『モンスト』データアナリストが語るゲーム分析における仮説立てと…シンキングデータ社が語るユーザー定着における分析手法をレポート

シンキングデータは、6月16日、都内某所にて、「「ThinkingData 0→1 Workshop」 MIXI・ThinkingDataが語るデータ分析の実践 〜クラフトビール片手に勉強・交流会〜」と題したセミナーを開催した。

本セミナーは「ゲーム分析」のノウハウを共有することで業界発展に貢献できればと考えのもと、よりカジュアルに交流ができる場として、「ゲームにおける示唆を生み出すデータ分析のあり方」を考えていくイベントとして開催された。イベントではMIXIの土岐氏とシンキングデータの白石氏が登壇し、データ分析における講演をおこなった。

本稿ではセミナーの内容について一部紹介していく。


ゲーム分析はアクションを軸に考えていく

MIXIの土岐氏からはゲーム分析における成果を挙げる分析について語られた。

課題解決自体は、どのビジネスパーソンも行うことであるが、その手段としてデータを用いるのがデータアナリストとなる。

そんなデータアナリストだが、運営型のソーシャルゲームやスマートフォンゲームでよく上がる悩みについても紹介された。

数ある悩みの中、「独学でそれっぽくデータ分析を行っている人」が多いと思われるゲーム会社のデータアナリストに向けて気付きとなる話になれば幸いと話した。

分析成果が出せないと悩む点として、分析したが提供者の反応がいまいちだったり、改善案を出すことができないことが多く、その場合は目的設定か立てている仮説に問題があることが多いと土岐氏は感じているようだ。

ここから本題となる仮説立てについて、実際の『モンスト』での分析経験を基にした仮説立てについて話してもらった。

分析においてはまずはじめに、目的の明確化を行うことになるのだが、ここで意識するべきは、アナリストは絶対に言われたことをやるだけにはならないようにすることだそうだ。

分析内容の他にも、分析後にどういった事がしたいのかも注意深くヒアリングしていく必要があると説いた。分析後のアクションについて期待値を揃える必要がある。

ここで重要なことは、「アクション=施策」という訳はないということだ。

ゲーム内の施策の他にも、社内での説得材料として分析結果が欲しいという需要もアクションに含まれる。『モンスト』では分析依頼時になるべく言語化をするようにしてもらっており、想定するアクションまでも記載するようにしているそうだ。

アクションをヒアリングできたあとは、目的とアクションがしっかりと紐づくかも確認していく必要がある。

もし目的とアクションが一致していないのであれば、再度ヒアリングを行い、ロジックを整理して、飛躍や破綻している部分を確認する必要がある。

このように目的や、やろうとしているアクションについても、データアナリストはしっかりと考える必要があると説いた。各アナリストが分析の責任者であるという意識を持って動くことが大事だと話した。

続いて、仮説立てについて語られた。

まず初めに土岐氏から仮説立てのNG場面が挙げられた。

【仮説立て NGケース】

  1. そもそも仮説を立てていない
  2. データを見ながら仮説を立てている
  3. 仮説の前提が矛盾している
  4. テーマが変わっても同じ仮説になる

    これらは総じて仮説を立てられていない状態だという。そもそも仮説とは「分析目的の回答になりうる仮の答え」となる。

    仮説は、目的に対して本質的な回答を出す可能性を上げ、やるべき作業量や見通しを最適化する為に行うものだそうだ。

運営型のゲームでは、ログやスナップショットなどのデータが豊富にあるが、そこが仇となり適切な仮説が立てられていないことも多いという。データから模索する手法もNGではないが、目的への回答として不足していることが多いようだ。

仮説はあくまで分析後のアクションを見据えた上で考える必要があると話す。

ここで仮説を立てて検証を行うまでの流れも紹介された。

そして、課題全体に対して、大きいセグメントから小さいセグメントに切り分けていくように調査をしていくそうだ。

もし途中で、仮説が誤っていたり、否定されていた場合は途中までで合っていた仮説や情報を元に再度構築していく。気をつけるべきは、情報に辻褄を合わせたような仮説にしないことであり、あくまで目的に対する回答なるかどうかを意識し続けることが大事となるそうだ。

他にも、誤った仮説を立てないためには、プロダクト理解を深めることも重要だそうだ。

総括として土岐氏からは、基本的にはアクションを軸に分析を行うことが重要であり、依頼する側もアクションも含めて一緒に議論していきたいとして講演は終了した。


アプリゲームにおいてなぜ分析が必要なってきたのか?



 続いてシンキングデータ社の白石氏が登壇した。まず初めに、データ分析がなぜ必要かについて語られた。

データ分析の必要性が上がっている理由として、市場の成熟によって差別化が困難になり競争が激化していること、さらに楽しみ方がたくさんあるゲームにおいて、さらに顧客が求めていることが複雑化していることが挙げられた。

競争の中で、経営資源を適材適所に配置して効率化を図りつつ、顧客ニーズを捉え、応えていくことで、差別化していく必要が高まっている。

プレイヤーの多様化の点では、インターネットやスマートフォンの普及により、さまざまな価値観に触れる機会が増え、その許容される社会になっていることから、さらに顧客理解が難しくなっている。

特にゲームでは、遊び方が多様であり、爽快感を求めるプレイヤーも、キャラへの愛着を求めるプレイヤーもいる。この中で単一的な施策ではどうしてもそれぞれが相反する場合も発生するだろう。

そういった前提にて困難になってきている差別化戦略において、分析においてどのように課題を解決していくかの考え方についても語られた。

また、データを活用することにより組織活性化や迅速な意思決定にも繋がるとし、昨今のアプリ市場競争では分析は必須言えると白石氏は話す。

分析という側面において差別化戦略の全体像も紹介された上で、なぜ分析が進まないかの課題についても触れられた。

ハード面とソフト面という要素から二つの要因が挙げられ、ハード面においてはシステムが複雑になってしまいがちになる点があるそうだ。

特にゲーム会社では、ゲーム開発から広告マーケティング管理など多くのツールを活用していることが多く、データの抽出や管理が困難なことが多い。

またソフト面では、どうしても勘や属人性に依存した意思決定や仮説立てにもなりがちだ。もちろん経験も大事ではあるのだが、このスピードの激しい市場では再現性や一貫性も求められており、それだけでは不安定になるのが実状だ。

かつ、そんな課題に人材をあてようとしてもすぐにアサインできるわけではない。採用や教育コストもかかってしまう。

これらの課題要素が分析が進まない理由だとして白石氏は述べた。

これらの課題を解決するためとして、分析プラットフォーム「ThinkingEngine」が紹介された。「ThinkingEngine」は、誰でもデータアナリストになることができるという設計思想で生まれており、データを理解し、分析するスキルを身につけることができる。

また、「ThinkingEngine」は、データの取得から理解までのフローを一気通貫で実現することが可能であり、データの無駄をなくし、誰でもダッシュボードを見てデータを理解することができるそうだ。このような効率的なデータ分析により、データの理解と分析を行う時間が短縮され、より効果的な分析やクリエイティブ制作に専念することが可能となる。

イベントでは他にも参加者とのディスカッションやデータアナリスト間での情報交換も盛んに行われた。シンキングデータでは他にもゲーム分析に関する情報を提供している。gamebiz内にても特設ページを展開しているので気になる人はチェックしてみよう。