金融サービスを筆頭に、「eKYC」の導入が進んでいる。
本人確認を意味す「KYC」は、「Know Your Customer」の略。その「KYC」の頭にelectronicのeをつけ「eKYC」と読んでいる。オンラインを利用し安全かつスピーディーな本人確認が可能となっている。
9月1日には、日本円連動ステーブルコイン『JPYC』を扱うJPYCが「LIQUID eKYC」の導入を明らかにした。「LIQUID eKYC」はeKYCシェア3年連続でNo.1の実績を誇り最大手とも言える。「LIQUID eKYC」ではWebブラウザやスマートフォンアプリを使って、免許証やマイナンバーカードなどの本人確認書類の撮影、もしくはICチップの読み取りを行い、自撮りの顔写真との照合を行う。
ステーブルコイン『JPYC』は、暗号資産ではなく前払式支払手段であり、犯罪収益移転防止法上の本人確認は義務付けられていない。一方で従来から一部の注文に対してリスクベース・アプローチに基づき不正利用防止のための確認を行っていた。今回の「LIQUID eKYC」の導入で安全かつスピーディーな本人確認が可能となるという。
「LIQUID eKYC」については、これまでもマネーロンダリング対策としてGMOあおぞらネット銀行や京葉銀行、暗号資産取引所のコインチェックといった金融機関、DMM競輪やオートレースくじなどの公営競技で利用する際の年齢確認のため、導入が進められてきた。
SAKURA GUILD GAMESのブロックチェーンゲームプレーヤーの支援を行うギルド事業においても、導入が決定した。Web3経済圏の拡大に伴い、ハッキングがあった際の大きな金銭的な被害が出始めたことにある。そのため同サービスのセキュリティ向上や、有事の利用者特定への必要性が高まっていることが背景にある。
Web3での事件で言えば今年の3月にはNFTゲーム「Axie Infinity」が日本円にして754億円ほどの資金が北朝鮮のハッカーグループの手により流出した事件が起こっている。
今年8月にはアメリカ合衆国財務省は、8月8日(現地時間)、暗号資産(仮想通貨)ミキサーを運営する「トルネード・キャッシュ」に制裁を措置を行ったばかりだ。
暗号資産(仮想通貨)ミキサーは、イーサリアムとERC-20などの取引において匿名性を高めるサービスとなる。同省が問題誌したのは、その匿名性がゆえにマネーロンダリングに悪用されたという点だ。
利用された資金の中には、北朝鮮のハッカーグループLazarus Groupが強奪した暗号資産4億5500万ドル超(614億円)の資金もあったようだ。トルネード・キャッシュが2019年設立して以降、70億ドル(9444億円)以上がロンダリングで利用されたとアメリカ合衆国財務省は説明している。
今後も各所で「eKYC」利用する流れは進み、より厳格化される可能性は高い。