しているイベントであることを意識させる見せ方をしている。
ノミネートの導入動画では、ゲーム内では見ることができなかった角度からの3Dモーションを多数活用。ユーザーに喜ばれる演出を細かく散りばめている。授賞式パートでは、会場を全て3D空間で制作。キャラも3Dで制作し、動きに関してはモーションキャプチャーを採用した。実際の動きを付けることによって、よりリアルな形でそのキャラたちが臨場感をもって動いているところをユーザーに感じてもらいたくて、この形にしたと魏氏は話した。さらに、より演出にリアリティを持たせるために、本授賞式においてはフルボイス実装で本イベントを実施している。
本施策のまとめとして、実際の効果についても言及。
会社情報
- 会社名
- 株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)
- 設立
- 1999年3月
- 代表者
- 代表取締役会長 南場 智子/代表取締役社長兼CEO 岡村 信悟
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上収益1367億3300万円、営業損益282億7000万円の赤字、税引前損益281億3000万円の赤字、最終損益286億8200万円の赤字(2024年3月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 2432