Yostar、Grams、Gravity Game Ariseが語るゲーム運営におけるデータ活用とは?…ゲーム業界のデータアナリストやマーケターが集まったMeetupをレポート

シンキングデータとgamebizは、去る12月7日、「ThinkingData 0→1 Meetup 2023Winter」〜Yostar、Grams、Gravity Game Ariseが語るデータ開発体制を大公開〜と題したセミナーを開催した。

本セミナーでは、各ゲーム会社のデータ分析チームの戦略や施策にどう活かしていくのかに焦点を絞り、人気タイトルを運営・分析を行なっているYostar社、Grams社、Gravity Game Arise社のキーマンが登壇し、それぞれの会社ではどのような体制で取り組んでいるのかなどについて語られた。

本稿ではその模様をレポートしていく。

Yostar李氏が話す同社のゲーム運営の考えとは



まず初めに、Yostar代表の李氏が登壇し、インタビュー対談形式にて、同社のゲーム運営に対する考え方や、参加者からの質問に答えていた。

李氏からはまず、データ活用を行う前にゲーム運営体制について語られた。Yostarではできる限り、社内で運営を行うことを心がけているそうだ。

というのも、ゲーム運営においては、予期していなかったハプニングなども起こることが多くある。その際に外注で行っていると、対応の意思決定や対応のスピードがどうしても遅くなってしまうため、できる限り社内で運営できるように心がけているそうだ。

またもう一つのメリットとして、会社にノウハウが溜まっていくことも意識しており、長期的な目線で考えると社内で取り組んでいった方が結果的に良いと判断しているそうだ。

そして、運営方針として意識していることは、継続することだと話す。

運営型のゲームにおいては、リリース立ち上げ時などで施策を行うこと自体は容易だが、ずっと運営し続けることが大変だと話す。

自分たちのやりたいことやユーザーが喜ぶであろうことを信じて運営し続けることが大事だと話した。

会場では、来場者からの質問が多く寄せられており、分析における考えについても質問が寄せられていた。

Yostarでは、社内にも分析専門チームはおり、開発ともコミュニケーションを取りながら運営を行っているそうだ。

「Thinking Engine」についても、本国では導入されており、国内利用においても導入検討が進められているという。

そんなYostarがKPIで重要視している指標はDAUやMAUだそうだ。李氏の考えとして、運営型ゲームにおいては遊んでいただくユーザー数が多いほどよいと考えているそうだ。

売上やARPUといった指標では、どうしても短期的な目線になりがちになるので、ユーザーさんにどれだけ遊んでもらったか、手に取ってもらったのかを意識しているそうだ。

ユーザーさんが遊び続けてくれているのであれば、一時的に売り上げが落ちたとしても、長期的にみると影響がないという方針のようだ。

他にも、ゲーム内コラボを行う際の作品を選ぶ基準なども話されていた。

Yostarでは基本的に、その作品にあった世界観や共通性を持った漫画作品などとコラボレーションを行うそうだ。ただ、それだけではマンネリ化にもつながるので、意外性を持ったコラボレーションも行うという。

その匙加減については、ゲームの状況やユーザーの声などを注意深く見つつ行っているという。ゲーム運営においては、そのバランス感覚も重要となると話し、Yostarのスタッフにはそのバランス感覚を持っているかどうかは常に意識させているそうだ。

他にも来場者からは、ゲーム運営における判断基準なども深く質問がされていた。最後に李氏からは昨今は競争も激しい時代になっているが、ゲーム業界全体が盛り上がってこそだと思うので、皆さんと一緒に盛り上げていけるようにこれからも頑張っていきたいとして講演は終えた。


ゲーム運営で考えるべきデータ分析の体制とは?



続いて、株式会社グラムスの石川氏と寺門氏、そしてエスパーダ株式会社の加瀬氏が登壇。シンキングデータのデータアナリスト白石氏も交えたトークセッションが行われた。

グラムスといえば、『ラグナドール』を運営しているゲーム会社だ。『ラグナドール』は2021年10月にリリースされたスマートフォンゲームとなり、エスパーダ株式会社と共に開発・運営が行われている。

そんな『ラグナドール』では、別のデータ分析ツールを使用していたそうだが、コスト面なども考えた結果、「ThinkingEngine」への移行を検討していったそうだ。

導入にあたっては、コストを抑えたい他、工数削減や、データの連続性を保ちたいという考えもあったようだ。

何より効果的に利用したいという考えが強く、ゲーム運営においてどこまで活用できるかが焦点となっていたそうだ。

『ラグナドール』のコアなゲーム性を理解して分析をする必要があったので、これまではデータをうまく活用できていなかったと話す石川氏。移行するにあたっては、実践できているかどうかも判断基準になったそうだ。

実際に「ThinkingEngine」を導入するにあたっては、BigQueryのデータをインポートできる仕組みも開発してもらい、手厚い導入サポートがあったという。

