KADOKAWA、23年3月期決算は売上高16%増の2554億円、営業益40%増の259億円と過去最高 世界的大ヒットゲーム『ELDEN RING』が貢献

KADOKAWA<9468>は、5月11日、2023年3月期の連結決算を発表し、売上高2554億2900万円(前の期比15.5%増)、営業利益259億3100万円(同40.0%増)、経常利益266億6900万円(同31.9%増)、最終利益126億7900万円(同9.9%減)だった。世界的大ヒットとなったゲーム作品である『ELDEN RING』が引き続き貢献し、売上高と営業利益は過去最高となった。最終利益については、不採算事業撤退による減損損失やその他特別損失を計上したことが響いた。

・売上高:2554億2900万円(同15.5%増)
・営業利益:259億3100万円(同40.0%増)
・経常利益:266億6900万円(同31.9%増)
・最終利益:126億7900万円(同9.9%減)

各セグメントの業績は以下のとおり。

 

■出版セグメント

売上高1399億9000万円(前年同期比5.3%増)、営業利益131億5500万円(同24.3%減)だった。

電子書籍・電子雑誌は、市場全体の成長が継続していることに加え、同社が得意とする異世界ジャンルのコミックやメディアミックス作品などを中心に他社ストア向け販売・自社ストア売上ともに好調に推移し、増収となった。

紙書籍・メディア※では、日本IPの人気を背景として、北米・アジアを中心に海外事業の売上成長が継続した。国内では、新刊点数の増加や継続的な返品率改善を実現したものの、市場全体の縮小影響が大きく、減収となった。

新刊では、『陰の実力者になりたくて!(8)』、『ファイブスター物語(17)』(コミック)、『パンどろぼう おにぎりぼうやのたびだち』(児童書)などの販売が好調に推移した。権利許諾収入は増収となった。費用面では、中長期的な成長を見据えた人材への投資、インフレによる紙書籍の資材費などが増加した。

※紙媒体中心からWeb媒体中心への移行を進めていることに鑑み、2023年3月期より紙雑誌事業の名称をメディア事業に変更

 

■映像セグメント

売上高432億8900万円(同30.7%増)、営業利益21億6900万円(同61.8%増)だった。

アニメは新作本数の増加に加え、メディアミックス作品である『オーバーロードIV』や『陰の実力者になりたくて!』などの国内向け配信売上や海外向け売上が伸長し、引き続き力強く成長した。

実写映像では、劇場新作『わたしの幸せな結婚』や制作受託の貢献により増収となったが、第2四半期に一部の作品において一過性の評価減が発生した。

 

■ゲームセグメント

売上高303億5100万円(同55.7%増)、営業利益142億1800万円(同173.4%増)だった。

世界的大ヒットとなったゲーム作品である『ELDEN RING』が増収増益に大きく貢献した。フロム・ソフトウェアが手掛けた同作は海外ゲームアワード「The Game Awards2022」において「Game of the Year」を受賞した。

さらに、『AI: ソムニウムファイル ニルヴァーナ イニシアチブ』や『メイドインアビス 闇を目指した連星』などの新作を発表したスパイク・チュンソフトも増収増益に寄与した。

また、自社IPのモバイルゲーム化作品である『陰の実力者になりたくて!マスターオブガーデン』は想定を超える好評を博した。

 

■Webサービスセグメント

売上高220億6300万円(同3.4%増)、営業利益16億4100万円(同18.5%減)

動画コミュニティサービスでは、動画配信サービス「ニコニコ」の月額有料会員(プレミアム会員)が3月末には131万人となり、2022年3月末からは減少したが、動画にアイテムを贈る「ギフト」や広告などの伸長により増収となった。

第4四半期にはログインMAUや新規視聴者数が増加に転じた。各種イベントの企画・運営では、今後のクリエイター投稿とユーザー視聴のさらなる増加を企図した『ニコニコ超会議2022』をリアル会場でも開催し、チケット・物販売上が増収に貢献したが、費用増加により、全体では減益となった。

 

■教育セグメント

売上高124億7500万円(同15.5%増)、営業利益17億6800万円(同138.2%増)だった。

クリエイティブ分野の人材育成スクールを運営するバンタンでは、新コース設立や展開地域拡大、およびゲームクリエイターを多く輩出する「バンタンゲームアカデミー」などの生徒数が引き続き増加したことにより、増収増益に貢献した。

また、ドワンゴでは、新キャンパス開設などで生徒数が増加しているN高等学校・S高等学校に対して、教育コンテンツ・システムの提供を行うことで引き続き収益を伸ばしている。

 

■その他セグメント

売上高171億9900万円(同49.7%増)、営業損失45億3500万円(前年同期営業損失49億2600万円)だった。

IP体験施設の運営では、集客に苦戦する中、ところざわサクラタウンにおける施設横断的なイベント展開などの取り組みもあり、売上高は増収となった。

MD事業においても増収となったが、材料費高騰などにより微減益となった。また、その他新規事業では一部サービスの開始などにより売上高・営業利益ともに改善した。

 

■2024年6月期の業績見通し

2024年6月期の業績は、売上高211億5000万円(前期比1.7%減)、営業利益178億円(同31.4%減)、経常利益182億円(同31.8%減)、最終利益109億円(同14.0%減)、EPS78.05円を見込む。

・売上高:211億5000万円(同1.7%減)
・営業利益:178億円(同31.4%減)
・経常利益:182億円(同31.8%減)
・最終利益:109億円(同14.0%減)
・EPS:78.05円

全体では、『ELDEN RING』の反動減により減収減益となる見通しだが、ゲーム以外の事業の合算では、増収増益を見込んでいる。

また、今後の持続的な成長を実現するために、積極的な投資を行っていく。出版事業で創出したIPをベースに、海外事業やアニメ事業を拡大し、グローバル・メディアミックスによるIP価値の最大化を図る。

ゲーム事業では、人気IPのロングライフ化やモバイルゲームへの展開拡大などにより、ゲームIPの強化を図り、業績の安定化と中長期視点での成長を目指す。

さらには、Webサービス事業のプラットフォームおよびWeb技術を基盤として、ファンコミュニティ事業や教育事業を発展させていく。不採算事業については、成長性と収益性に鑑みた最適な事業ポートフォリオの構築に向けて、採算改善計画を実行し、リソースを成長分野に再配分していく。

株式会社KADOKAWA
http://www.kadokawa.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社KADOKAWA
設立
1954年4月
代表者
代表執行役社長CEO 夏野 剛/代表執行役CHRO兼CLMO 山下 直久
決算期
3月
直近業績
売上高2554億2900万円、営業利益259億3100万円、経常利益266億6900万円、最終利益126億7900万円(2023年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
9468
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