KLab<3656>は、2024年度第4四半期および通期の決算説明会をオンラインで開催した。専務取締役 CFOの高田 和幸氏が通期決算について説明し、売上高83億0600万円、営業利益13億4200万円の赤字だった。「キャプテン翼」や「ブレソル」が健闘し、支援モデルの寄与があったものの、運営タイトルのサービス終了などで減収したことが響いたという。続いて森田 英克社長が2025年12月期の事業戦略について、3タイトルの大型内製タイトルの開発、ハイブリッドカジュアルゲームを含むカジュアルゲーム領域の推進、既存タイトルの安定運用などを重点テーマとして説明した。コスト削減が進み"筋肉質化"が進んでおり、大型内製タイトル次第では業績が劇的に改善する可能性もある。
■決算の概況(高田氏)
本日はお忙しい中、弊社の決算説明会にご参加いただきありがとうございます。最初に私の方から、2024年度第4四半期および通期の業績について説明させていただきます。
まず、第4四半期の業績サマリーです。売上高は22億4700万円、営業利益は2億2800万円の赤字、経常利益は9800万円の赤字、親会社株主に帰属する四半期純利益は10億2500万円の赤字となりました。
売上高については、「キャプテン翼」と支援モデルが好調に推移したものの、「ブレソル」の周年キャンペーンの反動減等により、前四半期比では減収となっております。それに伴い、営業利益の赤字幅も前四半期比では拡大しております。
一方で前年同期比で見ますと、減収とはなっておりますが、赤字幅は縮小しております。経常利益については、為替差益の計上等により、前四半期、前年同期比ともに、赤字幅は縮小しております。
親会社株主に帰属する四半期純利益についてですが、こちらは減損損失および投資有価証券の評価損の計上により、前四半期比で赤字幅が拡大しております。
続いて、タイトル別売上高の前四半期との比較分析になります。「ブレソル」については、前四半期の周年キャンペーンの反騰により日本語版、海外版ともに減少しております。
「キャプテン翼」はグローバル周年キャンペーンは好調であったものの、直前の買い控え等の影響があり、前四半期比では減少しております。一方で、昨年から行ってきたゲームバランスの改善等により全体の傾向としては順調に推移しておりまして、前年同期と比較しますと、プラスでの推移となっております。
続いて、海外売上高の推移です。「ブレソル」の減衰が一定あったものの、「キャプテン翼」の健闘により、前四半期比ほぼ横ばいとなりました。海外売上比率は50%を維持しております。
続いて費用の概要です。「EA SPORTS Tactical』の業務委託費が期末にかけて増加しました。また、「ブリパズ」のリリースにより減価償却費が増加しております。このあたりを除いては、全体的に原価・販管費ともに費用は減少傾向にございます。
続いて、主な固定費の四半期推移です。運営タイトルの整理や効率化、採用抑制、オフィスの見直し等を様々な観点からコスト削減を行うことで、近年での最小規模まで固定費を抑制しております。今後についても、継続的に費用を圧縮していく計画でございます。
続いて業績の四半期推移になります。売上高は減少傾向であり、赤字は継続しておりますが、売上の減衰抑止やコスト削減等の取り組みにより、直近では単月月次決算で黒字化する月もあり、赤字幅は減少傾向にございます。
続いて連結貸借対照表の前四半期末との比較になります。借入金の返済や開発の進捗に伴う支出等により現預金が減少しております。また、投資有価証券の売却と減損処理等により固定資産が減少しております。
続いて、有価証券の売却益および減損損失の計上についてです。今年1月8日にローンチしましたファイナンスの関係で決算整理等の事項も、本来であれば通常通期の決算発表と同時に行いますが、今回に関してはこれらの内容も事前に業績予想として開示しておりました。ファイナンスの払い込み等への影響も考慮して、保守的な評価、見積もりを行っております。
まず、投資有価証券の売却についてですが、非上場株式も含めて3銘柄を売却しております。これにより、投資有価証券売却益を営業外収益と特別利益、合わせて3億0200万円を計上しております。ソフトウェアの減損損失については、昨年9月にリリースしました「BLEACHパズル」の収益状況等を勘案しまして、保守的に全額の減損処理としております。
また、保有している投資有価証券のうち、BLOCKSMITH社の新株予約権について、こちらは当初事業計画との乖離や足元の事業進捗等を考慮して、こちらも保守的に全額の減損処理を行っております。
続いて、2024年度通期の決算サマリーになります。売上高は83億0600万円、営業利益は13億4200万円の赤字、親会社株主に帰属する当期純利益は27億8200万円の赤字となっております。前期比で見ますと、「キャプテン翼」や「ブレソル」の健闘、支援モデルの寄与がありましたが、運営タイトルのサービス終了等により減収となっております。
コスト削減等を継続的に行っておりますが、売上高の減少により、営業利益の赤字幅は前年比での横ばいでの推移となりました。また、減損損失や投資有価証券の評価損により、当期純利益の赤字幅は拡大しております。
続いて費用についてです。運営タイトルの見直しや採用抑制、オフィス縮小など、全体にわたるコスト削減を行ったことで、原価・販管費ともに減少しております。
