岐路に立つスマホゲームの受託開発 "1粒で2度美味しいビジネス"も 競争激化や内製化で案件獲得の難易度上昇

木村英彦 編集長
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スマホゲームの受託開発に関して、事業環境の厳しさを明かす会社が最近になって増えてきた。ギークス<7060>は、先日、パブリッシャーが新規スマートフォンゲームの開発案件の発注に慎重な動きがあり、子会社G2 Studiosの受注が遅れている旨の発表を行ったほか、受託開発大手のトーセ<4728>も同様に案件数が減少傾向にある旨のコメントを出している。

エヌジェイホールディングス<9421>は、第1四半期の決算説明資料においてゲーム事業の受託開発中の案件状況を公開し、家庭用ゲーム機やPCなどパッケージソフトの案件が4件であることを明らかにした。スマートフォンゲームの開発案件については前回発表と変わらずの0件とのこと。同社は、ゲームスタジオとトライエースを傘下に持つ。

スマホゲームに限らず、オンラインゲームの受託開発は、一部で「1粒で2度美味しいビジネス」(大手証券引受担当者)といわれてきた。リリースまでの開発を請け負って収益を得られるだけでなく、リリース後の運用についても引き続き受託することで安定的かつ継続的に収益を上げることができるからだ。

受託開発会社は、パブリッシャーに比べて安定した相対的に収益を維持してきたが、ここにきて案件獲得に苦戦するケースが増えているようだ。

この背景には、スマホゲーム市場の成熟化が指摘される中、競争の激化とともに新作開発に必要な開発費やマーケティング費用も高騰し、パブリッシャーの投資に対する姿勢が以前よりも慎重になってきたことがあげられる。

開発費の高騰については、スマホゲーム市場が本格的に拡大してから毎年のように指摘されてきたことなのだが、いまや20億円は珍しくなくなっており、1タイトル失敗したときの経営リスクが非常に上がっている。モバイルゲーム会社はおろか、大手ゲーム会社であっても少なからずダメージを受けるようになっている。

『原神』の開発費が3ケタ億円を超えたという情報が業界に衝撃を与えたことは記憶に新しい。「開発費が話題になる作品は、ほぼ例外なく途中まで作っていたものを放棄し、作り直したためだ」(業界関係者)という声もあったが、開発費が上がり続けていることに間違いはない。

発注元であるパブリッシャーは、不採算タイトルを閉じ、一定の成果が出ている既存タイトルにリソースを集中して運用を強化する動きを強める一方、新作についても開発・運営面でのクオリティアップを図るため、外部企業への発注を減らし、内製に移行する動きも出ているという。

こうしたなか、引き続きモバイルゲームの開発にも取り組む前出のトーセでは、従来のゲームユーザーとは異なる層をターゲットとしたり、今までのゲームにはなかった要素を新たに組み込んだりといった対策など、新規性のある案件に取り組みたい、としている。

他方、モバイルゲームにリソースを傾けていた受託開発の一部企業は、コンソールゲームやSteamへ取り組みや、ブロックチェーンゲームやメタバースといったWeb3関連への進出など、新しい収益源を模索する動きを強めている。

未上場の開発会社の中には、表立った動きとしては見えづらいが、オーナー社長が保有株式を中国など海外大手ゲーム会社に売却して傘下に入り、そこから仕事を請け負うことで生き残りを模索する動きもある(期待したほど受注がないとして揉めているケースもあると聞く)。

受託を中心に収益を上げてきたゲーム開発会社の一部は、ここ数年はモバイルゲームの開発に注力することで収益を伸ばしてきたが、戦略面での転換が求められているようだ。