【連載】進むデジタルギフトマーケティング…森下明のマーケティング虎の巻:第二回ギフティ篠塚氏対談

ゲームビズでは、「いちばんやさしいアプリマーケティングの教本」の著者であり、ブシロードが誇る完全無欠のモバイルマーケターの森下氏による連載を掲載。マーケティングに関わる人との対談や森下氏の実体験を基にしたマーケティング動向を紹介していく。

第二回ではデジタルギフトサービスを展開しているギフティの篠塚大樹氏との対談が実現。デジタルギフト市場の動向や、デジタルギフトを用いたマーケティングとは何か。

本稿ではギフティ社の取り組みとデジタルギフトマーケティングの可能性について話してもらった。

国内でも増え続けるデジタルギフト市場

Bushiroad International Pte.Ltd.
Head of Mobile
森下明氏(写真右)
2018年、株式会社ブシロード入社。デジタルマーケティングチームの立ち上げに参画し、自社IPのデジタルマーケティングを務める。現在は海外HQであるBushiroad Internationalのモバイル事業責任者として複数のモバイルゲームのマネジメントに従事している。また、「いちばんやさしいアプリマーケティングの教本」の執筆も行い、本特集ではファシリテーターも担当。

株式会社ギフティ
Business Development Div  マネジャー
篠塚大樹氏(写真左)
株式会社ギフティ第三事業本部副本部長。
慶應義塾大学総合政策学部を卒業後、株式会社ギフティに入社。giftee campaign platformやgiftee Boxなどの複数の新規プロダクトの立ち上げを責任者としてリード。
現在はgiftee for Business事業部のマネージャーを務める。

 

森下氏(以下、森下):本日はよろしくお願いします。まず初めに、篠塚さんのご経歴について簡単にお聞かせいただけますか。

篠塚氏(以下、篠塚):よろしくお願いします。私自身は、ギフティにてeギフトを活用した法人向けソリューション「giftee for Business」サービスのプロダクト設計を起点に業務を行っています。元々、学生時代の頃からサービスの立ち上げや設計に興味があり、ギフティでもそういった業務に携わっています。

森下:ギフティさんでは決算などでも業績は開示されていますが、デジタルギフト流通は順調に伸びている印象です。どういった企業さんとお取引していることが多いのでしょうか。印象としては、いわゆるナショナルクライアントと呼ばれる企業が多くいらっしゃる印象ですが、ゲーム会社さんとも取り組みは多いものなのでしょうか。

▲ギフティ社決算資料より

篠塚:ありがたいことにゲーム業界でも数多く導入頂いておりまして、お付き合いの長いクライアント様も多くいらっしゃいます。その他には、保険業界や金融業界等の幅広い業界の企業様にご利用いただいています。

保険の見積もりやアンケートに関連した施策も多いですが、最近では健康促進のアプリを展開している保険会社さんもいます。

健康になればなるほど、保険の種類も豊富になりますし、条件も良くなりますからね。ですから、歩いた歩数によってポイントが貯まる…といったアプリで、その貯まったポイントを引き換えるギフトとして活用いただくことも増えてきています。

森下:”インセンティブによって人が動く”というのはゲームの施策においても、重要な要素です。どういった相談を受けることが多いのでしょうか。

篠塚:これまで企業様からご発注をいただく経緯で一番多かった理由は、コストダウンです。今まで実際のモノを送ると配送費や在庫を管理する手間がかかっていました。これに対する施策として、コスト削減という目的でご発注いただくことが多かったです。

アプリケーションストアでギフトコードを配布する場合にも、これまではiOSかAndroidかをヒアリングして、個別で対応するといったアナログな工程が必要でしたが、そのコスト削減といった役割でご相談いただくことが多いですね。

森下:なるほど、デジタルギフトならではの強みですね。

篠塚:もちろん、リアルでのギフトの良さもあります。私たちもリアルのギフトを否定しているわけではありません。

今後はリアルのギフトとデジタルのギフトを使い分けてご利用いただく時代になると思います。より、キャンペーンの趣旨やコンバージョンに適した施策を行うことができるようになってくるはずです。

例えば、これまでは100円相当のギフトを1万人に送るという施策はできませんでした。なぜなら、実際のモノだと直接コストがかかってしまいますからね。

ですから、デジタルギフトも選択肢に入ることで、よりコミュニケーションの幅が広がっていくと考えてもらえたらなと思います。

それぞれのギフトとしての良さがより発揮できるような世の中になっていくので、ギフティとしても、単にコスト削減だけにフォーカスするのではなく、デジタルギフトだからこそできる新しい施策に今後も力を入れていきます。

森下:デジタルギフトでみた御社の強みといったものはどういった点だと考えていますか。

篠塚:ギフティの強みはデジタルギフトの生成から販売・流通まで一気通貫でご提供できるeギフトプラットフォームを持っている点にあります。既に発行されているデジタルギフトを仕入れて販売するサービスは多数ありますが、弊社では飲食小売をはじめとする各ブランド様が独自にデジタルギフトを発行する「eGift System」という自社開発したシステムからのご提供からさせて頂いております。

