【NFT/BLCコラム】NFTバブル、熱狂の源泉 web3.0時代の承認欲求とは

【NFT/BLCコラム】NFTバブル、熱狂の源泉 web3.0時代の承認欲求とは

株式会社リードエッジコンサルティング 取締役COO
中屋敷 将大


弊社でNFTに関する事業を開始してからそろそろ1年が経つ。我々もNFTのマーケットプレイスをリリースしたり、NFTの専門メディアを立ち上げたりと色々な活動をしてきたが、まだまだこの業界にいると驚かされることが多い。

私(中屋敷)は現在NFTマーケットプレイス「LEAD EDGE」の事業責任者としてプラットフォームの運営を行っている。2019年からブロックチェーン業界で活動し、ブロックチェーン・NFTのセミナーなどを行っており、昨年からはより具体的に先述のマーケットプレイスを含めたNFT関連事業を展開している。また、昨年まで在籍していた大学にて哲学を専攻しており、資本主義におけるNFTという技術の影響という視点からもNFTについては興味深く検討してきた。今回はそうした現場での知見と哲学的な思考の両面からNFTという現象について検討していきたい。

NFT業界では毎週のように突発的なブームが発生し、その内の多くは普通の人間には信じがたいような突拍子もないものだったりする。例えば、子供が描いた絵に紐づくNFTに何百万円もの価値がついた、といった事例についてはこれを読んでいる方も聞いたことがあるのではないだろうか。

私自身、日々NFT業界にいて感じたことをツイッターなどのSNSで発信しているが、先日とあるツイートが拡散され多くの反響を呼んだ。
そのツイートの内容は、簡単に言うとNFTブームの根底にある、

  • 高額取引の可視化
  • 承認欲求の功罪

    という2要素に注目したものであった。

多少観念的な内容であるが、意外にもこういった考察に興味を持つ人が多いようなので、このコラムではこの2点に関して深堀していきたい。

まず、現在のNFTバブルの要因として「一般人とNFT界隈の人間ではETHに対する金銭感覚が異なる」ことには触れておく必要がある。現在35万円の時価で計算されているNFTであっても、ETHを1万円の頃に買った人からすれば心情的な値段は1万円に過ぎないとも言える(執筆時点は1ETH約35万円)。さらに言うと暗号資産への投資は課税額も大きいので、日本円に換金して国家に利益を持っていかれるよりは、NFTを購入してさらなるロマンを求めたいという心理も働くであろう。

こういった構造を含有するバブルはこれまでも存在したが、NFTが異質なのは高額取引を行うとその取引履歴が万人に対して可視化されるという点である。例えば以前はあらゆる取引は(外商が家に来て購入できるように)プライベートな空間に隠されていたし、ネットが普及してからもSNSで自分から言い出すことでしか表出しなかった。

そうした二つの時代を「web以前」「web2.0」と定義すると、web以前においては匿名性が担保されていたがその分商品の購入に伴う承認欲求は自分の身の回りに限られる。(車や時計など)

一方web2.0においてはSNSなどで購買物を自ら見せることでが可能になった。これは人間を承認欲求を充足するのに非常に便利であったが、匿名性がない以上必要以上にリスクを負うことにもなった。(いわゆる有名税)

果たしてweb2.0の次の時代に位置付けられるweb3.0の時代は「匿名性が担保された状態で」「承認欲求を満たすことができる」時代であると結論づけられる。web3.0時代の特徴である匿名であり公開という側面が端的にその状況を表している。

最後に、なぜ承認欲求という人間にとってファンダメンタルな欲求が今ブロックチェーンという場所に向かっているのかを簡単に考えたい。ここには承認欲求の無限性という性質が大きく関わっている。
例えば高価な食べ物や時計などは胃がひとつしかなく(ローマ人のように吐き出して再度食べる気概があれば別だが)腕が2本しかない人間にとって欲望は有限である。一方承認欲求はどこまで行ってもその欲望が収まることはない(多分)。

資本主義というシステムが差異の構造を生み出しその流動性によって成立する仕組みとなっている以上、無限に差異を生み出し続ける欲望とは大変相性がいい。それゆえに資本主義に行きる我々にとって大変中毒性の高い欲望になっている。

そしてここが最も重要な点だが、ブロックチェーンの公開性と匿名性という性質はそうした承認欲求を安全性を担保した状態で満たすのに大変相性がいい。(最近エンジニアに聞いた話では、ブロックチェーンは誰がやったかが白日の元に晒されるので逆にハッキングをしたくなる魅力があるらしい。)


それと同じように購入した履歴も匿名のアドレスで購入できそれが全世界に公開されているため(彼らにとって)たった一億円で手軽に承認欲求を得られる遊びになっているのではないかと予想される。

NFTが承認欲求の装置として特別優れていることはcrypto punksなどの例を見れば明らかだし、そこに物質的な空間をとらずネットがネットであるかぎりほぼ無限に増殖し続けられる性質が加われば資本主義の最強のキメラが出来上がる。

ここまで考えてきた「取引の可視化」「承認欲求」という二つの軸の価値の源泉はやはりSNSである。公開されている取引履歴をSNS上で表示し、その証明を元に自分のアイコンをNFTにするSNSはNFTの承認欲求としての価値側面を担保するものとして不可避的に必要になる。

メタバースも自分のネット上におけるアイデンティティを表現するものとしてはSNSの一形態として位置付けられると思う。

中屋敷 将大

(ナカヤシキ マサヒロ)

株式会社リードエッジコンサルティング
取締役COO
1998年生まれ。早稲田大学文学部哲学科出身。
大学時代からフリーランスのエンジニアやPdMとして活動し、
2021年4月に当社に事業譲渡、新卒で取締役に。
NFTとの出会いは2019年のBCGブーム。
これまで活動してきた様々な領域の知見を活かしNFTのマスアダプションを目指す。

※本コラムはgamebiz編集部の要請で寄稿頂いたゲストコラムです。
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