モバイル公式CP各社の業績動向・・・直近の四半期業績のまとめ

先日のザッパラスの四半期決算で、会員数が大きく減少していることが話題になったが、今回、国内の主要なモバイルCPの四半期決算の動向をまとめてみた(関連記事)。 スマートフォンの普及に伴い、フィーチャフォンの公式サイトで収益を稼ぐ企業に大きな影響が出るとの指摘は以前から多かったが、フィーチャフォンの比率はまだ多く、今年の年初段階でも業績への影響についてはすぐに影響を与えるとの見方はそれほど多くなかったように思われる。 しかし、足元のスマートフォンの普及については予想以上のスピードで、早い段階からスマートフォン対応した会社からもサービスによっては、スマートフォン経由の売上の比率が20%に達した、30%に達した、といった声も聞かれるようになってきた。 スマートフォンの普及は、携帯電話の公式コンテンツを提供する会社の業績や会員数にどういった影響を与えているのか。今回、アイフリーク<3845>、フェイス<4295>、ドワンゴ<3715>、エムティーアイ<9438>、メディア工房<3815>、ザッパラス<3770>、イマジニア<4644>、日本エンタープライズ<4829>、ジー・モード<2333>、アクセルマーク<3624>、SmartEbook.com<2330>を取り上げる。以下、各社の概況をみていくことにしよう。 まず、直近四半期の業績は以下のとおり(単位は100万円)。断りがない限り、連結の数字を使っている。業績の影響についてはサービスによって異なるため、まちまちのようだ。
企業名 決算期 売上高 経常利益 四半期純利益 コンテンツ
アイフリーク 4~6月期 589 -26 -20 デコメ
前年同期単体 711 84 68
フェイス 4~6月期 27,831 790 436 音楽系
前年同期比 62.5% 111.3% 235.9%
ドワンゴ 4~6月期 8,486 795 550 音楽系
前年同期比 22.4% 31.1% -28.9%
エムティーアイ 4~6月期 8,146 1,066 583 音楽系
前年同期比 3.3% -16.8% -19.8%
日本エンタープライズ 3~5月期 611 71 60 音楽系
前年同期比 18.0% 20.3% 93.5%
メディア工房 3~5月期 584 148 81 占い系
前年同期比 6.2% 9.2% -0.7%
ザッパラス 5~7月期 2,846 768 454 占い系
前年同期比 -0.3% -3.8% -3.9%
イマジニア 4~6月期 1,060 145 101 ゲーム等
前年同期比 -28.7% -66.5% -65.9%
ジーモード 4~6月期 1255 108 106 ゲーム
前年同期比 7% 26 前年同期 -4
アクセルマーク 4~6月期 299 -3 3 動画
-1% 前年同期 3 前年同期 -20
SmartEbook.com 4~6月期 306 -177 -175 電子書籍
前年同期比 -72% 前年同期 -535 前年同期 -523
    目につくのは、MTIを除いて音楽系コンテンツの会社は堅調なことだ。音楽系が堅調なのは、開示資料を見る限り、着うたなどの音楽系のコンテンツの会員数が減少しているものの、楽曲ダウンロード数はそれ以上に低下していることが要因のひとつだろう。会費収入の減少を上回るペースで版権使用料などの原価が低下しており、結果として増益になることが多いようである。もちろん、ドワンゴのように「ニコニコ動画」など既存サービスに代わるサービスが収益に寄与してきたことも大きい。 ゲーム系コンテンツについては、ジーモードが増益だが、前年より取り組み始めたソーシャルゲームの収益性が改善してきたことに加え、公式サイトのコスト削減も奏功した模様だ。開示されている損益計算書をみると、今年の4~6月期では販売管理費を10.5%も削減している(4.55億円→4.07億円)。販売管理費の明細が明らかにされていないため、詳細は不明。 アイフリークは、スマートフォン向けのアプリマーケットMobileApps.comの展開や「こえほん」などスマートフォンに重点をおいたコンテンツ展開を行っている。デコメ関連の売上減少も大きいが、スマートフォン関連の先行投資の影響も大きいようだ。モバイルコンテンツ事業の売上高は25%減、営業益58%減だった。 アクセルマークは、電子書籍分野を中心とするスマートフォンアプリに注力するとともに、10月1日付でエフルートと合併する予定。また、SmartEbook.comについては音楽系コンテンツを整理・売却し、電子書籍分野に取り組んでいる。   ■会員の状況 次に会員数の状況だが、開示されているものをまとめてみた。開示している会社が限られているが、やはり全般的に減少している。まず、ドワンゴだが、有料アクティブユーザー数は、2011年3月末時点では有料会員数が364万人・ARPU401円だったが、2011年6月末には330万人・416円となった。ニコニコ動画のプレミアム会員数は、3月末は119万人だったが、6月末には130万人となった。 エムティーアイは、フィーチャフォン向け有料会員が2011年3月末の962万人から2011年6月末には906万人に減少した。ただし、スマートフォンで全てではないが、カバーはできており、スマホ含む有料会員数は973万人から2011年6月末には936万人となった。 ザッパラスは、有料会員数が2011年4月末の222万人から2011年7月末に202万人となった。 メディア工房は、2011年2月末には32万9000人だったが、2011年5月末は増えているとのこと。非開示だが、月次の売上推移を見る限りは増えていることが推察される。メディア工房では、「高度な分析ツールの開発と運用」を行うコンテンツマーケティングシステムを導入しており、これが月次売上や会員の増加につながっている模様である(関連記事)。   各社、スマートフォンや新サービスの対応を急ぐとともに、既存コンテンツについては会員の引留やARPUの向上などの施策を打っているようである。モバイルCPで社長交代などが目立ったことにみられるように、これまでの事業のやり方を大きく変え、公式コンテンツに代わるサービス開発と強化により注力する会社が多いようだ。今後も引き続き取り上げていきたい。