サイバーエージェント<4751>は、人工知能技術の研究開発組織「AI Lab」研究員の藤本悠雅氏と蟻生開人氏、阿部拳之氏らによる論文が「IJCAI(International Joint Conference on Artificial Intelligence)2023」に採択されたことを発表した。
「IJCAI」は、人工知能分野における世界最高峰の国際会議のひとつで、「NeurIPS」「ICML」「KDD」などと並んで、人工知能分野で権威ある国際会議の1つ。今回「AI Lab」から採択された論文は、2023年8月にマカオで開催される「IJCAI 2023」で発表される。
なお、本研究は「AI Lab」が独自のプロジェクトを持つ若手研究者とともに目的を設定し、共同で研究を行う、「協働研究員制度」による成果になる。
■研究背景
近年インターネット広告配信をはじめとした様々なウェブサービスにおいて、機械学習を用いた意思決定の自動化が重要な役割を果たしている。例えばインターネット広告のオークションにおいては、自社のモデルだけでなく他社のモデルも独立に入札額を決定するという、意思決定モデルが複数存在する状況を想定する。こうした複数のモデルを学習させる問題は「マルチエージェント環境における学習」と呼ばれ、単一のモデルを学習させる場合には発生しない様々な研究課題が存在する。
同社では、この領域に対して「AAMAS 2021」「UAI 2022」「AISTATS 2023」といった権威ある国際会議にて発表を行うなど、積極的な学術貢献を行ってきた。
■研究概要
今回採択された論文「Learning in Multi-Memory Games Triggers Complex Dynamics Diverging from Nash Equilibrium」では、各意思決定主体が過去の行動を記憶して次の行動を決定できる能力を持つ状況下での学習について発生する現象について明らかにした。
図で表しているように行動を記憶する「メモリ」を導入することは、各意思決定主体がより柔軟な意思決定を行うことを可能とする。その一方で、メモリの導入が同時に複雑な意思決定にもつながるため、メモリを導入した際の意思決定主体の学習過程を理解することは非常に困難な課題となっている。
本研究では、まず2つの学習アルゴリズムを提案し、それらのアルゴリズムを統一的な枠組みで捉えられることを示した。次に、これらを用いた場合に、メモリを持つ意思決定主体同士が互いに複雑な戦略を取りながら、両者にとって最適な状況からむしろ離れていく挙動を示すことを確認した。
この現象はメモリの導入によって引き起こされる特有の問題であり、より複雑な意思決定モデルを用いた際に発生する可能性がある問題を提起している。
■今後
本研究は、意思決定主体がより柔軟な意思決定を行うため過去の行動記憶である「メモリ」を導入して学習を行った際に、両者にとって最適な状況からむしろ乖離してしまうという理論的に新しい問題を提起した。この問題を解決することによって、上記の柔軟な意思決定主体が最適な状況を学習できるようになることが期待される。
新しいAI技術を提供し続けるため「AI Lab」は今後も基礎的な研究に取り組んでいくとともに、「協働研究員制度」により若手研究者の新しい視点を取り入れ、社会実装に繋げることを目指していく。
会社情報
- 会社名
- 株式会社サイバーエージェント
- 設立
- 1998年3月
- 代表者
- 代表取締役 藤田 晋
- 決算期
- 9月
- 直近業績
- 売上高7202億0700万円、営業利益245億5700万円、経常利益249億1500万円、最終利益53億3200万円(2023年9月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 4751