日本の位置情報ゲーム市場は23年6億ドル規模で世界最大 電車・徒歩中心の移動手段や日本発IPタイトルの多さ、治安の良さなどが背景 Sensor Tower調査
Sensor Tower(センサータワー)は、日本の位置情報ゲーム市場に関する調査を行い、2023年の収益規模は6億ドル(899億円)を突破したとするレポートを公開した。日本の位置情報ゲームの市場は、世界市場の5割を占め、アメリカの1.6倍の規模と世界最大の規模となっている。レポートの執筆したHideyuki Tsuji氏は、その背景として、自動車による移動が中心である米国と異なり、徒歩や電車による移動が多く、そして治安が良いため、モバイルデバイス片手に安心安全にお出かけできる環境にあると指摘した。そして人気IPを活用したタイトルであること、他のゲームとの掛け持ちプレイが容易であることもあげた。
■人気の位置情報ゲームはドラクエ、ポケモン、モンハンのIPを活用、アメリカの1.6倍の収益を上げる日本市場
位置情報ゲームはモバイルデバイスの特徴を生かしたジャンルの1つで、複数のタイトルがリリースされている。2023年の日本における位置情報ゲームの年間ユーザー消費額は、6億ドル以上を記録した。これは世界の位置情報ゲーム収益の50%を占めており、日本は位置情報ゲームジャンルにおいて世界最大の市場となっている。
2023年1月から12月までの日本における位置情報ゲームの収益トップは『ドラゴンクエストウォーク』(SQUARE ENIX)で、3億ドル(449億円)を記録した。これは日本の位置情報ゲーム収益のおよそ半分に相当するとのこと。
2位は『Pokémon GO』(Niantic)、3位は『Monster Hunter Now』(Niantic)でいずれもNianticがリリースする位置情報ゲーム。同期間のアメリカと韓国市場では、どちらも1位が『Pokémon GO』で、アメリカで3億ドル以上、韓国で1400万ドル(20億円)以上の収益を達成した。
2023年の位置情報ゲームの収益を市場別に見ると、日本では位置情報ゲームトップ5の合計収益が6億2000万ドル(929億円)となっている。一方、アメリカでは3億8000万ドル(569億円)と日本の60%程度の収益にとどまっている。また、韓国では1600万ドル(23億円)足らず、中国では位置情報ゲームの文化が根づいていなようで200万ドルにも届かない。
これらのデータから、位置情報ゲームの市場は海外の主要市場と比較して、日本が圧倒的に大きいことがわかる。2023年の日本のモバイルゲーム全体の収益において、位置情報ゲームは5%のシェアを占めるに至っている。
実際、日本のモバイルゲーム収益ランキングでも人気を確認することができる。Sensor Towerのデータによると、2023年の日本のモバイルゲーム収益トップ10では、6位に『ドラゴンクエストウォーク』、9位に『Pokémon GO』と2つの位置情報ゲームがランクインしている。
■移動手段、日本発のIP、掛け持ちプレイが人気要素
海外と比較して、日本で位置情報ゲームが人気となっている要素としてはなにが考えられるだろうか。1つは移動手段。日本では電車や徒歩での移動が日常的だが、アメリカでは自動車が一般的。
こうした日本の生活習慣に合った位置情報ゲームもある。2023年の日本の位置情報ゲーム収益ランキング4位に入っている『駅メモ! - ステーションメモリーズ!-』(g1dash)は、日本に9,000ヵ所以上ある駅を対象とした位置情報ゲームで、通勤や通学の途中でも楽しめるタイプのモバイルゲーム。
また、日本で人気の位置情報ゲームは、ゲームから派生したIPを活用している点も大きな要素。2023年の日本の位置情報ゲーム収益トップ5において、4つのタイトルが日本発のゲームIPを活用したものになっている。すでにあるゲームから別ジャンルのゲームを展開することは容易ではないが、日本における位置情報ゲームでは成功している事例と言える。
日本で人気の位置情報ゲームのユーザー分布を見ると、女性ユーザーの比率が高いことがわかる。Sensor Towerのデータによると、2023年第4四半期の日本のApp Storeにおけるユーザー分布では、いずれの位置情報ゲームも概ね男性6:女性4の比率で、2023年8月末にリリースした『信長の野望 出陣』(KOEI TECMO GAMES)では、ユーザー比率が男性5:女性5となっている。これら5タイトルの平均年齢は35歳で、通勤・退勤時、お昼休みにプレイされていると推測している。
モバイルゲームの時間帯別滞在時間では、一般的に21:00台に滞在時間が増える傾向がある。しかし、位置情報ゲームではその様相が異なる。Sensor Towerのデータによると、人気位置情報ゲームの時間帯別滞在時間では、8:00台、12:00台に増加しており、17:00~18:00台がピークとなっている。この様子は、日本のトップ収益ランキングで上位に入る『モンスターストライク』(MIXI)と『ウマ娘 プリティーダービー』(Cygames)との比較でもわかるという。
時間帯別滞在時間のデータから、日中は位置情報ゲーム、帰宅後は別のモバイルゲームを楽しむ掛け持ちプレイがしているユーザーも多いことが推察できる。
また、人気の位置情報ゲームに費やした時間では、『ドラゴンクエストウォーク』が突出している。Sensor Towerのデータによると、2023年10月から12月の日本におけるユーザーが費やした時間では1~10時間/月がボリュームゾーンだが、10時間以上/月では同作が他を圧倒しており、30%以上となっている。次に大きい『Monster Hunter Now』が15%なので、2倍程度の差がある。
日本の位置情報ゲームの年間収益は6億ドル以上で世界の約50%、ドラクエウォークは月間滞在時間10時間以上が30%以上
https://sensortower.com/ja/blog/japan-is-the-largest-market-for-geolocation-games