そして、シンキングデータのデータアナリストのサポートもあり、今では自社でデータ分析を行えるような体制ができたそうだ。

この体制構築にあたって、白石氏はデータアナリストとしての目線だけをあえて意識するようにしていたそうだ。ゲーム性への理解はグラムスやエスパーダに任せる形として、役割分担を明確にしたチーム一体として体制を築いていくことを意識していったという。

データ分析というと、データがあればすぐに問題が解決すると思われがちだが、サービスへの理解やどのように仮説を立てて分析していくのかも考えなければ、データ分析は活かされない。この部分は、泥臭くも地道に築いていく必要があるとして、体制構築のサポートをしていったそうだ。

石川氏や加瀬氏から見ても、現在の体制として進めた方が効果的なのではと話す。外部企業に分析をお願いした場合、開発を行っているゲーム会社と比べると、どうしてもゲームへの理解は深くはない。だからこそ、ゲーム内の施策の振り返りにおいても、数字だけのフィードバックになりがちであり、現場やユーザーとの乖離がみられたそうだ。それであれば数字の見方や考え方だけをサポートしてくれる方が結果的に良い体制になっていくのではないかと話した。

いろんなツールを使っていると、離脱するポイントなどをかなり細かく表示してくれており、その結果をどのように見るべきかなどをサポートしてもらったので助かった。

実際に、ユーザーのセグメントの切り方やアクティブユーザーの定義づけなどにて白石氏に相談することで構築していったそうだ。

例えば、”デイリーアクティブユーザー”においても、ゲームの仕様や遊ばれ方によってもチューニングしていく必要があるそうだ。

“デイリー”と言っても、どの時間で区切るのか。”アクティブ”においても起動タイミングで集計するのかどうか。そのゲームの配信エリアや遊ばれ方においても見るべき点は変わってくる為、他社の事例なども参考にしながら設計していったそうだ。

仮説においても、まずは開発側にて仮説を立てた上で白石氏と共に見るべきKPIを設定。その後に振り返った際に、現場やユーザー視点との乖離があるかどうかも確認しながら進めていったそうだ。

総じて、冷静に数字を見ていくことと、ユーザーの熱量や開発側の情熱をうまく掛け合わせることができている今の体制が、ゲーム運営においても功を奏したようだ。

他にもトークセッションでは、来場者からの質問などにも答えていた。セグメント設計などもどのようにしていくのかなどの、現場ならではの質問も多く見られた。

 

シンキングデータは救世主!?GRAVITY GAMES ARISEが語る「ThinkingEngine」の真価とは

GRAVITY GAME ARISEからは柿本氏が登壇し、「ThinkingEngine」の導入事例について語れた。

GRAVITY GAME ARISEでは、2023年に『奏でて女子校〜なでじょ〜』をリリースした。

これまで数多くのゲームを開発・運営してきた同社であるが、本ゲームのリリースにおいては、環境構築に十分な時間が取れず、理想的なデータ抽出環境を用意できないでいたという。

実際に、「ThinkingEngine」導入前は細かな調査は不可であり、開発環境からエンジニアにログを抽出してもらいその後Excel検索を駆使してデータを抽出して…といった状況だったという。

▲「ThinkingEngine」導入によって、2週間かかっていた対応時間も当日対応が実現したようだ。

導入後はどうなったのかというと、即日調査完了で問い合わせ処理も完了できるようになり、ボタン一つで解決できる工数にもなった業務もあったようだ。

導入前については、基礎KPIは計測していたものの、バトル結果や強化結果などの細かなデータを取得できず、ゲーム運営については致命的な状況だったという。

導入後については、バトル結果や強化結果なども計測できるようになり、”取れないデータはない”と言えるまでになったそうだ。

実際に、Vtuberとのコラボイベントにおいては、こちらの分析業務も活用されることに。期間中では、コラボガチャを行ったユーザーにグッズのプレゼントを行ったそうだ。

ただ、グッズをプレゼントするにあたって、景表法へのケアも必要となる。今回の場合、生涯課金実績が4,000円以上の方が対象となるようだったが、ゲームデータが容易に抽出できない状況下において、各ユーザーの生涯課金情報を調査するのは通常であれば困難である。ただ、シンキングデータを導入することによって調査が完了できるようになったそうだ。

慣れてくると5分で調査とリスト抽出が可能となるそうだ。今後は様々な施策も打ち出す上では大きな工数削減になったようだ。

最後に、これからのゲーム運用においては「ThinkingEngine」はゲーム会社の救世主になっていくだろうとして講演が終了した。

セミナーでは懇親会も実施され盛んに情報交換を行われていた。次回は3月を予定しているという。ゲームの運営や分析に携わる人も多く参加しているので、情報交換など気になる人はチェックしてみよう。