特に、店舗利用型のデジタルギフトの発行に多数の実績があることは強みだと思います。店頭でデジタルギフトを利用する際には、そのギフトを利用済みにする「消し込み処理」が必要になりますが、弊社では店頭オペレーションに合わせた様々な処理方法に対応しています。POSシステムとの連携、電子スタンプを利用した処理、QRコードを利用した処理など、多様な消し込み手段をご提示することが可能です。

森下:なるほど、流通のインフラともいえるPOSシステムと連携できているのは大きいですね。導入も大変だったのではないですか?

篠塚:もちろん、システム開発が必要ですのでコストもかかりますし、導入まで多少時間がかかるケースも多いです。

ただ、基本的に、デジタルギフトを導入すると新規の売上がつくれると判断いただけているので、「eGift System」の導入決定に繋がることが多いです。

というのも、今までは、既存顧客の来店による売上がメインでしたが、eギフトは、既存顧客がギフトを贈り、受け取った方が新規顧客として来店しするという新たな売上を創出することができます。

また、来店時にデジタルギフトの利用のみならず併売も見込めますので、新たな販路拡大や客単価アップに貢献することができます。そのため、前向きに導入を検討してくださるブランド様が多い印象です。

森下:ギフト販売ですと、ある意味、来店前から購入いただけている訳ですからね。

篠塚:小売業界でのデジタルギフトの活用は米国や韓国が特に進んでいますが、徐々に日本でもマーケットが広がってきていると感じています。


 

進むデジタルギフトを通じたデータマーケティング

森下:ゲーム会社でも、ゲーム内施策にてデジタルギフトを利用したいと考えている人は多いと思います。

ですから、ギフトをあげるとLTVがどの程度直接向上できるかというのは気になるところだと思います。ゲーム内のユーザーIDと紐付けできれば、施策としても面白そうです。

篠塚:おっしゃる通り、デジタルギフトというものは従来の物理的なギフトと比べてもデータを取得・管理しやすいです。

ゲーム会社さんが日々考えているLTVの向上といった、マーケティング活動における数値の貢献というのも取り組んでいきたいです。

今でも、敢えて深い成果地点を設定して、そういったユーザーさんにギフトを送りたいといったご相談いただくケースがあります。その場合は、ゲーム内でデジタルギフトのユニークURLを送信するスキームをご用意していただくこともありました。

森下:御社にてゲーム会社さんとの取り組みだとどういったものがありますか。

篠塚:あるゲーム会社様ではユーザーミッションをクリアしたらデジタルギフトをお送りする、といった施策を行っていますが、コミュニケーションの取り方を色々考えていらっしゃいますね。

どのユーザーに何のデジタルギフトを送ったかを管理され、そのユーザーさんの動きを鑑みながら、その時々の運営方針によって施策の使い分けをされています。

従来のゲームのキャンペーンでは単純にTwitterでの拡散を狙ったTwitter完結のキャンペーンの実施がほとんどでしたが、それではゲームの起動や課金に結びつかないということでアプリ内から抽選に参加できる仕組みをとっていただくケースがほとんどです。

特にTwitterインスタントウィンのアプリ内参加形式は、抽選のURLをアプリ内お知らせに掲載いただくのみでアプリに誘導する抽選キャンペーンの実施が可能です。

開発工数もかからないため、各社様ご好評をいただいており、ゲームキャンペーンの7割程度はこの形式でご実施いただいています。

▲Twitterインスタントウィン-アプリ内参加形式

ブシロードさんのゲームタイトルでもいくつかご実施いただいていますよね。

▲D4DJ Groovy Mixのキャンペーン

森下:ゲーム会社からはどういったKPIで行うことが多いのでしょうか。この手の施策ではKPIをどう設定したら良いか分からない人も多そうですが…。

篠塚:KPIも含めてご相談いただくケースは多いですね。Twitterの拡散が目的ということもあれば、フォロワー数拡大がKPIとなる場合など、みなさんそれぞれあります。

ざっくりご予算感やテーマを共有いただき、KPI、形式を含めてご提案、設計させていただくことも多いです。

森下:ご提案することも多いのですね。ちなみに、デジタルギフトにて、どこまで細かいデータが取れるものなのでしょうか。アプリ側と連携しないと中々取得できなさそうな印象ですが。

篠塚:これからまだまだ検証する部分でもありますが、新しいサービスでデータが取れている部分もあります。

昨年「giftee Box」という、約500種類のデジタルギフトのラインナップの中から、ユーザーに付与されたギフトポイントとご自身の好きな商品を選んで引き換えることのできる自社プロダクトの提供を開始しています。