グループ従業員数の推移です。自然退職と新規採用の抑制により、引き続き従業員数は減少傾向となっております。2024年度末は2023年度末と比較して2割程度減少しております。
年間の売上高、営業利益の推移になります。費用の見直し、コストコントロールに努めたものの、売上高の減少に伴い、赤字が継続しております。今後、新規タイトルのリリースに加え、継続したコスト削減により早期の黒字化を図りたいと考えております。
連結貸借対照表の前期末との比較になります。新作タイトルの開発進行や借入金の返済に伴い、現預金が減少しております。また、新作タイトルの開発は進捗しているものの、リリースに至っていないことでソフトウェアの仮勘定が増加しております。
続いてファイナンスになります。1月8日に第20回 新株予約権および無担保社債(私募債)の資金調達を開示いたしました。背景としましては、「EA SPORTS FC TACTICAL」のワールドワイドローンチが遅れていること、同時に別の開発ラインも稼働していることから、改めて資金調達を実施することにいたしました。調達予定額は18億5000万円となっております。
続いて今回のファイナンスの設計についてです。前回のファイナンスと同様に、私募債10億円と新株予約権の同時発行を行いました。私募債によりアップフロントで10億円を調達し、その後、新株予約権の行使により調達を行います。新株予約権での調達分は社債の償還に優先的に充てることになります。
今回の新株予約権の概要についてです。引受先は、前回同様、マッコーリー・バンクリミテッドになります。希薄化率は約25%、調達予定額は18億5000万円となっております。
業績の説明については以上となります。
■2025年12月期の事業戦略(森田)
私からは、2025年12月期の事業戦略についてご説明いたします。まず、2025年12月期の重点テーマについてですが、最優先テーマとしては大型内製タイトルの開発でございます。
こちらは現在のパイプラインに集中して取り組んでまいります。次に推進してまいるテーマですが、カジュアルゲーム領域の推進です。収益の拡大に向けて、カジュアルゲームおよびハイブリッドカジュアルゲームにおける取り組みを推進してまいります。
こちらは収益源の多様化をテーマとして取り組んでまいります。継続して取り組むテーマとしましては、既存タイトルの安定運用、収益源の多様化、コスト構造改革の3点でございます。
大型内製タイトルの開発についてご説明します。モバイルオンラインゲームのマーケット概況ですが、2024年のiOS、Google Playにおけるアプリ内課金は1500億ドルまで成長しております。こちらは全世界での数字でございます。うちモバイルオンラインゲームによるアプリ内課金は810億ドルであり、課金総額の6割をゲームが占めているという状況です。
アジア圏は停滞気味となっておりましたが、北米、欧州を中心としたそれ以外の大半の地域が伸長し、前年比では4%増加しております。その中でもストラテジー、パズル、アクションのジャンルがマーケットを牽引しております。
全世界のマーケットの中で、日本のアプリ内課金は3位でございます。日本のアプリ内課金額は微減傾向にあるものの、2024年はそれでも165億ドルでありました。全世界におけるアプリ内課金のうちの1割を創出しており、米国と中国についで3番目のマーケットとなっております。
当社が業績を回復させ、再成長ルートに軌道を戻していくためには、現在開発中の大型タイトルのヒットは必要不可欠であると考えております。グローバルにおけるモバイルゲーム市場は成長を続けており、グローバルに向けたタイトルをリリースしていくことにより、高い収益を獲得できると考えております。
現在の大型タイトルのパイプラインは3タイトルでございます。「EA SPORTS FC TACTICAL」、ゲーム系IPのタイトル、僕のヒーローアカデミアのタイトル、この3タイトルでございます。
大型タイトルにおけるパイプラインの進捗についてご説明いたします。まず、「EA SPORTS FC TACTICAL」についてですが、2024年中の正式リリースには至らなかったものの、5月には一部地域限定ローンチを実施いたしました。一部地域限定ローンチでは主に継続率に課題が見つかったことから、2024年後半に追加開発および機能改善に集中しまして、12月に機能追加およびエンドコンテンツの改修等を含んだ大型アップデートを実施いたしました。これにより、KPIは改善傾向でございます。足元ではグローバルローンチに向けて、EA社と協議をしております。
次にゲーム系IPについてご説明いたします。国内の大手コンソールゲーム会社とともに共同で新作タイトルを開発しております。重要なマイルストーンを複数突破しており、ゲームとしての完成度は高まってきていると考えております。情報公開の時期や内容については現在協議中でございます。
次にカジュアルゲーム領域の推進についてご説明いたします。まず、カジュアルゲーム分野におけるビジネスモデルの違いをご説明いたします。大きく三つのカテゴリーがあり、それぞれゲーム性やコンテンツに合わせた収益モデルが存在しております。
カジュアルゲーム領域でのKLabグループの事業体制につきましては、グローバルギアが引き続きカジュアルゲーム領域に軸足を置き、新作タイトルの開発、人気タイトルのシリーズ展開やアップデートなどを通じて安定的な事業運営を行ってまいります。
