【海外市場調査】完美世界がおくる中国発乙女ゲーム『黒猫奇聞社』…ハイクオリティーなグラフィックと飽きさせないストーリーに注目が集まる(提供:LIVEOPSIS)vol.11
スマートフォンゲームの日々の運用とその効果をリサーチし、ゲーム関連企業へマーケティングデータを提供するSp!cemart(スパイスマート)。
同社のサービス「LIVEOPSIS(ライブオプシス)」では、ゲームアプリの運用情報はもちろん、他社のYoutubeやTwitterの運用情報なども分析することができ、毎月発行しているレポートを提供している。
また、中国をはじめとした海外のゲーム内イベントやランキング情報も閲覧でき、本連載記事ではスパイスマート協力のもと、海外市場のゲームアプリ動向を紹介する。
今回はPerfectWorld(完美世界)の乙女ゲーム『黒猫奇聞社』をピックアップする。
(以下、スパイスマートが提供するスマホゲーム分析/運営ソリューションル「LIVEOPSIS(ライブオプシス)」での調査内容を基に掲載)
【恋愛 ✕ 謎解きの融合】中国発乙女ゲーム『黒猫奇聞社』
ーハイクオリティーなグラフィックと飽きさせないストーリーに注目が集まるー
注目ポイント
①女性向けの美しいグラフィック
女性をターゲットとした作品のため、特にビジュアルのクオリティーを重視している。キャラの美しい立ち絵と総合的なグラフィックで女性ユーザーの注目を集めている。
②謎解きと恋愛アドベンチャーを融合
従来の乙女ゲームのような男性キャラクターを攻略するモードに、謎解きとテキストアドベンチャーを融合。メインストーリーのインタラクティブ要素を強化したことでゲームのリプレイ性を向上させている。
(画像出典:『黒猫奇聞社』公式サイト)
ゲーム概要
『黒猫奇聞社』はPerfectWorld(完美世界)が「インタラクティブ都市伝説サスペンス(都市懸疑悸動交互)」ゲームとして開発。
8月24日にオープンβ版がリリースされ、事前登録の段階で123万人もの登録者数を集めた。
世界観とストーリー
数多くの伝説発祥の地、「霧城」。プレイヤーはこの都市において「黒猫奇聞社」の社長となり、失踪した兄を探しながら様々な依頼を受けていく。ゲーム中では4人の性格や謎解きスキルが異なる男性キャラクターと出会い、都市伝説の裏に隠された真相を探る。
ストーリーはマルチエンディングとなり、プレイヤーのゲーム中の行動(会話の選択、事件解決数など)によってランクの異なるエンディングが見られる(エンディングのランクはシステムによって決められる)。
▲本作のストーリーアニメーション。
▲本作の主要キャラはいずれも女性のイメージで、いずれもクールで美しくデザインされている。ゲームの全体的な世界観に合わせられている。
(画像出典:『黒猫奇聞社』ゲーム内)
マーケティング施策
学生ユーザーの新学期開始直前である2022年8月末にオープンβ版がリリースされた。テーマとターゲットの特殊性を鑑みて、主にSNSで広告が展開された。
広告クリエイティブは、4人の男性キャラクターを露出させることに最も重点を置いている。男性キャラクターの攻略がこのゲームの主な目的の一つであるため、主要キャラを見せることが女性プレイヤーへのアピールにつながっていると見られる。
また広告のコピーから「真相の追求」というテーマに重きを置いていることが分かる。謎解き要素を強調し、画一的なシステムの他の乙女ゲームとの差別化を図っているようだ。
(画像出典:広告検索エンジン「ADBUG」)
システム
[キャラクター]
このゲームでは、キャラクターは観察系、聞き込み(溝通)系、研究系、フィジカル(身手)系の4種類のパラメーターに分かれている。
▲キャラパラメーター画像。
[中心システム]
ゲームの中心システムは育成・謎解き・アドベンチャー。
中核となるコンテンツは【イベント】で、イベントは観察・フィジカル・聞き込み・研究の4種類に分かれる。タイプの対応するキャラクターを派遣しイベントをクリアすると【手がかり】を手に入れストーリーを進行させていく。
(画像出典:『黒猫奇聞社』ゲーム内)
[キャラ育成]
男性キャラクターは、それぞれキャラレベルアップ・キャラ進化のほかに、パラメーターを上昇させるキャラ訓練などのシステムがある。