こちらのデジタルギフトは、ユーザーが約500種類のギフトの中からどのデジタルギフトを選んだか、その「選択率」をお出しすることが可能となっています。

全く同じギフト(giftee Box)をご利用いただいているにも関わらず、地方銀行のキャンペーンではコンビニ商品を選択される方が最も多く、全国展開しているアプリキャンペーンではAmazonギフト券を選択される方が最も多い、といった形でユーザー属性によって選択されるギフトに大きく差異が出た事例もありました。


ゲームキャンペーンでは「えらべるPay」というApple Gift CardやGoogle Playギフトコード、Amazonギフト券やPayPayボーナスなどのサービスのポイントからお好きなギフトが選択できる商品のご提供が増えています。


これまでゲームのキャンペーンではApple Gift CardやGoogle Playギフトコード、Amazonギフト券が定番の景品でしたが、「えらべるPay」をご利用いただいたところ、この3商品はあまり選ばれていないことが分かったんです。全体の3割くらいでした。

7割のユーザーさんには別のインセンティブの方が効果的だった可能性が高いということが分かりました。

森下:この手のプレゼントではAmazonギフト券が多いですが、意外ですね。ちなみに一番人気だったのはどういったギフトだったのですか?

篠塚:PayPayボーナスでした。意外ですよね。そういったデータが定量的にもわかりました。

また、ユーザープロフィールを取得している別のサービス(※giftee 独自サービス)もあり、このサービスのデータとgiftee BoxやえらべるPayの選択データを掛け合わせることで、男女や世代、地域別など属性に紐づいた人気ギフトを定量的に分析することも可能になります。

森下:ユーザーIDと言えるようなデータが取得できつつあるんですね。

篠塚:はい。このようなデータを活用することで、どのように各企業様のマーケティングに貢献できるかの検証を進めています。

例えば、男性向けゲームではターゲットとなる層の男性が参加したキャンペーンとなったか、女性向けゲームではターゲットとなる層の男性が参加したキャンペーンとなったか、などの分析も可能になりました。

ゲームキャンペーンでは他に、年齢層が高いゲームは「QUOカードPay」が、年齢層が若いゲームは「Apple Gift Card」が選択されやすい傾向です。

「giftee Box」や「えらべるPay」の動きをみていると、ユーザーさんに対してどこまで効果的だったか。印象に残った施策かというのがわかるようになります。

ゲーム会社さんとって貢献できるデータや施策にするためには、まだまだブラッシュアップする必要はあると思いますが、ギフトを通じたデータの活用によって、今までよりもマーケティングに貢献できるようになってくるかと思います。

森下: このユーザーはこういったギフトを活用していて、こういったイベントによく行っているというデータは連動取れそうですよね。

篠塚そうですね。他の可能性としても、店舗さんとのコラボレーションをお手伝いさせていただくことも可能です。

弊社では、これまでも店舗さんとのコラボレーション施策のサポートをさせていただくことが多くありました。

店頭でゲームの告知を行い、ゲーム内では店頭で利用できるギフトを配布する形ですね。オリジナル商品の作成やラッピング店舗を作ることも可能なギフトブランドさんもいらっしゃいます。

例えばこのゲームのユーザーさんは特定のブランドが好きというデータが取れるので、そういったブランドさんとのコラボレーションを施策としてご実施させていただくこともできます。

森下:プロモーション施策としても面白そうですね。今後はそういったキャンペーンの効果やデータを一緒に見ていくゲームがあればまた面白そうですね。

篠塚:そうですね。データを活用した施策を突き詰めるとなると、ゲームのユーザーIDをパラメータで連携いただくなど、どうしても実施いただくアプリ側の開発・改修コストとの兼ね合いが出てくると思います。

ただ、ユーザーさんに向き合うためには、データを取得していく価値は確実にありますし、デジタルギフトはそのポテンシャルを広げる手段であるのはたしかです。

ですから、ご一緒いただけるゲーム会社さんがおりましたら、是非お声がけいただきたいですね。

森下:マーケティングの新しい可能性にもなって面白そうですね。また話を聞かせてください!ちなみにギフティさん自身でも、採用強化を行っているそうですが、どういった職種を今求めているのでしょうか。

篠塚:各職種で積極採用中になりますが、マーケティングをされていた方は絶賛募集中ですね。特に、ゲームのマーケティングを行っていた方には、すごく刺激が多い会社だと思います。ユーザー体験が設計でき、且つ、色んなサービスのユーザー動向に携われますので、興味のある方はぜひ一緒に話してみたいですね。

森下:ゲーム会社としても新しいマーケティングのスタンダードとなってほしいですね!最後に一言いただけますか。

篠塚:デジタルギフト市場はまだまだ広がっていきます。海外ではアメリカはもちろん、韓国でも大きな市場となっています。日本国内でもポテンシャルのある分野なので期待いただきたいです。

森下:ありがとうございました!


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