IPタイトルの展開は縮小し、オリジナルタイトルに注力していきます。KLabは課金収益要素を取り入れたハイブリッドカジュアルゲーム領域での挑戦を継続してまいります。大型タイトルとの事業バランスを見極めつつも積極的にプロジェクトを推進してまいります。
ハイブリッドカジュアルゲーム領域におけるゲームパイプラインとしましては、3タイトルが進行中でございます。リスクヘッジや知見獲得の観点からも、当社単独のプロジェクトだけではなく、外部の開発会社との協業も実施しております。
一つ目が、「Guns N‘ Buddies」です。これまで複数回のユーザー獲得テストを通じて一定以上のスコアを獲得できるクオリティに到達いたしました。1月上旬より北米でソフトローンチを開始し、現在は少額の広告費を投入しながら課金テストを実施しております。
オリジナルタイトル②ですが、こちらはCPIテストで良い結果が出ていることから、次のステップに向けて開発進行しております。2025年内のローンチを目指しております。オリジナルタイトル③は開発進行中でございます。
次に、既存タイトルの安定運営についてご説明いたします。リリース後の長期安定運営を維持するために、様々な取り組みを行っております。一般的なモバイルオンラインゲームはリリース後に一気に急成長いたしますが、その後は経年に伴ってユーザーが減少し、漸減していく傾向にございます。
当社では、一定の減衰に対応しうる運営体制の構築のための効率化、コスト削減を行いながら、ユーザーファーストとデータ活用を軸に、ゲームサイクルの改善、ニーズに沿った商材の提供、新機能の追加などを通じて、年単位で長く楽しんでいただけるゲーム作りに努めております。
現在の当社を支える2大タイトルが「ブレソル」と「キャプテン翼」でございます。これまで浮き沈みはあったものの、両タイトルともに長年グローバルで支持されているタイトルでございます。
「ブレソル」は、原作コミックの20周年をきっかけにIPの盛り上がりが再燃しております。これに合わせた商材の投入やプロモーションの強化などを実施したことから、新規ユーザーや復帰ユーザーを獲得し、安定して推移することができております。
「キャプテン翼」は、ゲームバランスの崩れにより2022年から大幅な減衰が続いておりましたが、地道に改善に取り組んだ結果、2024年は回復し、前年を上回る売上高を確保することができました。加えて、利便性向上の一環で、新たに導入したアプリ外課金の利用率が想定よりも高く、利益率の改善に貢献しました。
次に、収益源の多様化、海外向けゲーム開発支援についてご説明いたします。海外での収益獲得を目指す日本の版元より、ゲーム化のライセンスを受け、海外のパブリッシャー、デベロッパーとともにゲームを共同開発するスキームでございます。版元と開発・運営会社の双方のニーズに応えて複数の案件を積み上げていくことにより、安定的に収益を確保することができております。
海外向けゲーム開発支援の進捗およびパイプラインについてご説明いたします。2023年には、他社のゲーム内の期間限定イベントでのIPコラボを手がけるなど、業態を拡大してきております。2024年はIPコラボ案件を多数獲得した他、新たにリリースされた「ハイキュー!!FLY HIGH」が好調なスタートを切ったこともあり、昨年と同水準の売上を獲得することができました。
次に、コスト構造改革についてご説明いたします。2021年にグループ全体での抜本的な費用の見直しおよびコストコントロールを開始いたしました。中長期目線で業務内容の棚卸や人員配置の見直しを徹底した結果、固定費は2021年に対し、約6割の規模まで圧縮することができました。
今後の成長イメージですが、業績の回復と再成長フェーズへの転換を図るため、新作タイトルをヒットさせて積み上げてまいります。さらに、ハイブリッドカジュアルゲーム領域での新たな収益獲得も目指していきます。
次に役員報酬の減額についてご説明いたします。2024年12月期においては、新作タイトルのリリースに全力を注いでまいりましたが、力及ばず、赤字決算となりました。株主の皆様にご迷惑とご心配をおかけしていることを心よりお詫び申し上げます。決算の結果における経営責任を明確化するため、役員報酬の減額を決定いたしました。減額の内容は、表の通りでございます。
2025年12月期の業績予想は、引き続き非開示といたします。「EA SPORTS FC TACTICAL」のリリースによる業績への影響について、リリース時期および売上規模に関する合理的かつ信頼性のある予測の提示が困難であると考えます。よって2025年12月期の業績予想は非開示といたします。今後の進捗を踏まえ、算定が可能になった場合は速やかに開示する方針です。
以上、ご説明申し上げました。
会社情報
- 会社名
- KLab株式会社
- 設立
- 2000年8月
- 代表者
- 代表取締役社長CEO 森田 英克/代表取締役副会長 五十嵐 洋介
- 決算期
- 12月
- 直近業績
- 売上高83億600万円、営業損益13億4200万円の赤字、経常損益12億8000万円の赤字、最終損益27億8200万円の赤字(2024年12月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 3656