グローバルマーケットリーダー(2) シンガポールからスマホで世界を目指す日系ベンチャー「Metaps」【中編】

株式会社HatchUPの八反田智和CEOによる連載「グローバルマーケットリーダー」の第2回目となります。今回は、引き続きMetaps(メタップス)の佐藤航陽氏へのインタビューです。Metapsは、リワード広告やアプリ紹介アプリなどスマートフォン関連のサービスを矢継ぎ早にリリースし、業界でも注目を集めています。今回は、同社のビジネスの特徴やアジア市場での取り組みなどについて聞いています。大変読み応えのある内容ですので、ぜひどうぞ。   ■シンガポールからスマホで世界を目指す日系ベンチャー「Metaps」【前編】   ―――Metapsの始める経緯と基本的なサービスを教えてください。 Metapsのサービスの内容としては、アプリのマネタイズを支援するプラットフォームを作ろうっていう趣旨で、媒体となる開発者側と、広告を出稿したい広告主をつなげようというネットワークの一つですね。 リワード広告という仕組み自体で、少し特殊なのが、通常のインプレッションベースではなくアプリ内の通貨の代わりとして使える仕組みなので、お金払いたくないユーザさんもマネタイズに取り込めるという非常に便利な仕組みかと思います。 フリーミアムモデルのもう少し先、完全にフリーなのでユーザからお金をもらうところを広告料で補うといった、ユーザ、広告主、媒体でwin-win-winのモデルが築ける仕組みになっています。 うちはiPhoneはやっていなくて、アンドロイドに特化している理由としては、iPhoneに比べてアンドロイドのアプリ開発者は全く儲かっていないということが大きいです。 AndroidはiPhoneに比べて、収益的にも1/8とか1/10くらいしか出ていないと思います。それが日本だけでなく世界中でこのような状態なので、だからむしろこれがチャンスだなと感じてまして、世界中で困っているのであるのならば、そこを解決できるのであればその領域でナンバー1になれると考えて事業をしています。 シンガポールの法人が子会社として存在していて、そこに本社をおいている理由としては、3/11の震災の影響もあり、ジャパンブランド、日本だけで事業を行うこと自体がリスクの一つだと考えているからです。アジア1や世界1を目指すのであれば、日本に拠点を置くより、シンガポールや上海、シリコンバレーに拠点を置いたほうが、成長速度が速いんですよね。 どうしても日本の中で事業をすると、日本人採用して日本の文化の中で泳がないといけないのでグローバル展開からは遠ざかってしまうかなと考えて、シンガポール周辺国を攻めようかなと思っています。リージョナルオフィス的なイメージですね。 アンドロイドはオープンソースなので端末自体の価格も下げることができます。アジアでのiPhoneの値段が5~8万円でアジアの人々は収入がそんなに高くない人が多いのでなかなか手に届かないもの高級品です。スマートフォンはアンドロイドが今後アジアでは急激に普及してくることを予想して、アジアの中継地としてのシンガポールに本社を作りました。 北米は既にスマートフォンの文化が成り立っていて、業界ネットワークも存在してるのでここからシリコンバレー攻めるのはハードルが高いなと正直感じました。 今後急成長するエリアを先回りする意味では、中国、インドネシア、台湾、韓国、ベトナム、フィリピンなどの国々を狙おうと思って動いています。 ―――そのネットワークというのはリワードだったりスマートフォンのアドネットワークはプレーヤーがいるよということですか? はい、むしろアメリカではプレーヤーは多すぎて、需要に対して供給が多すぎるのではないのかという市況感で、競争が激しすぎると思います。 逆に東南アジアの国々ではほとんど文化が存在していないので、そちらで新しく作れたらと思います。 ―――今のところin-app-purchaseをリワードでヘッジするみたいなのはないんですか? 一応あるんですけど、併用じゃないと難しいので。クレジットカードの登録も求められるので、クレジットカードを持っていないアジアのマジョリティの人たちをマネタイズに取り組むには、リワード広告でないと難しいと思いますね。 日本のようにモバイルコンテンツをお金を払って買うというカルチャー自体が存在していない国のほうがアジアは圧倒的に多いです。日本やヨーロッパのコンテンツに対する考え方はだいぶ進んでいますね、そのせいでガラパゴス化しているというのも事実ですけど。 ―――MoVendというのはどうですか?あそこはクレジットカードとか色々な決済手段に対応していると思うんですけど。 あそこは、決済周りですのでbokuとかの競合になるのかな?協業はできそうですけどユーザはやはりお金を支払う必要がありますよね。 ―――ああ、そうなんですか? ユーザーが無料で遊べて、有料なコンテンツまでアクセスすると、なにかしら、決済を求められるので、お金払いたくないユーザーは離脱してしまうことが多いですよね。 うまくアプリ内課金を提供する企業とリワード広告ネットワークが提携していければどんどんコンテンツ開発者の収益化のハードルも下がってくるでしょうね。 ―――では、競合さん、ここは面白いなとかはありますか? 競合としては、北米のTapjoyさんが圧倒的なシェアを持っていて強いなと思います。彼らは北米NO1のリワード広告のネットワークを持っているので。 