▲キャラ進化。キャラが一定のランクに到達すると、新たな立ち絵が解放される。
また、「キャラ運命」という特定のストーリーキャラクターの運命育成を行うことができ、背景ストーリーを解放することができる。
▲対応するキャラのランクアップ素材を消費すると、ストーリーキャラクターにはそれぞれ解放できる背景ストーリーが多数用意されている。
(画像出典:『黒猫奇聞社』ゲーム内)
ゲーム内容
主に、メインストーリー、「リソースステージ」と呼ばれるデイリーステージ、発注書ミッション、ストーリーキャラ専用ステージ、仕事ミッションのシステムのほか、現在の中国産女性向けモバイルゲームでは標準搭載されている「スマートフォンシステム」で構成されている。
スマートフォンシステムとは、模擬スマートフォンのWeChatのようなメイン画面で、チャット、公式アカウント、ビデオ通話などの機能を使うことができるものである。男性キャラクターとの連絡に使用できるほか、公式アカウントを通じたストーリー情報収集、他のストーリーの情報を手に入れることもできる。
▲スマートフォンシステム表示画面。
▲スマートフォンシステムを通じてゲーム内の各キャラと会話できる。キャラの背景のストーリーを知ることができる。
▲解放されたキャラの立ち絵もスマートフォンシステム内に保存される。
(画像出典:『黒猫奇聞社』ゲーム内)
ユーザー評価
アプリマーケットやSNSで収集した一部ユーザーのゲームへの評価をまとめた。
(ユーザー評価出典:AppStore・TapTap)
総評
恋愛要素を弱め、謎解きを中心に据えた女性向けモバイルゲーム。キャラの育成難度などにユーザーの不満が集中するも、キャラデザとストーリーに高評価。
リリース当日にiOS無料ランキング4位、iOSセールスランキング最高順位94位と、女性向け作品自体の市場規模が限られている中でこの成績はまずまずといえる。
このゲームはキャラの立ち絵・ボイス、BGM、ストーリーがプレイヤーから高い評価を受けている。特に、4人の男性キャラクターのデザインとメインストーリーの方向性が好評。また、謎解き要素が多く含まれていることでメインストーリーを飽きさせない工夫が凝らされている。
しかしβ版のリリース後は、ユーザーの不満はキャラの育成とデイリーミッションの設定の2つに向けられた。
1つはキャラのパラメーターを細分化し過ぎていること、そしてスタミナの提供を厳しく絞っていることでキャラの育成難度を高めているからだ。また、もう1つはデイリーミッションの多さでユーザーに負担を感じさせていることが要因である。
女性向けモバイルゲームは複雑なシステムデザインを避ける傾向にあるが、そのセオリーに完全に逆行した形となった。
このゲームはPerfectWorld(完美世界)が『夢間集』シリーズに続いてリリースした女性向けIPとなるが、世界観やシステムがmiHoYo(米哈遊)の『未定事件簿』と重なる部分がある。おおむねビジュアルで女性プレイヤーを引き付けているが、システム上に大きな革新性がない点が残念である。
また、意図的に謎解き要素を多めにしていたことで、恋愛要素(男性キャラクターを攻略する従来型システム)は弱まってしまった。その点も一部のプレイヤーの不満を招いている。こういった点から、中核をなす重要な2つのシステムのバランスが取れているとは言い難い。続編を出すのであれば、最優先で解決すべき課題であるといえる。
▲謎解き要素を強調したことは、結果的に諸刃の剣となった。高い評価を獲得した一方で、従来から乙女ゲームをプレイしていた一部ユーザーからは不評だった。
(画像出典:『黒猫奇聞社』ゲーム内)
▲調査データ全容のご要望、無料アカウント登録はこちらから▲
LIVEOPSISでは中国における、マーケットトレンド、新作タイトルの事前予約状況、注目タイトルの最新情報を取得しております。調査・分析が気になる方はお気軽にお問い合わせください。
■執筆 <株式会社スパイスマート>
スマートフォンゲーム内運用に関する調査・分析を行うリサーチ事業とコンサルティング事業を展開しており、「LIVEOPSIS(ライブオプシス)」というサービス名称で各種ソリューションを提供。
会社情報
- 会社名
- 株式会社スパイスマート
- 設立
- 2015年7月
- 代表者
- 代表取締役 久保 真澄