カプコン、コーエーテクモ、スクエニ…ゲーム大手3社の人材戦略からみる組織づくりと成長戦略の違い

ゲーム業界のニュースというと、売上や利益、IP、新作タイトル、開発費、人事動向などに注目が集まりやすい。一方で、有価証券報告書に記載された人材戦略を読み比べると、各社がどのような組織を目指し、どのような成長を描いているのかが見えてくる。
カプコン<9697>、コーエーテクモホールディングス<3635>、スクウェア・エニックス・ホールディングス<9684>はいずれも人的資本の重要性を強調しているが、その内容にはそれぞれの企業文化や事業戦略を反映した違いが見られる。
■カプコンは「組織能力」の強化を重視
カプコンは中期経営目標として「毎期10%営業利益増益」を掲げている。その実現に向けて、「世界最高品質のコンテンツの安定的な創出」と「全世界すみずみまでのブランド浸透・ユーザー拡大」を推進している。
人材戦略では、「将来を担う人材の確保と育成」と「従業員が能力を最大限に発揮できる職場環境の再整備」を重点項目として位置付けた。
特徴的なのは、開発現場におけるナレッジ継承を明示している点だ。シリーズ作品を長年展開してきた同社らしく、人材個人の能力だけでなく、組織としてノウハウを蓄積し続けることを重視している。
報酬制度も連結営業利益と従業員の金銭報酬総額を連動させる仕組みを採用しており、利益成長と人材投資を結び付けている。さらに、国内の全正社員を対象とした株式報酬制度(ESOP信託)を導入し、企業価値向上の成果を広く共有する体制を整えている。
『モンスターハンター』『バイオハザード』『ストリートファイター』といった主力シリーズを継続的に成長させる背景には、こうした組織能力の強化を重視する姿勢があるといえそうだ。
■コーエーテクモは「クリエイターとビジネス人材」の育成を掲げる
一方、コーエーテクモホールディングスは、「世界No.1のデジタルエンタテインメントカンパニー」をビジョンに掲げ、2035年度までに「営業利益額世界トップ10入り」を目指している。
同社の人材育成方針を象徴するキーワードは「クリエイティブ&ビジネス」だ。
育成すべき人材像として、
・ 自立(自律)したプロフェッショナルなクリエイター
・ 価値創造を支え、ビジネスを推進・強化する人材
・ グローバルな視点でIPの価値を高める人材
の3つを掲げている。
カプコンが組織的なノウハウの継承に重点を置くのに対し、コーエーテクモは個人の専門性や創造力を伸ばすことを重視しているように見える。
報酬制度にもその考え方が表れている。業績賞与に加え、担当プロジェクトの利益に応じた報奨金制度を導入しており、ヒット作の創出が個人の報酬に直接反映される仕組みとなっている。
『信長の野望』『三國志』シリーズや『無双』シリーズ、『NINJA GAIDEN』など、多様な開発チームやブランドを抱える同社らしい制度設計といえるだろう。
■スクウェア・エニックスは「役割と成果」に基づく評価を重視
スクウェア・エニックスの人事制度で目を引くのは、「役割と貢献に基づいた公正な処遇」を人事制度の根幹としている点だ。同社は社員に期待する貢献を「期待役割」として定義し、それを基にした「資格ランク」を人事制度の軸に据えている。
また、報酬水準の決定にあたっては外部労働市場のベンチマークを活用し、市場競争力を維持・向上させる方針を示している。
報酬制度は、基本給と業績連動賞与で構成されており、会社業績や部門業績に加え、個人評価を反映する仕組みとなっている。特徴的なのは、給与改定や賞与配分において部門長の裁量を重視している点だ。
『ファイナルファンタジー』や『ドラゴンクエスト』をはじめ、MMO、モバイルゲーム、出版事業など幅広い事業を展開する同社では、多様な専門人材を適切に評価・配置することが重視されている、といえるのかもしれない。
■人材戦略にも表れる各社の開発哲学
3社はいずれも人的資本を重要な経営資源と位置付けているが、そのアプローチは異なる。
カプコンは「ナレッジ継承」に象徴されるように、組織として高品質なコンテンツを継続的に生み出す仕組みづくりを重視する。
コーエーテクモは「クリエイティブ&ビジネス」を掲げ、個々のクリエイターやビジネス人材の成長と挑戦を後押しする。
スクウェア・エニックスは「期待役割」と「成果」を軸に、多様な専門人材を活用する組織運営を志向している。
有価証券報告書の人的資本開示は定型的な記述になりがちだが、読み比べることで各社の成長戦略や開発哲学の違いが浮かび上がってくる。IPや業績だけでは見えにくい企業文化を知るうえで、興味深い材料といえよう。
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会社情報
- 会社名
- 株式会社カプコン
- 設立
- 1983年6月
- 代表者
- 代表取締役会長 最高経営責任者(CEO) 辻本 憲三/代表取締役社長 最高執行責任者(COO) 辻本 春弘/代表取締役 副社長執行役員 兼 最高人事責任者(CHO) 宮崎 智史
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高1953億6500万円、営業利益752億9500万円、経常利益741億3400万円、最終利益545億8700万円(2026年3月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 9697
会社情報
- 会社名
- 株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングス
- 設立
- 1975年9月
- 代表者
- 代表取締役社長 桐生 隆司
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高2976億6100万円、営業利益547億3600万円、経常利益644億6900万円、最終利益296億1600万円(2026年3月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 9684
会社情報
- 会社名
- コーエーテクモホールディングス株式会社
- 設立
- 2009年4月
- 代表者
- 代表取締役会長 兼 取締役会議長 襟川 陽一/代表取締役 社長執行役員CEO 鯉沼 久史
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高883億9300万円、営業利益371億6800万円、経常利益570億円、最終利益428億3000万円(2026年3月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 3635