彼らもアジアの市場を非常に注目していて、世界戦略上彼らとどういう風に競争、もしくは棲み分けしていくかが私達の一番の課題ですね。 私たちとしては、広告主に対してではなく、いかに開発者が儲けやすいかということを考えてシステムを作っています。 開発者にとっての導入しやすさに力を入れているので、システム的にも管理画面をしっかりつくっていて、そこから更に広告を打って掲載して、だけでなく、効果はどうなの?というところまでツールも含めてワンストップで提供しています。 ただの広告ネットワークというよりは、集客化と収益化、最終的には効果測定の分析の部分も含めてご提供するワンストップパッケージになっています。 ―――集客のところはどういうふうに実現しているのですか? ネットワークなので媒体を囲い込んでいけば、媒体規模がそのままエンドユーザの集客量につながります。 ―――開発者側も色々広告付いて、収益化もできていてアプリ内の色々効果測定も見えて、うちのアプリ、いけてるんじゃないかっていうのを分析しつつ、ちょっとインストールを1万2万とか足すと、これくらい利益でるかもしれないからインストールを逆にmetapsを使ってかき集めたいというのに対応しているのですか? それも可能ですね。 広告主と媒体が同じなので、あるときは広告主で、あるときは媒体、みたいな感じです。 ―――その広告の入稿というか、画像テキスト入れてもらえば、広告の使用の管理画面でやってもらえれば、それでもう広告主になってしまって他のアプリからインストール持ってこれると? はい、管理画面上では広告主と媒体の管理画面というのは同じなので、どちらにも対応しています。 ―――価格とか効果とか色々なのを含めてベンチマークであるTapjoyさんと比較するとどんな感じですか? 国によって相場が全然違うのでなんとも言えない状況です。日本のリワード広告相場は非常に高いです。そういう意味で媒体側はチャンスではありますね。 ―――では差別化をどこで図るんですか? 私たちは、アジアに特化したいと思っています。競合の多くは北米なので広告主も媒体も北米なんですね。なので、今後言語対応で、中国や韓国、インドネシアとなるとそれぞれの言語対応とそれぞれの広告主が必要かと思っています。 そういう国ごとの丁寧なローカライズで一つ差別化をはかっていきたいなと思います。 アジアの各国ごとに媒体と広告主を広く獲得していこうと計画中です。シリコンバレーの資本を多くもつ企業にとっては少しやりたくないな、めんどくさいなという領域こそ自分達が狙う市場です。 ―――お金にならないマーケットになっちゃいますもんね。 そうですね(笑)ただ、今後お金にならないだろうと思われていた市場も急成長していく、成長する前の段階で参入して種を植えておければ私達としは良い投資だと思ってます。 私たちにとっては、お金にならないのではなく、お金になる仕組みがないだけなので、今回みたいな仕組みで、ユーザーに負担を求めないでも開発者がマネタイズできる土壌を作っていこうと思います。 ―――アジアの広告主はどのように拾ってるのですか? 北米の広告主や日本の広告主でアジアのマーケットを攻めたいという人たち向けに提案しています。皆さんアジアに注目をしているので、投資したいねという話にはなっていますけど、キッカケとして、弊社を利用していただけたらなと思います。 日本のコンテンツは非常にクオリティが高いものが多いです。アジアではそのようなエンターテイメント産業ができていないのでコンテンツの輸出という意味でも、うちのようなプラットフォームを使ってドンドン、アジアへ進出をしていって欲しいと思っています。 特に日本の出版業界とか映像業界はけっこう斜陽産業になってきているので彼らのコンテンツを再利用して収益機会を増やす意味でもスマートフォンのプラットフォームを使うのが一番良い方法ではないのかと考えています。 ―――あとは、今はリワードにしてもアイテム換金でゲームになってしまうというところでゲーム以外はそんなに注力していない? 確かに一番ゲームが取りやすいっていう部分もありますけど、他のジャンルでも応用は可能です。たとえば電子書籍とかも使いやすいかなと思います。電子書籍であれば、5巻までは無料で6巻以降は有料ですよという時にリワード広告にアクションをしてくれれば見れるという感じで。映像業界であれば、ドラマを途中まで見ていただいてここから有料ですよ、という仕組みを提案しています。 ―――コンテンツであればゲームであれば、ここまで無料でここからよろしくっていう形ですか? そうですね、それが無限にできますね。 ―――ツール系だとどうですか? ツール系も可能かなと思います。現在は有料版と無料版用意をしていますけど、全部無料版にして、実際に使って気に入ってくれた一部のユーザに、対してリワードでポイントを貯めてプレミアム版を提供するとか。 まさにフリーミアムモデルの先ですよね。     ■著者紹介 株式会社HatchUp 八反田智和 1980年鹿児島県生まれ。慶応義塾大学卒。楽天リサーチ、外資広告代理店でのインタラクティブプロデューサーを経験した後、2009年より、ソーシャルゲーム業界に入る。2010年より「ソーシャル業界盛り上げ企業HatchUp」を設立、現在に至る。ソーシャル系イベント【STR】およびブログ(http://socialtoprunners.jp/)を運営している。取材企業への就業ご相談はお気軽に!